頭文字D プリティーステージ   作:サラダ味

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第三十話 攻略、その行方

「…ハァ…クッ…。」

 

このコースレイアウトだと最初からコーナーがある。だから最初から私なりにプレッシャーをかけてみる。だけど反応が薄い。いや、無いと言ってもいいかも。

 

イン側も隙間が無い。これじゃあ飛び込めないし、何より柵走りも使えない。特に何もできずに最初のコーナーを終える。

 

やっぱりというか、段々と距離が開いていく。これに関してはあまり気にならない。前のタマモクロスさんの時もそうだったから。

 

そろそろ次のコーナーに入る。ここで攻略を見つけられなければ私は負ける。何としても見つけるんだ!

 

 

 

「トレノちゃん、また成長してる。何か教えた訳じゃ無いのに。」

 

ライン取り、コーナーの侵入スピード、どれを取っても一週間で成長できる範囲じゃない。

 

「ウチと走った時よりも更に速なっとるなぁ。あれでトレーナーがいないってホンマかいな。」

 

「だが攻め手を欠いているように見える。インをあれほど寄せられては柵も使えないな。」

 

「どんどん差が開いてくよ!?トレノ負けちゃうの!?」

 

「まだ序盤だから騒ぐなって…。でもこのままだと…。」

 

負ける。口には出さなかったけど多分みんながそう思った。

 

 

 

「だが、ここまではある程度想像できた展開だ。」

 

「ああ、あのコーナリングの技術があれば身体能力的に格上のオグリキャップにある程度いい勝負は出来る。」

 

足りなかったデータが次々と埋まっていく。ファイン以来だろな。これほど有意義なデータは。

 

「シャカール君、この状況どう攻略する?」

 

「…ああもインを攻められるとな、まあ俺なら…。」

 

 

 

「…そういえば、豊田さん、何か言ってたな。」

 

「トレノ君の親御さんか?その人が何を?」

 

ハヤヒデちゃんが聞いてくる。他の子も気になっているみたい。

 

「『外も良い物だ』それだけだけど。…外?」

 

「その言い方だとあらかじめこうなることが予想出来ていたみたいな言い方だな。」

 

「予想できとったって…トレノもそうやが、何者なんや?」

 

今まで豊田さんの事をぶっきらぼうな豆腐屋の主人とばかり思ってた。うーん、謎すぎる。

 

「次のコーナーだな。さて、トレノ君がどう仕掛けてくるか。」

 

「ここで突破口を開けんとトレノは苦しいで。オグリもここまで快調に飛ばしとる。」

 

「さあ!トレノはどう攻めるんだ!?インか、アウトかぁ!?」

 

 

 

コーナーに入って、オグリキャップさんとの差が段々縮まっていく。だけど抜きにかかれない。インをこうも占められてしまっては仕掛けられない。

 

どうする?ここで攻略を見つけないと私は負ける。どうすれば?

 

『たまには“外”も悪くないぜ?』

 

急にお父さんが言った言葉が頭に過った。外…。そうか!そういう事か!今まで私は囚われすぎていた。いままで最短距離を意識しながら走っていたからそんなこと考えたことも無かった

 

ライン取りは、オグリキャップさんとの間を10…いや5センチにして横に並ぶ。これで何かしらの反応が無ければもう打つ手がない。やるしかない!

 

 

 

トレノが何か考えている。気にしないことで前に集中できているが、後ろからのプレッシャーが段々強くなっているような気がする。

 

…ダメだ、意識し始めてきている。このレース中だけは後ろを気にするな!自分の走りを維持するんだ。

 

コーナーもそろそろ終わる。残るコーナーはあと一つだがこの調子ならまず追い抜かれないだろう。

 

…!?いる、確実に。見ていないからよく分からないが外から、それも横にいるのか?

 

 

 

「うおー!トレノ、外から行ったーッ!」

 

「渋川さん!皆さん!見てください!トレちゃんがオグリさんに並んでますよ!」

 

「推しの2ショットチャンスです!」

 

「トレノちゃんもあのアドバイスの意味に気づいたみたい。」

 

正直驚いた。外に膨らんでいったと思ったらそのままオグリちゃんの横に張り付くように並んだままコーナーをクリアしていった。

 

オグリちゃんにあそこまで近づいてコーナーを走るなんて。遠目から見たら接触しているんじゃないかと思うくらい。あのラインのシビアさ、どこかで…。

 

「ようあの土壇場でアドバイスの意味に気づいたな。良くも悪くも、あそこで気づけへんかったら勝ちは無かったやろうし。」

 

「ここで気づいたからこそ、今までオグリさんに傾いていた天秤が平行になった。」

 

 

 

「後はトレノ君の瞬発力次第だろうねぇ。」

 

「ああ、オグリキャップにほんの少しでも意識させることが出来たんだ。さて、どうなるかな?」

 

まだ途中だがここまでで取れたデータだけでも分かること。アイツは自分の体、足が限界目一杯でどれ程走れるのか、どう動かせるのか知っている。

 

トレノは直線での伸びはいまいちだ。はっきり言ってかったるい。トップスピードまで持っていくのに時間が掛かる。だからアイツは無駄な減速は一切しねぇ。

 

オレたちが必要と思う減速すらアイツには不要なんだ。ミスしたら確実に故障する。

 

「頭のねじブっ飛んでやがる…。」

 

「普通のトレーナーなら、もう少し安全マージンを取るように言うだろうねぇ。あれだけの限界走行、見てるこっちがヒヤヒヤものだ。」

 

「それにしてもあの寄せ方。パッと見ただの接触だ。」

 

