頭文字D プリティーステージ   作:サラダ味

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第五十二話 ガムテープ

レースに無事に勝って控室で休んでいるとダイヤちゃんが入ってきた。

 

「キタちゃんお疲れさま!お茶ここに置いておくね。」

 

「やったぁ!…ぷはぁ!レースの後のお茶は美味しいなぁ!」

 

やっぱりダイヤちゃんのお茶はいつ飲んでもおいしいや。特にレースの後だと全身にお茶のうまみが染み渡る。

 

「おめでとう、キタちゃん。正直負けちゃうかもって思っちゃった。」

 

「作戦だったのか?だとしたら結構危ない橋渡ったよな。」

 

「トレーナーさんからの作戦で、今の体だと逃げは厳しいからという事でこの作戦を思いついたそうです。聞いたあたしが一番驚きですよ。」

 

「まあそうだよね、キタちゃんの普段の走り方を知っているだけに私たちもびっくりだったよ。」

 

「何にせよ、こうやって勝てたんだ。これでクラシック三冠が熱くなるってもんだ。…だがまずはお前だ、トレノ。」

 

そう言ってロータリーさんはトレノさんを指さす。トレノさんは驚いた様子もなく普段の天然っぽい目でロータリーさんを見つめている。

 

「弥生賞までにさらに速くなってお前をぶっちぎって俺の速さを見せつけてやる。」

 

「これ以上速くなられると困っちゃいますよ。どうにかテクを磨かないと。」

 

「あれ以上磨いてどうするんだよ。対策するこっちの身にもなってくれ。」

 

うわぁ、あたしとダイヤちゃんそっちのけでバチバチだよ。…でも。

 

「そうやってバチバチなってる間に横から皐月賞貰っちゃいましょうかね~。」

 

「キタちゃんだけずるい、皐月賞を勝つのは私だから。」

 

「「皐月賞も俺(私)が勝つ!」」

 

皆気合十分だなぁ。私も皐月賞で逃げを打てるようにトレーニングしなくちゃ!

 

 

 

 

 

「さて、弥生賞まであと1カ月。出来る事は少ないかも知れないけど出来る限りの事はやっていこう。」

 

「相手はロータリーさんですから。何か特別な事ってやるんですか?」

 

「今は特にはやらないよ。やるにしても残り1週間になってからだね。」

 

「残り1週間ですか?結構短い気がしますけど。」

 

特別なことをやるのはいいけど1週間で身に付けろって言われても流石に困る。

 

「確かに短いけど、東条さんとか他のウマ娘に情報を与えたくないんだよね。ただでさえホープフルで情報丸裸なわけだし。」

 

「ですね。それじゃあ、今日はいつものようなトレーニングですか?」

 

「いや、今日からは坂路中心のトレーニングだね。中山の上りを克服できれば勝率もかなり上がると思う。取り敢えず3セット行ってみようか。」

 

「分かりました。」

 

 

トレノちゃんに販路を走ってもらっている間に色々とシミュレーションする。コーナーでは…多分こっちに分がある。

 

でもストレートは確実に負ける。中山には長い坂がある。弥生賞までにいくらか改善されるとしても不利なレースになる。

 

ふとトレノちゃんのコーナリングを見る。鮮やかにクリアしていってるけど…あれほどの荷重移動のコントロールが出来るなら。

 

「やっぱりやるかな、ガムテープ。」

 

それに坂での走法も改善できる。ホープフルでは坂に入ったトレノちゃんはストライドとピッチの中間位の走り方をしていた。

 

それをピッチに寄せることが出来れば。結構前にトレノちゃんにストライドとピッチが頻繁に変わる走り方について聞いてみたら。

 

(そんなに変わってますか?ただ普通に走ってるだけなので意識したこと無かったです。)

 

との回答が返って来た。あの走り方が無意識だと『坂はピッチ走法で走って』って言っても混乱させちゃうだけかもしれない。

 

だからと言って放置するわけにもいかない。このセットが終わったらそれとなく伝えてみよう。

 

「そろそろ坂…あれ、足の回転があの時より速い?」

 

驚いた。ホープフルの時より速くなっている。測定したタイムも縮んでいる。

 

「ハァ…3セット終わりました…。」

 

「お疲れ、この前よりタイム縮んだよ。坂の走り方が良くなったけど誰かに教えてもらった?」

 

スポドリを渡しながらさっきの走り方について聞いてみる。

 

「いえ、特には教えてもらっていませんし、走り方を変えたつもりも無いんですけど。」

 

「これが天才肌って奴なのかな。」

 

ともあれ不安要素が自然に解消された。となれば残りの1週間の時にやるトレーニングにトレノちゃんが対応できるか。

 

 

 

「弥生賞での作戦って何ですか、東条トレーナー。」

 

