頭文字D プリティーステージ   作:サラダ味

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第四十九話 元最速の意地

トレノちゃんを家まで送ったその足で赤城山に来た。レコードを破られておいてそのままMFGに出る訳には行かない。

 

せめてでも自己ベストは更新してから出ないとMFGには出られない。

 

「…くそ、ダメか。」

 

これで下り3本目、上りも含めて6本目。ベストタイムには近づいてきたけどまだ届かない。車を降りてタイヤを確認する。

 

「あと2往復が限界か。コンマ一秒でもタイム稼がないと。」

 

4WDでドリフトしたらアクセルはベタ踏み、主にステアでコントロールしていく。FRみたいにアクセルでコントロールしようとするとかえってアンダーが出てしまう。

 

「まだ少しカウンター当てちゃう。」

 

リアが流れたらゼロカウンターでコーナーをクリアしていくのが理想だけど、どうしても少しだカウンターを当ててしまう。

 

「ペダルワークも少し荒い…。入口で出さなくていいアンダーで出口で10…いや5㎝ベストラインを外す。」

 

走り込みを始めて3年くらいの時、タイムが伸び悩み、スランプになってた。そんな時、師匠二人に出会ってからペダルワークやらステア操作やらが格段に進化した。

 

だからこそ、その1年後にレコードを塗り替えることが出来た。でもそれが塗り替えられるなんてなぁ。

 

「それだけまだまだ無駄が多いって事か。」

 

低速域でタイムを削る方法はミスや無駄を無くすことが地味だけど一番だから。

 

「休憩終わり、あと2往復頑張ろう!」

 

瀬名が出来るんだから、私に出来ないってことは無いでしょ。

 

 

 

「ラスト、下り5本目!」

 

自己ベストまでコンマ1秒、この一本でタイヤ使い切って意地でもタイム稼いでやる!

 

緩い左、少しきつい右、続けて左のヘアピン。スピードを出来るだけ殺さず、かつ最短距離を流していく。

 

「流石にアンダー気味か…。」

 

熱でタイヤがタレてきている。ここまで全開で走れば流石にタレてくる。

 

でもこの程度ならこの一本に影響はない。赤城の第1セクションはテクニカルな面が強い。だからパワーよりもくるっと曲がる車の方が強い。

 

パパパン!

 

そういう面で考えればS2000とかロードスターの方が有利だけど、私のインプはそんなにやわなセッティングはしてない。

 

「良い感じ…。」

 

吸排気系のパーツを見直して、過給圧を少し上げたチューニングで330馬力を発揮するエンジン。

 

サスは基本的には固め、タイヤもMFGが決めたグリップウエイトレシオに準じたタイヤを使っている。

 

その他ボディ剛性だったり軽量化していって私好みのセッティングにしていった結果、上りだろうが下りだろうが、たとえサーキットでもトータルに速い車に仕上がった。

 

インプの仕上がりには絶対の自信を持っている。スープラはもちろんアルピーヌだろうがポルシェだろうが負けるつもりはない。あとは…。

 

ガオ ギャオ ギャアァァァアア

 

「私のテクが通用するかどうか…。」

 

神フィフティーンは全員神がかりなドラテクを持っている。対抗するとなると今以上に精度の高いドラテクが必要になる。

 

それに車の仕上がりなら負けないと思ってるけど、ステータス一つ一つを取ると確実に負ける。

 

ストレートの伸びならランボルギーニやフェラーリ、何なら出場車種全部に負ける。コーナーワークでもポルシェは厄介だ。

 

「第2セクション…このままのペースで。」

 

だからと言ってそれが負けていい理由にはならない。いくら不利だろうとこっちには最高の武器がある。

 

パパンパパン!

 

ミスファイヤリングシステム、このシステムに出会ったおかげでインプは曲がってヨシ、立ち上がってヨシのとんでもないコーナリングマシンになった。

 

「連続S字、良い感じにつなげてる。これなら。」

 

第3セクション、ここからはストレートからのヘアピンが続く。330馬力の本領発揮はここから。アクセル全開でコーナーに侵入。

 

ゼロカウンタードリフトでベストラインに乗せる。

 

「良い感じ…。」

 

 

ピッ

 

決めていたゴールラインでタイマーを停止、サイドターンで車を止める。

 

「自己ベストコンマ5秒更新…嬉しいけど、瀬名のタイムに届いてない。」

 

タイマーは2分45秒482。これでも瀬名のタイムに1.5秒届かない。1か月も走り込めば迫ることも出来るけど明々後日にはトレセンに帰らないといけない。

 

明日は妙義、明後日は秋名で走るとなると今日はこれでお開きかな。タイヤも使い切っちゃったし。

 

