頭文字D プリティーステージ   作:サラダ味

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第百二十話 JOKER

「ロータリーちゃんも来てくれてたとは、やっぱりツンデレ?」

 

「次それ言ったら殴るぞ?こういうのはテレビよりも自分の目で見たほうが吸収できるものが大きいと思うからな。」

 

「ま、それもそうだね。そろそろ始まりそうだね、さあ皆、念を送るよ!勝て~勝て~!」

 

「「勝て~勝て~!」」

 

「あんま意味無いだろ、それ。」

 

念を送りながらゲートが開くのを待つ。作戦がビタリとはまれば勝つ見込みは十分にある。だけど立てた作戦がはまる事なんか滅多に無い。

 

どう転んでくるか、トレノちゃんが対応できるか、勝負はいつもそこになる。

 

……? 今感じた圧は?ゲートの辺りを見るとどうもオベイユアマスターとトレノちゃんが話してたような感じだ。

 

「おい渋川、今の圧はオベイユアマスターだ。じっと見てたから分かる。」

 

「やっぱり?でも何か、凄い違和感がする。」

 

「あ、あたしもです。オベイさんの圧は初めて感じるはずなのに、感じたことあるような、でも渋川さんの言うようにロータリーさんって感じじゃなかったんですよね。」

 

「でも身近にいるような、思い出せそうで思い出せません。」

 

「うーん……走り出しさえすれば答えは分かるんだけど…。」

 

ガコン

 

『今スタートが切られました!先頭に立ったのは予想通りシーフクロー…の横にオベイユアマスターがいる!そのまま前に出ます!

 

隊列は2バ身程後ろにフォークイン、その後ろトレノスプリンター。中団後ろにはヴェニュスパーク、全体を見渡すようにリガントーナが後方にいます。』

 

「おい渋川、あんな走り方俺でもしないぞ、むしろ…。」

 

「まずった……言葉の意図を読まなさ過ぎた俺のミスだ…。1本限り、タイヤの消耗を何も考えないなら、俺は確実に、先行逃げ切りを狙う!

 

オベイがエミュったのは…俺だった!」

 

 

「待たんかあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

『各ウマ娘、第1コーナーに入ります。予想ですがかなりのハイペースで進んでいくでしょう。』

 

シーフクロー、オベイユアマスターがレース全体のペースを上げている。

 

その後ろにフォークイン、トレノが並んでいる。リガントーナにも挟まれている現状で1番不利なのは私。

 

スタミナはレースに吞まれたら意味が無い。だからペースを上げつつ自分の走りを維持する。私ならできるはず、レジェンドたちを超える…それこそが、ヴェニュスパークなのだから!

 

 

ああ、あなた達の情熱が、愛が、ここにいても伝わってくる。

 

ズルいわ、その情熱をもっとワタシに見せて。それ以上の情熱を、愛を、見せつけてあげる!

 

『最後尾リガントーナが1つ順位を上げます。流れるように2コーナーに入ります。オベイユアマスター、シーフクローが先頭争いを繰り広げます。

 

その後ろ、入れ替わってトレノスプリンター、フォークイン、少し詰まってヴェニュスパーク、更に2つ順位を上げたリガントーナです。』

 

まずはあなたよ、ヴェニュスパーク。あなたの情熱を、ワタシに見せて頂戴!

 

 

「まずい、このままいけばあの時のジャパンカップの再来だ!ハイペース自体は予測してたけどここまでとは思わなかった!」

 

「でもあれだけ逃げて、持つとは思えません。2000メートル付近で落ちるはずです。」

 

「普通に走ってれば…ね。じゃあダイヤちゃん、これだけは言っておくよ。…俺はそんなミスしない。それと同じようにオベイユアマスターが落ちるとは考えられない。

 

それに、シーフクローとの距離も見て。上手いこと考えやがる。」

 

「確かに…差が詰まったり離れたりしてるから追いかけられるより追いかける側が疲れやすいし、何より視野が狭まりますね。」

 

「シーフクローは躍起になって気付いてないけどね。でも後ろはハイペースながら、ペースを掴めてきてる。

 

……さぁトレノちゃん、俺は手強いよ?」

 

 

「ちょこまかと……そこをどけぃ!そこは私様の場所じゃ!」

 

「あのジャパンカップであそこまで逃げたんだ、この程度は予測していたさ。だが、もう限界だろう?」

 

「何を……私様はまだまだイケるぞ! …貴様こそそうではないか!?」

 

「…そろそろ終わりだ、付いて来てみろよ、王者?」

 

『オベイユアマスターが後続との差を広げていきます。シーフクローは先頭争いから徐々に離脱していきます。後続もペースを上げ続けます。』

 

 

リガントーナがすぐそこまで来ている、このハイペースに飲まれてる訳じゃなさそう。走り切れる自信からくる早仕掛けと考えた方が良い。

 

でも貴方の走りはよく知っている。簡単には行かせない!

