頭文字D プリティーステージ   作:サラダ味

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第七十四話 MFGに向けて2

あの後、スタビライザーを少し硬くしたりサスの減衰力を調整したりして大まかにセッティングしてからお昼を食べている。

 

食べている間にもオフィシャルの攻略サイトでコースの確認をする。芦ノ湖をぐるっと回るコースレイアウト。地図だけで見ると道幅も広くて中高速域のコーナーがメインで、節目に低速のヘアピンがある。

 

このコースレイアウトなら3,4速を仕上げる形になるかもしれない。中速コーナーを3速でクリアできる様にギア比を合わせるか。

 

「初日から張り切るな。メシ食ってる時くらい休んだらどうだ?」

 

「いえ、折角協力してもらってるのでせめてこの1週間は気張りますよ。」

 

「そうか、まあ無理はするなよ。」

 

それにしてもこのデモ走行、ホントに速い。プロの、それも相当公道を走り込んでいる人なんだろうな。それに音で分かる。アクセルワークが恐ろしく上手い。

 

星野さんを思い出させるくらいに、どのコーナーを取っても最適なアクセル開度でクリアしていく。ライン取りだって完璧だ。完璧が故に、分かってしまった。

 

このデモレコードは、本気で走ったタイムじゃない。

 

つまり、タイムにはもっと先がある。恐らくこのタイムを出したドライバーはMFGのドライバーが簡単にこのレコードをクリアできると思っていたんだろう。

 

諸星瀬名の出場条件にもデモレコードが絡んでる。となると瀬名とこのドライバーには深いつながりがあるのかもしれない。

 

…今はそんなことはどうでもいい。それよりもコースの攻略を掴み事の方が重要だ。

 

 

 

「午後も頑張れよ。違和感があったらすぐに戻って来てくれ。」

 

「はい。…お願いがあるんですけど、良いですか?2、3、4本目のタイムを計ってくれませんか?5本目で帰ってくるので。」

 

「分かった。さあ、行ってこい!」

 

ルーフを軽く叩いて送り出す。1本目が終わる前に車からタイマーを出して構える。少し待っていると渋川の車が飛び出してくる。

 

スタートラインと重なるタイミングでタイマーを押す。妙義で後ろから見ていたから分かるが、明らかにブレーキングポイントがシビアだ。サーキットでも相変わらずか。

 

2本目、そのまま第1コーナーをクリアしていき、一時姿を消す。音だけでもかなり攻めているだろうことが分かる。

 

音が近づいてきて渋川が現れる。スタートと同じ位置でタイマーを押す。ほう、なかなかいいタイムだ。3本目は更にいいタイムになることを予感させる。

 

3本目、少し待っていると再び渋川が現れる。同じ位置でタイマーを押す。…? タイムに差が無い?用意したノートにタイムを書くが、ほとんど同じじゃねえか。

 

さらに驚いたのは、さっきとラインが全く違うところだ。さっき突っ込んでいったラインとブレーキングも全く違う。

 

ラインの違い、そしてタイムが揃っていることに疑問を抱いていると再び飛び出してくる。やはりさっきの脱出とはラインが違う。タイマーを押して5本目に入る。

 

これで帰ってくるんだったな。さて、タイムは…。

 

「嘘だろ…。」

 

ほとんど同じだった。思わず言葉が出るくらいに正確に、気持ち悪い位に揃っていた。どういうことだ?

 

 

 

「ふー、疲れたぁ。どうでした?中里さん。」

 

「どうもこうもねえよ。タイムは伸びてもねえし縮んでもいねぇ。むしろ揃えに行ったのか?」

 

「はい、コース攻略の基本はそのコースのツボを押さえることだと思ってるんです。ある程度走り込んで、そのツボを押さえるようになれば、タイムは揃えられます。」

 

「それじゃ、午前のセッティングを出してる段階でこのサーキットのツボを押さえてたって訳か?」

 

「そうですね。とはいえ、これが全開のタイムかと言われれば違いますけどね。」

 

今日の所はこれで十分かな。コースのツボを押さえるトレーニングはどうしても知らない峠に行って考えながら走る方が効率がいいと思う。そうなったらもうここでやることはあまり無い。

 

「夜から三重のどこかしらの峠を走り込みます。いくらサーキットで仕上げても峠の低速アベレージに合わないと話になりませんから。」

 

「分かった…引き受けたの間違いだったかもしれねえなぁ。」

 

その夜も、その翌日も峠を攻め、富士、筑波でも同じことをして着実に車を仕上げていった。…日に日に中里さんがやつれていったように見えた。

 

少し人使いが荒かったかな?

