トレセンに向かう道中、お父さんに言われたことがふと気になった。外とは一体どういうことなのか。
「渋川さん、さっきお父さんが言ったことの意味って分かります?」
「ちょっと私じゃわからないな。あれだけだとね。でも何かのアドバイスかも知れないね。」
「アドバイス…普段アドバイスしないお父さんが?槍でも降るのかな。」
「槍が降るかはともかくとして、どう?オグリちゃん対策は万全?」
オグリキャップさん対策。取り敢えずそれなりに資料を読み込んでそれなりに作戦を立てたけど…。
「とりあえずは、前回タマモクロスさんとやったときみたいに後ろにつけて、コーナーで出来る限り詰められればって思うんですけど…簡単にはいかないですよね。」
「だろうね。向こうだってそれなりに対策してると思うし…。」
「私の対策ですか…なんだかむず痒いような気がします。」
「この前のレースだって沢山のトレーナー、ウマ娘が見に来てたし?トレノちゃん、学園じゃちょっとした有名人なんじゃないかな?分からないけど。」
「何で疑問形なんですか?トレセンで働いてるんですよね?」
学園に努めているなら誰かしらの評価が勝手に耳に入ってきそうなものだけど。
「…私あの件で謹慎中なんですよね…ハハッ。」
虚ろな目でそう答える…それもそうか、30分も誰かしらを追いかけていれば謹慎モノだよね。被害者私だけど。
「そうなんですね。大いに反省してください。…あれ?大丈夫なんですか?こんなことしてて、ありがたいですけど。」
「それは大丈夫、事情話したら許可してもらえたから。…電話越しに殺意が伝わって来たけど。」
「まあ謹慎中に県外に行かせてくださいなんて言われたらそうなりますよね。」
「だよね、多分私でも同じ反応すると思う。っとそろそろお昼だね。次のサービスエリアでご飯にしよう。」
「ですね。ナナ、起きてー。」
後ろでよだれたらしながら寝てるナナを起こす。人のこと言えないけどこの車に乗っててよくこんなに爆睡できるなぁ。
「おはよーもう着いたの?」
そう言いながら耳栓とアイマスクを外す。
「これからお昼だよ。もうすぐ着くから起こしたの。」
「そうなんだ、ありがとトレちゃん。」
そんなことを言っていると渋川さんがサービスエリアに入るために車を減速させる。
パンパン!!!
「あ、ごめん。」
「ピイイィィィ!」
今日はトレノとの模擬レース、午前のうちに最終調整を終わらせ、今はお昼ご飯を食べている。
「何やオグリ、今日はいつにも増してえらい食うなぁ。」
「なんだかお腹がすいてしまってな。レース前だからだろうか。」
「関係あるような関係あれへんような…ともかく、気合は十分って感じやな。」
「ああ、勝って見せるさ!」
そう高々に宣言した。タマは笑顔を見せた後、すぐに真剣な表情になった。
「気い付けや、アイツは振り切ろう思うても振り切れる相手やない。前にも言うたがそれこそ背後霊や。」
「大丈夫だ、ろっぺいが対策を打ってくれた。」
「ほう、どないな策なんや?」
「”後ろ”を気にするな。それが対策だ。」
それを聞いたタマは少し考え、納得したような感じだ。
「なるほどな、一理あるかもな。後ろ気にせんと、前だけ見て走ってれば自分の走りを維持できるわな。せやけど、出来るんか?オグリ。」
「正直微妙だな。レースをしている時は常に周りを気にしながら走っているからな。」
「せや、前を気にするより、後ろを気にする方が何倍も神経使わなあかんからな。完璧に気にせんのは無理やろなぁ。」
「だが、それが対策というなら、やってみようと思う。」
「…ま、これはオグリのレースやからな。ウチが口出すことやないな。アンタらしく走ったらええんやないか?」
「ありがとう、タマ。」
タマからの後押しもあるんだ。尚更負けられないな。
「ようやく着いた…二回目だとなんか遠く感じたなぁ。」
トレセンの駐車場に到着して、背伸びする。
「知ってる道だとなんでかそう感じちゃうよね。さ、行こうか。」
「はい、ナナ~早くいくよー。」
「うぅ~~まだ耳に残ってるよぉ。」
さっき不意に耳栓を外してしまったナナは車の爆音の餌食になってそれからグロッキーになってしまった。
「ごめんねナナちゃん。少し休んでく?」
「いや、せめてトラックまでは行きます。トレちゃんと渋川さんは先行っててください。…耳痛いよぉ。」
「じゃあ肩貸すよ。トレノちゃん、私たちは後から行くから先に行ってて。」
「分かりました。それではお先に。ナナ、待ってるからね。」
