頭文字D プリティーステージ   作:サラダ味

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第百二十四話 来訪者[走り屋]

『有馬記念の興奮冷めやらぬ中、遂に始まります!ウィンタードリームトロフィー!今年は特別出走枠としてトレノスプリンター、イエローロータリーの2名が参戦します。

 

実力は確実に拮抗していますからどんなレースが見られるのか。正直な話、私自身とても楽しみにしていました!

 

出走まではあと数時間ですが、今すぐにでもレースが始まってほしい、それ位待ち遠しいです!

 

そして今回は何と、MFGの統括本部長、上有史浩氏のご協力により高性能ドローンによる迫力ある映像をお届けできます!』

 

「ねぇトレちゃん!これってどっちから見た方が良いかな!?」

 

「現地に来ておいてそれ言う?」

 

「でもでも後ろからなんて絶対に見られないしさー!…そうだ!お父さんにお願いして録画してもらお!」

 

「ナナさん、その録画を後から頂いてもよろしいですか!?」

 

ナナとデジタルさんが中々に興奮している。あと数時間はあるのにこのテンションが持つのかと疑問には思う。

 

「ようトレノ、朝ぶりだな。ナナ、悪いな。レースの後はトレノを慰めてやってくれ。勝つのは俺だ。」

 

「今日は負けませんよ。ナナもこうやって見に来てくれてるんです。いやでも負けられません。…ライバルとして、全力で走ります!」

 

 

 

「よう、榛名ちゃん。」

 

「お久です池谷さん。イツキさんと健二さんも来てくれたんですね。」

 

「当然じゃん!トレノちゃんがこんな大舞台で走るんだから応援に来ない訳無いよ!」

 

「まぁこれがトレノちゃんの最終戦になるって訳じゃないからまた走る時になったら応援には来れるけどな。せめて1回くらいは来ておかないと。」

 

「期待してくださいねぇ~。今日はトレノちゃんが…多分恐らく…きっと勝ってくれますよ!」

 

「そこは言い切らないのかよ!…不安になってきた。」

 

勝てると言い切りたいけど、メンツがメンツだから

 

「トレーナーのお前がトレノの勝ちを確信できなくてどうする。あいつはプロジェクトDと同じ、群馬の誇りだ。」

 

「そうだ。オレ達みたいにハチロクを知ってる世代はその期待はお前が想像する以上だろうな。」

 

「中里さん!庄司さんも来てたんですか!?人気者ってすごいなー。」

 

「群馬でのアイツの人気っぷりは凄まじいぞ。それだけ北関東最速を成し遂げたハチロクとFD、プロジェクトDの影響力は強かったって訳だ。」

 

「ハチロクが北関東最速…池谷さん!私そんな話全く聞いて無いんですけど!?そんなに凄い話があるんだったら話してくれても良かったじゃないですか!」

 

「2年前にこいつがハチロクを知らないってのを初めて知ったが、池谷何も話してなかったのか?」

 

ハチロクについて何も知らなかったわけではないけど、子供のころ見たハチロクがあそこまで凄いとは思わなかった。でも、あれだけ速いんだから北関東最速と言われても納得できる。

 

「確かに榛名ちゃんには才能があった。それこそダブルエースに匹敵するくらいのな。だけど、榛名ちゃんには榛名ちゃんに走り方がある。

 

拓海や高橋啓介の走りが参考になることもあれば、毒になるかもしれない。だからという訳じゃないけど、そう考えると離さない方が良いんじゃないかって思ったんだ。」

 

「それが正解だったのか、榛名ちゃんはこうやって神フィフティーンの仲間入り。諸星瀬名、片桐夏向とも互角にやり合うくらいに成長したからな。」

 

「このままいけば高橋啓介も…もしかしたら拓海を越えるくらいのドライバーに成長していきますよ!ね、所長、ケンジ先輩!」

 

「へー。誰が藤原を…ましてやオレを超えるって?」

 

「た、高橋啓介!アンタも来てたのか…!」

 

この人が、高橋啓介…。見ただけで分かる、途方もないオーラだ。瀬名とは比べ物にならないくらいだ。

 

ふと、後ろのクルマに目をやる。

 

「あ…!」

 

間違いない、見間違えるはずがない。デモ走行のあのクルマだ…!

 

「お前が渋川か。そっちは察しがついてるだろうが、オレがデモのドライバーだ。ペニンシュラと秋名じゃ瀬名が世話になったな。」

 

「…なるほど、瀬名が私以上に速くなる訳だ。初めまして高橋啓介さん。貴方もトレノちゃんを応援しに来てくれた…って訳じゃないみたいですね。」

 

「まぁな。お目当てはこれからわかるさ。…お、来た来た。」

 

「なんだ、もう来てたのか啓介。ケンタもそろそろ来るはずだけど…。」

 

「2人とも早いっすよ~。」

 

「お前が遅いだけだろケンタ。後はアニキだけだが、多忙だからな。そもそも来るのかな。」

 

「高橋涼介も来るとなると、スピードスターズにナイトキッズ、レッドサンズが20数年ぶりに集結するのか。こうして集まれるとは、考えもしなかったな。」

 

「まだ1人来てねぇよ。肝心の1人がな。」

 

「アイツはイギリスだからな。オレ達の誰かが連絡を入れてなかったら知りすらしてないだろうがな。」

 

「そういうところも藤原らしいっちゃらしいんですかね。そんな事よりも社長、早く行っていい場所取りましょうよ!」

 

「ケンタ、お前花見の場所取りくらいはしゃいでるじゃねぇかよ。…渋川、来るなら早くしろよ。」

 

ケンタさんを先頭に集まった皆がレース場に入っていく。だけど上有さんだけは付いて行かないで立ち止まっていた。

 

「上有さんは行かなくていいんですか?」

 

「ああ、オレは涼介が来るまで待ってるとするよ。それに、オレ達世代の走り屋はまだまだ見に来るはずだ。

 

少なくとも、プロジェクトDと戦った栃木、埼玉、茨城、神奈川の走り屋は皆来るんじゃないかな。」

 

「そんなにたくさんの人が…プロジェクトDのハチロクの…トレノちゃんの人気ってすごいですね。」

 

「それもそうだけど、君の人気も随分なものだぞ?特に4戦の解説してた…」

 

パパン パパパン

 

え…この音、ミスファイヤリングシステム?

