「調子はどうかな?」
「良い感じです。でも気が重いですね。相手はロータリーさんですから。」
「今までレースしてきた中じゃ、間違いなく最強だろうね。それじゃ、今回の作戦を伝えるね。」
「すきに走れ?」
「ああ、沖野みたいなことを言うけど、今のお前ならトレノを正面から抑え込むことも出来るはずだ。」
「真っ向勝負って事ですか。上等ですよ。ぶっちぎってやりますよ。」
「その意気だ、自分こそが世代最強だという事を知らしめてやれ!」
「うわーやらかしてるよ相葉君。沢渡に引っ張られてるなこりゃ。」
「出走間際にMFGを見てるくらいには、余裕がありそうね。」
「余裕ありそうに見えます?今にもゲロ吐きそうな気分なんですよ?こうでもしてないとどうにかなりそうなのに相葉君が縁起でもないことしてくれやがるから不安で仕方ないんですよ。」
「言葉を選んでられないくらいだっていうのは分かったわ。それで、どうなの?」
「ワハハ。」
あまりに適当に返してしまったけどこれが限界だよ。相葉君なんか見なきゃよかった。沢渡の所で終わっておけばよかった。
「お久しぶりです、シブカワさん。」
「久しぶりだなぁ榛名ちゃん。どうだい、トレノちゃんは。勝てそうかい?」
「緒方さんに夏向君!?よく来たねぇ~!今相葉君がやらかしてさぁ、縁起悪かったんだよ!夏向君の運気分けてよー!」
「よく分かりませんが…こんな感じですかね?」
「良いよぉ~!私も!勝て~勝て~!」
「あんまり変わらないと思う…。」
念を放ちながら出走を待つ。出来る事はやったけど…やっぱり不安なものは不安だ。
『今日注目すべきはトレノスプリンターとイエローロータリーでしょう。トレノスプリンターは春天でキタサンブラック、サトノダイヤモンドを押さえ1着。
イエローロータリーも大阪杯で他を寄せ付けない快勝っぷりを見せています。どのようなレースを見せてくれるのか。
各バ、ゲートイン完了、出走の準備が整いました。』
ガコン
『スタートです。揃ったスタートで始まりました。ハナに立ったのは大阪杯を取ったイエローロータリー。そこから隊列が伸びて最後尾にトレノスプリンターです。』
さて、ハナに立ったからには後ろからのプレッシャーに耐え続けないといけないな。だが今は流すくらいでいいな。
暫くは直線だ。向正面に行くまで戦況は動かんだろうからそれまでは様子見だ。
「予想通りの隊列って所かな。ここからどう動くのかは分からないけど、3コーナーまでは動かないだろうし。夏向君はどこら辺で動くと思う?」
「どうですかね…ですが、先頭のロータリーさんと最後尾の…トレノさんが最後に争うかと思います。」
「やっぱりその辺りだよねぇ。展開的にしばらく動かないだろうし。…でも珍しいですね、東条さん。ロータリーちゃんを作戦無しで送り出すなんて。」
「気付くとは思わなかったけど、そうね…巣立ちかしらね。ロータリーも相当成長してきた。戦略面でも成長してきたが、これからはアドバイス無しで戦えるようにならないといけないと思ったのよ。
この先…いずれドリームトロフィーリーグにも行くかもしれないでしょ?そこを考えた時にね。」
「…あー、あ、ありましたね…そう言えば。でもそれで言ったら私も作戦って言えるようなものじゃないですね。教えられませんけど。」
『正面スタンドを過ぎてイエローロータリー先頭変わらず、1コーナーに入っていきます。2バ身ほど離れて後続も続いて行きます。
大きく離れた、先頭から10バ身以上離れてトレノスプリンターです。ですがここまではいつも通りという感じでしょう。ロングスパートをどこで仕掛けるのか楽しみです。』
ここまでは作戦…というか、縛り通り。走っていて違和感はない。課せられた縛りはただ1つ、トップエンドの2000回転を最後の直線まで封印すること。
始めは上手くいくか分からなかったけど8000回転で苦戦していた時の事を考えればなんてことは無かった。
だからと言って、問題点が消える訳じゃない。少しだけ最高速が伸びないから思ったように差を詰められない。
向正面から仕掛けていくしかないか。5速で”10000回転“まで回してどこまで差が詰まるか。正面に戻るまでに追い抜けなければ私の負けが確定する。
どうにかするしかない。1コーナーから向正面途中までは平坦、柵走りしか切れる手札が無い。この差をどうにか詰めないと!
