「そんな顔しないでくれよ。今日はサプリメントは持って来ていないし話を聞きに来ただけだとも。」
「ホントにそれだけですか?というかあのサプリ何だったんですか?」
「よくぞ聞いてくれた!アレは私特性のサプリメントでね、飲めば筋肉増強の効果が見込めるものなのだが、トレノ君がどうしても飲みたいというなら!」
「飲みません。聞いただけで飲んじゃいけない奴じゃないですか…。」
自作でサプリが作れるのはシンプルに尊敬するけど効果が信用できない。おおよそ副作用で何が起こるか分かったものじゃない。
「そう邪険にしないでくれよ。効果は私は保証するよ。ただ、副作用で体が黄緑色に発光するくらいか。」
「誰が飲むんですかそんな劇物。」
どうやらこの人は人の身体構造をいじくるのが好きなようだ。何をどうすれば人が発光するのか。
「おっと、本題を忘れるところだった。今日は君について聞きたいことがあるんだ。」
彼女はそう言いながらシロップのふたを開けた。それをパンケーキに掛けていく。掛けて…。
「ーーーーーーーーッ」
なんてこった。シロップを丸々一本使い切りやがった。正直あれをパンケーキと言いたくない。もっと言えば直接摂取してしまった方が早そうだ。
「?どうかしたかね?」
どうかしているからこの反応なんだけど。見てるこっちの口が甘くなってしまう。何なら胃もたれを通り越して胃潰瘍になりそうだ。
「まあ…、話位なら…大丈夫ですけど…。」
その目の前の塊に動揺しながらそう返事する。
「そう来なくては!では早速だが…うーむ、シンプルなことから聞いていくか。君はここに来る前、どんなトレーニングを受けていたのかな?」
その質問には、渋川さんに答えたのと同じように答えた。目の前で起こした奇行のせいでまともに聞いてくれるか疑問だったけどメモまで取って聞いていた。
「ふぅン。時にトレノ君、そのお父さんからは教えられたこととかはあるのかい?」
「教えられたことなんか何もないですよ。配達帰ったら急にこうしろああしろって。なんでって聞いても何も教えてくれないんです。」
「となると、そのテクニックのほとんどは独学で身に付けたと言っても過言ではない…か。成程成程…。」
シロップを食べながらメモに何かを書いていく。あれを平然と食べるのか…。糖尿病になりそうだ。
「テクニックと言えば、柵に手を掛けるあのコーナリングも自己流となる訳だね?」
「はい、元は雪道で滑らないようにやってたので。でも結構タイミングシビアですしミスったら怪我するので連発はしたくないって感じです。」
「ふむふむ、いやあいい話を聞けた。これまでにないデータを取れたよ。感謝するよ。」
「そうですか、大した話じゃないですけど。」
良かった。半分早くそのゲテモノを視界に入れたくないがために受け答えしてたから助かった。
「それでは私は失礼するよ。このメモをまとめたいのでね。」
よく見たらシロップを食べ切っていた。…?何か認識がおかしいような…。
「あぁそうだ、最後に一つだけいいかな?」
「どうぞ。」
「君は『ウマ娘の可能性』について考えたことがあるかな?」
「『ウマ娘の可能性』…ですか?」
先ほどの質問とは打って変わって哲学めいた物について聞かれた。
「ああ、入学したての君には縁遠い話題であることは私も承知している。私は入学してからというもの、日々の大半をこの研究に費やしていてね。その中でもウマ娘の最高速度は時速70キロとされているが私はまだ先があると考えている。」
そう話しているこの人の目は輝いていた。それと同時にこの人の言う先に必ず辿り着くという決意も感じ取れた。
「この研究に没頭しすぎて退学寸前まで行ってしまったが…そんなことは些細なことだ。その可能性はまだ遥か遠く、影すら見えていないのだから!」
多分、私にはその研究の全部を聞いてもよく分からないと思う。でも、目標をもってそれに進んでいく人を素直に応援したいと思う。
「だからと言って、私の考えている分野は飽くまで可能性の一部でしかない。そこでだ、君自身の考え、どんな些細なことでもいい。君にとっての可能性を聞かせてくれないかい?」
私にとっての可能性…少し考えこむ。
「どうなんでしょう、哲学のようなものはよく分からないんです。」
「うむ、難しい質問だということは分かっている。またいつか、その答えを聞ければ問題ないよ。では、失礼す」
「でも、私が思うその可能性は“個性”だと思います。」
この人の言葉を遮って、私が思ったことを口にした。
「個性か…。そう思った理由を聞けるかな?」
「同じウマ娘だとしても、身体能力には差があるじゃないですか。その人特有の才能だったり価値観だったり。」
「まあ、そうだね。」
席に再びついてメモを取り出した。それを気にしないで話す。