 

「来たな、公道のエンペラーが。」

 

「よう史浩。涼介はまだ来てないか…。…ほう、アンタが渋川か。エンペラーの須藤京一だ。」

 

「どうも、渋川榛名です。初対面ですけど、色々と話が合いそうですね。」

 

「ああ、本当なら腰を据えて話がしたいが今はこれだけ渡しておくぜ。」

 

そう言って出された名刺をもらう。出されたからには私からも出さないと。

 

「単刀直入に言う、ラリーに来い。MFGを通してお前自身も分かっているんじゃないか?お前はこっち側の人間だ。」

 

「誘いは嬉しいですけど、私はまだやるべきことが残ってるんです。受けるにしても、トレノちゃんが現役を退くまでは受けられません。」

 

「そうか。まぁいい、気が変わったらそこに電話しろ。いつでもその筋に紹介してやる。…じゃあな。」

 

…見透かされている。多分、啓介さんにも。でも、私はまだ行けないんですって。

 

「hey!シブカワ!どうだいユーの担当は!」

 

「オベイちゃん、来てたの!?てっきりアメリカに帰ったとばかり…。」

 

「ミーだけじゃないよ。シーフクローもフォークインも、皆来ているよ。じゃ、ミーは先に行ってるから、シブカワも早く来なよ!」

 

「出走者も豪華ならギャラリーも豪華だね。まだ4時間はあるからどうなる事やら。」

 

「まだまだ来るだろうな。オレはもう少し待ってるから、君も行った方が良いんじゃないか?ケンタが変な場所とってるとも限らないし。」

 

「流石にそんなことは無いと思いますけど…そうですね。先に行きますね、とびきりいい所案内しますね。では。」

 

「あ、ちょっと待った。」

 

促されるまま私もレース場に入ろうとすると、上有さんに引き留められる。

 

「これを渡すのを忘れてたよ。」

 

「手紙と…箱ですか?」

 

「送り主からはパドックでトレノちゃんに読んで欲しいんだそうだ。それまでは中身は見ないで欲しい。」

 

「分かりました、それではー。」

 

中身を見るなと言われると気になるけど、フリじゃなさそうだしちゃんと見ないでおこう。

 

 

「よう、久しぶりだな栄治。」

 

「どうも、六平さん。…メンドクセェのに捕まっちまったか。」

 

「メンドクセェとはどういう事だ?それよりも、ようやくてめぇの娘のレースをその目で見に来たか。」

 

「まぁな。まさかそのレースがウィンタードリームトロフィーになるとは思わなかったがな。」

 

「2年半でここまで成長するとはな…。いや、元からここまでくる素質があったって事だろうな。」

 

「ああ。新聞配達をやらせて1年でデビューできるくらいに成長した時は流石に驚いたぜ。ま、今日はゆっくりと見させてもらうかな。」

 

 

「やぁ、榛名ちゃん。応援に来たよ。相変わらずすごい人だな。」

 

「おー緒方さん来てくれたんだ。それに相葉君まで。」

 

「いやー、実の所トレノちゃんが走ってる所って見たこと無いんだよ。」

 

「それってどうなのさ。ここまででも結構走って来たんだよ?」

 

「分かってるよ。これだけ人が集まってるんだ。トレノちゃんお目当てで来てる人間もたくさんいるはずだ。少なくともお前の周りにいる人は全員そうなんだろ?」

 

「いや、約2名は違うみたい。ですよね?ケンタさん、高橋さん?」

 

「今回勝つのはイエローロータリーって奴だ!そうですよね、啓介さん!」

 

「あんまり楽観視するなケンタ。プロジェクトDのバトルだってはっきりと楽だったってバトルの方が少なかったろ。

 

少し勉強してきた程度で、ウマ娘のねーちゃんの事はよく分からないがな。あのメンツなら全員が全員苦戦するだろうな。」

 

至極その通りだ。今日出走するのは全員が化け物、天才揃いだ。苦戦せずに勝てましたなんてことは絶対にありえない。

 

高橋さんの考えに頷いていると相葉君が唸り始める。

 

「……アンタ、高橋啓介っていうのか?MFGのデモドライバーで最終戦を解説してたあの?」

 

「そうだが?」

 

「頼む!アンタの目から見てオレの走りに何が足りないのか、教えてくれないか!?」

 

「GT-R乗ってんならもう少し考えて走れ。4年目で片桐のおかげでましにはなったがそれでもまだまだだ。

 

言いたいことは色々あるが、今言えるのはこれだけだな。」

 

「オレも32に乗ってるし、お前と同じような走りをしていたから分かる。全てのクルマに言える事だが、特にGT-Rにとってブレーキは生命線だ。

 

感情に任せないで冷静に配分できるようになれば化けるはずだ。」

 

高橋さんと中里さんが的確な指摘をする。相葉君も反論をしないで素直に受け止めている。

 

「成程な…勉強になったぜ。」

 

「さて、パドックまでまだ時間ありますし、出走者について、私から解説いたしましょう!」

 

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