「午後一時半…まだ待つ気みたいだな。」
午前九時ころからタマモクロスを見ているが、昼食以外でトラックを離れるそぶりを見せない。だがトレノ君が来るのは絶望的だろう。渋川がトレノ君と会ったなら彼女は群馬に住んでいるはずだ。その群馬は大雨で電車が止まっている有様だ。
「仕方ない、伝えてやるか。あのままだと夜になっても待ちそうだしな。」
「よお、小宮山トレーナー。」
「お、スピカのトレーナーやないか。」
「沖野トレーナー。どうしたんですか?」
「トレノ君の事だがな…俺の推測があってればまず来れないだろう。」
タマモクロスと小宮山トレーナーに事情を説明する。まあ多少の嘘を交えてだが、諦めさせるにはこれが手っ取り早い。
「諸事情で帰省してる渋川が偶然にもトレノ君に会えたみたいなんだ。それで彼女はこう言ったそうだ。【レースに出る気はない】って」
「…そうなんか。」
「仮に出る意思があったとしても大雨で電車は止まってるからな。…レース、諦めたほうがいいんじゃないか?」
少しばかり心が痛んできたがそれが両者のためだろう。小宮山トレーナーも納得してくれているようだ。
「そうですか。ありがとうございます。伝えてくれて。」
「いや、俺は大したことは…電話?出てもいいかな?」
「どうぞ。」
一応許可をもらってスマホを確認する。相手は…スぺ?
「もしもし、どうかしたかスぺ。」
「トレーナーさん!トレノさんが来ました!」
「………はぁ!?今なんて言った?トレノ君が来た!?どうやって!?」
耳を疑った。トレノ君が来たこともそうだが何より電車も止まっているこの状況でどうやって来たんだ?親御さんに送って来てもらったのか?
「それが、{パパンパン!}ヒゥッ!物凄い音の車から降りてきて…多分トラックのほうに走っていきました!」
あの音、渋川の車から出る音だが…あいつ攫って来たのか?
「分かった。トレノ君がこっちに着いたらこっちで対処しておく。そっちはどうなってる?」
「それが、トレノさんがトラックのほうに向かってると分かったウマ娘たちが皆さんトラックのほうへ向かってる事態なんです。」
つまりトレノ君が大軍を引き連れてくるってことか?笑い話にもならないかもしれない。
「冗談だろ…。もう俺たちじゃどうにもならなさそうだな。おハナさんとこにも協力を頼んでみる。お前もメンバー集めてこっちに来てくれ。」
「分かりました!それでは。」
電話が切れかことを確認したらおハナさんの電話をかけるとすぐに繋がった。
「沖野ね、状況はだいたい掴めてるわ。トレノスプリンターが来たのよね。ちょうど居合わせてたルドルフから連絡が来たの。」
「なら話が早い。リギルのメンバーを集めてトラックに来てくれないか?」
「すでにルドルフが手配済みよ。何でもかなりのウマ娘が興味津々で後を追っているみたいだから。…これから何が始まるの?」
そういえばおハナさんにも言ってなかったなこの話。
「第三次大戦…とまではいかないが、タマモクロスとトレノ君がレースするんだと。」
「ほぼそれじゃないの…。レースはもう止められないわね。私たちはその後を治めましょうか。」
「そうする予定だ。レースが終わったら直ぐに帰ってもらうようにトレノ君に行っておく。周りが観客程度でいてくれれば俺たちも楽なんだが。」
「そうであることを祈るわ。私もあとから行くわ。それじゃ。」
さて、穏便に収まってくれよ。前回だってかなり満腹だったんだ。その上をいかれるともうどうしようもないからな。
「トレノ、来たんやな。」
「…そうだな。まあ、なんだ。良かったな。」
「ぞくぞくしてきたでぇ。若干ナーバスになりながら待っとった甲斐があったで。」
「…フゥ…フゥ…また増えた?」
中庭?を通りトラックへ向かう。チラチラと後ろを見ると私の後を追ってきているウマ娘が増えてきている気がする。振り切ろうとするとレースで本気を出せなくなりそうだからペースは変えない。
「フゥ…フゥ…アレ?」
さっきもこの光景を見た気がする。気のせいだよね。とにかくトラックへ急がないと。
「ハァ…ハァ…おろ?」
確信しました。またやらかしました。私が立ち止まったのを見て追ってきていたウマ娘たちも次々と足を止める。…十何人いたのか。すると三人ほどがその集団から出てきた。
「ねえねえ、見ない顔だね!もしかして転入生かな!?」
「いや、違うんですけど…」
「…チケット、いきなり走るなって…!」
「そうだぞ、それに彼女も少しばかり混乱しているようだ。それで、君はどういった用件でトレセンに来たのかな。見たところかなり急用みたいだが。」
髪が腰ほどまであるウマ娘に聞かれた。かなりの癖毛だなぁ…でかいなぁ。
「誰の頭がでかいって!?」
!?