「…チッ。」

 

 

 

 

 

「お母さんはいつも人使い荒いんだから…。」

 

「店先で愚痴らないで下さい。木綿に厚揚げ、あとがんもですよね。」

 

正月2日目、久しぶりにゴロゴロしていようかと思ったら店番を頼まれて、渋川さんが来て何故か愚痴を聞かされている。

 

「あ、うん。ところで、どこか走ってきた?」

 

「新聞配達してたって話したじゃないですか。それで付いた癖がどうにも抜けなくて、その時間になると起きちゃうんですよね。それで走ってきて帰って二度寝ですね。」

 

「うわぁ、頑張ってるなぁ。私なんて休みってなったら一日中家でぐうたらだよ。」

 

「私もそうする予定だったんですけど、癖って怖いですね。」

 

ふと渋川さんの車を見ると昨日と比べて汚れていた。黄砂とは違う、泥汚れみたいなのが増えていた。

 

「渋川さんも結構車が汚れてますけどどうしたんですか?」

 

「赤城を上ったり下ったりしてただけだよ?」

 

「思いっきり人のこと言えないじゃないですか。」

 

 

 

「いらっしゃいませ~!おっあのインプ。」

 

「久しぶりです、武内さん。ハイオク満タンで。」

 

このガソスタに寄ると群馬に帰ってきた実感がより一層増してくる。

 

「聞いたよ榛名ちゃん、今度のMFG出るみたいじゃん。応援するよ!」

 

「ありがとうございます。瀬名の奴を引きずり出してやりますよ。」

 

「おっ随分久しぶりだな榛名ちゃん。インプもまだまだ調子良さそうじゃん。」

 

「健二さんも久しぶりです。私が仕上げたインプですし、毎週不調が無いか確認してるからまだまだ現役ですよ。」

 

大学生の時は秋名をメインに攻めてたから週に2回のペースでここに通っていた。休みで暇な時にはバイトさせてもらってお小遣い稼ぎしてたっけ。

 

「1週間ぶりだな、榛名ちゃん。もうどこか攻めてきたのか?」

 

「昨日赤城の自己ベストは更新できたんですけどそれでも瀬名の記録には届かなかったです。悔しいですけど、瀬名のテクは本物ですよ。」

 

「榛名ちゃんでも駄目だったか…。でも自己ベストは更新できたんだろ?」

 

「コンマ5秒ですけど。久しぶりのアタックだったのでコースに対するブランクもあったのでこんなものかなとは思うんですけどやっぱり悔しいですよ。」

 

元最速なだけに尚更そんな気持ちになる。サーキット行ったりトレセンで近場の峠探してテクを磨くしかないか。

 

「今日もどこかで走ってくるのか?」

 

「今日は妙義ですかね。明日は秋名に行きます。MFGに出るならせめて自己ベストは更新できないと神フィフティーンとやりあえませんから!」

 

 

 

パパパパン! ギャアァアアァ

 

「3本目でタイム更新。中々いい感じ。」

 

2分49秒637。瀬名のタイムの約1秒落ちと考えれば中々いいタイムが出た。ミスした部分も含めればあと2本でコンマ5秒縮まりそうだ。

 

「さて、上り4本目、集中していこうか。」

 

インプに乗り込んでスタートラインで車を止めてタイマーとロケットスタートの準備をする。あ、車キタ。

 

「少し待とう。その間にイメトレっと。」

 

ハザードを焚いて後ろから来た車が通りすぎるのを待つ。…止まった?まさか警察?まだ悪いことしてないよ?

 

少し焦っているとその車がチカッチカッとパッシングしてきた。…なるほどそういう事か。

 

ま、受けない理由は無いよね。タイマーをナビシートに投げ捨て、バトルモードに入る。

 

ガオッ パパンパン!

 

「インプレッサ、吹き上がれ!」

 

ギィヤァァアアア

 

仮にも元最速、付いてこられるものなら、付いてきてみな!

 




榛名さんメイン会、こんな感じで次回まで続きます。本当は1話で終わる予定だったんですけど書きたいことを書いてたらこうなっちゃいました。テヘ。

「まあそんなに私を活躍させたいっていうなら3話でも4話でも出張っちゃうけど?」

いえ次回で強引に終わらせます。引き伸ばしたらトレノ早く走らせろってなりそうですし。それに榛名さんはMFGに出るから活躍の場はあるじゃないですか。我慢してください。

「チェ。まあいいや。皆、私の活躍、心して待っててね!」

まあ、その時期に出る気があればの話ですけど。

「それってどういう?」

また次回!
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