頭文字D プリティーステージ   作:サラダ味

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第百十四話 メロディーライン

『左のヘアピンを通過します。この区間が最も勾配がきつくなります。100号車が水を得た魚のように後続を離していきます。』

 

この区間はスケートリンク前のストレートまでは左右どっちかの横Gとの格闘になるわね。

 

今は発揮できないけれど、この先の勾配が少なくなる秋名湖、そして下りに入ってからの勝負所ね。

 

…それにしても以外ね。夏向君が付かず離れずの位置で付いてきてる。流石ターボの威力ね。

 

NAのタッちゃんよりトルクがあるかもね。

 

『どんどん差が開いていく、頭がおかしくなりそうな立ち上がりの加速です!3秒差まで来ています!まだまだ広がっていきそうです!』

 

飛ばすわね、榛名ちゃん。見ていて惚れ惚れするわ。峠に完全に特化したクルマがこの世にあるとしたら、榛名ちゃんのインプレッサかも知れないわね。

 

「ルドルフ、榛名ちゃんはどんな感じかしら?」

 

『どうと言われても、軽快に飛ばしているよ。これでも闘争心マックスの走りではないのだから驚嘆するほかない。』

 

「やっぱり、本気でちぎりに来てるわけじゃないのね。」

 

『それと、885号車とのタイム差は現在で3.3秒だそうだ。暫くは苦戦を強いられるだろうが、耐えて欲しい。』

 

着実に離してくるわね。この様子だと5秒以上は覚悟しておいた方が良いかも知れないわね。

 

『100号車がスケートリンク前のストレートに突入する!既にぶっちぎりモードに入っている!』

 

「ルドルフだったら頂上に戻ってくるまでに何秒差になってると思う?」

 

『この様子だと…6秒ほどだろうな。ナリタタイシンのように追い込んでいくならそれ位が限界といった所だろう。』

 

「それ位よね。ま、とにかく行ってみましょ♪」

 

 

「もうすぐここに戻ってくる。ヘアピンみたいな低速コーナーがあと3つはある。まだまだ差が付くな。」

 

「ルドルフ、前にマルゼンスキーが榛名と戦ったら赤城以外勝てないとまで言ってたわよね。」

 

「そうですね。あの話を聞いた時は半信半疑でした。何度か彼女の助手席に乗せてもらったことはありますが、彼女のテクニックは本物です。

 

それを踏まえて、彼ら3人と同格と思ってましたが、その見通しは甘かったと言わざるを得ませんね。折り返しで仕掛ける胆力、5連ヘアピンという狭いコーナーで並ぶテクニック…マルゼンスキーが勝てないとまで言った理由が、分かります。」

 

『2連ヘアピンをクリア!差が広がり続けて、現在4.2秒!』

 

『完全な独走状態ですね。張り詰めすぎて終盤で息切れしなければいいですけどね。』

 

「もしかすると彼女には無くて、3人にはある何かが、この差を生んでいるのかも知れません。勝負が決まる時というのは、そういうものですから。」

 

 

『ヘアピンを通過!コーナー2つで頂上に戻ってきます、タイム差は4.7秒!885号車の2位グループが…今通過します!』

 

「…分かった気がするぜ、渋川、諸星瀬名、片桐夏向の共通点が。」

 

「ふぅン。聞かせてくれるかい、シャカール君。」

 

「てめぇはいつの間にか俺の近くに居やがるな。まぁいい、こいつらのテクニックの出身が群馬だという事だ。」

 

「ほう?だが片桐君はイギリス人だろう?彼と群馬を結びつけるものは無いはずだが?」

 

「それがあるんだよ。MFG開幕戦で実況の田中が喋ってたんだよ。片桐夏向のレーシングスクールには日本の講師がいる。

 

その講師が群馬出身なんだ。」

 

「成程ねぇ、その講師から教えを受けていればそのテクニックは群馬の属するねぇ。そして渋川君も諸星君も群馬出身だ。

 

そして奇妙なことに、トレノ君までも群馬だ。いやはや、実に奇妙だ。」

 

「そして、諸星瀬名を調べていくとドリームプロジェクトってのに行きつくんだ。そこのリーダー、高橋啓介も同じく群馬出身だ。

 

高橋啓介に藤原拓海…それにMFGのEO、リョウ・タカハシには何か関係があるはずだ。

 

…ま、その肝心なところは分からねぇけどな。」

 

 

MFGの第2戦の時、夏向さんと渋川さんの走りが何だか似ていると思ったけど、瀬名さんの走りも似ている気がする。

 

何がどう似ているのか、それを説明しろと言われたら出来ない。

 

でも感じるものがある。得られるものがある。確実に私の力になってくれる。

 

「渋川さんのクルマの音がする。すぐそこまで来てる。」

 

そうつぶやくと同時に空気を切り裂くようにスタート地点を通過する。

 

『100号車が頂上を通過します!2位グループが続きます、5.3秒差まで来ました!ですが秋名湖では勾配が無くなるので少しづつ差が縮まっていくと予想されます。』

 

 

「雪平さん、渋川とのタイム差は?」

 

『5.3秒だ。7秒とまでは行かなくても、これ位がちょうどいいんじゃないか?』

 

「ああ、今は前に見えなくても、メロディーラインでちらっと見えれば問題ない。ここからペースを上げてくぜ、オーバー!」

 

メロディーラインに入る。渋川はあそこか。もう消えちまったが、見えるなら問題ねぇ。

 

このストレートをパワー任せに加速して少しでも稼ぐ。いくら後ろのランボが3.9リッターでもトルクなら負けてねぇ。

 

片桐夏向と共にちぎらせてもらう。

 

『メロディーラインに入って885号車アクセル全開!パワートレインの差を誇示するかのように引き離していきます!