「直線が速いウマ娘、コーナーが速いウマ娘。他にも挙げられるかもしれませんが、そのウマ娘個人個人の個性が可能性だと思います。」
言っておいてなんだけどまるで他人から聞いたことをそのまま言ったみたいになっちゃったな。
「ふぅン。実に興味深いねぇ。いやいや想像以上の収穫だぁ。いやいや感謝するよ。」
「そんなに特別なことはしてないですけど、満足してもらえたなら。」
「ああ、次は是非とも私の実験に協力してくれると更に嬉しいんだがねぇ!」
この話でこの人が芯のある人だというのは分かった。実験だって目指すものへ向かう物だというのも。だから。
「全力を以てお断りします。」
「えぇ~~!」
当然だ。飲んだら最悪発光するような薬好き好んで飲んでたまるか。
「まぁいいさ。十分に話は聞けたからね。改めて、これで失礼しよう。」
…。あれ。普通に話してたけど…。
「名前って教えてもらいましたっけ?」
「あぁ、そういえば名乗ってなかったねぇ。私はアグネスタキオン。実験に協力したくなったらいつでもいいたまえ。」
「お疲れ、トレノちゃん。今日はどうだった?」
「どうだったも何も、普通の授業はまだ前の学校より難しいなってくらいなんですけど。レースの授業はまだよく分からないですね。」
「今までレースに触れてこなかったから余計にそう感じるかもね。それじゃ、早速始めようか。」
そう言って三脚にスマホを付けて。ダンスの動画を見せる。トレノちゃんはそれを見ながら呟く。
「レースで勝ったらこれを踊るって事かぁ。」
「ウイニングライブだからね。曲はレース一か月前に決まるんだけどメイクデビュー戦はこの曲を踊ることになってるんだ。」
「ナナに一回見せて貰ったんですけど、棒立ちしてたりブレイクダンスしてたりだったんですけど。」
「あれはね、沖野さんがライブの練習忘れてたから起きた惨劇だよ。ゴルシは知らないけど。」
あの悲劇は起こしたくないし見たくない。その時は大学生だったけどあの時のスぺちゃんの悲惨な顔は今でも忘れられない。
「私はああはなりたくないですね…。早く練習しましょう。」
「オッケー。それじゃあ振付を細かく分けて一つずつ覚えていこうか。」
「ふぅ…。ダンスって疲れますね。走るのとは違う体力使う感じがします。」
「レースの時とは体の動かし方が違うからね。でも一通りの振り付けは覚えたんじゃないかな。」
練習を始めて1時間くらいで大体の振付を覚えてもらった。次は通してもらおうかと考えていると。
とおるるるるるるるん るるるん
トレノちゃんのスマホに電話が掛かってきた。
「電話だ。誰からだろう。…ナナ?出てもいいですか?」
「いいよ、私も顔だけ見せようかな。」
「ありがとうございます。…もしもし。」
「トレちゃーん!元気してるー?もしかしてトレーニング中だった?」
電話がつながるとナナちゃんの元気な声がスタジオに響く。
「大丈夫、渋川さんに許可貰ってるから。それに今はウイニングライブの練習中だよ。」
「ウイニングライブ!もう練習してるんだ。それで、デビューっていつなの!?」
「いや、どうだろう。渋川さん、決まってるんですか?」
「一応決めてはいるけど…6月の上旬かな。」
「となると1か月先ですか。それまでトレーニングして鍛えないとですね。」
正直トレノちゃんならすぐにでもデビュー出来そうだけど、トレノちゃんについて知らないといけないと思ったからこのくらいにした。
「6月が今から楽しみだよ!それでさ、ダンスはどう?早く見てみたいなぁ。」
「今はまだまだ全然だし、見せられる出来じゃないかな。」
「まあ楽しみは当日まで取っておかないとね。練習の邪魔しちゃ悪いからそろそろ切るね!」
「うん、また掛けるね。それとデビュー戦、絶対勝つから。」
「私からも、絶対に勝たせてあげるから。ナナちゃんも応援よろしくね。」
こんな所で躓いてちゃ三冠なんて夢のまた夢だもんね。
「もちろんですよ!それじゃ!」
ナナちゃんがそう言うと電話が切れた。
「さて、そろそろ再開と行こうかな。次は通してみようか。」
「分かりました。」
ネタ切れです。スぺゲスさんを呼んだとしてもここを埋められる予感がしません。
「おー困ってそうだな!そんなお前のためにしめじ持って来てやったぜ!」
要らねえよ。てか呼んでねえよ。おまんだけはここを出禁にしとくんだった。
「おい!いくらあたしが完璧でビューティフルだからっつってそんな扱いはねえだろ!」
順当に決まってんだろ。二次創作で一番好き勝手出来るけど一番制御できねえ奴を誰が好き好んで登場させまくろうと思うよ。
「そう言ってくれると俄然やる気が出てきちゃうぞ~。」
あ?貴様何する気だ?
「お前の意思とは関係なくちょこちょこと出てやるからな~!」
あーどこ行くねーん!…ッチ、厄介なことになりやがった。
ああすいませんね。大丈夫です。あの野郎の好きにはさせないので。
また次回!