頭文字D プリティーステージ   作:サラダ味

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第四十四話 紙コップ

「うおー――出走じゃーい!」

 

ゴルシさんが勢いよくスタートする。それと同時に水がほぼ全て宙を舞う。舞った水は重力に従ってその場に落ちていった。でもゴルシさんは止まらない。

 

「あんなに勢いよくスタートしたらそりゃそうなるよ…。」

 

トレノさんも呆れてしまっている。少ししてゴルシさんが返ってくる。

 

「どうだ!アタシにかかればこんなもんだ!ってどうなってんだ?水どこ行った?」

 

「スタートで全部零れましたわ。あの勢いなら無理もありませんが。」

 

「じゃあマックイーンお前がやってみろよ!絶対零すんじゃねえぞぉ!」

 

「零す零さないは別にして…私もやってみたいと思ってました。トレノさん、構いませんか?」

 

「良いですけど、簡単じゃないですよ?」

 

トレノさんが紙コップと帽子を渡してマックイーンさんがそれを着ける。

 

「気休めにしかならないかもしれませんが、衝撃を吸収するイメージじゃなくて水の動きを意識した方が良いかも知れません。」

 

「アドバイスありがとうございます。では、行って参りますわ。」

 

 

 

水の動きを意識…と言われましてもいまいちピンと来ませんわ。一先ず、私のいつも通りで走ってみましょう。

 

「ハァ!」

 

コーナーの入り口で少し加速する。長距離が主戦場ですが、中距離も問題はありません。

 

バシャ

 

もうですの!?少し加速しただけですのに。想像以上に難しいトレーニングですわ。一朝一夕で出来るものでもありませんわね。

 

果たして走り切るまでに残っているんでしょうか。こうやって思考している間に三回は零れてしまっています。…また零れましたわ。

 

コーナー抜けて直線でも零れてしまうんですから、残ってなくてもしょうがないですわね。

 

 

 

「お疲れ様です。どうでした?」

 

「ほとんど残ってませんわね。…もう少し何とかなると思ったんですが。」

 

「でも凄いですよ。私が初めてやった時より残ってますよ。初めてやった時なんて全部零しましたもん。」

 

マックイーンが残せた水は2割程度、これで上々らしい。ボクはマックイーンより残しちゃうもんねー!

 

「じゃあ次はボクだね。見てなよマックイーン、君より残して見せるからね!」

 

「言っておきますが簡単ではありませんわよ。恐らく…何か一つでも疎かにすればすぐに零れるような、それほどシビアなトレーニングですわ。」

 

「大丈夫大丈夫!トレノとマックイーンの走りで大体わかった気がするんだ!それじゃ、行ってくるねー!」

 

 

 

「ワケワカンナイヨーーー!」

 

「予想道りですわね…。」

 

走り終えたテイオーちゃんが腕を振り回してる。1割も残ってればいい方だと思うけどな。

 

「何なの~!ゆっくり走ってもバチャバチャ零れるしトレノどうやって走ってるのさ!」

 

「どうやってって言われても…私だって最初はゆっくり走って零れなかったらスピードを上げていってを半年掛けてようやく走れるようになったので。」

 

「半年で出来るようになったの!?どうやればそんなに早く出来るようになったのさ!」

 

「いえ、半年掛けて普通のペースで走れる様になっただけでさっきみたいな全力で走れるようになるのにはもう半年掛かりましたね。」

 

「才能の塊って感じですね…。」

 

スペちゃんが難しそうな顔をする。実際それほど難しいものであることは確かだ。原理は分かって来たんだけどなぁ。

 

「はいじゃあ次スぺちゃん!こうなったら誰が一番残せるかやろうよ!ビリがはちみー奢りで!」

 

「えぇ!?自信ないですよぉ。」

 

「それだとアタシが奢るみたいじゃねえか!」

 

というわけでスぺちゃん、ウオッカちゃん、スカーレットちゃんの順で紙コップに挑戦していったけど、結果としては団栗の背比べだった。

 

普通いきなりやれって言われて出来るものじゃないけど。

 

「じゃあ最後はスズカさんですね。頑張ってください!」

 

「ええ、行ってくるわね。」

 

トリはスズカちゃんが務めた。走り出すと、トレノちゃんが息を漏らす。

 

「…イケそうですね、スズカさんなら。」

 

「分かるの?トレノちゃん。」

 

「なんとなくですけど。体がブレてないというか、滑らかに動いてるって言うんですかね?」

 

そう言われてスズカちゃんの走りを見ると、成程確かに滑らかだ。そして、原理が確実に分かった。やっぱり荷重移動だったんだ。

 

時速70キロで走れば人間が普段走る時には気にしなくていいものも気にする必要が出てくる。それが何かは比較しないと分からないけど…なるほど荷重移動か。

 

あれほどのスピードで走れば荷重バランスがズレれば走りに影響が出るかもしれない。それをコントロールすることでどんな時でもブレない走りができるって事か。

 

「フゥ…中々残せたと思うわ。難しいわね、このトレーニング。」

 

「初めてで半分残ってるのは凄いですよ。…やってました?」

 

