「1カ月ぶりのジャパンだけど、随分と寒くなるものだねぇ。」
「当たり前でしょ。日本がどれだけ寒いと思ってるのよ。」
「流石は四季がはっきりとしてる国だね。ドリームトロフィーが終わったら白川郷に観光に行こうかな?」
「遊びに来たんじゃないのよ。と言っても、私達はレースをしに来てるわけでも無いし…。温泉巡りでもしようかしら。」
「カーッカッカッカ!!なんじゃお前ら、暇なら私様のお供になることを許してもいいぞ!」
「丁重にお断りさせていただくわ。貴方と一緒じゃ命がいくつあっても足りないわ。」
「ミーも遠慮しておくかな。…お、ヴェニュスパーク達はもうレース場についているみたいだね。そろそろ行こうか。」
「まさかロータリーさんとトレノさんがドリームトロフィーに出るなんて…まるで祭りみたいだよ!」
「キタちゃん昨日からその話題だね。私も楽しみで仕方が無かったけどね。」
「さて場所はどこがいいかな~?…あ!ねぇダイヤちゃん、あれってさ!」
「ヴェニュスパークさんだよね!場所的にも良さそうだし、声かけてみようか。」
近くまで行くとその隣にリガントーナさんもいた。凱旋門賞を制したレジェンドを目の前にして興奮を抑えながら話しかける。
「あ、あの!ヴェニュスパークさんですよね?お隣、よろしいですか?」
「Euh-huh…Attends un peu.(えーっと、少し待ってください。)」
ヴェニュスパークさんが返事を返してくれたけどまるで意味が分からない。フランス語はさっぱりだ。
少し困っているとヴェニュスパークさんが耳打ちでリガントーナさんに助け舟を出した。
『リガントーナさん、どうぞってどんな発音でしたっけ。』
『どうぞ…よ。ワタシが代わりに言ってあげましょうか?』
『いえ、折角日本語を勉強して来たんです。ここは私が。』
「どうぞ…えと、隣、空いてます。」
「ありがとうございます!あたし、キタサンブラックって言います!1回凱旋門賞を目指してて!結局諦めちゃったんですけど、その時から1度話してみたいと思ってたんですよ!
それにしても、ヴェニュスパークさんだけじゃなくてリガントーナさんも見に来てるとは思いませんでした!」
「キタちゃん、ヴェニュスパークさんが困ってるよ。あまり日本語話せないだし、ゆっくり話さないと。」
「大丈夫よ。いざとなればワタシが通訳になってあげる。あなたの情熱、とてもいいわね。二ホンのお祭りが似合いそうね。」
「はい!あたし、お祭り娘を自称してるくらいですから!」
「サトノダイヤモンドです。急にごめんなさい。でも凄いウマ娘とお話ししてみたかったのは私もなんです。」
「ありがとう、ございます。日本語、少ししかできないけど、大丈夫ですか?」
「お上手ですよ、日本語。私もフランス語を勉強してまして、良ければ教え合いませんか?」
「このあたりが……良さそう…。」
まさかタキオンさんがドリームトロフィーに興味を示すとは思わなかったけど、多分原因はトレノさんと渋川さん。
タキオンさんとシャカールさんが最近研究している群馬プライドというものが関わっているはず。
でも、それだけじゃない。私には、私にだけ見えるお友だちがそれを教えてくれる。ジャパンカップの時から、トレノさんのお友だちがより強く、はっきりと見えるようになった。
ロータリーさんも同じだ。彼女たちのお友だち……いや、あれはそういう類ではないのかもしれない。あれは、残された意志?
もしそうだとしたら、とても強い意志だったはずだ。頂点を取りに行くような、それくらいの。
「ねぇタイシン!今日のレースってどうなるかな!?ダービー以上に凄いレースになりそうな気がするよ!」
「いい加減にして。もう耳が終わりかけなんだけど。」
「でもでも、ホントに凄いじゃん!今でもこんなに凄い人がいるんだよ!みんなすっごい期待されてるんだよ!うぅ…みんなずごいよおおぉぉぉぉぉ!」
「泣くなうっとおしい!これ以上騒ぐんだったらいい加減蹴っ飛ばすよ!」
「だっでぇ…あ、あそこにいるのってナナと渋川さんじゃない!?おーい、ナナー!渋川さーん!」
「勝手に行くなっての…ってナナ!?またうるさいのが増えるわけ!?ちょっ…止まって!」
あたしの制止を振り切って…というより聞きもせず、ナナの方に向かっていく。アイツ初めて会った時ちっちゃいとか言って来たの覚えてるんだから。
また言ったら蹴っ飛ばしてやる。
というか、渋川の周りにいるのがナナ以外は男だけなのはどうなの?ちゃんと知り合いっぽいし、女友達いなかったの?
