頭文字D プリティーステージ   作:サラダ味

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第三十五話 挨拶回り

「おはようトレノちゃん、よく眠れた?」

 

「はい、いつも通りぐっすりです。」

 

「それじゃあ早速トラックにって言いたいところだけど先に行きたいところがあるんだ。」

 

「行きたいところですか?」

 

「うん、理事長に挨拶に行こうかなって。」

 

理事長ってあの子ども理事長の事か。陽気で接しやすそうな印象だったな。

 

「それじゃ行こうか。」

 

 

 

理事長室前に到着して渋川さんがスーツを正してノックする。

 

「渋川です。トレノちゃんと挨拶に伺いました。」

 

少し間をおいて扉が開けられる。出迎えてくれたのはたづなさんだった。

 

「まあ、トレノさん!お待ちしていました!中へどうぞ。」

 

「それでは、失礼します。」

 

入室を促されたので部屋に入る。よく分からないトロフィーに旗、観葉植物もある。

 

「この度は編入おめでとうございます。心からお祝い申し上げます。」

 

たづなさんはそう言いながらお茶を出してくれた。紅茶の良し悪しはよく分からないけど多分良いやつなんだろう。

 

「ありがとうございます。あの、理事長はどちらに?…紅茶美味しい。」

 

「理事長は現在出張中でして…。一週間ほどで帰ってくると思います。トレノさんによろしく言っておいてくれと伝言を預かっています。」

 

「そうですか、なら今日は出直します。」

 

「いえ、お手数となると思いますので私の方から宜しく言っていたと伝えておきます。」

 

少し話しただけで気遣いの神だと分かった。

 

「ありがとうございます。早いですがこれで失礼します。」

 

「そうですか、今後の活躍をお祈りします。トレノさん。」

 

理事長室を後にして、さっきまであまりしゃべらなかった渋川さんがようやく喋った。

 

「あ~怖かったぁー。トレノちゃん、怖くなかったの?」

 

「そんなこと思わなかったですよ。むしろ優しそうな人だったじゃないですか。」

 

「私にとっては鬼より怖いよ…。それとあと一か所。生徒会長、シンボリルドルフちゃんに挨拶だね。」

 

シンボリルドルフ…ナナから熱弁を受けたことがある。あまりの熱量に引きながら聞いていたからあまり頭に入ってないけど途轍もなく強い事だけは頭に入っている。

 

「まあそんなに身構えなくても大丈夫だよ。この前なんか腹話術やってたから。」

 

 

 

「凄い重厚ですね…さっきの理事長室もそうですけど本当に学校ですか?」

 

「学校ではあるけどお上がURAって言うでかいところでね。それでまあ重要なところはこんな感じなんだと思う。」

 

「中高一貫みたいなこと聞いたんですけどこの感じだと大学までありそうですね。」

 

「まあトゥインクルシリーズに所属してさえいれば学園にはいられるからね。免許取ったウマ娘だっているし。」

 

免許を取るってことは18歳以上って事だよね。…ん?何年生まであるんだろう。

 

「声がすると思ったら君か、トレノスプリンター。待っていたぞ。」

 

「初めまして、シンボリルドルフさん。」

 

「立ち話もなんだ、入ってくれ。」

 

「じゃあ私は外で待ってるよ。ごゆっくり~。」

 

生徒会室に入ると思ったより質素な印象を受けた。まあ学校だからこんなものなんだろうけど、カーテンだけ異様にいい素材使ってそう。

 

「まずは編入おめでとう。といってもあれだけのレースを見せてくれたんだ。皆が納得するだろう。」

 

「いえ、そんな…。あ、お茶ありがとうございます。」

 

「早速だが、君はこれの意味が分かるか?」

 

これと示されたのはあの額に書かれている文だろう。『Eclipse first,the rest nowhere.』うーんと。

 

「エクリプスが一番、それ以外は居ない?」

 

「直訳するとそうなるな。その様子から転じて『唯一抜きん出て並ぶ者なし』と和訳されている。我が校のモットーだ。」

 

「唯一抜きん出て並ぶ者なし…ですか。」

 

「私たちが目指すのは頂点だ。他の追随を許すな。」

 

そう言ったルドルフさんからは強い気迫を感じ取れた。この人が腹話術やってるところがいまいち想像できない。

 

「…とまぁ硬い話は終わりにしよう。世間話でもしないか?」

 

そこからは他愛のない話が少しあった。それで分かったことがある。この人と話すと必ずと言っていい程硬い話に着地してしまう事。

 

 

 

「おかえり、どうだった?」

 

「渋川さん、分かってて待ってました?」

 

「んんッ?何のことかなぁ~?」

 

