頭文字D プリティーステージ   作:サラダ味

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第百十二話 折り返し地点

『4台が一斉にスタートする!スタートダッシュを決めたのはマルゼンスキーだ!流石はランボルギーニ、いくら50年前のとは言え3.9リッターV12エンジンは伊達ではない!

 

375馬力を遺憾なく発揮して開幕から逃げています!』

 

行くわよ、タッちゃん! こんなに気兼ねなく走れる、最高なステージじゃない!楽しんでいきましょう!

 

『マルゼンスキー、聞こえているか?』

 

「ええ、バッチグーよ。暫くは楽しいツーリングになりそうね。」

 

『ああ、誰1人として本気を出していない。察するに様子見、どう出てくるか腹の探り合いだろう。…釈迦に説法だが、気負わずに自分の走りをしてくれ。』

 

「オッケー、チョベリグな走り、披露するわよ!」

 

スタートしてすぐに来る左コーナーをドリフトで流す。後ろも続いてくる。

 

成程、そうんな感じなのね、MFGのタイヤは。今優先するべきはMFG専用タイヤに慣れる事よね。タイヤは限界に直結するからどの程度グリップするのかだけは知っておくべきよね。

 

『タイトなヘアピンを曲がっていきます。秋名ではこのようなヘアピンが多く、それでいて全体的に高速ステージなのでここをどう攻略していくかがポイントになっていくでしょう。』

 

『ですがデータによると渋川トレーナーと諸星さんは同じ群馬出身。コースに対する熟練度というのはかなりの差があるんじゃないですか?』

 

『そこは問題にならないのではと思っています。先頭を走るマルゼンスキーから迷いを感じられません。

 

同様に片桐夏向は開幕戦の死神でごぼう抜きを見せたほどコースがはっきりと見えていました。もちろん、地元2人の熟練度には届かないと思いますがそれでも遜色ない走りができると思います。』

 

緩い右の後のキツイ左を慣性ドリフト気味でクリアしていく。いいわね、とても気持ちいいわ♪

 

こんなドライブが続けばいいけど後ろが黙ってないでしょうね、特に榛名ちゃんは。

 

さっきは楽しいツーリングって言ったけど榛名ちゃんだけは仕掛けてきそうな雰囲気がするのよね。仕掛けてくるとしたら、5連ヘアピンかしら。

 

『2連ヘアピンに入ります。隊列に未だ動きはありません。100号車、渋川が少し怪しい動きをしているがまだ仕掛ける様子はありません。』

 

『マルゼンスキー軽快に飛ばしていますね。トゥインクルシリーズでもよく見せた逃げで後続を引っ張っていきます。

 

3台も併せつつ自分のペースを作っています。流石神フィフティーンと言えばいいのでしょうか、レース経験が豊富ですね。』

 

『ええ、ですが突然場面が変わることもあります。レース経験だけではこのレースは勝てないでしょう。

 

2連ヘアピンをクリアした4台がスケートリンク前のストレートに入ります。』

 

 

「ここだ!」

 

『100号車が885号車に並ぼうとしている!レースが始まって間もなくで戦況が変わろうとしている!』

 

「秋名で長いストレートっつったらここかラストの登坂があるストレートだけだ。だがそこまで待ったらタイヤが温まり切っちまうだろ。その前に左にねじ込む!」

 

『鼻づらはねじ込めたがそこはスープラ、パワートレインでは4台中最高性能でしょう!100号車を前に出させません!

 

しかしこの先には左に曲がるクランクが待っている!勢いに乗って突っ込んでいきます!

 

100号車が少しずつ並んでいく、その右!インとアウトが入れ替わります!ここで少し下がりますが次も入れ替わります!

 

勢いそのままにコーナーをクリア、車体半分100号車が先行している!緩い右に入りますがドリフトで張り付けられて前に出られません!』

 

 

上手いです。ノーズを入れてラインの主導権を譲りませんでした。ミスターモロボシも無理なブロッキングをせずにやり過ごしました。

 

しかもシブカワさんはフジワラ先生の溝落としを難なく使いこなして見せました。

 

ですが先は長いです。仕掛けるのはもう一度下る時です。

 

 

「やっぱ無茶苦茶だ、仕掛けるのが早いのなんの。もう少し後ろにいてくれても良かったんじゃねぇの?」

 

『そう思うんならブロックすればよかっただろ?出来なくはなかったんだろ?ボスにどやされても知らないぞ。』

 

雪平さんはああいうけど、オレなりに考えあっての事なんだけどな。秋名じゃ渋川の方が熟練度は上だろう。だから1本目は後ろに付いてじっくりと見させてもらう。

 

それともう1つ、片桐夏向に渋川のラインを見にくくする。MFG予選でボスのラインを完璧にコピーするくらいだから、あまり効果は無いだろうけどやらないよりはましだろ。

 

こういう小細工の積み重ねが後々になって大きな見返りになるって信じてる。特にこういうドッグファイトだとな!

