頭文字D プリティーステージ   作:サラダ味

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第六十一話 カフェテリアにて

「にんじんハンバーグを2つで。」

 

「承知した、座して待て。」

 

あのあと、渋川さんとゴルシさんに捕まったけどなんやかんやで事なきを得てお昼を食べる為にカフェテリアに来た。

 

「まさかまた追われることになるとは…。」

 

「何と言うか災難だねトレちゃん。」

 

席について時計を確認するとまだ12時ほどだった。まだ12時なのか。

 

「色々あってどっと疲れたのにまだ12時なんだ…きつっ。」

 

「私もここまでいろいろあったのは初めてだよ。パネルにハマってる人もいたしオペラオーさんも誰かと何かやってたし。」

 

「その反動かは知らないけどデジタルさんが気絶してたね。」

 

「どいてくれ!急病人なんだ!今蘇生してやるからな!」

 

「…あんな感じになってる人もいるし。」

 

「…ハハハ。」

 

こんな短時間で色々あったらもう笑うしかない。

 

「ナナはこの後どこ回るとかある?」

 

「うーん。フジキセキさんの所に行く以外は特に…。正直午前だけでお腹いっぱいだよ。」

 

「同じくだよ。もう寝たいよ。」

 

「お待たせした、にんじんハンバーグだ。」

 

にんじんハンバーグと言われて出されたのは見れば辛いと分かるくらい赤い麻婆豆腐だった。突き刺さっているにんじんが心なしか泣いているように見える。

 

「……私達、麻婆豆腐頼んでませんよ?」

 

「…?麻婆だが?」

 

「さっきにんじんハンバーグって言いましたよね!?」

 

「にんじんハンバーグなぞ飾りだ。麻婆の底に申し訳程度に沈んでいる。」

 

「ホントだ、ようやくハンバーグが見えた…と言うかあなた誰ですか?」

 

目の前の麻婆豆腐に気を取られて気付かなかったけど見たことのない顔だった。ミホノブルボンさんのトレーナーさん位渋い顔をしている。

 

「ただのラーメン屋だ。ここの料理長が休みと言う事で臨時で雇われただけだ。」

 

「それにしては好き勝手しすぎじゃないですか?この麻婆も…ぐえっふ!滅茶苦茶辛いひゃないれふか!」

 

「いちいち文句が多い奴だ。連れを見習ったらどうだ?」

 

「はい?…ナナー!食べちゃダメー!」

 

ナナはなぜかこの麻婆を平らげていた。しかし食事後とは思えないくらい手が震えていて、目はどこを向いているのか分からないくらい点になっていた。

 

「だ、大丈夫?」

 

「味覚が今後一生使い物にならなくなる位の辛さで汗と震えが止まらないよ~。」

 

「それは食リポで出てくる言葉じゃないよ!?」

 

「どうした?お前は食わんのか?」

 

「ちょっと私はぁ…ヒィ!」

 

丁重にお断りしようかと思ったらこれまで受けたことのない殺気が飛んでくる。ラーメン屋が出して良い殺気じゃない!

 

「まだ天にお呼ばれしたくないよぉ。」

 

 

「ぐはぁ…ご、ご馳走様…でじだ…。」

 

「喜べ少女たち、君たちはこれで1日分のカロリーを摂取できた。」

 

「どこまで残酷な料理なの~!」

 

「トレちゃん…胃が、胃が内側から爆発しそうだよ~。」

 

「私も…!ゲッホ!変に息を吸ったらむせる…。もうしばらく辛い系はごめんだよ…。」

 

多分1年くらいは辛い系を食べないと心に決めながらカフェテリアを出ようとすると声が掛かる。

 

「どこに行く?まだ会計が済んでいないぞ。」

 

「「…え???」」

 

「麻婆にんじんハンバーグ、2つで5000円だ。」

 

「「…………………有料?」」

 

「当たり前だ。」

 

淡々と突き付けられた驚愕の事実。一瞬意識が飛びそうになったけど、その意識を何とか繋ぎ止めて反論する。

 

「でもカフェテリアの料理は基本無料だったはずです!請求するならナナ1人分じゃないですか!?」

 

「トレちゃん、結局私助からないんだけど?」

 

「簡単な話だ。今の店主は私だ。この店のルールは私が来た時点で変わった。それだけだ。」

 

「私最小限しか持って来てないよ…ナナ、お金持ってる?」

 

「ここでお金払ったら帰れなくなっちゃいまーす!」

 

笑顔で実質の死刑宣告が成された。なんで死刑宣告かって?