『1コーナーに入ってトレノスプリンターペースを少しずつ上げ始めたように見えます。前の子との距離が詰まり始めているように見えます。』
「うーん…。」
元より宝塚記念、トレノちゃんにとって不利な材料しかない。緩やかに配置された下りと急激な上りのレイアウトの阪神レース場、それにロータリーちゃんが得意であろう中距離のレース。
ダメ押しはロータリーちゃんは大阪杯を勝っている。つまり、阪神での経験も負けている。はっきり言って勝つ要素なんかすべて捨てていると言ってもいい。
トレノちゃんはどう見ても仕掛け始めてる。思い切って走ってくれている。だからこそ、勝ってくれると信じたい。
「どうしましたか、シブカワさん。苦虫を踏んだような顔をしてます。」
「それを言うなら苦虫を嚙んだような、だろ。でもほんとに苦しい顔してるぜ。トレノちゃん、勝てるよな?」
「私は、信じるよ。ロータリーちゃんはあり得ないほど速い。だけれどなんだか、勝ってしまうんじゃないか…そう思わせてくれるんだよ。今までも、これからだって。」
…本当に、勝てるのかな。バトルやSUPERGTみたいに本数を重ねれば出てくる勝機もあるけど、レースは1本きり。
針の穴のように小さい勝機をつかみ取れるか、ミスは出来ない。ミスは即ち…ケガになる。
『1コーナーから2コーナーへ。トレノが追い上げて中団後方に位置しています。依然周りのペースに変化はありません。
こう見ると早仕掛け、掛かっているように見えるがトレノにはこれが通常運転でしょう。それでいて着実に順位を上げていきます。』
「いや、早仕掛けすぎる…ホントに掛かってる…?」
「あれは掛かってるかも知れないわよ。追い抜くペースがいつもと違って速すぎる。今走ってるウマ娘達も異常には気付いてるはず。
だからペースを上げない。トレノに付いていくのは、自殺行為だから。」
「でも、ギリギリの所で限界を超えてない気がします。ボクには、トレノさんの走りが…フジワラ先生のように見えます。」
「私もそう見えるけど、ホントに紙一重だよ。あれ以上ペースを上げようとすれば…それこそ終わりかも知れない。」
『先頭、イエローロータリーが2コーナーを通過します。後続も後に続きます。トレノスプリンターは中団の真ん中にいます。
1000メートルを通過、通過タイム1分2、少しスローペースでの展開です。』
もうそんなところまで来たのか。思ったより早かったな。だが早すぎる、多分掛かってるな。それなら平静を取り戻す前に逃げるか。
ここまで来たら温存する必要もない。大阪杯と同じようにぶっちぎってやる。ちょうど下りになる。全員がペースを上げ始めるだろうが、俺は余力を残す。
ラスト200の上りから少し手前から突き放す。まだ決まったわけじゃねえが、あっけなかったな。
『3コーナーに入ります。そろそろ仕掛け所に入ります、各バどこから仕掛けるんでしょうか。少しずつペースは上がってきていますが先頭イエローロータリー、どう対応していくのか。』
まずい、このまま直線に入ると負ける。コーナーで抜き返さないと負ける。もう縛りがどうとか言ってる場合じゃない。
出来る事は何でもやらないと!
「ヤアァッ!」
『トレノが中団から抜け出した!現在4番手、ロータリーまで5バ身!このコーナーで抜きに掛かっている!』
ガリッ
柵走りと限界を引き上げて12000回転まで使って強引にでも差を詰めて追い抜くんだ。でもこれじゃ足りない。
6速はまだ使えない。なら柵走り、とことんまで使って最短距離を走るんだ。
「フッ!」
またペースが上がった…!こっちだって全速力だって言うのに!
でも、レースに出てるからにはパワーの差が言い訳にはならない。諦めない、絶対追い抜く!
ガリッ
だんだん近づいている。あと2バ身くらい!そろそろ4コーナー、このまま!
ガリッ
もっと……もっと……!!
ガシュ
「いっっ!?」
や……やっちゃった…。
『トレノがロータリーに詰め寄りますが残り2バ身で追い上げは止まってしまった!4コーナーもそろそろ終わって最後の直線に入りますが…トレノの右腕が動いていない!?
走りが安定していない、少しフラフラしているように見えます!』
ちらりと掌に目をやる。ヤバいな、かなりの出血だ、ここまでやったのは初めてだ。ダメだ、痛みがひどすぎる!腕を振れない!
ダメだ……
負け…た…!
皆さん、テイルズはやっているでしょうか。
僕はアライズのDLCを最近クリアしたんですけどナザミルが秘奥義を出してくれなくて猗窩座みたいになってしまいました。
何があったって?僕にはナザミルが「俺と永遠に戦い続けよう!」と言ってるようにしか見えませんでした。
僕はこれを猗窩座バグという事にします。マジで笑った。
以上、小話でした。