頭文字D プリティーステージ   作:サラダ味

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第十九話 レース当日

「トレノちょっといいか。今日からこれを履いて配達するんだ。」

 

「え、なんで?この靴もまだ使えるからこれでいいよ、もったいないからしまっておいて。」

 

「そのシューズはこいつが駄目になった時の予備にしとけ。いいから履き替えてこい。」

 

「っちぇ…分かったよ。」

 

靴なんてどれも同じでしょ。この靴だってかなり持ってるし馴染んでるから破れるまではこれ使ってたいんだけど。

 

「…あれ、履きやすい。凄いフィット感がある。履いたばかりなのに。…でもなんか少し違和感があるかも。」

 

「走り出しさえすれば気にならなくなるはずだ。ほら、行ってこい。」

 

「言われなくても。」

 

 

 

分からない。なんで急に靴を変えるように言って来たのか。確かに走りやすいことは走りやすい。だけど劇的に変わったかと言われればそうでもない。

 

「…あ、降ってきた。」

 

この様子だとすぐに本降りになりそうだ。新聞を濡らすわけにはいかないのでなるはやで終わらせよう。天気予報め、降り出すの早いじゃん。配達中は降らない予報だったからカッパ持ってきて無いんだけど。

 

「これで良し、早く帰ろ。風邪ひいちゃう。」

 

 

 

 

 

「うわ。」

 

配達終わってお風呂入って寝て起きたら絵に描いたような土砂降りだった。

 

「あっそうだ、電車!」

 

【大雨のため運転を見合わせています。ご迷惑をおかけします。】

 

これほど雨が恨めしいことも無い。東京の天気予報も一応見たけど晴れみたい。…やべぇ。

 

「トレノー!起きてるかー!ちょっといいかー!」

 

お父さんに呼ばれて一階に行く。どうせ店番頼んだとかその辺りかな。

 

「車検行ってくるから少しの間店番頼んだぞ。」

 

「はーい、いってらっしゃーい。」

 

お父さんを適当に見送ろうとしたとき、店先に一台止まった。

 

「俺が行く。はい、いらっしゃい…って榛名か、ずいぶん大きくなったな。」

 

「豊田さんもお久しぶりです。…あ、トレノちゃんおはよう。」

 

「あれ、渋川さん、東京に帰ったんじゃないんですか?」

 

…東京?…いた!東京に行く予定ある人ここにいた!急いで準備しないと!

 

 

 

「ちょっと失礼します!」

 

「ふぇ!?行っちゃった…。どうしたんだろ急に。」

 

「なんだ、お前ら知り合いなのか。」

 

「はい、トレセンでちょっと…いろいろありましてぇ」

 

そういえば榛名って中央でトレーナーやってるようなこと聞いたことあったな。

 

「ふーん。まあいいや。それで何にするんだ?」

 

「あ、木綿5個と厚揚げも5個お願いします。」

 

「あいよ。きょう東京帰るんだな。2つサービスしてやるよ。」

 

「いいんですか?ありがとうございます。「渋川さん!」ふぉ!?どうしたのトレノちゃん!?」

 

トレノのほうを見ると配達の格好をしている。ほぉ、やる気だな。

 

「トレセン、行くんですよね!?私も乗せてください!」

 

 

 

「ちょっといきなり言われても…まさかホントにレースする気なの!?」

 

「本気です。そんな凄いなら、見てみたいんですよ!」

 

昨日沖野さんに電話した時の反応が少し濁したような言い方だったような気がするけど、こういう事か。いくらなんでも無謀すぎる。

 

「止めたほうがいいよ!相手が悪いよ!私が行っても説得力無いけど…無理してレースすることも無いよ!」

 

「へー、じゃあトレセン学園で被った被害の事タレこんじゃおうかな~。」

 

え?嘘でしょ?まさかとは思うけどそんなこと…するわこの子。いかにも「言うぞ」って目をしている。

 

「も~分かったよぉ!ほら、車乗って!結構飛ばすよ!」

 

「ありがとうございます!じゃあお父さん、行ってくるね!」

 

そう言うとトレノちゃんは助手席に乗り込んだ。私も豆腐を後部座席に乗せてエンジンをかける。すると豊田さんが傘をさして車に寄ってきた。

 

「あまり遅くなりすぎるなよ。…それと榛名。」

 

「何ですか?」

 

「沖野と東条によろしくな。」

 

「はい?それってどういう…。」

 

「何でもねえよ。そんじゃ、頼んだぞ。」

 

豊田さんはどういう意図で今のセリフを言ったんだろう。そもそも何で沖野さんと東条さんの名前を知ってるんだろう。そんな疑問は隅に置いて私はトレセン学園へ向かった。

 

 

 

 

 

今学園にはこんな噂が広まっています。『タマモクロスさんがレースに出走するのではないか』というものなのですが。なぜそのような噂が流れたのか。タマモクロスさんがトレーニングに励んでいらっしゃる姿を見かける日が多くなったからです。

