MFGが始まってからずっと見てるけど、渋川さんの様子が何かおかしい。なんだか楽しくなさそう。いつものほほんとしてる渋川さんから感じないであろう張り詰めた感じがする。
このままいくと取り返しのつかないミスをしそうな気がしてならない。
「どうか無事で…!私の事なんか気にしないで下さい!」
祈るように言葉にする。どうか届いて…!
勝てないのか…?あれだけ勝つと豪語しておいて、申し訳ない。失望されるかもしれない。池谷さんにトレセンの皆、トレノちゃんに…瀬名にも。
…いや、最初に失望するのは誰でもない、自分自身。何のためにここに来たの?目的を見失って走ってたら集中できないのも当たり前だ。
MFGに出た目的はなんだ?それは私の走る理由を示すため。原点に立ち直れ、私は何のために走っているのか。答えはすでに出ている。出す必要もない位に。
「私は、楽しいから走り屋やってるんだ!」
タイヤを温存するとか、スパートの掛け所を考えるとか、走る時そんなことは一切考えなかった大学時代。
トレノちゃんにそれを示すことが復帰に1番効果があると踏んだからMFGに出たんだ。だったら、思いっきり"自分の為”に走らないと…
「損じゃん!」
パパパン ドギャ ギャアアァア
『100号車もセクター1を通過していきます。セクタータイムは…どうなっているんでしょう…驚きです!相葉瞬とほとんど同じです!
あぁ…とこれは…注目フラグが立ちました!驚きの連続です!今までにこんなルーキーはいませんでした、初出場で注目フラグを出すなんて!』
さっきまでのチンケな走りなんか二度としない。今ここにいるのはトレーナーとしての私じゃない。
「群馬最速、再始動だ!」
「暫定4位って相当凄いんじゃないか…?」
「榛名ちゃんが今4位って事はこれからどんどん伸びていくかもしれないわ。注目フラグも出すなんて、流石ね。」
「その、注目フラグっていうのは何かしら?」
「そうねぇ、コンピューターで色々解析してチョベリグなドライバーに出されるのだけど、滅多に出ないのよ。初出場のドライバーに出たことは無いのよ。」
その滅多に出ないフラグが出たって事は、何か変化があったのか?
「渋川さん、とても楽しそうです。」
「スズカ?」
「とても楽しそうです。スズカさんみたいに、自由に走ってるって感じで…私たちも走りたくなるような…。」
「榛名ちゃんに何か良い変化があったのね。今日の予選は一波乱ありそうね♪」
『瞬、見つけたぞ!お前が探してる奴が!』
「なに、本当か!?」
『ああ、お前の予想通り、セクター1のタイムがピタリと揃ってた!お前の後に出走したやつだ!』
ブースから報告が来る。まさか同じ日には走ってるとはな。それにしても後ろの奴だと?…流石に追い付かれるわけないだろ。
「そいつ、車種は何だ!」
『インプレッサだ!鷹目インプって呼ばれてるタイプだ。もう15年は前の車だ!』
15年前?インプレッサ?そいつがGTRより戦闘力があるってのか?
「了解、何かあったら報告くれ!オーバー!」
いいねぇこの感じ!タイヤが鳴くのをお構いなしに限界領域に突っ込んでいくこの感じ!普通だったらまだタイヤを使いべきではないけど、もう関係ない。
ギャアアァア ゴオォォ
楽しければいい。全力で走れればそれでいい!いつ見えるかも分からない前の車に迫ってるかも知れないこの感じ、楽しいと感じないでどうする!