「あ、いやすまない。誰かに何か言われた気がしてな。…言っておくが、私の頭は通常サイズだ。」
「あ、…はい。」
ただでかいと思っただけなんだけどここまで正確に読まれるとは。あとその頭は通常サイズではないと思う。
「っと済まない。本題からそれてしまったな。何か急用がありそうだが。」
「そんなんです。トラックの場所まで道案内お願いできますか?道に迷ってしまって。」
「トラックだね!じゃあアタシについてきて!うおおおお!全力だぁぁぁぁぁぁ!」
ちょっ!?そんないきなり走られても追い付かない。というより体力温存したかったけど。仕方ない!
「待った。アイツにはついて行かなくていいから。そんなに走られたらアタシが持たない。てかめんどくさい。」
「そうだな。チケットは構わず行ってしまったが、まあ仕方ないな。ついてきてくれ。案内しよう。」
「到着だ。ここがトラックだ。」
「ありがとうございます。前に一度来たんですけどねぇ。入り組んでますねここ。」
「あー!やっとキター!置いて行っちゃったかと思ったよー!」
さっきからそうだけどこの人、かなりうるさい。耳がキンキンする。いや悪気は無いんだろうけど。ナナの三倍はうるさい。
「うるさ…。あんまり騒ぐなっての。」
「よぉ来てくれたで。待っとったでトレノ。」
「一週間ぶりですね。タマモクロスさん。」
一目見ただけで分かる。この前とは明らかに違う。強いオーラが漂っているように見える。
「まあ来たばっかや。少し休んで、ウォーミングアップしたら始めよか。レースの説明はその後でするわ。」
「分かりました。」
タマモクロス先輩とレース?突然現れたウマ娘…トレノと呼ばれていたか。十分ほどの休憩をとった後に今はウォーミングアップをしている。
「タイシン!ハヤヒデ!どんなレースになるのかなぁ!楽しみだね!」
「だからうるさいって。だけどアイツ、タマモクロス先輩と知り合いだったんだ。」
…実に興味深い。正体不明のウマ娘、どれほどのものか見せてもらおうか。
「ふ…ふ…。」
ウォーミングアップもこれくらいでいいかな。と言ってもストレッチしてジョギングしただけだけど。
「タマモクロスさん。そろそろ始めますか?」
それにしてもかなり観客?ギャラリー?が増えている。元々アウェイだったけど更にその感じが強くなったなぁ。
「もうええんか?ほな始めよか。距離はこの前より少し長くなって2400mでどや?スタートは直線の…あの4って書いたる看板の辺りやな。ゴールはあそこや。人がおるやろ。」
見ると手を振っている人がいる。なるほどあそこか。…よく見たらスピカのトレーナーだ。
「ほな、早速始めよか。スタートの合図はコミちゃんに任せるで。」
「分かった。初めまして。トレノちゃん。まあよろしくね。…それじゃあ位置について!」
その掛け声で気を引き締める。走り出す態勢を整えてスタートの合図を待つ。
「用意…スタートッ!」
こうなったらね、募集しようかなと。何をだよって?
ここに書くことに決まってるじゃあないですか。
まあ今回も書くこと無いんでね、スぺゲスさん呼んでます。
「ビワハヤヒデだ、よろしく頼む。」
急に呼んじゃってすみませんねぇ。出演してみていかがです?
「とは言われてもだな…今回は所謂チョイ役だろう?感想と言われてもな。」
ですよねぇ。この展開だったらチケゾーが食いついてきそうだなって思ってだったらついでに出しちゃえって勢いで出しただけですもん。
「君今何と言ったかな?」
ヤバい消される。またじか