頭文字D プリティーステージ   作:サラダ味

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第四十一話 デビュー

「屈腱炎?」「屈腱炎!?」

 

と言われても屈腱炎とは何か私には分からない。でも渋川さんが深刻そうな顔をしている。となると相当な病気のようだ。

 

「トレノちゃんは知らないと思うから簡単に説明するね。屈腱炎はいわばウマ娘のガンとも呼ばれてるんだ。」

 

「ウマ娘のガン…。それって治るんですか?」

 

「軽度なら良くなることはあるけど、ガンと違って完治することは無い。これのせいで引退に追い込まれたウマ娘も少なくない。」

 

「それじゃ、キタちゃんはもう走れないって事ですか?」

 

一週間前も…昨日だってあんなに元気よく走ってたのに。

 

「幸い軽度らしいので復帰の見込みはあるそうなのですが…。」

 

「やっぱり再発が怖いよね。数ヶ月は治療に専念しないといけないからデビューも長引いちゃうから同期デビューも絶望的かな。」

 

「クラシック…一緒に戦えないんですか?」

 

楽しみというのは少しおかしいかも知れない。でも、キタちゃんやダイヤちゃん、ロータリーさんと鎬を削っていくものだと思っていたから寂しいものがある。

 

「いえ、キタちゃんは戻ってきます。」

 

ダイヤちゃんが何か確信めいたことを言う。

 

「確かに屈腱炎はウマ娘にとって致命的で、それだけで選手生命を脅かすものです。でも、キタちゃんはそんなことじゃへこたれません。挫けません。それがキタちゃんです!」

 

「幼馴染のダイヤちゃんが言うならなんだか説得力があるね。本当に大丈夫な気がしてきたよ。」

 

「それなら、尚更デビュー戦頑張らないとね。あと二週間、明日からも頑張ろう!」

 

 

 

デビューまであと一週間。渋川さん曰くここからは調整に入るそうだ。今までのトレーニングより負荷を抑えて本番に本調子を持っていくそうだ。

 

「今日はいつもより少なめのメニューで行くよ。物足りないかも知れないけど我慢してね。まずはジョギングから行こうか。」

 

「分かりました。」

 

ジョギングをしているとリギル、スピカ。それにダイヤちゃんのカペラも来ている。

 

「今日もいっぱい来てるなぁ…あれ、キタちゃん!?」

 

「あ、トレノさん!一週間ぶりです!」

 

「もう大丈夫なの?暫く休養だって聞いたけど。」

 

軽度でもかなり重いものだって聞いたから一週間程度でもう出てきているのが不思議だった。

 

「お医者さんが言うにはかなり早期の発見だったので今のままなら日常生活には支障はないそうです。でも暫くトレーニングは控えるようにとも言われました…。」

 

「そうなんだ。でもよかったよ、元気そうで。」

 

「はい!トレーニングが出来なくても出来る事は他にもたくさんありますから。この期間も有効に使って見せます!」

 

元気付けに来たつもりだったのにこちらが元気付けられてしまった。凄いなぁキタちゃん。

 

「それじゃ、私はこれで失礼するよ。頑張ってね。」

 

「はい!お互い頑張りましょう!」

 

そのままトラックをジョギングしていって、3周して渋川さんの所へ戻る。

 

「元気そうだったね、キタちゃん。」

 

「はい。私が元気を貰っちゃうくらいには。」

 

「その元気をデビュー戦で発揮できるようにしないとね。次は2000メートルを二本、全開で行こうか。」

 

「はい!」

 

 

 

 

 

「遂に来たね。デビュー戦本番。」

 

「本番ってなるとやっぱり緊張しますね。」

 

「2000メートルだしトレノちゃんなら大丈夫。私なんか結構安心しきってるんだから。」

 

そう言ってる渋川さんはシャーペンの芯をあり得ない長さ出している。…あ、落ちた。それでも出すのを止めない。

 

「渋川さんを見てたら少しほぐれてきました。」

 

「まだ何もやってないけど!?…何でシャー芯落ちてるの?あ、そろそろパドックに出ないとだね。」

 

「分かりました。それじゃ、行ってきます。」

 

 

 

待ちに待ったトレちゃんのメイクデビュー!レース場は東京だし、行き慣れたところでよかった!

 

「そろそろトレちゃんが出てくる!楽しみだなぁ!」

 

学校の皆は伊勢崎からテレビで見るって言ってた。けど私はどうしても現地で見たかったからお小遣いを前借して来た。

 

「ナナちゃん来てくれたんだ。」

 

「当たり前じゃないですか!トレちゃんの晴れ舞台なんですから!」

 

「ありがとうね、一緒に応援しようか。」

 

『さあいよいよ登場します。堂々の一番人気、5枠5番、トレノスプリンター。』

 

パドックにトレノちゃんが出てきた。やっぱり緊張してるみたい。少し動きが固い。

 

「トレちゃん緊張してるけど、大丈夫かなぁ。」

 

「大丈夫…だと思うよ。こっちまで緊張してきた…。」

 

『すこし動きが固いですね。緊張しているみたいですね。』

 

そのまま少し進んで…何かするわけでも無く立ち止まった。パドックでのパフォーマンスはこんなのがあるよとは少しは言ったけど。

 