『素晴らしいペースです!これが予選であることを忘れさせるほどのペースです!私の目から見ても確実に全開!まるで決勝を走っているようだ!』
確かこの前には神フィフティーンの相葉瞬がいたはず。…ハハッ
「ぶち抜く!」
「アイツか、瀬名が言ってた渋川って奴は。」
「瀬名がライバルと言ってただけあって速いですね~。これがコイツの全開って訳ですか?」
「いや、あれでもマージンはまだ残ってるだろう。その証拠にタイヤは鳴いているがホイールスピンさせずに、尚且つ余裕のあるラインだ。少なくとも、本人は無自覚で車を労わっているな。だがもう1段上のギアがあるはずだ
見てると嫌でもパープルシャドウのおっさんたちがちらつくぜ。アイツのテクはおっさんたち譲りだろう。」
「それじゃ、渋川は群馬プライドを継いでないって事になるんですか?」
「いや、確実に継いでいる。というより、組み上げたといった方が正しいな。こいつのドラテクはおっさんたちが教えた物以外は全て独学だろう。それでここまで来たんだから大したもんだと言っとくか。」
「やけに褒めますね。瀬名には厳しいのに。」
「少し持ち上げすぎたかな。もちろん欠点もある。気付いたところで直せない欠点がな。それと、下品なミスファイヤリングシステムも気に食わねえな。須藤は気に入るだろうがな。」
「せえ…の…!」
ギャン ゴア ギャアアア
カウンターを当てない、ゼロステアの四輪ドリフト。タイヤの負担も、立ち上がりもこの走り方が1番だ。さて、どれくらい詰まってるかな。
「せいぜい15秒程度かな…あと45秒埋める頃には第3セクションに入ってるかな?……だったら4セクでもっと暴れられるじゃん!……いや、ノッテくれるかな?」
『何が起こっているんでしょう、規格外です!暫定2位!相葉瞬を追いながらジャクソン・テイラーに早くも手が届きそうだ!CRも出るかもしれません!』
「…走ってくるわ。」
「ロータリー、今は彼女の走りを見ているんだ。…彼女が走り終えたら、私が相手をしよう。」
「会長…。」
「走りたくなっているのは、君だけではない。少なくともこれを見てしまったら、走らないわけには行かないだろう。」
その言葉通り、リギルもスピカも、通りすがりのウマ娘までもうずうずとさせている。それほどまでに感化されるような走りなのか。
「それにしても暫定2位。これは…言っていいのか?」
「いえ、言っても良いと思うわよ。私も思ってるから。」
「「こいつ本業変えたほうが良くね?」」
ここまで本気で、前向きな理由で転職を進めたくなるとは思わなかった。貴方、レーサー目指した方が良かったんじゃないの?
『瞬!100号車の動きがやばい、注目フラグを出してる。このままじゃぶっちぎりでCRだ!』
「CR?ぶっちぎりだと?…今そいつはどこまで来てる!」
『40秒!だがこれは予選タイムアタックだ。暫定3位につけてるんだ、あまり気にするな!』
「…ああ、分かったよ!」
パッパッ ガォン
そう言われても、後ろから来てるとなると気になってい仕方がねぇ。マジで何者だ、そんな逸材が、いったい今までどこにいた?
「瞬よりブースへ!100号車が接近してきたら10秒ごとでいい、知らせてくれ!」
『了解!現在で37秒!重ねるが、気にするなよ!オーバー!』
「分かってるよ!オーバー!」
『セクター2も中盤を過ぎてそろそろ後半戦に入ります!世間の評判も何のその!楽しければそれでいい、そんなように感じます!感動のようなものを覚えます!』
「第2セクションもそろそろ終わる、相葉瞬まで少なく見積もっても25秒!あと5パーセント、上げて行こうか!タイヤもまだまだ食い付いてんだ。CRだって狙える。このままデモレコードだって上回ってやる!」
『ストレートの伸びは他の車とはランボやフェラーリなどビックパワーの車には確かに見劣りします。ですが、この突っ込み、この立ち上がり!相葉瞬のカミカゼの称号は彼女にこそふさわしいのかも知れません!
ガードレールや石垣にこするようなコーナリングで暫定1位に躍り出ようとしています!注目フラグは出っ放し、彼女はMFGを変えてしまうかも知れません!』
「……見えた!だけどまだまだ遠い。このペースだと追いつくのは第3セクション序盤から中盤、それまでタイヤは残ってるはず。」
『約20秒!長いストレートに入ったら見えてくるかもしれないぞ!』
「さっき見えた!3キロでここまで詰まるかよ!」
『近づいてきたら譲るんだぞ!これは決勝じゃないんだ!はっきり言うぞ、奴は化け物だ!』
ゴワ ギャン
だろうな。CRペースで走るやつが化け物意外何になるんだよ。
「そろそろペースを上げる!マージンは取っておきたい!」
『了解!無理はするなよ!オーバー!』
なんて、楽しそうなんだろう。映像はさっきから渋川さんで固定されてる。だからこそ伝わる。とても楽しんでることが。
羨ましい…。走るのが楽しいのは私も同じなんだ。もう一度走りたい。レースに出られなくても良い。
今はただ…ただ…
「もう一度、走りたい!」
ピク
レース描写は難しい!何回書いても何回書いても成長する気がしません。
あ、どうも。クレーンゲームで15000円くらい使ってフィギュア10個取って薄ら笑いを浮かべたことがある男です。
私事ですが、名古屋ツアーのチケットが最速先行で当たりました!へへへ、楽しみだな。初めてなんですよね。こういう系のイベントに参加するのって。
また次回!