「だが二人にそんな様子はないねぇ。ここから見て接触しているように見えるということは少なくとも50センチより少ないだろうね。」

 

 

 

意識せざるを得なかった。まさかあそこまで近かったとは。ちらりと見ただけだが今まで見たこと無い程に接近していた。

 

少し走りが乱れた。落ち着くんだ、トレノを気にするな。自分の走りに集中するんだ。

 

 

 

「まずいな…。レース経験ほとんど無しでここまでとは。」

 

「オグリちゃん、少し乱れた?」

 

「今のトレノの攻撃でオグリは確実に意識しちまった。だが乱れたのは一瞬だ。問題ないとは思うが。」

 

「何なんでしょう…。この不安感は。」

 

 

 

さっきの攻撃で少なからず反応があった。次のコーナーで決めるしかない。だけど向こうもコーナーの入り口辺りからスパートを掛けてくる。

 

コーナーまで約…400メートル。ここからスパートを掛けていってコーナリングスピードを確保する。さっきの様子だとオグリさんの外側から仕掛けるしかない。

 

柵走りが使えないから、不得意分野だけど最後の直線、末脚にかけるしかない。

 

 

 

「トレノは外、オグリは内、それぞれラインが分かれとるな。」

 

「それにトレノちゃんはかなり手前からスパートを掛けていったみたい。あの分だと1バ身の差でコーナーに突っ込んでいく感じかな。」

 

「そのようだな、かなり強気な賭けに出たものだ。いくらトレノ君でも外から仕掛けるのは並大抵の事ではないぞ。」

 

 

 

コーナー手前100メートル、予定通りここから徐々にスパートを掛けていく。恐らくトレノも既にスパートを掛けているだろう。

 

…インには来ないな。  フラッ

 

 

 

”開いた”…?ほんの少しだけだけど、確かに開いた。だったらイケる!

 

 

 

「…?トレノ君がペースを上げた?どう仕掛けていくのかな?」

 

「そのまま外から抜くにしてもあのスピードじゃ外に膨らんじまう。どうするってンだ?」

 

 

 

コーナーに突っ込んでいく。徐々にスピードを上げて行っているのは私も同じだ。このまま立ち上がって勝つ。

 

何だ?トレノの気配が外から急に内側に…。

 

「な!?」

 

既に並んで…いや、そのまま抜いていっただと!?

 

 

 

「うおーー!トレノが行ったー!」

 

見ていて信じられなかった。イン側にそれほど隙間を開けているようには見えなかったのにオグリちゃんがそのインから抜かれていった。

 

外にに行くと見せかけてラインを変えるなんて。まるで消えるラインを見せられた気分になった。

 

「…ハヤヒデ、説明できるか?柵を使うたんはウチでも分かるんやけど、そこまでの経緯がまるっきり分かれへん。」

 

「…多分外から行くトレノにほんの少しだけ意識が行ってしまったんだと思います。それで体も無意識に外に行ってイン側のラインが空いた。」

 

 

 

「そこをトレノさんが見逃さなかった…という事ですか?」

 

「そういう事だろう。…栄治の野郎、何か吹き込みやがったな。」

 

 

 

凄い衝撃だった。あそこまで鋭いラインで飛び込んでくるとは。トレノの背中が少しずつだが遠くなっていく。

 

「だが、ここからだ!」

 

コーナーもそろそろ終わる。なら、私のスタミナ全てを使ってその背中を捉えてみせる。レースはまだ終わっていない。勝つのは私だ!

 

 

 

オグリちゃんがコーナーを立ちあがってその差は6バ身程。トレノちゃんは恐らく最高速まで到達している。少しの間はこの差が埋まることは無いと思う…けど。

 

「お互いラストスパートやな。2500やとラストの直線は長いからどうなるんやろうな。」

 

「それでもジリジリと差が詰まってますね。ゴールまでこの差が持つかどうか…。」

 

「頑張れー!トレノー!オグリさーん!真剣勝負だー!」「トレちゃーん!イッケー!」

 

気付いたら観客は歓声に満ち溢れていた。もはや勝負なんかどうでもいい。ただただ二人のレースに皆が釘付けになっていた。

 

「凄いなぁ、トレノちゃん。」

 

たった3回のレースでオグリちゃんとここまでのレースをするなんて。それのまだまだ伸びしろがある。だったら今は全力で応援するだけ。

 

「トレノちゃーん!頑張ってー!」

 

 

 

ナナ、チケゾーさん、渋川さん。顔も見たこと無い人までも私を応援している。体の奥から力が湧いてくるような気がする。

 

ゴールが近いようで遠い、遠すぎる。オグリさんもすぐ近くまで来ている。もう限界も近い。だけど、ここまで応援されて、負けるわけにはいかない。

 

「いっけえぇぇぇ!」

 

もうゴールがどこかも分からない。それでいい。このまま走り抜いてやる!

 

 

 

 

 

「「ゴール!!」」

 




本日のスぺゲスさんこの人ですどうぞ!

「タマモクロスや!よろしゅうな!」

どうでしたか?トレノのレース、大迫力だったでしょう?

「自分でそれ言うてまうの?伝わっとるんかも分からんのに?」

ふぐぅ。的確な言葉をどうもありがとう。僕だって結構考えたんですよ?

「せやけど書いとる以上伝わらんかったらアカンやろ。そもそも後先考えんで書いとるせいでこの世界線のトレセンの品位落ちに落ちまくってんねん。どうやって巻き返してくんや?」

お時間が来たようなのでこの辺で「ちょい、都合悪なったからってそれはないや」また次回!
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