「トレちゃん!その上着をバッてやって!バッって!」

 

「あ、ナナ。来てたんだ。」

 

ナナちゃんに気付いたトレノちゃんはこちらに手を振った。それがパフォーマンスとして見られたみたいで歓声が沸く。

 

「うぇ!?まだ何もやってないけど…。」

 

『微笑ましい光景ですね。そのお陰で緊張もほぐれたみたいですね。熱いレースを期待します。』

 

『噂ではオグリキャップとの模擬レースで同着だったそうですよ。』

 

『成程、一番人気の理由がよく分かります。』

 

 

 

パドックでのパフォーマンスを終えて、地下バ道を通ってコースへ向かう。パフォーマンスあれでよかったのかな?

 

案内看板を頼りに進んでいくとコースに出られた。周りを見渡すとトレセンでレースした時とは比べ物にならないくらいの人がいた。

 

「なんだかまた緊張してきた。」

 

「トレノスプリンターさん、こちらにお願いします。」

 

「あ、はーい!」

 

誘導員の人に呼ばれてみると、ゲートが既に準備されていた。

 

「えーっと、5番だからここかな。」

 

ゲートに入る前に軽くストレッチをしておく。その間に他の子がゲートに入っていく。タマモクロスさんやオグリキャップさんとやった時とは違って相手は8人もいる。

 

一対一ならその相手に集中できる。作戦は特には聞いてないから一人ずつ、落ち着いて対処していこう。

 

『一番人気、トレノスプリンター。期待に応えることが出来るでしょうか。』

 

『落ち着いているようですね。本調子を出せそうですね。』

 

『さあ各ウマ娘、ゲートに入り準備が整いました。』

 

「トレちゃぁーーーん!頑張ってぇーー!」

 

ナナの声が耳に入る。せっかく来て応援してくれてるんだから、俄然負けられないな。

 

ガコン!

 

『スタートです!』

 

『各ウマ娘、揃ったスタートになりました。トレノスプリンター最後方に付けました。』

 

『ここからなら状況が一目でわかりますね。』

 

スタートは上手くいった。後は状況を見て前に出ていこう。直線に入ってすぐだけど、ペース上げていかないと置いて行かれるかも。

 

『先頭は団子状態で進行していきます。おぉっと、トレノスプリンターが早くも先頭との距離を詰め始めている!』

 

『掛かってしまっているのでしょうか。落ち着ければいいんですが。』

 

 

「よぉ~し!トレちゃんのペースだぁ!そのままイケェ~!」

 

「もうここまで来たら大丈夫かな。どんどんペースが上がっていくから先頭に並ぶのももう直ぐだね。」

 

「ですね!…なんでシャーペンカチカチやってるんですか?」

 

「あれ、本当だ。なんでだろう。」

 

安心しているように見えてかなりドキドキしながら見ているみたいだ。人の事は言えないけどね。

 

『さあトレノスプリンターが僅かながらではありますがペースを上げているぞ!それでもまだ先頭まで10バ身ほどあるぞ!』

 

『追込としても仕掛けるのが早すぎると思うんですが、大丈夫でしょうか。』

 

『そろそろコーナーに入ります。順位を振り返っていきま…トレノスプリンターが驚異的な追い上げを見せているぞ!?』

 

トレちゃんのコーナリングがここにいる全員を驚かせる。当然だよ!あの速さは誰にも真似できないもん!

 

『先頭から4…もう先頭争いに…いや抜け出したぁ!コーナー半分で既に先頭に立ってしまった!』

 

『恐るべきコーナリングですね。コース取りも無駄がありませんでしたね。』

 

『抜け出した勢いそのままに後続との差がグングンと開いていく!圧倒的だ圧倒的だ!』

 

トレちゃんが抜け出てから他のウマ娘達もスパートを掛けていく。でも多分、もう決まったようなものかな。

 

「コーナーが少し下りだったのが更にトレノちゃんのコーナリングに磨きをかけてるね。この先の直線は上りだけど勢いで逃げ切れるかな。」

 

「トレちゃぁーーーん!そのままそのままーーー!」

 

『さあ最後の直線です!トレノスプリンターとの差は10バ身以上!後ろの子たちは間に合うのでしょうか!?』

 

『直線が長いですからね。それに上りですからスタミナが残ってないと厳しいかも知れませんね。』

 

解説のその言葉通り、直線でトレちゃんとの差は埋まることなく、そのままゴール版を駆け抜けていった。

 

『縮まらない縮まらない!10バ身以上の差でトレノスプリンター、デビュー戦を制しました!』

 

ワアアアアアアァァァァッ!

 




あ、どうも。

ゴルシがどっか行ったので早急に捕獲したいんですけどなかなか見つからないんですよね。

それで休憩しようと部屋(架空)に戻ったらボールペンが分解されてました。一本残らずその全てがです。

アイツ絶対に許さねぇ。

「そんなに悩んでどうしたよ。ゴルシちゃんが相談、乗ってあげよっか?」

てめぇの事で悩んでんだよこのマヌケッ!

「よっしゃ逃走だ!また次回な~!」

あーそれ俺のセリフ!
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