頭文字D プリティーステージ   作:サラダ味

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番外編3話

「はじめに断っておくけど、現役の事からトレーニング量は激減してるし体力もなくなってる。だから併走に付き合える時間も短いし…私の走り自体変則的なものだから、貴方たちの参考になるかは分からないよ」

 

「大丈夫です…!よろしくお願いします!」

 

トレセンのジャージに着替えてコースに立つ。これに袖を通すのも久しぶりになる。…1年前のモノをそのまま引っ張り出したのになぜピッタリサイズなのか。入らないか少しぶかぶかになってるのを想像してたのに。

 

「それじゃあさっき言った通り2000メートルでお願いします。…グランちゃんも良かったわよね?」

 

「1.25マイルだから実質マイルだよ。それに、三階級を制覇するんだからこれ位へっちゃらだよ」

 

「確かグランちゃんはマイル最強を目指してるんだっけ。それも真のマイル女王を」

 

「知っててくれたんですか!嬉しさ100マイルです!」

 

知ってるも何も…いろんなところで言って回ってる…ていうのをナナから聞いた。何なら私の持ってる情報の出所は殆どナナである。ナナ、私はもう負けました。

 

「それじゃ、そろそろ始めようか。3人とも、行くよ」

 

「「「はい!」」」

 

コインを親指で弾く。それがターフに落ちた瞬間に走り始める。今回は3人の希望で逃げる形で併せて行く。この子たちの走りを見れないのは残念だけど、併せるなら成果の大きい方が良い。フォームだけは現役の頃を意識しながら走る。

……これは…なかなか厳しいな。思った走りが全然出来ない。習慣化してしまった早朝トレは今でも続けているけど、逆を言えばそれだけ。もう少しまともに走れると思ったんだけど、ブランクがここまで大きいとは思わなかった。

 

(((…速い!)))

 

 

 

 

 

「ごめんね。何というか…変な走りだったでしょ。自分でも悲しくなるくらい酷かったよ…コホッ」

 

ハンカチで口を覆いながら咳をする。これ位ならもう1本だけ走れるかな?

 

「あ…アレで酷かったの?」

 

「これが北関東最速のダウンヒラーと言われたウマ娘の実力…レースは何回も見たけど実際に体験すると全然違う…ぶつぶつ」

 

「厳しさ120マイル…やっぱりこうでなくちゃ!」

 

「どうかな。なにか見つけられたかな」

 

こう聞いてみるけど、1回で分かれば苦労しないかな。テクニックっていうのはそう簡単に得られるものじゃないから、根気よく教える必要があるし、根気よく教わらなければいけないはずだ。3人が望むなら踏ん張らないとね。

 

「あらぁ、皆精が出てはるなぁ」

 

「あ、ララさん!」

 

グランちゃんが向いた方を見ると、サイドテールの子がいた。ラッキーライラックちゃん…。アイちゃんと同期ってナナが言ってたっけ。

 

「たまにはうちも混ぜてもらおかな。トレノさんに教えてもらえるええ機会みたいやし」

 

「教えるって言ってもなぁ。言葉にするのは苦手だし。もう1本だけなら併せられるけど、それでもいいかな?」

 

「ホンマですの?ではお言葉に甘えて」(ええぇぇ~~!?トレノさんと併走!?ホンマにええの!?ウチとしても願ったりかなったりやけども!)

 

「それじゃあみんな、今度は私の前を走ってくれるかな?どんな走りなのか見て確かめたいんだ。準備が出来たら走り出して。ついていくからさ。…付いて行けるか分からないけど」

 

4人が準備している間に私の状況を確認しておこう。現役で言えば…どの辺りなのかな。デビュー前位かな。多分、体との認識が合えば今よりはましになるだろうけど…

 

「じゃあトレノさん!行きますよ!」

 

「分かった。さて、頑張りますか」

 

グランちゃんを先頭に走り出す。それを追っていくけど、成程中々レベルが高い。この子たちと同期でなくてよかった気がする。マイラーのグランちゃんは軽快に飛ばしている。ラヴズちゃんもクロノちゃんも高水準だ。すでに将来が楽しみになってくる。

 

ララちゃんは確か一つ上の先輩だったっけ。冷静に状況を見れている。年の功…って言ったら怒られるかな。余裕を感じる走りをしている。

 

(なんやのこの人?引退して約1年、ほとんどトレーニングしてへんって噂聞いてんねやけど絶対嘘やわ!なんややってはるわこれは!)

 

いやー厳しい。これが併走だって分かってる?段々とペースを上げないで頂きたい。1000メートル通過したけどデビュー前にしては中々の好タイムじゃな

 

「…まずい」

 

イケなかったか。ペースを徐々に落として戦線離脱。もう1本イケると思ったんだけど…甘かったか。走り終わった4人が心配そうしてくれる。

 

「大丈夫ですのん?なにかありました?」

 

「いや、大丈夫。ケホッ。走るとこうなっちゃうだけだから。本当大丈夫」

 

ハンカチで口を覆いながら喋る。それが余計心配させる種になってしまう。けど覆わないと事件になっちゃうし。

 

「その…すみませんでした」

 

「謝らないでよクロノちゃん!ホントに何ともないからさ!ほら!」

 

その場でぴょんぴょん飛び跳ねて大丈夫な事を全力でアピールする。

 

「それならいいんですが…」

 

「トレーナーになったばかりだし、こんな道半ばじゃ死ねないよ。それに、担当決める良い方法も見つけたし」

 

「良い方法ですか?」

 

「ふふん、明日のお楽しみ」

 

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