頭文字D プリティーステージ   作:サラダ味

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第五十六話 皐月賞に向けて

皐月賞まであと3週間。トレノちゃんのトレーニングは順調そのものなんだけど。タイムの伸びが良くない。

 

いや、縮むことは縮んているんだけどそれはテクニックで縮めていったもの。凄いんだけど身体的成長があるかと言われると。首を縦には触れない。

 

「こんなにトレーニングしてるのに何で?頭打ちって訳でもなさそうだし…。そうなるとやっぱり?」

 

本格化を迎えていない。トレーニングを始めてしばらく経った時にうっすらと頭によぎった可能性がここに来て復活した。

 

「こうなるとテクニックにプラスアルファの何かが無いと…勝ち目が無いとは言えないけどでもまだ何か無いと安心できない。」

 

…この前ドラテク教室開いたら思い切り拒否されちゃったけど、もう一回開かないとかな。

 

「トラック2周、終わりました。」

 

「お疲れー。トレノちゃん、明日のトレーニングなんだけどさ、ドラテク教室でいいかな。」

 

ちょっと嫌な顔をされる。そこまで嫌だった?

 

「またインホイールリフトとか言い始めるんですか?」

 

「大丈夫!前回の反省を踏まえて心理面に特化したドラテク教室にするから!」

 

「それなら、分かりました。明日はトレーナー室ですか?」

 

「うん。それじゃあ次は…ガムテープ行ってみようか。」

 

「いえ結構です。」

 

 

 

「という訳で、レースで使える知識を授けましょう!まずは先行後追いのメリットデメリットについてかな。」

 

「そういうの待ってました。よろしくお願いします。」

 

「まず機会はもう無いと思うけど先行した時のメリットだね。まず当然だけど自分でペースを作れるし、ライン取りにも自由度が増すんだ。視界がいいのも特徴かな。」

 

「なるほど、デメリットの方は何ですか?」

 

「それはトレノちゃんが1番分かってるんじゃないかな。後ろからのプレッシャーに晒され続けることになるし、何より相手に自分の戦闘力が丸裸になっちゃう。」

 

それは確かにそうだ。あの時なんかその言葉通りの状況になった。今教えてくれたメリットなんか感じられないくらいだ。

 

「それに、これを1番感じたんじゃないかな。“敵わないかもしれない”って」

 

「…!…はい。坂を上り切ったあたりで本当にそう思いました。どんなに走っても離れないせいでロータリーさんの方が速いんじゃないかって。」

 

「張り付かれるとそういう心理になりやすいんだ。特にレース経験があまりないとか、トレノちゃんみたいに後ろに付かれる経験が無い人ほどそうなりやすいんだ。」

 

サーキットって所での経験なのか、分かりやすく説明してくれる。私が受けたであろう心境を的確に汲み取って心理面での説明もしてくれる。

 

「それじゃあ次に後追いだね。まずデメリットからかな。後追いで行くとなると相手が視界の邪魔になってターフとなるとぬかるみとかが分かりにくくなるとか。」

 

「そうなんですよ。コーナー入って初めて内側のぬかるみに気付くって事があるんです。」

 

「それと、身体能力で差がある時限定だけど前の子につっかえちゃったりしちゃうとかね。…トレノちゃんのこと言ってるわけじゃ無いよ!」

 

付け加えちゃうと私が前の時は後ろがつっかえるって言ってるようなものじゃん。

 

「でも、それ以上のメリットもあるよ。まずさっき言った先行のデメリット、あれがすべてメリットになる。プレッシャーかけられるし相手の戦闘力も分かる。

 

それに、テクニックがあれば相手のラインやペースをコピーすることが出来る。この前ロータリーちゃんが付いてきてたのはこれだと思う。」

 

「だからあそこまで私の後ろに付いてたんですかね。」

 

「多分ね。そのままちぎられるリスクは当然あるからそこは注意かな。簡単にだけどこんな感じかな。」

 

「ポジションだけで戦略として結構変わってくるんですね。」

 

「そうだね、それじゃあ次にライン取りについてかな。」

 

 

コーナリングを見ているとラインを正確にトレースする能力があるのはすぐに分かった。それ故にそこが弱点になることがある。

 

「トレノちゃんってライン取りって意識してる?」

 

「そこまでは…弧を大きく描くように曲がってますかね。後は出来るだけ内側を走って最短距離を走る感じですかね。」

 

「成程ね、間違ってはないし大体正解かな。でもそれが崩れる時が来るかもしれない。」

 