 

ともあれ、約束の1週間はあっという間に過ぎて久しぶりにトレセンまで帰ってきた。

 

「1週間ありがとうございました。おかげでだいぶん仕上がりました。」

 

「あ、あぁ…それなら引き受けた甲斐があったぜ。それじゃあな、応援してるぜ。」

 

そう言って中里さんは群馬に帰っていく。さて、ここまでで取れたデータをまとめてMFGに備えようとトレーナー寮に入ろうとすると強烈な眠気が襲って来た。

 

…そういえば、寝る以外の時間を…全部走るのに使ってたし…なんなら…睡眠時間…削ってたなぁ。

 

「少し…寝よ……。」

 

 

 

 

 

「渋川、1週間も帰ってねえのか…。どっかで事故ってなければいいがな。」

 

休暇届を出した翌日からトレーナー寮を飛び出していって何故か連絡も取れなくなれば心配にもなる。病み上がりだし、何よりトレノの事もある。

 

そんなことを考えながら欠伸をしながら歩いているとむぎゅっとした感触に変わる。なんだ?何か踏んだか?

 

「きゅ~」

 

「し、渋川っ!?いつ帰ったってか大丈夫か!?」

 

「う~ん…あと5分~むにゃむにゃ。」

 

「起きろ。」

 

特に問題は無さそうなので少し強めに蹴って起こす。

 

「なんだかお腹痛いよ~お母さーん胃薬持って来てー。あと二度寝するー。」

 

「ここはお前の実家じゃねえよ。寝ぼけてないで起きてくれ。」

 

今更ながら寝起きがこんなに弱いとは。初めて知ったぜ。少しして目をパチクリさせながら周りを見渡してその後に俺を見る。

 

「…マジかー、まさかこんな地べたで寝るとはなー。起こしてくれてありがとうございます。」

 

「ほとんど死んでるみたいで踏むまで気付かなかったぞ。1週間で何があったんだよ。」

 

「サーキットと峠を走れるだけ走って何パターンかセッティング出してたら寝る時間あまり取れなくて。帰ってきたらなんだか一気に疲れちゃって。」

 

「それで道端で死んでたと…何というか、大変だな。」

 

「トレノちゃんの事を考えればこれくらい大したことじゃありません。データまとめるので失礼します。」

 

そう言って駆け足気味でトレーナー寮に入っていく。…ふと気になった。多分改造してあるだろうしどれほど外見が変わっているのか。

 

少し見てみるか。そう思い駐車場に足を運ぶと嫌でも目についた。

 

「随分と…いかつくなったなぁ。」

 

ボンネットは黒くなってるしトランクに付いてる羽みたいなやつも変わってる。これだけみたらトレーナーとは思わないな。

 

 

 

 

 

「1週間ぶりだね。体調はどうかな。」

 

「大丈夫です。脚の方は相変わらずですけど。」

 

「そっか…まだ動かないんだね。あ、そうだ、これお土産。結構いろんなところに行ってきたから。」

 

「いや、本当にいろいろ言って来たんですね。両手いっぱいじゃないですか。」

 

お土産を横の棚に置いて持ってきたリンゴを剥いているとトレノちゃんが話し始める。

 

「私、本当に走れるようになるんですかね。」

 

「なるよ、絶対に。私はそう信じてる。」

 

「そうですか。いくらリハビリしても動かないんですよ?お見舞いに来てくれた人たちもまた走ってくれって言ってくれますけどそんなに期待してもらっても困るっていうか…。」

 

「ゆっくりでいいんだよ。焦っても良い事なんか一つもないから。それじゃ、そろそろ行くね。」

 

 

 

「さて、車はある程度仕上がった。後はコースの攻略を立てないと。」

 

デモ走行のラインをそのままトレースしても良いけど全長25.3キロ。全部覚えるのは現実的じゃない。

 

そうなるとコースを4つに分けて確実に詰めるセクションを決めた方が良いな。どこがいいかな…。

 

シミュレーターでもいいからMFGのコースを体感できるものがあれば詰める所も決めやすいし何よりセッティングも決めやすくなる。

 

どこかにそんな都合のいいような施設が無いか調べてみる。と言っても無いだろうけ

 

「あった!?」

 

まさかあるとは。秋葉原か…。このシミュレーター、予約制なのか。じゃあ今のうちに出来るだけ予約を押さえておかないと。

 

…よし、明日から走り込もう。シミュレーターと現実でどれだけ差があるのか分からないけどコースを知れるだけでも収穫は大きい。

 

あと2週間、気合入れないと。

 




皆さん、頭文字DACやっていますでしょうか。僕も最速目指してたまにやっているんですけど全然うまくならないんですよね。

榛名さんの秋名のタイムが確か3分11秒くらいで僕はそれより4秒遅いんですよね。

まあ大体これ位かなぁって軽い気持ちで設定してタイムアタックの時はその設定したタイムを意識して走ってたりしてるんですけど全然届きません。

最速への道は遠い。また次回!

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