 

『右のヘアピンを通過します。もうすぐで見所であろう5連ヘアピンに突入します。個人的な意見ですが、あの道幅と連続するヘアピンなのでここで“順位が入れ替わる”と言う事はあまり想像できませんね。』

 

『そうですね、ターフ上でコースとウマ娘を比較するとコースは明らかに広いですし、コーナーも右か左かのどちらかしかありませんから私では尚更そう思えます。』

 

 

「実況は分かってないっすねー。この5連ヘアピンこそが絶好の仕掛け所なのになー!」

 

「ああ、高橋啓介も中里もここで拓海に抜かれたんだ。あと1つポイントはあるけど、やっぱ思い入れのあるこっちに来ちまったよ。」

 

「だけどイツキ、分かってねぇとは言うけどよ、あの時のオレ達だってこんな所で拓海が仕掛けるなんて思わなかったんだ。

 

それだけ拓海や高橋兄弟、それに今走ってる4人が常識外れだって事だ。」

 

「それはそうなんですけど…やっぱりオレ達にはこの5連ヘアピンは特別なんですよ!」

 

ギャアアァァァ パパン パン

 

「来たぞ!カウンタックが先行か!」

 

「榛名ちゃんが後ろにいるぞ!後ろには諸星瀬名、片桐夏向だ!」

 

「いっけー片桐夏向ー!」

 

グワッ ギャン

 

「あのカウンタック、とんでもねぇ突っ込みだ!神フィフティーンの3人と渡り合ってる!」

 

「夏向も少し遅れてるけど負けてねぇ!拓海の弟子だけあるぜ!」

 

ガリッ

 

「あの曲がり方、溝落とし!これはまさに秋名山にプロジェクトDダウンヒルエースが降臨したー!」

 

「本当に、何から何まで拓海みたいだ…。トリハダ立った…。」

 

 

前の3人は物凄く速いです。このコースを熟知したコーナリングをします。折り返しのヒルクライムでは置いて行かれるかもしれません。

 

走り始めた瞬間に感じたこの感覚は何だろう。何故そう感じたのか、理由は分からないけれど、ボクはここで負けてはいけない気がします! 

 

『5連ヘアピンを抜けます!4台の差は変わらず、ペースダウンも最小限です!階段前の折り返し地点までもう少しです!』

 

 

右のヘアピンを抜けて登坂のあるストレートに出る。ストレートはパワーがものをいうのよね。いくらタッちゃんでもGRスープラには敵わないわ。

 

そういう意味だと、榛名ちゃんが瀬名君の前に出てくれたのはラッキーね。

 

『右の高速コーナーに入ります。赤坂さんとしてはこのレース展開をどう見ますか?』

 

『素人の意見になってしまいますが、この段階では仕掛ける気配はありません。下りでの攻防戦はひと段落付いたと考えてもよさそうです。

 

レース開始前に色んなデータに目を通しましたが、4台の中で馬力の低い86号車が上りでどう付いていくのか。

 

そこがポイントではないかと思います。』

 

『成程…素人とは思えない分析力です。私もそう思っていました、流石としか言えません。』

 

振り返しの左、右の直角を抜けてRの重なる複合コーナーをクリアする。折り返し地点はもうすぐ、下りの仕掛け所ももう終わり、少し休めそうね。

 

『先頭マルゼンスキー駐車場前を通過、3台が連なります。おぉっと、100号車ここで行くのか!?

 

この先は折り返し地点、どう仕掛けるというんだ!』

 

「嘘でしょ、何しようとしてるのよ!」

 

榛名ちゃんが右に並んでくる。まさか、ここで行くの!?

 

ほぼ同時にブレーキを踏む。そしてほとんど同時にスピンターンに入る。榛名ちゃんと目が合った。…本気の目ね。

 

「くっ…!」

 

『100号車オーバーテイク!完全に予想外です、折り返し地点で順位が入れ替わりました!』

 

 

「なんて事をするの…榛名は完全にぶつけに行ってたわよ!マルゼンスキーが引いてなかったら大惨事よ!」

 

「あそこまで強引な追い抜きとは、驚嘆するしかないな。審議フラグが立ってない所を見るとMFGとしては問題ないとの事だろうが、これもフェアプレイだと言うのか?

 

…いや、違うか。渋川君が1枚上手だったという事か…。」

 

東条さんやこの場に来ている学園生からはかなりのバッシングが飛び交っている。

 

でも会長は何かに気付いている。私もうまく説明は出来ないけど、直感で理解できる。

 

「ルドルフは何か納得してるみたいね、何が起こったの?」

 

「簡単に言えば、ラインの優先権を渋川君に奪われてしまったんです。

 

ほとんど同時に曲がったように見えましたが、渋川君がほんの一瞬早く曲がっていたんです。」

 

「そういう事だったのね…。末恐ろしいわね、榛名が天才的なテクニックを持っているのは分かっているつもりだったけど、目の前で見せられると舌を巻くわね…。」

 

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