ラインに固執する走り方はハマると強いけど、崩された時のダメージがでかい。今の所その兆候は無いけどもしそうなったら脆さになる。

 

今後の事を考えるとそれ以外の走り方があることも教えておいた方が良いかも知れない。

 

「崩れる時…ですか?」

 

「ラインって一言で言っても色々あるんだ。とは言っても説明だけじゃ分かりにくいから動画で説明するね。ちょっと待ってて。」

 

そう言ってパソコンの中で眠ってた昔の動画を引っ張り出す。横に乗せてもらった時は何が起こってるのか理解するのに時間が掛かったなぁ。

 

「まずこの1本だね。この映像よく見ててね。」

 

そこで流した動画は筑波のゴッドアーム、城島さんの車載動画。トレノちゃんも珍しく食い入るように見てくれている。

 

ラインの重要性はこの人の動画を見るのが1番だと思う。問題点としてはテクを持ってれば持ってるほど混乱してしまう事だけど。

 

「なんとなく覚えた?」

 

「なんとなくでいいなら…覚えましたけど。」

 

「それじゃあ次にこの動画。スタート地点、コースは同じだけどよく見ててね。」

 

城島さんに無理言って2本走ってもらったのが意外なところで役に立った。トレノちゃんも驚いたような顔をする。

 

そのままの勢いでゴールして動画が終わる。何度見ても驚くけど動画が終わる時間に何故かズレが無い。

 

「これって、動画時間何分なんですか?」

 

「両方とも3分だね。…その上でどう見る?」

 

「訳分からないですよ。走ってるところがまるで違うのになんでこんなにタイムがばらけないのか。」

 

「これがラインの重要性なんだ。ベストラインは確かに1本かも知れない。けど実際に描けるラインは何本もあるでしょ?」

 

ホワイトボードに何本も半円を描いて見せる。

 

「こういう何本もあるラインを使いこなせればレースではかなり有利になるよ。」

 

「でもそれってかなり難しいですよね。相当走り込まないといけない気がするんですけど、皐月賞までに間に合うんですか?」

 

「いや、今のところは覚えていてくれればそれでいいかな。出来るようになるのは早くて菊花賞、遅くても来年春くらいでいいかな?」

 

「まだまだ先は長いですね…。」

 

「そうだね。でもまだまだこれからだよ!明日からまたトレーニング、頑張ってこ―!」

 

「はい!」

 

 

 

 

 

「だいぶ付いて行けるようになったな、キタサン。」

 

「それでも精一杯ですよ。あそこまでのペースで走ってるのに息も切れてないんですから。」

 

スズカさんの方を見ると涼しい顔をしている。だけどあたしも後ろをがむしゃらに走っているうちにスタミナが着いてきたと思う。

 

「スズカさん!もう1本お願いします!」

 

「良いわよ、フ…!」

 

「いきなり走らないで下さいよ~!」

 

 

「どう、トレーナー。キタちゃん勝てそう?」

 

「仕上がりも良い感じだ。この調子なら皐月賞で良い走りが出来るだろう。」

 

「へー、でもさ、トレノとかロータリー、ダイヤちゃんとかの対策とかしなくてもいいの?」

 

「ロータリーやダイヤの対策は既に立ってる。…でもトレノの対策はどうにもな。」

 

ロータリーはその速さでキタサンより4,5バ身程離れた位置で様子を見るだろう。ダイヤは自慢の足を溜める為に後方で足を溜めると予想できる。だがトレノだけは…。

 

「トレノだけなの?後ろから煽られなければ多分追込で来るよね?」

 

「俺もそう思ってはいるが…弥生賞の事もある。要注意すべきはトレノだ。用心するに越したことは無いだろう。」

 

「にしし、それなら次の1本は後ろからキタちゃんを追いかけてあげようかな~。」

 

その後、キタサンから中々の悲鳴が聞こえてきたが、皐月賞に勝つための犠牲という事で目を瞑ろう。

 




アンケートご協力ありがとうございます。その結果、皐月賞を先に書かせていただきます。

感謝祭が先が良かった方、ちょっと待っててね☆

それと、気まぐれで設けたおうどんなんですけど、予想の5倍票が入ってました。

この作品の読者のうどんへの愛を無礼てました。マジであんなに入るとは思わなかった。

お詫びと致しまして、感謝祭にうどん回をねじ込みたいと思います。

この反省を生かして次回のアンケートからは蕎麦も設けます。

また次回!
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