頭文字D プリティーステージ   作:サラダ味

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番外編2話

「あの子は…どうかなぁ」

 

スカウトするために色んな子を見てはいるけど、榛名が敗北者になった理由が分かった気がする。今私はめぼしい子を実際に見てノートにまとめている所。

 

「あれ、トレノさんだよね。…何やってるのかな」

 

「ほら、この前堂々と視察してたら囲まれたじゃん。アレ対策じゃない?」

 

…そう、遠巻きで。この前ナナと新入生のトレーニングを見てたら何故かすごい勢いで囲まれて色々と質問攻めにされるわ挙句逆スカウトされたりで観察どころではなくなってしまったので逃げることを選択した。

何でこうなったのか後でナナに聞いてみたけど。

 

「トレちゃん人気者なんだからああなっても不思議じゃないでしょ。そもそもG1を3勝してるんだからウマ娘からしたら羨望の的だと思うよ?」

 

との事。兎にも角にも表立って行動できないことが判明してしまったのでサングラスにマスク、耳隠し用に帽子をかぶって隠れながら観察している。しっかし…

 

「いいなぁ。私が一番最初のタイムより速い子ばっかりだぁ…」

 

後進の育成…なんて引退の時豪語したけどこれ教えること無いかも知れない。いや~…モチベ駄々下がりなう。

 

「…あの子…確か」

 

授業での併走トレーニングに話題になってるらしい子が出てくる。特徴的ななぜか異様にデカい左耳のリボン。プラネタリウムのようにキラキラしてる目にきれいな鹿毛。多分ナナが言ってた子の内の一人だろう。名前は確か…

 

「アーモンドアイ…」

 

さて、どんな走りをするのか。噂はナナから聞いた程度だけど中々に逸材らしい。

 

「加減はナシよ!」

 

「…へぇ」

 

走り出したらすぐに分かった。確かに噂になる訳だ。正直な所、噂なんて碌なもんじゃないと思ってたから下バ評通りとは恐れ入るよ。なお噂を信じない理由は『北関東最速のダウンヒラー』の異名が付いた時から。アレのせいで噂を信じなくなったと言っても過言ではない。尾ひれ付きまくりだもん。

閑話休題。スタートからゴールまで一貫してブレることなく走る。土台の部分は完成していると言っても過言じゃないと思う。レースの組み立て、仕掛け所も先行策のお手本みたいだ。言ってしまえば正統派だ。私とは系統が違い過ぎる。私と交わることは…多分無いかな。

…だいぶデータは取れたかな。一度どこかで整理しよう。そういう訳で休憩スペースで軽くまとめていると肩を小突かれる。

 

「よう新人トレーナー殿。首尾は上々か?」

 

「茶化さないで下さいよロータリーさん。今榛名の大変さを身をもって体験してるんですから」

 

「知ってるよ。この前なんか追われてたもんな。お前、ここ来てからずっと追われてるな」

 

「何ででしょうね…。そういえば、今年からフランス遠征でしたっけ?」

 

「ああ、国内の後は国外だろ。まだピークアウトを迎えてはいないが、残された時間は少ないはずだ。だから、動けるうちに動いておかねぇと」

 

ロータリーさんが手を握り締めて空を見つめる。その先には自分の勝利を確信しているような、そんな目をしている。

 

「そうですね。フランスって事は凱旋門…L`Arcに参加するって感じですか?」

 

「あるものは使わねぇとな。…まぁやってることがガラッと変わってる分お前の方が大変だろ?」

 

目を見開いて少し驚く。ロータリーさんから労われるとは思わなかった。けど大変なのは事実だし、その言葉で少し気が休まった気がする。

 

「そうですね。でもへばってばっかじゃいられませんから。それに、頑張らないといけないのは今も昔も変わってませんし」

 

「違いねぇ。ま、頑張れよ」

 

手を振りながらどこかへ行くロータリーさん。机に目を戻すと買った覚えのないコーヒーが置いてあった。…ロータリーさんスゲェ、尊敬するっす。さて、もうひと頑張りしようかな。

 

「あ、あの…トレノさんですか?」

 

「ふぇ?」

 

顔を上げると赤い髪の子と芦毛の子と暗めの栗毛の子がいた。この子たちもナナが要チェックって言ってたっけ。

 

「あぁ、新入生の子だよね」

 

「はい、クロノジェネシスと申します」

 

「ラヴミーラヴユー。ラヴズオンリーユーで~す」

 

「おはマイル!グランアレグリアです!」

 

「えぇっと…おはマイルー。立ち話もなんだし、座って話そうか」

 

気になる点が約2つほどあったけど取り敢えずスルーする。…私が現役の時にあんな感じの掴みの一言があったらどうなってたんだろう。…なくてよかったかもしれない。永遠にこすらないといけなくなりそう。

 

「話しかけてくれたって事は何かあったのかな?」

 

「トレノさんさえよかったら、私たちと併走してくれませんか!?」

 

「へ、併走?」

 

「はい。私達普段はこの3人でトレーニングしてるんですけど、そろそろ変化が欲しいなと思いまして」

 

「そんな時のトレノさんをお見かけしたので。無理なお願いなのは百も承知ですが…どうですかね?」

 

「ごめん、ちょっと考えさせて」

 

併走してくれなんて言われても困ってしまう。走れないことは無い。だけど現役と比べても酷く衰えている。併走で付いて行けるかどうかくらいだし…

 

(残された時間は少ないはずだ。だから、動けるうちに動いておかねぇと)

 

ロータリーさんの言葉を思い出す。動けるうちに…。テクだけは実際に見せないと分からないよね。

 

「…いいよ。すごく軽くでいいならだけど」

 

「いいんですか!?よろしくお願いします!」

 

「それじゃ早速コースに行こうか」

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