 

「まさか食い逃げではあるまいな?」

 

ご覧の通り、目の前のラーメン屋の店主が殺意の波動に目覚めている。

 

「ちょっちょっと待ってください!寮に行けばお金あるので!ちょっとだけ待っててください!」

 

「食い逃げ犯は大抵そう言って逃れようとする。だが私には通用せん。この手で幾人もの食い逃げ犯を屠って来たのだ。」

 

「と、トレちゃん!もう犯罪覚悟で逃げよう!?」

 

「ゴメン…多分逃げ切れない。逃げ切れるビジョンが浮かばないや…。」

 

何故そう思うんだろう。相手は普通の人間だ。常識であれば逃げ切れる。なのに逃げ切れる自信が無い。多分一瞬で追い付かれると思う。

 

「諦めが早くて助かる。昨日とんこつが切れたのでな。私の麻婆の礎になれることを幸運に思いながら、逝くがいいッ!!」

 

「こんな所で、終わるなんてッ…!」

 

全てが終わったと思い目をつぶっていると後ろから声が聞こえてきた。

 

「トレノちゃ~ん!うどん何故か余ってたから持ってきたよ~!」

 

「む?」「はえ?」

 

「え~どういう状況?」

 

 

 

「「うどんが染みる~。」」

 

渋川さんが持ってきたうどんが口に残った辛さを掻き消してくれるようだ。

 

「いやー大変だったね。カフェテリアでご飯食べたらお金請求された挙句豚骨スープのもとにされかけるなんて。」

 

「そうなんですけど言葉にすると意味わからないですね…。でもほんと、建て替えてくれて助かりましたよ。」

 

「私もトレノちゃん達に珍味になってほしくないからね。…ところでこのむせかえるような麻婆の匂いは?」

 

「さっきの人に聞いてください…。」

 

「おっけ、もう聞かない。踏み込んじゃいけないかもしれないから。」

 

渋川さんありがとう。私ももう話したくない。

 

 

トレノちゃん達はフジちゃんの所に行くみたいなのでカフェテリアで解散になった。なんやかんやでトレノちゃん達を助けられてよかった。

 

「まさかいきなりうどん屋の手伝いさせられるなんて思わなかったよ。」

 

「すいません池谷さん。でもおかげで全部売ることが出来ましたよ。」

 

「今度はスタンドでバイトしてもらうからな。」

 

「うぐ、何も言い返せない…。」

 

「それで、どうなんだ?MFGの準備は。」

 

その質問にふっふーんと返す。もちろん、決まってるじゃないですか。池谷さんに自信を持って答える。

 

「半分絶望しかないですよ~!」

 

「榛名ちゃんでもか…。」

 

「流石リッチマンズレギュレーションと言われてるだけあります。グリップウエイトレシオも考えればポルシェとかドノーマルでもバランスがいい車が有利なのも分かりますよ。」

 

「実際神フィフティーンが乗ってる車の大半が海外の有名どころだしなぁ。ポルシェだったりランボルギーニだったり。」

 

「日本にも良い車はたくさんあるのに。インプとかZとかRとかランエボとか、それこそNSXも。今年こそいて欲しいなぁ。」

 

特に35は世界でも高い評価を受けてるから乗ってる人いてもおかしくないと思うけど。

 

「どうするんだ?どうやって神フィフティーンを攻略していくんだ?」

 

「正直言って、テクであれば問題は無いと思うんですけど問題は車なんですよ。」

 

「車なら問題無いだろ?パワー上げたり、コースに合わせてセッティングしたり出来るんだし。」

 

「足回りはそうですけどパワーユニットだけはどうしてもいじりたくないんですよ。あれだけは私の美学みたいなものですし。箱根ターンパイクでも余裕で200キロ出るんですよ?6年走って熟成してやっとたどり着いた最適解なんですから、下げるにしても上げるにしても屈辱ですよ。」

 

これで上げることになったとしても400馬力より上げることは無いと思う。それ以上上げるとドッカンターボになって扱えたものじゃなくなる。

 

「でもそうなると単純に考えても馬力差は1.5倍とか2倍か。絶望的なんだろうけど…期待してるぜ。」

 

「もちろんですよ。なんやかんや言ってMFGは公道なんです。600馬力なんかどこで使うんだって話ですよ。私が考えるに、馬力なんてあっても400馬力で十分だと思ってるんです。リッチマンズレギュレーションに胡坐かいてる奴らの鼻っ柱ぶん殴ってやりますよ。」

 

「第2戦、群馬から応援するぜ。もちろんトレノちゃんのダービーも。」

 

「任せてください!両方勝って話題に困らなくしてあげますよ!」

 

「お待たせした、コーヒーだ。」

 

…………………???

 

「いや、頼んでませんけど。ってこれ麻婆じゃないか!」

 

「…?麻婆だが?」

 

…トレノちゃん助けて。このままじゃ珍味になっちゃう。

 




ンンッ!下手に麻婆を投入したせいでここまで麻婆の匂いが…。

あ、どうも。麻婆神父のせいで麻婆を食べる時「喜べ、少年」と言うようになってしまった男です。

そういえば最近スぺゲスさんを呼んでトークって事をやっていない気がしますね。やりたいんですけど誰を呼び出したらいいのか分からないんですよね。困った困った。

「ラーメンだ。」

おお来た来た。う~ん、醬油のいい匂いが…しない!このむせるような匂い、麻婆!?

「そうだが?注文したのはお前だろう?」

いや僕が注文したのは普通の醤油ですって。

「少女二人組に麻婆を食べたがっていたと聞いていたのだがな。」

やりやがった、仕返ししやがった。だがしかし、この麻婆がどれほどの辛さなのかは少し興味がある。食らってやろうではないか!先にお代だ!

「毎度あり。」

ふっふっふ、武者震いが止まらねえぜ。いざぁ!
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