トレノさんの情報を集める…学園生じゃないし、慎重にと言われたのでかなり難しいと思いましたが思いのほか順調に調査が進みそう。
タマモクロスさんとのレースから三日が経ってもその話題が耳をかすめることが多かった。それもそうだ。何せ勝ってしまったんだから。
曰く、期待の超新星。曰く、天は二物を与えないと言うけど、あれは嘘だ。曰く、「次はターボがやる!そして勝ぁつ!」など、色々なものがあった。
「それでもなぁ、とても抽象的なものだし、大体がオグリちゃんやタマモクロスさんとかに当てはまるし。」
順調に進みそうってさっきは思ったけど集めてみた感じ情報って言えるようなものじゃない。せめてレースを見ていればなぁ。こんなに悩むことは無いんだけどなぁ。
どこかにいないかなぁ。レースの一挙手一投足をまじまじと見ていて、それをわかりやすく解説出来るような人。
「タイシーン!ハヤヒデー!凄かったよねあのレース!内側からバビューンって行ってさ!」
「それ一昨日も昨日も何ならさっき聞いたし。いい加減聞き飽きた。」
「まあそう言うな、見たものに強烈な印象を与えていったんだからな。それに、熱が冷めてないのはタイシンも同じだろう?」
「それはそうだけど…だからって話題引っ張りすぎ。ダービーの時くらいうるさい。」
あれはBNWの皆さん?それに今の会話…ちょっと聞いてみようかな。
「ちょっといいですか?皆さんってこの前のレースを見たんですか?」
「あっベルノさんだ!あのレースってタマモクロスさんとトレノのレースですよね!見ましたよ!凄かったですよ!」
「どんな感じでしたか?レース運びとか。」
「まず、タマモクロスさんがグーンと離してコーナーでトレノがギュイーンっ行ったんですよ!」
なるほど、分かりません。擬音だけで説明されても分かるものも分からない。
「チケット、ベルノさんが混乱している。説明は私に任せてもらおう。…では最初から説明しますね。」
「なるほど、それで、結果の方はどうだったんですか。」
「およそ1バ身差でトレノ君が勝ちました。」
ビワハヤヒデさんからレースの顛末を聞くことが出来た。いくら現役の時と比べて少しばかり衰えたとはいえそれでも互角以上に張り合うとは。これはオグリちゃんでも苦戦は避けられないかもしれない。
「それと、トレノ君はコーナーで面白いことをするんですよ。」
「面白い事?」
「彼女は、手を柵にかけて私たちの常識を超えた速さでコーナーを曲がるんですよ。」
「柵に手を…?」
全開で走っている、それに遠心力が掛かってる状態でそんなことをすれば良くて怪我、悪ければバランスを崩して転倒、そのまま現役を引退することになってしまう。
「そんな危険なことをって思ったんでしょう?私も思いましたよ。だがそれがレースのターニングポイントでした。」
「そういえば、先ほどタマモクロス先輩をインから抜いて行ったと言いましたよね。まさか。」
「そのまさかです。彼女はそれを使って抜いて行ったんです。そこからはさっき話した通りです。あの後の様子を見てもケガをしていた様子は無かったです。」
となると、普段からそのようなトレーニングをしているってこと?どんなトレーナーが付いたらそんなトレーニングが認められるのだろう?そう思っているとタイシンさんが発言する
「それにあの一回だけで分かれっていうのもあれだけど脚質もよく分からない。追込かと思えばコーナーで急に速くなるし。」
この三人だけでかなりの情報が集まったと思う。この情報をまとめて土曜日の対策としよう。
「なるほど、ありがとうございます。それじゃあ失礼しますね。」
「なあ、チケット、タイシン。どう思う?」
「どうって、今週か来週あたり絶対何かあるじゃん。ベルノさんが情報集めるなんて。」
「絶対またトレノが来るんだよ!オグリさんとレースしに!」
「まだ憶測の域を出ていないぞチケット。だが、その線が濃厚だろうな。本当なら私も手合わせ願いたいが。」
あれほどの刺激を与えてくれたのだ。きっとレースをすればそれよりも強い刺激に、ひいては私の勝利の方程式の完成に一役買ってくれそうだ。
「…それずるくない?やりたいのはアンタだけじゃないけど?」
「アタシもアタシも!トレノとレースしてみたい!絶対負けないから!」
「フッ私とて負けるつもりはないさ。」
「暇だなー。」