「いえ…でも、水を回すって言ってたからこうかなぁってやってみただけなのだけれど。」

 

「あのアドバイスでよく出来ましたね。私はそう言われても分からなかったですもん。」

 

「それじゃあ優勝はスズカだね。罰ゲームはゴールドシップに決定!」

 

ゴルシが何か言ってるけどあれだけ派手に零したんだからまあ仕方ない。…紙コップのトレーニング、私もやろうかな。

 

「なあトレノ、俺から頼みがあるんだけどよ。」

 

「何ですか?ウオッカさん。」

 

 

 

「タマモ先輩とオグリ先輩に使ったあのグイって曲がるコーナリング、あれをもう一回見せてくれねえか?」

 

「グイって曲がる…柵走りですか?」

 

「よく分かんねえけどそれだ!俺の前を走って、あのカッケーコーナリングを見せてくれないか!?」

 

どうしようか…無茶ぶりってわけじゃないし。まあいいかな。渋川さんに許可だけ…出てるね。親指が立ってる。

 

「良いですよ。ウオッカさんさえよければすぐに行けますけど。」

 

「いや、ついでだし皆で並走にしよう。トレノを先頭で、他が後追いだ。それでもいいか?」

 

「オッケーです。それでは、行きます!」

 

私が走り出すとスズカさんを先頭に後ろに付いてくる。…最初から追われる側って少し落ち着かないな。

 

 

 

「やっぱり速ぇ…いつもの並走とは訳が違うぜ。」

 

「もうバテた訳?そんなんじゃアンタだけトレノのコーナリング見れなかったりするんじゃない?あたしは余裕だけど。」

 

スカーレットが挑発してくる。と言ってもお前も余裕が無さそうじゃねえか。

 

「ンだとぉ!お前こそ見れなかったりなぁ。」

 

煽るように挑発してやると思った通りに食いついてきた。

 

「上等よ!並走だってアタシが一番なんだから!」

 

「お前には負けられねぇ!」

 

スカーレットがペースを上げる。トレノには悪いが並走だろうとスカーレットには負けられねぇ!

 

「ちょっとお二人共!?これは飽くまで並走ですわよ!?」

 

「まあいいんじゃない?折角なら間近で見たいじゃん?それじゃお先~。」

 

「貴方もですの!?ちょっとお待ちなさい!」

 

テイオーもマックイーンもペースを上げ始める。ここまでくると並走ではなくなっちまったな。

 

「さあそろそろコーナーだ。見させてもらうぜ。あわよくばその技術を盗んでやるぜ。」

 

スぺ先輩もスズカ先輩もペースを上げてトレノの間近に来ている。その誰もがじっとトレノを見つめている。

 

内側に寄っていく。おいおい、そんなに寄せるのか?今にもぶつかっちまいそうだ。そんなことを思っていたら。

 

「えっ?」

 

目が、理解が追い付かなかった。いや、やったことは分かる柵に手を掛ける。それだけの事なんだが…。

 

「目がついていきませんわ…。」

 

「急にフッって消えてっちゃうよぉ。」

 

軽く3バ身程度離れてしまった。テイオーも、そしてステイヤー最強とも言われたマックイーンすら唸らせるとは。良い物が見れたぜ。

 

 

 

「お前らはしゃぎすぎだ!並走だって言っただろ!」

 

「アハハ…。走ってたらその…。それで、どうでした?これでいいのかはよく分かりませんけど。」

 

「十分すぎだぜ!なあ、今度はアレのコツ教えてくれよ!」

 

「教えてもらうのはいいがそろそろお開きだ。トレノ、どうだった。」

 

「色々と勉強になりました。特に走り方一つ取ってもいろんな走り方があるんだなって分かりました。」

 

それこそこの間タキオンさんに話した個性を感じることが出来た。

 

「まあ、何か収穫があったならそれでいいさ。さぁ、今日は終わりだ。上がってくれ!」

 




「ねえトレノちゃん、どう思う?」

「どうって言われましても…。混乱しかしてないですよ。目を開けたら知らない空間に飛ばされて、目の前には少しイラっとする看板があるだけなんですから。」

後書きが全然思いつかないから何とかしてヒヤシンス☆ ペロ☆

「峠攻めに行こうとしてエンジン掛けたらここに飛ばされて、どうしてくれるの?」

「よかったじゃないですか。犯罪が未然に防がれて。」

「犯罪じゃないですぅ!安全を考慮しながら走ってますぅ!」

「はいはい。あ、また看板が出てきましたね。」

自分で書いておいてなんですけど後書きでこうやってキャラクター使うのって痛いような気がするんですよね。

「何なんですかこの人、勝手に呼んでおいて勝手に痛い判定下してますよ。」

「よし、殴りに行こう。トレノちゃんはあれだけど私はまだ設定が固まり切ってないからまだどうにでもなるから。」

「まあ落ち着いて、また看板だ。」

はいオッケーでーす!後書きなんでそれ位で大丈夫でしょう。トレノさん、榛名さん、お疲れっした―!さー帰ってゲームやろ。人に押し付けるのは楽でいいなー。

「殴りましょうか。」

「そうしよう。」
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