分かりやすくしらばっくれた。絶対真面目な話が出来ないタイプの人だ。

 

「そんなことより、お待ちかね、トラックに行こうか。と言っても道案内はもういらないかな?」

 

「そうですね、既に思い出がいっぱいある場所です。」

 

感謝祭、タマモクロスさん、オグリキャップさんとレースした場所だ。この短期間で忘れる方が難しい。

 

「それじゃ行こうか。沖野さんも東条さんも今頃トレーニングしてるだろうし。」

 

 

 

渋川さんの後をついて行って少し経ったら中庭に出た。チームスピカの看板も今となっては懐かし…くならない。やっぱりすべておかしい。

 

「くっそおおおおぉぉぉぉぉ!もうおわりだあああぁぁぁぁ!!」

 

「…何ですか、アレ。」

 

「負けたら悔しいでしょ?そんな気持ちは叫んで発散しちゃおうって事。」

 

「もう終わりだとか叫んでますけど。」

 

「いつもの光景だよ。」

 

嫌だ。あれがいつもの光景とか嫌すぎる。なるべくここは通らないようにしよう。

 

 

 

「着きましたね。東条さんのリギルと…あっちがスピカですかね。…何やってるんだろう。」

 

リギルは見たところ普通にトレーニングしてるけどスピカはなぜかツイスターゲームをやっていた。

 

「感謝祭で体験したと思うけどリギルは最強チームだからね、トレーニングも生半可じゃないんだけど…。」

 

渋川さんは少しためてスピカを見て言う。

 

「沖野さんは変わっててね。一見意味無さそうなものからも意味を見出してトレーニングに反映するんだ。その結果があれだけど。」

 

「これ意味あるんですか~!」

 

黒い髪のウマ娘が悲痛の叫びをあげた。UMAを抱えるチームだから変なことしてるんだろうなとは思ったけど本当だった。

 

「近いしスピカから先に行こうか。」

 

約一名のせいであまり気乗りしないけどトラックに続く階段を下りていく。

 

「よし、キタサンは…左足を緑!…お、渋川じゃねえか。トレノも来たな。」

 

「え、トレノさんですか!?」

 

「一週間ぶりです。昨日からですけど編入しました。これからよろしくお願いします。」

 

沖野さんに軽く挨拶を済ませると自然とメンバーが集まってきた。

 

「お久しぶりですわね、トレノさん。私の事は覚えて下さっていますか?」

 

「も、モチロンですよ…えーっと、メジョマッキーンさん、でしたっけ?」

 

「違いますわよ!メジロマックイーンですわ!」

 

「ご、ごめんなさい…。」

 

とはいってもUMA以外あまり覚えていない。インパクトがでか過ぎて他のウマ娘を一気に塗り替えていった天災だったから。

 

「まあ、覚えてないのも無理ないわな。拉致られた後だし。」

 

「それじゃあ改めて自己紹介だね!ボクはトウカイテイオー!よろしくね!」

 

軽く自己紹介を聞くとふと気になることが出てきた。

 

「あれ、この人って前は居ませんでしたよね?」

 

「ああ、新入生でな。先日入部したんだ。」

 

「キタサンブラックです!よろしくお願いします!」

 

キタサンブラックって確かタキオンさんが注目のウマ娘って言ってたな。

 

「そう畏まらないで下さい。入学で言えば先輩なんですから。」

 

新入生って言ってもこの体つきからすると私より年上だろうし。

 

「いえいえ、トレノさんは凄い方なので!それに上級生なんですから!」

 

「あれ?年上じゃないんですか?私そろそろ15ですけど。」

 

「あたし12歳です。中学一年生です。」

 

………………冗談だよね?バグかな?顔に幼さが残ってるなぁとは思ったけど明らかにプロポーションで負けている。身長は割とどうでもいい。でも…。

 

「ジー」

 

「ど、どうしたんですか?」

 

ふくらみに至ってはどう考えてもおかしいと思うんだ。

 




「お友だちがいなくなっちゃったと思ったら、どうなってるの?」

ぼくドラ〇もんです☆

「アナタ、何かしたの?……そう、アレからこの人を守ってたんだね。」

アハハスープラだ☆

「でも、何でこの人はまだ……その、おかしなままなの?」

「タ タ ケ バ ナ オ ル」

「昔のテレビじゃないんだから……。それじゃ、えいッ!」

ぬぐはぁ!誰はここ?どこは私?あ、カフェさんこんにちは。

「治ったようなら……良かったです。それでは。」

何でしょう、最近皆さん冷たくないですかねぇ。なぜか記憶がぶっ飛んでますし。

まあいいでしょう。また次回!
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