今日も今日で学校帰って店番をしている。この頃お父さんは私が帰ってくると用事があると言って出かけてしまう。全く、貧乏なんだからもう少しまじめに働いてもらいたい。
ピロン
「ん?何か来た。」
店番中にスマホを見るのはいかがなものかとも思ったけどしょっちゅういなくなるお父さんが悪い。そう言い聞かせながらスマホを開く。
「渋川さんからだ。…うわ、何この大量のデータ。」
そこにかはこう添えられていた。『おまたせ。大まかだけどオグリちゃんのデータまとめたから送るね。何か分からないことがあったらLANEしてね。』
渋川さんは大まかという単語を辞書で引いてもらいたい。えーっと?オグリちゃんの特徴?とりあえず開いてみよう。
「うわ。」
ファイルには特徴をまとめたもの?でいいのかな?がびっしりと書かれていた。これだけで国語の教科書が埋まるのではないかと思うくらいの。
「でも読まないと、ふむふむ…」
「っといった感じです。」
「なるほどな、実にアイツらしい育て方だ。アイツは何というか速さに関してはとことん危ねぇ奴だったからな。」
「その、トレノさんのトレーナーさんってどんな方だったんですか?」
柵に手を掛けることを許可するトレーナーがどんな人なのかただ純粋に疑問に思った。
「アイツか?アイツは自分の担当の頭に紙コップ乗っけるような奴だ。」
「はい?どういうことですか?紙コップを乗せるって。」
「ああ、体感を鍛えるためっつってな。紙コップつけた帽子をかぶせて走らせてたんだ。」
そんなことが簡単にできるとは思えない。そもそも体感を鍛えようと思ってよし紙コップだなんて思いつく方がおかしい。
「そんで零したらその分坂路追加だ。」
「へえぇ~~…。」
苦笑いしか出なかった。そんな人の担当になったウマ娘が不憫だとも思えてしまった。
「まあそういう事だ。調査助かった。」
「そういえば、オグリちゃんはどうですか?」
「アイツなら土曜日が楽しみだと言ってトレーニングしてる。今頃はタマモクロスと遊んでるんじゃねえか?」
「…ハハッ、やっぱりタマは速いな。」
「オグリもな…。アイツとのレースがまだウチを燃え上がらせてくれとるんやろな。」
「アイツってトレノか?君が負けたんだ。きっと相当速いんだろう?」
「正直、直線はそうでも無いんやけど、コーナーに入った瞬間にエグイ加速で後ろに張り付いてくんねん。まるで背後霊やな。…やるんやろ?トレノと。」
オグリが驚いたような顔を見せる。併せの申し出があったからまさかと思うたんやが、この反応はアタリやな。
「タマ、よく分かったな。そうなんだ。トレノとレースした君ならなんとなくイメージがわくような気がしたんだ。」
「ホーン。ほんなら、ウチはあえて何も言わんわ。さ、もう一本いこか。」
「ああ、よろしく頼む。」
「おう、帰ったぞってお前ちゃんと店番やってたのか?」
「やってたよ。居間の方でいじってたし、お客さんが来たときはしっかり対応したし。」
「まあいいや、で?何見てたんだ?」
「渋川さんが送って来てくれたオグリキャップさんの特徴とその対策。意外としっかりまとめられててさ。」
「どれ、見せてみろ。」
トレノの携帯を覗き込む。そこにはオグリキャップに対する脚質、レースの特徴が事細かに書かれていた。そればかりでなくトレノがどのように走れば勝率を上げられるかも書かれていた。
榛名のトレーナーとしての仕事ぶりにほんの少し感心しながらもう少し覗く。
「それで?距離はどうするんだ?」
「距離?」
「ああ、最長で3600、短くて1000メートルだ。どうするんだ?」
俺がそう聞くとトレノが少し悩んで口を開く。
「有馬記念と同じ距離がいいかな。何メートルなの?」
「2500メートルか。まあ、ギリギリ紙一重ってところだな。」
「…そうなのかな。私は勝てるかどうかも分からないけど。でも、負けるつもりもない。」
「…まあ土曜日頑張ってこいや。」
俺から何かしらの対策を話してもよかったがこうやってまとまってるからな。様子見してやるかな。まあ当日になって少し心配が残ってたら一つくらい授けてやるかな。
どもども作者です。
ハヤヒデさんの圧がね、恐ろしかったのでね、しばらくおちょくるのは控えようと思いましたね。多分次は瞬獄殺打ってきそうなんで。
今回は少し進展の無い回でしたね。展開を細々としすぎても引き伸ばし感が出るんですよねぇ。これ要るかなあれ要るかなって取捨選択で残ったのが投稿したやつなんで。
長々と話すのは苦手なのでこれにて。また次回!