頭文字D プリティーステージ   作:サラダ味

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第四十八話 帰省

「勝った…良かったぁ。」

 

全力で走り抜けて、なんとか一着を取ることが出来た。今まで気付かなかったけどこんなに歓声が上がってたんだ。

 

「少し恥ずかしいけど、嬉しいな。」

 

ナナも見てくれてるのかな。お父さんは…多分欠伸しながら豆腐売ってるだろうな。

 

息も少し整って来た。私はスタンドに一礼して控室に戻る。

 

 

 

「お疲れートレノちゃん!良かったよー無事に勝てて。」

 

「無事っていうほど余裕なかったですけど、勝てたのは渋川さんのおかげですよ。」

 

「えぇ~そうかなぁ~~もっと頼ってくれてもいいんだよ?」

 

「やっぱりいいです。」

 

やっぱりこの人は簡単に褒めちゃいけない。簡単にノせられる。

 

「ようトレノ、やっぱり勝ってくれたか。」

 

「ロータリーさん、来てくれたんですか。」

 

「まあな。今度の弥生賞も中山だし、全力で走るお前を見れるんだ。予習にはもってこいだろ。」

 

「あっ。」

 

言われて気付いた。ホープフルも弥生賞も同じ中山レース場で開催される。となると何も考えないで、さらに柵走りまで使ったとなるとかなり情報を与えてしまったことになる。

 

「あれ、結構ヤバいじゃないですか。」

 

「うん、弥生賞まで余裕ないかもしれないよ。それに皐月賞も続くから…。」

 

「………どうしましょう?」

 

「どうしよう。」

 

「言っとくがキタサンとダイヤも見に来てたぜ。トレーニングだって帰っちまったが。」

 

渋川さんと同時に頭を抱える。少なくとも今までよりハードなトレーニングになりそう。

 

とおるるるるるるるるるん

 

「ナナ?ビデオ通話だ。もしもし?」

 

『おめでとーートレちゃん!!』

 

「ありがと、ナナ。あれ、学校の皆?」

 

画面をよく見るとナナの自室ではなく半年前まで通っていた学校の体育館だった。

 

「まさか、皆で見ててくれてたの?今って多分休みだよね?」

 

『そんなの関係ないよ!トレノちゃんのレース、それもG1なんだから!』

 

私って思いのほか応援されてたんだな。こうしてナナが見せてくれたからこそ実感出来た。

 

「じゃ、俺もトレセンに帰るとするさ。それに、悩むのもいいけど、勝ったんだから素直に喜んでもいいんじゃねえか?」

 

ロータリーさんは大人な対応を見せて帰っていった。

 

「私も席を外そうかな。積もる話もあるだろうし。ライブまで時間もあるし、ゆっくり話してていいよ。」

 

そう言って渋川さんも部屋を出ていった。

 

『良かった良かった、話したいこといっぱいあるんだ!まずはね!』

 

 

 

「良いんですか池谷さん?トレノちゃんと話したいってさっき言ってましたよね?それにこれからライブですよ?」

 

「いや、やっぱ遠慮しとくよ。結構忙しそうだし、明日だって仕事だからな。」

 

「そうですか、少し寂しい気もしますけど。また応援に来てくださいね。」

 

帰ろうとする池谷さんそう言って見送ると、池谷さんが急に足を止める。

 

「そういやさ、MFGには出ないのか?榛名ちゃんの実力だったら神フィフティーンにも入れると思うけど。」

 

「出たいですけど、来年は忙しくなりそうですし。出るとなったら再来年の4回大会の時ですかね。」

 

「そうか、もし出るんだったらトレノちゃん共々応援させてもらうよ。」

 

「ありがとうございます。かなり待たせるかもしれませんけど。…あそう言えば。」

 

結構重要なことを忘れてた。私からも聞きたいことがあったんだった。

 

「私のコースレコードを破ったスープラって誰か知ってますか?」

 

「榛名ちゃんだったら知ってると思ったんだが。榛名ちゃんでも知ってる奴だぜ?」

 

「知ってる奴…?」

 

少し唸りながら考える。私以外の群馬の走り屋で、私のコースレコードを破れる人なんて…早々……。

 

イラァ

 

「瀬名ですか?」

 

「ああ、今年の四月に秋名のコースレコードを破って名実ともに群馬最速になったんだ。」

 

「アイツ確かMFGに出るって言ってましたよね?前回はまだしも今回も出ないで今何してるんですか?」

 

仮にも私を抜いて最速になったんだったら出ても良かっただろうに。何か?群馬だけじゃ不満か?…私だって不満だよこの野郎。

 

「そこは分からないけど…高橋啓介の秘蔵っ子だから何か条件があるんじゃないか?」

 

「引っ張り出してやります。」

 

「はぁ?」

 

「その条件が何か分かりませんけど元最速の名に懸けてMFGに引きずり出してやります!」

 

「でもさっき忙しいって言ってなかったか?それなのに出て仕事とか大丈夫なのか?」

 

確かに来年になったらクラシック三冠に向けてのトレーニングがある。それを疎かにするのは気が引けるけど何も年中忙しい訳じゃない。

 

「第2戦だったら問題ないと思います。G1のレースに3回出るんですけど2回目と3回目は期間が空いてるのでそこだったらいけます。」

 

「ま、まあ出るんだったら応援するよ。」

 

待ってろよぉ諸星瀬名!群馬最速の称号は私のものだから!

