キーンコーンカーンコーン
チャイムが下校時刻を告げる。最近授業が身に入っている気がしない。
「…ねむ。」
タマモクロスさんにレースを申し込まれて5日たった。だからと言って日常に変化があるわけじゃ無いけど。
「トレちゃーん!帰るよー!」
この通りナナも平常運転でございます。
「ねートレちゃん。」
「………(ボーッ)」
「トレちゃーん?」
「…あ、ごめんナナ。何か言った?」
トレセンに行ってからトレちゃんの天然ボケがかなり酷くなってる。ここまで酷いのは初めてだ。
「トレちゃん、最近ボケが酷いけどどうしたの?」
「そんなおばあちゃんじゃないんだから。別にどうもしてないよ。」
「嘘だぁ~絶対に何かあるよ。」
気になりすぎる。何な原因でこんなにボケているのか。
「…じゃあ言うけどさ。私が配達やってるのはこの間話したよね。あれから配達の帰りに毎日レースしてるっていうか。前に走ってるウマ娘が見えるようになったんだ。」
「ごめん聞いた私が悪かった。そこまで追い込まれてたんだね。時間ある日にお祓い行こうね?」
まさかの心霊系だった。そんな話なら聞かなかった。寝るときに塩置いておかないと。
「そういうのじゃないから。私が言ってるのはイメージが見えるって事。鮮明には見えないけど多分…タマモクロスさんだと思う。」
「じゃあ、トレちゃんってあの日から5日間毎日タマモクロスさんトレースしてるって事?」
「よく分からないけど、多分そうだと思う。」
毎日レースって、ついこの間のトレちゃんからは考えられないような言葉が出てきてビックリしてるけど。
「それで、レースの結果はどうなの?勝ってるの?負けてるの?」
「分からないんだよ、いつも途中でイメージが消えちゃうから。タマモクロスさんの本気も分からないし、私もあの時レースがあったから抑えめで走ったし。」
「そうなんだ。流れで聞いちゃうけど土曜日の模擬レースって行くの?」
「…行かないよ。やる理由が…ないから。」
何とも歯切れの悪い返事が返ってきた。迷っていることが手に取るようにわかる。尻尾だってブンブンいってるし。とは言えかなりデリケートな問題だからそっとしておくのがいいのかもしれない。
「まあそんなに悩まなくてもいいんじゃない?たまには頭の中空っぽにしてみれば?きっとすっきりすると思うよ。」
「そうだね、気が向いたらやってみるよ。っとそろそろ家だ、じゃあまた明日ね。」
「うん、また明日!」
「…ハァ。」
ナナにはああ言ったけど、ここにきてかなり迷っている。思えばタマモクロスさんのイメージが見えるようになってから迷いが強くなった気がする。この気持ちは何だろう。
「相談する人もいないしなぁ。…あれ、この音。」
やかましい位の爆音が近くなってくる。一回聞かされれば嫌でも覚えてしまう。
「ごめんくださーい!…あ、やあトレノちゃん。」
「いらっしゃいませ。木綿と厚揚げですか?」
「あとがんもどきもお願い出来るかな。」
「分かりました、えーっと、450円ですね。」
2日に1回のペースで来てるけど飽きないのかな。私はとっくの昔に飽きたけど。
「…どうしたのトレノちゃん?何か悩んでるみたいだけど。」
「いえ、特には。どうしたんですか急に。」
「だっていかにも悩んでますって感じに耳がしおれてるもん。あと尻尾、かなり動いてるよ。」
言われて尻尾を触ってみるとほんとに動いていた。無意識だった。
「大丈夫ですから。本当に何もありません。」
「…分かった。今は触れないでおくね。じゃあまた来るから。」
「ありがとうございましたー。」
…今思い出したけど渋川さんって一応トレーナーだったな。相談してみればよかったな。…やっぱヤダ。あの人に相談するくらいならスピカのトレーナーに相談したほうがマシだと思う。なぜあの時名刺受け取らなかった私。