 

本来この区間では50キロほどで走ると【静かな湖畔】が聞こえるそうなのですが、そのメロディーの一端すら聞き取れません!

 

ドローンが離されています、既に時速200キロは超えています!』

 

この全開区間じゃ流石にスープラに分があるだろ。この先は緩い右、左の4速のコーナーが続く。そこから県道28号のわき道に入って秋名湖をぐるっと回る。

 

下りに入るまでにメロディーラインラインをもう一回通る。全開にする機会はまだまだある。追い付くには十分だ!

 

『メロディーラインで885号車とマルゼンスキーで1秒ほど差が開きました!一時的にドローン映像をお見せできないことが残念でなりません!』

 

『250キロを軽く超えてましたからね。離れていく後ろ姿からは迫力を感じました。さぁ、秋名湖に入ります!渋川トレーナーはこのリードを守れるのか!』

 

 

「なんとなくオレの予想だが、この区間じゃ順位の変動は起こらない。コーナーほぼ全てが高速コーナーで全開区間も多い。

 

強いて言えば、渋川が4駆のアドバンテージを生かして作ったマージンが少なくなる位だ。」

 

「じゃあよ、カナタとスープラとの差が広がっちまうんじゃないか?ただでさえあっちの方が馬力あるし、今だって離されてるぞ。」

 

「確かに離されるだろうが、前にはカウンタックがいる。スリップストリームに入ってるから後ろに付いてる限り、馬力の差を少しはカバーできる。

 

あのマルゼンスキーってのもかなりの根性してるぜ。大石にも見習ってほしい位だ。」

 

 

「トレノちゃん、瀬名はどれくらいまで来てる?」

 

『4.8秒、メロディーラインから縮み始めてます。あ、今0.1秒縮みました。』

 

「ま、そう来るよな。3秒まで迫ってきたら教えて。どりゃあ!」

 

『了解です。』

 

「向こうからしたら勾配が無くなるタイミングで仕掛けたいのは分かってた。だが、折角作ったマージンだ。ものにしないと意味ないよなぁ!」

 

『100号車のドローンがようやく追いついたようです!遠いながら徐々に近づいて行きます。葉っぱが落ち始めるこの季節の秋名湖には風情が漂いますがそんなものを吹き飛ばしながら疾走していく!』

 

 

とても速い突っ込みです。特筆すべきはブレーキング、ボクよりも深い所でブレークングしています。

 

エイトシックスより200キロ近く軽い車体はやはり強力だ。エントリーでは完全に離されてしまう。

 

だけど、立ち上がりでは負けてない。ミスターオクヤマが仕上げてくれたフットワークがドンピシャにはまってるから、1段早く踏んでいける。

 

これが無ければミスマルゼンスキーのトゥに入る事すら出来なかったかもしれない。

 

それほどまでに、ミスマルゼンスキーは速いです!

 

 

『100号車が秋名湖を回り終えます。2.7秒後ろに885号車、さらに1.2秒のビハインドでマルゼンスキー、86号車が行きます。

 

このメロディーラインで隊列がまとまってくることが予想されます。その先の右の直角コーナーではハードなブレーキング勝負になるでしょう。

 

そこまでの全開区間はなんとカマボコストレートの1.9キロを凌ぎ、2キロを超えます!パワートレインでは圧倒的なGRスープラですが、それより400キロ近く軽く、更に空力にも優れているカウンタックも最高速競争に加わってくるでしょう。』

 

スリップストリームで思ったより離れていかないけど、それでも少しずつ離れてるわね。

 

ターボとは言え、最高速勝負でいくら何でも2リッターに負ける訳にはいかないもの。

 

問題は、この先のブレーキングね。300キロ近いスピードからのブレーキングだからタイヤをいじめるのよね。

 

タイヤのハンデはタッちゃんが一番背負ってる。軽いからと言って無理は禁物ね。でもまだ手ごたえはある、がっちり食い付いてるわ。

 

『86号車がじりじりと離されていきます。ターボとは言え2リッターでは3.9リッターには敵わないか!?』

 

『直線もそろそろ終わります。マルゼンスキーは上の順位を目指しているはずです。少しでも離しておきたいところですね。』

 

スタート地点…ブレーキングはすぐそこ……ココね!!

 

『マルゼンスキー、外だ!』

 

「何…ですって!?」

 

 






























生物には、縁類の遠いながら似通った外見や器官を有する場合がある。

これを収斂進化と呼ぶが、何もこれが生物にのみ適用されるものではない。

発明であったり、理論であったり…進化するものすべてに適用される。

オレの作り出した公道最速理論とスパイラルの池田のゼロ理論もその一つだ。

そして、渋川榛名が独自に編み出したスタイルと群馬プライド…これも正に同じ考えのもとで進化したものだろう。

このバトルのキーポイントは、それぞれが持つ群馬プライドの完成度だ。

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