 

「そういやぁ、諸星瀬名がなんて言われてるか知ってるか?」

 

「なんて呼ばれてるんですか?」

 

「上毛三山スカイウォーカー、しかも自分で言い始めたらしい。」

 

「…イタイデスネ。」

 

 

 

 

 

「明けましておめでとー!」

 

「明けましておめでとうございます。」

 

新年を迎えて、私と渋川さんは群馬に帰省していた。

 

「まだそんなに時間経ってないのに懐かしい感じがします。」

 

「帰って来て早々だけど、このまま初詣行こうか。伊勢崎の神社でいいかな。」

 

「はい、私もいつも行ってるところです。」

 

 

 

お賽銭を入れパンパンと手を2回叩く。お願いはレースで勝てますように…じゃないな。強くなれますように?神様に頼むことじゃないような…。

 

「群馬最速を再びこの手に…インプの改造費がどこかから出てきますように…あとトレノちゃんがケガしませんように…あぁついでに彼氏ができますように!」

 

煩悩まみれの人が横にいた。私の事もお願いしてくれてるのはありがたいけどついでかぁ。大丈夫かなぁ。

 

「あとMFGに日本車が出ますように…他の人がミスファイヤリングシステムの良さに気付きますように…それから…。」

 

あれだけ頼んでまだあるんだ…ここまで貪欲な人にはなりたくないな。それと比べたら私のお願いは控えめかな?

 

「実りある1年になりますように…これでいいかな。行きましょうか、渋川さん…?」

 

目を疑った。その手には諭吉さんが握られていた。いくらお願い事が多いからってまさか本気でそれをお賽銭にする人が

 

「なにとぞ~!」

 

いた。神頼みにしてもここまで本気な人を見たことが無い。もう怖くなってきた。初めて会った時の渋川さんに似ている。執念かな?

 

「よし、行こうかトレノちゃん。」

 

「あ、はい。」

 

 

 

「着いたよ、トレノちゃん。」

 

「ありがとうございます。明々後日またよろしくお願いします。」

 

「オッケー。10時くらいにここに来るからお願いね。」

 

そう言って渋川さんは走っていく。久しぶりの家だ。なんでか緊張してきた。

 

「何ぼーっと突っ立ってんだ。早く入れ。」

 

「そこはおかえりって言って迎えてくれるのが普通じゃないの?」

 

「そういうのが出来るように見えるか?」

 

「いや全く。」

 

傍から見ればただのぶっきらぼうな豆腐屋のおじさんだからそんなのは期待してなかったけど。

 

「…まあ、頑張ってるんじゃねえか?良くやってるよ。」

 

お父さんが振り返りながら何か言った。でも小声でなんて言ったのか分からなかった。

 

「え?何か言った?」

 

「別に。早く上がれ、メシ作るから待ってろ。」

 

 

ホープフルで柵走りを使ったのはかなりの痛手だろう。手の内を把握されたら厄介なのは火を見るよりも明らかだからな。

 

だが、俺は何か言う立場じゃない。主役はトレノと榛名だ。一線を引いた俺が出来るのはアドバイス位だろう。

 

「さあ、弥生賞までにどうやって仕上げるかな。」

 




「ねえ作者、少し聞きたいことがあるんだけど。」

後書き冒頭から何でしょう榛名さん。

「私、四十五話でトレノちゃんにどんな状態で運転してるのって質問されたじゃん。」

されましたね。それがどうしたんですか?

「それに答えてるのはいいけどさ、仮にもサーキット攻めたことある人間が間違えちゃいけない間違え方したでしょ。」

何のことでしょうね~。

「とぼけないで!すでに直ってるけど私あの時左手でステア握って右手でシフトノブ持ってることになってたんだよ!?インプ日本車だよ?手をクロスさせて運転してるみたいなことになっちゃったんだよ?」

まあまあ落ち着いて。直したんですからいいじゃないですか。

「にしてもあの間違いは無いと思うんだ。いつも私の扱い雑だしさ…よよよ〜。」

次回は榛名さんメインですから元気出してください。

「よぉ~し首洗って待ってろよぉ~瀬名!」

ちょろいっていいですね。また次回!
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