「あ、チケゾーさん、タイシンさん!お久しぶりです!今日はトレちゃんが勝ちますぉ~。期待しててくださいね!」
「いーや!ハヤヒデも負けてないからね!アタシたちとすっごいトレーニングしてたんだから!ね、タイシン!」
「まあね。流れでブライアンとか会長のトレーニングにも巻き込まれたけど、あの模擬レースの時よりはいい仕上がりにはなってるはずだよ。」
「てことはブライアンさんとかルドルフさんも…他の出走者も凄い仕上がりって事ですよね。…急に不安になってきた。ロータリーさんの言う通り、慰めることになりそう……。」
「大丈夫だよナナちゃん。トレノちゃんだって今までで1番って言っていい位の仕上がりだよ。期待して待っていよう。」
そうだ、アタシ達はもう信じて待つことしかできない。ハヤヒデ、あれだけトレーニングに付き合ってやったんだから勝ちなよ。
「ハーイ、ヴェニュスパークにリガントーナ!久しぶりだねぇ、日本語は上達したかな?」
「はい、サトノさんに教えてもらいました。どうですか?」
「great!そこまで話せれば十分だね!で、ユーがサトノダイヤモンドか。その隣はキタサンブラック。」
「ジャパンカップに出ていたら、正直分からなかったわよ。貴方達も十分警戒しないといけないウマ娘なんだから。」
「ね、ねぇダイヤちゃん。まさかオベイさんもフォークインさんも来るなんて思わなかったよぉ~!」
「でも私達を警戒すべきウマ娘だって。世界から認められてるって事だよ!」
「カーッカッカッカ!だが私様に比べればまだまだだろうな!今のうちに私様を目に焼き付けるといい、光栄に思うがいいぞ!」
「すごいよキタちゃん!世界のレジェンドがこんなに集まるなんて凄いよ!」
「あわわわわ、凄いんだけど、あたし達が一緒にいていいのか分からなくなってきたんだけど!?」
「いいとも、キタサンブラック。今ここにいるのはこのレースを見に来た者。それ以外には何も無いのだからね。」
「も、モンジューさん!?ど、どうなってるの!?」
『師匠!?来ないって聞いてましたけど!?』
『君たちが注目しているレースだからね。是非見てみたかったんだ。』
最初は軽い気持ちでヴェニュスパークさんに声を掛けただけなのに、レジェンドたちに囲まれることになるなんて思わなかった。こういう時ってどうしたらいいのかな!?
「テイオーさ~ん!助けて下さーい!」
「ックション!」
「風邪ですか?レース当日に体調を崩すなんてらしくないですわね。」
「うーん、風邪じゃないんだけどなぁ。誰かに呼ばれたのかな。」
「しっかりしてくださいまし。もうすぐパドックなのですよ。」
「ねぇマルゼン。ルドルフってさ、久しぶりにうきうきしてたよね。」
「ええ、本人はあまり認めようとしなかったけどあんなに子供みたいにはしゃいでるのは初めて見るかもね。」
「だが、浮ついてんのは皇帝サマだけじゃねぇ。このレースを見に来てる全員がそうだろう。アンタらも…私も例外じゃねぇ。」
「いずれにしても、トレノとロータリーは間違いなく1番の苦戦を強いられるだろうね。あーあ、アタシも出たかったなー。
19番を今から作ってもらおうかな?」
「登録もしてねぇのに贅沢言うな。」
「でも、気持ちは分かるなぁ。あの中で走れたなら、きっと楽しいでしょうね。」
「走らねぇ分、目で楽しませてもらうさ。ご期待に応えてくれよ?」
『さぁ皆さまお待ちかねでしょう!私も待ち望んでいました!ウィンタードリームトロフィー出走ウマ娘、パドック入りです!』