頭文字D プリティーステージ   作:サラダ味

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今度こそ本物の7話です。あんなミスするとは思わんかった。今度からちゃんと確認します。それでは本編どうぞ~


番外編7話

「さて、早速見せて貰おうかな。アイちゃんの事だから何かしら変化を付けてきたんじゃない?」

 

「はい。それで、トレノさんにアドバイスを頂けたらと思って。それでは2000メートル、行ってきます!」

 

スタートから軽快に走り出すアイちゃん。それにしてもフォーム綺麗だなぁ。もう少しくらいぐちゃぐちゃでもデビュー前なら問題無いと思うけど、この段階でこの完成度。噂ではシニア級のウマ娘にも勝ったことがあるみたいだし、周囲の期待が上がるのも納得だ。

場数も十分、ある程度の理論も備えているとなると彼女にトレーナーが必要なのか疑問に思えるくらいだ。

 

「こうかしら!」

 

コーナーの処理が上手くなってる。併走したのは昨日のはずだけど、私の走りから使える所を吸収したのか。しかしそうなると、柵走りを見せてしまったことが吉と出るか凶と出るか。

 

「ハァ!」

 

…凶か。あの素振り、やろうとしていた。やっぱり、私の走りは目に毒だった。柵走りを乱用する走りはこの先良い事ばかりではない。さて、私に説明できるかどうか。言葉を考えている間にアイちゃんが帰ってきた。

 

「どうでしたか?トレノさんの走りを参考に私なりに工夫してみたんですけど」

 

「…アイちゃん、柵走りしようとしたでしょ」

 

「はい。トレノさんだけの唯一無二の武器、モノに出来ればいざという時に役に立つと思って」

 

「それ、あまり狙わない方が良いよ」

 

「えっ…」

 

アイちゃんが豆鉄砲を食らったような顔をする。私の口から出た言葉がそれほど予想外だったって事なのかな。

 

「理想を言えばね、柵走りを使わないで速いコーナリングを実現すること。柵走りは苦し紛れの一手にしかならない」

 

「でも、トレノさんはこの技で皐月賞や他のレースを勝ってきたじゃないですか」

 

「確かにそうだけど…私の記憶があってれば、最後の方は使ってなかったような気がする。理由は簡単、小細工にしかならないから。それにデメリットも多い、説明していくね」

 

ノートを開いてコーナーのイラストをサラーっと描いていく。アイちゃんがそれを覗き込む。

 

「柵走りは文字通り、柵を使うテクニック。手の届く範囲に柵が無ければそもそも使えない。だから必然的にインベタに曲がっていく事になる。傍から見れば最短距離をついているし、何より遠心力に逆らう訳だから他よりコーナーのスピードを稼げる。こう聞けば良い事尽くしだけど、実情そうでもない。…なんでか分かる?」

 

あえて聞いてみることにした。ここでアイちゃんが答えられないとは思わない。多分ここまで言えば私の言いたいことも分かってくれると思う。

 

「内ラチに入るから囲まれていたら抜け出せないって事ですね。それに最初の位置取りで外側にはじき出されたら、そもそも使えない…こういう事ですか?」

 

「その通り、いくらコーナーを速く曲がれても抜け出せなければ意味ないし、使えなければもっと意味ない。だからコーナリング技術を磨いた方が良いって事。運のいいことに、私は周りよりもコーナーをほんの少しだけ速く曲がれたからさ」

 

「成程…今まで表面的な事しか見てませんでした。併走も少人数が基本だったのでうっかりしてました。ありがとうございます!」

 

…私は今感動している。私のアドバイスを真摯に受け止めてくれたアイちゃんにも感動しているけど、ちゃんと説明できた私に感動している。出来るじゃん私。…とと、感動にかまけてないでこっちも言っておかないと。

 

「しかし驚いたよ。直線のキレを落とさずにコーナーを処理出来てる。昨日の今日なのにここまで成長するなんてね。細かい改善点はいくつかあるけど…今はこれと言っていうことは無いかな」

 

「そうですか!…じゃあ、その改善点を教えてくれませんか?勝つために、速くなるために、教えて下さい!」

 

「え!?うーんと…そうだなぁ…」

 

墓穴を掘った。地獄が始まった。気になった所があった程度で、早急に改善しなければいけない悪癖という訳でもない。ふーん程度で考えていたからどう教えようなんて考えてない。…逃げるか。

 

「ゴメン、今は何とも。けどこういうのは長い時間をかけて修正していくものだから私にも考える時間をくれないかな?」

 

「分かりました!これ、私のLANEです。お時間ある時にまた教えてくださいね!それでは、もう一本いってきますね!」

 

「はーい、行ってらっしゃーい」

 

アイちゃんとLANEの交換をして思う。これ担当トレーナーっぽいなって。こうやって個人に教えていると改めてトレーナーになったんだなって実感する。

 

(モノに出来ればいざという時に役に立つと思って)

 

「モノに出来れば…か」

 

柵走り…教えていいものなのか。こういう時、榛名は何ていうのかな。ダメと言うのか、良しと言うのか。ちゃらんぽらんな人だなっていう目で見てたけど、裏で私の事精一杯考えてくれてたんだなって今になればよく分かる。

 

アイちゃんを見ると、先ほどと変わらず、軽快に飛ばしていく。…ふと疑問に思う。なんで彼女に私のテクニックが応用出来たんだろう。私が配達で培ったテクニック…正統派のアイちゃんとまるで違うと思えていたけど実は同じものなのかな。そういえば榛名もクルマの知識を私に応用していた。

 

「走るテクニックは…どこまで行っても同じという事なのかな」

 

怖気ていたけど、少しだけ気持ちが軽くなった気がした。さて、もう少しだけ担当トレーナー気分を味わおうかな。

 

「どうでしたか、トレノさん!」

 

「1本目と変わらず、いい調子だと思うよ。アイちゃん、明日のこの時間って空いてる?」

 

「今の時間なら空いてますけど」

 

「明日は柵の使い方を教えるよ。ちょっと難しいけど、いいかな?」

 

「はい!…けどさっきはあまり狙わない方が良いって」

 

「確かにそう言ったけど、出来ちゃいけないとは言ってないからね。ただし、やるからには、欠伸しながらでも出来るようになる事。それまでは模擬レースとかで使っちゃダメだからね。それじゃ、また明日ね」

 

「分かりました!」

 

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