「ハァ…ハァ…タイムは。」
「…凄いよタマちゃん、現役時代と比べても遜色ない位だよ。…タマちゃん、ほんとにやるの?」
「当たり前や。あの時の借りを返さなアカンからな。」
「あの時の借り?…それでもここまで仕上げる必要あるかな?相手は仮にも一般ウマ娘だよ?」
沖野トレーナーに見せてもらったレース。確かに衝撃的だったけどそれでもタマちゃんがここまで仕上げる必要が感じられない。
「あのレースの事やろ。トレノの奴、実力の半分も出してないと思うで。本人からしたら軽く流す程度やろうな。だからこそ、仕上げなあかんねん。」
何も言えなかった。タマちゃんがトレノちゃんと何があったかを深く聞くつもりはないけどあれで半分も出ていないことに驚いていた。
「トレノちゃん…何者なの?」
「フ…フ…!」
まただ。今日もイメージが見える。
「フ…シュ…!」
直線だとジリジリと離されていく。だけどカーブでその差が詰まっていく。今日もその繰り返し。
「…まだ、…まだァ…!」
もどかしさからか、ペースを上げる。カーブを2,3個抜ける。少しずつ、差が詰まり始める。今日こそ…あ。
「…まただ。いつも肝心な時に消えちゃう。」
今日こそはと思っていたけどやっぱり消えてしまった。あとに残ったのは追いつけなかったもどかしさだけ。
「ハァ…どうしちゃんたんだろ私。あんなに興味なかったのに。」
あのイメージが見えるようになってから自分でもわかるくらい走りが変わった気がする。今まで何気なく走ってた道でも”こうしたほうが速い”とか”もっと速く曲がれる”とか。この思考を気付けば学校でも繰り返している。
「どうすればいいんだろう…」
「ただいま。終わったよ。」
「ご苦労…。?」
「どうしたのお父さん。顔に何かついてる?」
「別に、なんでもねぇよ。」
ここ最近帰りが少しずつ早くなってきた。トレノの目つきも日を追うごとに良くなってきてる。一週間前とは全然違う。走りだって良くなって来てるだろう。
「だが、まだまだだな。」
タマモクロスさんとの模擬レースが明日に迫ったものの、私の答えはまだ揺らいでいる。こうやって考えているともどかしさが溢れてくる。
「トレちゃ~ん、明日だよぉタマモクロスさんとの模擬レース。流石にお断りの電話くらい入れたほうがいいんじゃないの?」
「…大丈夫だよ、そもそも行かないって言ったんだしさ。」
「でもタマモクロスさんは本気でレースする気だと思うよ。」
「仮にそうだとしても私連絡する方法無いし。タマモクロスさんには悪いけどドタキャンでいいんじゃない?」
若干心が痛むけどもともと無理やり誘って来たのはあっちだ。少しはやり返してやりたい。だけど…本当にこれでいいの?
「…いや、これでいいんだ。」
私がレースする理由は何一つない。それなのにレースするのはやっぱりおかしい。ただ一つ、心残りがあるけど私には関係のないことだ。
「?トレちゃんどうしたの?そんなにうつむいて。それに耳も尻尾もしおれてるし。」
「…え?」
どうにも私は感情が表に出やすいみたいだ。うつむいている自覚も無かった。
「トレちゃん、もしかして具合悪い?」
「大丈夫、大丈夫だから。」
大丈夫なんかじゃないのかもしれない。レースを否定すればするほど心が締め付けられる。気持ちの整理がつかない。どうしたら整理がつ
「…ガッ!」
「絶対大丈夫じゃないね…。」
電柱に頭から突っ込んだ。めっちゃ痛い。ナナからの哀れみの目が痛い。あと周囲の目も痛い。本当にどうしたらいいの?
セリフが出てきませんw
やべぇ全然書きあがらないw読んでくれてる人いるんだから頑張れよ俺。
数字なんか気にしたら負けかなと思ってやっていきまふ。
また次回!