そう言って私は二人を置いて先にトレセンのトラックに向かった。…大丈夫、3回目なんだから流石にもうならないはず。
「ねえ、あの子確か…。」「タマモクロス先輩に勝った子だよね!」「ってことは今日誰かとレースするのかな?」
まだ私のこと覚えてる人いたんだ。自分で言うのもなんだけど結構地味なんだけどな。
「間違いないよ!トレノが来るんだよ!」
「それ何回目?いい加減聞き飽きたんだけど?」
「五回を超えたあたりから数えるのを辞めてしまったからな。…あれは!」
「あれって何?ハヤヒデ?っああぁーー!トレノだぁー!」
あの人たちは…確かトラックまで案内してくれたウマ娘だ。約一名凄い勢いで突っ込んできて、直前で止まる。良く止まれたな。
「久しぶりー!ここに来たってことはレースなんだよね!今日は誰と?オグリさんと!?」
「そうですけど、少しボリューム落としてもらっていいですか?結構耳にキてます…。」
「チケットはそういう奴だ。悪気があるわけでは無いから我慢してやってくれ。久しぶりだな。」
後ろから見覚えのある癖毛のウマ娘が出てきた。
「久しぶりって言っても一週間前ですけどね、えーっとぉ。」
「ああ、そういえば自己紹介がまだだったな。ビワハヤヒデだ、よろしくな。」
「ナリタタイシン、チビだからって舐めたら蹴っ飛ばす。」
「ウイニングチケット!チケゾーでいいよ!」
「あ、えと、トレノスプリンターです。よろしくです。」
軽く自己紹介をする。そういえば、ナナがBNWはすごいって聞いたことがある。成程、このウマ娘達の頭文字をとって"BNW"か。考えた人頭いいな。
「随分人気もんやなトレノ。」
「タマモクロスさん、一週間ぶりです。」
「オグリとレースするんやろ?多分今はトラックで待っとるんちゃうか?」
トレックで待っているなら少し急いだほうがいいかな?ほんの少し名残惜しいけど後で色々お話ししよう。
「分かりました。頑張ってきます、それでは。」
「ちょい待てや。意気込みだけでも今聞かせてくれへんか?」
「そうですね…。」
意気込みか、どうかな。正直自分でも分かるくらい敗色濃厚って感じだけど。ここだけでも、強気に行こう。
「勝ちます。それだけです。」
「ハハハ!シンプルやな!ええやん、頑張ってきいや!」
「ありがとうございます。頑張ってきます。」
そう言って、トラックに向かって走っていく。ああいった手前、せめてでも接戦に持ち込んで見せる。
「さて、ウチらもいこーや。」
「そうですね、今回も熱いレースになりそうです。」
「うおっーー!なんだかアタシも燃えてきたー!」
「言っとくけど、乱入しようなんて言わないでよ。…やるならオグリさんのレースが終わってからだから。」
「おおおーー!タイシンがやる気だ!」
私やチケットのみならず、タイシンにも火をつけたんだ。ブライアンが黙っているわけがない。事実、あの後トレノ君について色々と聞かれたからな。
「ううぅ~耳がぁ、耳がぁぁ~~。」
「そんなム〇カ大佐みたいにならないで。ほら、もうすぐだから。」
「まだ正門じゃないですかぁ。まだまだ掛かりますよね?」
「ふぐぅ。気を紛らわせろうとしたんだけど、そんな鋭いことを言われるとは。」
「なんやかんやでだいぶ良くなったので。…あれは、タマモクロスさんだ!」
ナナちゃんがそういうので前を向くと確かにタマモクロスちゃんと、ハヤヒデちゃんとタイシンちゃんがいる。…あれ?ナナちゃんどこに行ったの?
「タマモクロスさん、お久しぶりです!ハヤヒデさん、タイシンさん、ファンです!握手してください!」
いた。さっきまでの具合の悪そうなナナちゃんはどこへ行ったのか。今ではどこまでも走って行ってしまいそうなくらい元気になっている。
「ナナちゃん、早くしないとレース始まっちゃうかもだよ?」
「ハッ!そうでした。今はトレちゃんのレースに集中しなきゃ。」
「心配せんでもええよ。トレノならさっき向かったばかりや。歩いても間に合うやろ。」
「そうですね、まあチケットは走って行ってしまったが、私たちはゆっくり行くとしましょう。」
どもども作者です。
早いもか遅いのかはよく分かりませんが本格的なレース三戦目が間近に迫って来ています。作者としても、なんとか読み応えのあるレース描写にしたいんですけど難しいですね。
おっと、結構話題が固いですな。逸らしていって質問募集のコーナーを作ったので良ければ質問していってください。出来る範囲で答えていきたいと思っています。
また次回!