頭文字D プリティーステージ   作:サラダ味

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番外編4話

「皆、今日からちょくちょく覗きに来るからよろしくね」

 

ざわ…ざわ…

 

「えー、そういう訳だから普段みたいに気を抜くなよ」

 

教官さんが指導している所を私は一歩引いて見る。私が言った良い方法とは…最前線で見てしまえ大作戦である。何故かみんなざわついてるけど…気にしない。

 

「トレノさん、昨日言ってたのってこういう事だったんですね」

 

「まあね、多分書類とかデータ見るより体験した方がよく分かると思うんだ。だって私、理論派じゃないし。…もう始まるみたいだよ」

 

「はい!元気120マイル、行ってきまーす!」

 

5人ずつ順番に走り出していく。近くで見るとよく分かる。どの子も才能の塊だ。そうでなきゃ、トレセンの門はくぐれないか。

 

「トレノさん!コーナーを速く曲がるコツを教えてくれませんか!?」

 

「おぉ、早速出番ですか」

 

順番待ちの子が質問をくれる。さて、どうしようか。教えるって事はつまり言語化しないといけない。残念なことに私は言葉にして説明することが悲しいレベルで苦手だからだ。っていうかそれ番外1話で言ったじゃん。…兎にも角にも説明しよう。

 

「うーんと…コーナーに対して…」

 

「コーナーに対して?」

 

「この脚を…」

 

「この脚を?」

 

「こうして」

 

「?」

 

「こう!」

 

「……」

 

場に沈黙が流れる。私は恥ずかしさでこの身を焼かれそうだ。まさかあの懸念が現実のものになろうとは。いやだってしょうがないじゃん。教えるのだってこれが初めてなんだから。榛名から理論が大事って教わってるし私もそう思ってる。でも教えることの上手さと比例するわけないじゃん。

 

「やぁやぁトレノ君!君が何やら面白そうな事をしてると聞いてついうっかり研究をほっぽり出して来てしまったよ!」

 

「それってうっかりじゃないんですよ」

 

タキオンさん謎の乱入。そのお陰で注目が少しそれた。今のうちにどう説明するか考えよう。

 

「ところでトレノ君、何やら説明で迷っていたようだが…君の場合、併走の方が手っ取り早いんじゃないかい?」

 

「やっぱりそう思います?トレーナーになったからには文字に出来た方が良いと思ってやってみたんですけど」

 

「向き不向きがあるからねぇ。…さぁ、君たちの番が近づいているよ?トレノ君との併走はデザートにとっておきたまえ」

 

はーい!といった感じで皆が授業に戻っていく。いやー助かった。

 

「君も大変だねぇ。もとより人気者だったがトレーナーになってから更に人気が出たんじゃないかい?」

 

「昨日ナナにこの事相談したら『本気か?』って目をされましたよ。それより研究ってアレですか?」

 

走っている子たちを眺めながらタキオンさんと話す。ちょうどタキオンさんやハヤヒデさん、シャカールさんとルドルフさんがそれぞれの進路を決めた頃にあの話が舞い込んできたらしい。

 

「ああ。…公道最速理論のトゥインクルシリーズへの応用。その論文化だが……はっきり言って依頼主が直接やった方が早いと思うんだがねぇ。…トレノ君、引き継ぐつもりはないかい?」

 

「ないです。てか私がやると20年くらい掛かりますよ?」

 

「そんなこと言わないでくれよ。もとはと言えば君の走りの理論化なんだからさ」

 

とは言え、さっきのあのざまじゃリアルに20年掛かりそうだ。にしても、理論派で通っていたあの人たちを揃って困らせるとは…。一体どんな天才が…。

 

「リョウ・タカハシ君…全く、面倒な事を依頼してくれる。有意義な事には変わりないがね」

 

「おぉいタキオン!どこ行きやがった!」

 

「おっと、これ以上いなくなると後が怖そうだ。そういう訳だからまたお邪魔させてもらうよ」

 

タキオンさんが忍ぶように来たであろう道を帰ってい「てめぇどこ行ってやがった!」く。何やら「なぜ分かったんだい!?」速攻でバレてる感じもするが気にしない。…併走の方が手っ取り早いかぁ。私もそう思う。榛名も肝心なところで考えるな感じろのスタンスだったし。

 

「よし、そうするか」

 

大体の方針が固まった。けど、理解してくれるまで担当が付かなくなることを覚悟しておかないといけない。まぁのんびりと行きましょう。焦ってもいいこと無いのは分かってるし、前例あるし。

 

「じゃあ最後にトレノさんと併走したい子はいるか?」

 

教官さんが聞くと全員手を上げた。…昨日の3人も含めて。

 

「という事ですが、トレノさん、選んでやってください」

 

「了解です。じゃあ…」

 

走っていて光るものがあると思った子を5人選ぶ。グランちゃんがむくれてたが、我慢して欲しい。昨日も走ったじゃん。

 

「それじゃあ皆には追いかけてもらおうかな。けど…理解は出来ないかもね」

 

「はい?」

 

「それじゃ行くよ」

 

コインを弾いて落ちたタイミングで走り始める。これから始めることは、榛名が私にやったタイムを揃える走り方。これを担当が付くまで…付いても多分やるかもだけど1日1クラス、全クラスにやっていく。時間は掛かるけど、このテクニックは…必要だと思うから。皆、付いて来てね。私のトレーニングは、もう始まってるよ

 

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