「ええ、私なりに色々と考えたのだけれど…弥生賞、トレノの後ろを走りなさい。」

 

「トレノの後ろ…ですか?」

 

「そうだ、これまでのレースを振り返って、全員がトレノの前を走って負けている。あのタマモクロスでさえも。」

 

後ろを走るなんて想像もしない作戦だった。だけど俺の脚質は逃げ、先行。まあ先行の方が得意なんだがな。

 

「待ってください、俺の脚質は先行です。トレノが追い付けないくらいにぶっちぎればそれで…。」

 

「お前の言いたいことも分かる。確かにお前ならそれでも勝てるかもしれない。だがその先の皐月賞がある。それまでに情報を出し過ぎたくない。」

 

「そのための後追いですか。」

 

「トレノのコーナリングは他の追随を許さないものがある。だが弱点が無い訳じゃない。」

 

「弱点ですか。まあ無いと困りますけど。それで、その弱点って何ですか。」

 

それさえ分かれば負ける気はしない。弱点ってのはなんだ?

 

「それはトレーニングで説明するわ。どれも言葉では説明しづらいものよ。早速行くわよ。」

 

 

 

 

 

弥生賞まで残り1週間。坂路が中心だったトレーニングも少しずつ他のトレーニングもやり始めた。上がり3ハロンのタイムを計ったり。

 

今日も今日とてトレーニングなんだけど…渋川さんが何か持ってる。

 

「何ですか、それ。」

 

「何って、ガムテープだけど。」

 

「だからそのガムテープが何かって聞いてるんですけど。」

 

なぜここにきてガムテープなのか。そもそもガムテープを何に使うのか全く分から

 

(トレノちゃんの脚をガチガチに固めようかなって。)

 

…嘘やん、マジでやろうとしてるの?仮に巻いたとしてもホントに効果あるの?

 

「よし出来た!これで走ってみてくれる?」

 

「人の許可を貰っても無いのに巻かないで下さい…ってほとんど動かないんですけど。」

 

「だってそうなるように巻いたから。それと、ゆっくりじゃなくて全開に近いペースで走って。」

 

全開に近いペースで?それって余計に危ないんじゃ…。そんなことを思っていると渋川さんが説明を続ける。

 

「車だとこのルールはガムテープデスマッチって言うんだけど安全に行けば行くほど罠の多いルールなんだ。だからと言って全開は全開で罠多いんだけどさ。」

 

聞いてる限りかなり絶望的な情報をポンポン出してくる。これ本当にやって大丈夫なの?

 

「コツもあるにはあるんだけど、凄い感覚的な事だし実際に走って体感してもらうしかないんだ。まあ取り敢えず行ってみよう!」

 

「不安しかないんですけど…。何かあったらお願いしますよ?」

 

「分かってるって。そんな無責任な事はしないから。」

 

「そういう事なら…じゃあ、行きます。」

 

恐る恐る走り出す。少し走っただけで窮屈さを感じる。全開で行け…か。取り敢えずいつも通りにコーナーに入る。

 

スピードに乗ったままコーナーを曲がっ…! ヤバ!

 

 

「転ぶ!」

 

流石に無茶だった。よく考えなくてもガムテープデスマッチがトレーニングに応用できる訳が無かった。1秒でも早く助ける為にトレノちゃんの元に走る。

 

でもその足は止まることになった。トレノちゃんは咄嗟に体の向きをコーナー出口に変えてドリフトに近い形で転ばずにクリアしていった。

 

「すご…。完全にイッたと思ったのに。後でケガしてないか確認しなきゃ。」

 

あの様子から見て、ケガはしていないかもしれないけど大事を取らないと。…いや、今止めさせないとケガしていた場合に悪化するかもしれない。

 

そう思って息を吸って大きな声で呼びかける。

 

 

も、戻ったぁ。ラッキー…。可動域の少なくなった足を無理やり動かして、ダメ押しに体も捻ったからどうにかなったけど…。

 

アキレス腱切れるかと思った。かなり痛かったけど走るのに走るのに影響は無い感じかな。

 

さて、もう一つのコーナーをどうクリアするか。…もう一度全力で曲がってみる?無理やりでも曲がれたって事はコツさえ掴めば普通に曲がれるんじゃ。

 

怖いは怖いけど…やってみよう。

 

「トレノちゃん!走るの止めて戻ってきて!」

 




どうしましょうかね~誰か呼ぼうにも話題のわの字すら出ないので誰を呼べばいいのか分かりませんね。

という訳でここで終わりましょうかね。

所で皆さん、から揚げの衣って片栗粉派ですか?小麦粉派ですか?

どっちが多数なんでしょうかね。ちなみに僕は片栗粉派です。

まるっきり関係ない?そんなー。

また次回!
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