 

「ハァッ!」

 

「その熱よ、もっとワタシに見せて頂戴!あなた達にもワタシの熱を、愛を!見せつけてあげるわ!」

 

「そうはさせない!この名に懸けて絶対に抜かせない!」

 

『中団ではヴェニュスパーク、リガントーナが激しい競り合いを繰り広げています!第2コーナーを抜けて向正面に入ります。

 

先頭変わらずオベイユアマスター。トレノスプリンターがペースを上げていきます。シーフクローに並んでいるぞ。』

 

 

「ちっこいの……私様の前に出るつもりならそうはさせんぞ…!」

 

「英語はさっぱりですけど…抜かせる気が無いって事だけは確かですね…!」

 

『シーフクローが粘ります。しかし勢いが弱い気がします。どこまで守れるのでしょうか。その後ろ5バ身程にヴェニュスパーク、リガントーナです。』

 

オベイユアマスターさんにあのまま先行されたら射程距離外に行ってしまう。落ちてくることも考えたけど、渋川さんをコピー、それが無くても歴戦のレジェンドがそんなミスをするとは思えない。

 

勝つにはこのハイペースに食らいつくしかない。不思議なくらいに、シリウスさんのトレーニングが活きている。

 

このハイペースだって、後ろから容赦なく追われた時に似ている。物凄く簡単に考えれば前を走るのがオベイユアマスターさんに変わっただけとも言える。

 

向正面の上りがもうすぐで来る。この先は4コーナーまでは下りになる。仕掛けるなら下りしかない。

 

3コーナーの突っ込みで追い抜くには入り口で最低で並んでいないといけない。だから、シーフクローさんと並んでる場合じゃない!

 

「お先です!」

 

「逃がさんぞ…!ちっこいの…如きに私様が……!負ける訳にはいかんのじゃ!」

 

この人もおかしすぎる。明らかにスタミナ切れなのに執念だけでハイペースを維持してる。だけど、この人を超えないとあの人には勝てない。

 

最終直線まで残しておこうと思ってたけど出し惜しみしてる場合じゃない。ここで上限を解放する!

 

「来たか、トレノ。流石、期待を裏切らないね。」

 

 

トレノスプリンター。そのスタミナはまさに規格外、何をどうやればあそこまでのスタミナを手に入れられるのか。

 

噂じゃ模擬レースで合わせて約14000メートル走り切ったとか。

 

それだけのスタミナがあるなら脚質無視のスパートを掛けてもさほど問題は無いでしょうね。でもこのペースを走り切って勝ったのは私。

 

トレノについていくことはない。それに、彼女の底力を見ることが出来るかもしれない。

 

 

『オベイユアマスター、後続を引き連れて第3コーナーに入ろうとしています。ペースを上げているトレノスプリンターは外から並びかけている。

 

フォークインとシーフクローが並んでいる、3バ身後ろではヴェニュスパークとリガントーナが変わらず競り合っています。』

 

ここからだろう、トレノ、ユーの本気は。このペースでユーが仕掛けるならココだろうと踏んでいた。

 

それを見越して作戦を立ててきたんだ。ユーがどれほどの突っ込みをするのかも分かる。どれほど成長しているのかも大まかには予想が付く。

 

並ばれはすれども、コーナーリングで負けるつもりはない!

 

『トレノスプリンター並んだ、そのまま3コーナーに入ります!どちらがハナを取るのか!』

 

「なッ!そこまでいくのか!?」

 

「イケェ!!」

 

バカな、オーバースピードだ! しかもまだ加速していこうとしているのか!?…まさか、そこまで成長していたのか!

 

「曲がる、曲がって、私の体!!」

 

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