 

「今日もいらっしゃいますね…。」

 

アタシも連日こうして推しのトレーニングを見させていただいているのですが、確かにタマモクロスさんのトレーニングには鬼気迫るものがありました。でも今日はウォームアップのみで留めているようです。

 

「まるで誰かを待っているようですね…。」

 

 

 

「ふう…もうこんな時間か。コミちゃん、いったん上がるわ。」

 

「そうだね。…タマちゃん、ここまでやってもし来なかったら?」

 

「大丈夫やって、トレノは来る。言うてもウチの勘やけどな。」

 

といっても、ウチもホンマに来るんかは分からん。なんせあの言い方やしな。せやけど来てくれるはずや。…前から思っとったけどなんでこないギャラリーがおるんやろ。日に日に増えていっとる気もするし。

 

「…アカン、緊張してきたかもしれん。」

 

こんな気持ちになったんはオグリ以来や。楽しみやでぇ。

 

「…そういえば、時間指定すんの忘れとったなぁ。うーん。まあ大丈夫やろ。」

 

 

 

 

 

高速道路を使い東京に帰っている横でトレノちゃんは特に何かするでも無く試合開始を待つボクサーのように静かにしている。

 

「トレノちゃん、お昼の時間だし次のサービスエリアでご飯にしない?いろいろ言っておきたいこともあるし。」

 

「そうですね。所で言っておきたいことって何です?」

 

「タマモクロスちゃんのレースの特徴とか仕掛けるポイントとか。後は…まあこれはいっか。」

 

豊田さんの発言も気になるには気になるけど今はトレノちゃんが勝てる可能性を少しでも増やしておくほうが先決だと思う。

 

 

 

昼食も食べ終わって休憩がてらトレノちゃんにタマモクロスちゃんのレース展開や脚質について説明していく。

 

「タマモクロスちゃんはレース序盤に後方につけて最終コーナーを抜けてからの末脚が特徴的だね。と言っても今回はトレノちゃんとの一対一だから後方とかはあまり関係ないか。」

 

「その…”末脚”って何ですか?」

 

「末脚って言うのはまあスパートでの加速がいいって事かな。末脚の切れるウマ娘は、後方からでも仕掛けていけるって事になるんだ。」

 

「そうなんですね。それで、私の走りはどんな感じなんですか。渋川さんはどんな印象を受けたんですか?」

 

「トレノちゃんの走り!?…うーんそうだなぁ。」

 

少し考える。トレノちゃんの走りは一度しか見ていない。だけどその一回が鮮明に記憶されている。頭の中で何度も繰り返し再生する。

 

「はっきり言えば、トレノちゃんは直線の伸びがいまいちって感じかな。末脚の加速はかなりのものだけどそれでも及ばない。スタートの加速でもタマモクロスちゃんに一歩…いや二歩遅れるかも知れない。」

 

 

 

「…そうですか。」

 

なんとなく分かっていた。タマモクロスさんに直線では手も足も出ないかもしれないと。

 

「だけど、それを凌いで余りあるものがトレノちゃんにはある。」

 

「何ですか。その余りあるものって。」

 

「それはコーナリングスピードだよ。はっきり言って常識外れってくらい。もしコーナーの立ち上がりがタマモクロスちゃんよりも速ければ、ストレートで並ぶことが出来れば…。」

 

渋川さんが少し考えてから口を開く。

 

「勝てるかもしれない。タマモクロスちゃんに。」

 

成程、こうなってくると”アレ”を使うことになるかもしれない。でもなぁ、ガードレールより高い柵でやるとなると勝手が違うと思うし手を痛めそうだなぁ、まぁその時はその時だ。

 

「ありがとうございます。勝てるかどうかは分かりませんけどやるだけやってみます。」

 

「ホントはかなり不本意なんだけど…頑張ってね。くれぐれも怪我だけはしないでね。…まぁ、本格的なレースは初めてなんだし勝ち負けは気にせずに楽しんでくればいいと思うよ。」

 

「そうですね。少し気が楽になりました。さて、そろそろ行きましょうか。」

 

「そうだね。それじゃ、しゅっぱーつ!」

 

トレセン学園まではスマホで見るとあと一時間ほどかかる予定になっている。…時間指定されてなかったから大丈夫だよね?遅刻とか言われないように祈っておこう。

 




何かすげぇ期間開いた気がする。まあいいや。
まだ書くことが無いのでスぺゲスさんを呼んでおります。かもーん!

「はーい、ナナでーす!」

「この段階だとトレノがトレセンに行ったこと知りませんよね?どうお考えですか?」

「心配しかないですよ!言い方悪いですけど勝てる気しないですよ。」

「作者知ってる。でも教えない。」

「教えてくださいよ~。」

また次回!
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