頭文字D プリティーステージ   作:サラダ味

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第七十八話 退院

「100号車、再車検お願いします!」

 

「やっば、かなり疲れが来てる。こんなに疲れたのっていつぶりだろ。」

 

車検テーブルに車を預けて近くの自販機で水を買ってベンチに腰掛ける。それにしても楽しかったなぁ。何もかも忘れてステアリングと格闘してた。間違いなく今までで1番の走りが出来た。

 

「ちょっと寝ようかな…ふぁ~。」

 

「アンタか?100号車のインプ乗りは。」

 

横になろうかと思ったその時、横から話しかけられる。

 

「相葉瞬…だよね。さっきはごめんね、急にバトル仕掛けちゃって。」

 

「それは大丈夫だ。こっちも良い刺激になったからな。それよりも、アンタどこの出身だ?」

 

「出身?…群馬県伊勢崎市だけど。」

 

いきなりそんなこと聞いてくるなんて、まさかナンパ?そこそこ女癖悪かったりする?

 

「そういう話じゃなくて、レーシングスクールとかそういうのだよ。どこかしらの名門じゃないか?」

 

「いや、そういうのには通ってないけど。私はただの走り屋だから。」

 

「そうか…まあいい。決勝じゃ今回みたいには負けないからな。」

 

「あぁ…それなんだけど…「渋川さん、予選の直後ですがインタビューよろしいですか!?」ごめんね、相葉君、また後でね。」

 

相葉君に断りを入れて、インタビューを受ける。うへぇ、緊張するなぁ。たまーに乙名史さんにインタビューされるけど、相手が変人すぎて緊張する前に引くんだよね。

 

「実況の田中洋二です。まずは予選暫定トップおめでとうございます。決勝に向けての意気込みについてお聞かせください。」

 

「あー…それなんですけど…。」

 

少し溜めてしまう。出たいことは出たいけど、私には、やることがある。

 

「“辞退”させて頂きます。」

 

「辞退…ですか…!?」

 

「おい、あれだけ予選で暴れておいて、決勝出ないってどういうことだよ!」

 

相葉君に肩を揺さぶられる。でも、私のやるべきことは決まっている。

 

「これを見てる皆さんは知ってるかもしれませんけど、私はトレノスプリンターのトレーナーです。トレノちゃんの為に行動するのがトレーナーの務めです。」

 

「それが、MFGの予選だって事ですか?」

 

「はい。…トレノちゃん、見てくれてたかな?」

 

 

「…はい、見てましたよ。しっかりと最後まで。」

 

『私が走る理由は、これで示せたと思う。言葉にはしないよ。でも、トレノちゃんが何かを感じてくれてたならそれで十分だよ。今日の走りに意義があったって事だから。』

 

「楽しいから走る、それだけでいいんですよね。ありがとうございます、渋川さん。」

 

気付くと涙が溢れていた。本当に諦めないでくれている人がここにいる。ともに走ってくれる人がいることは、こんなにも嬉しい事なんだと気付いた。

 

「待っててください。すぐ、走れるようになりますから。」

 

 

「そういう訳なので、決勝は辞退させてください。ポイントとかも抹消でいいので。車検も終わったみたいなので、そろそろ、トレノちゃんの所に戻ります。…あ、そうだ相葉君。」

 

「なんだ?」

 

「君はもっと速くなれる。GTRのセッティングもそうだけど、テクニックの面も成長していけると思う。決勝、頑張ってね。」

 

そう言い残して車に乗って走り去っていく渋川を黙って見送る。世の中にはすげえ奴がまだいるって事か。新たなライバル出現か。

 

 

「やっと着いた。途中仮眠を挟んだから結構掛かっちゃったよ。」

 

予選を終えて自由になった私はそのまま病院に向かった。いやー道中眠かった。ちゃんと伝えられたのかな。…訳分かんなくなっても、ちゃんと言葉で伝えたほうが良かったのかな。

 

不安に駆られていると、スマホがピコンとなる。何かなと画面を確認しようとすると、自動ドアが開く。おっと、よけな

 

「う……そ…!」

 

「お帰りです、渋川さん。ってもう見つかっちゃいましたか。本当は松葉杖無しで歩けるようになるまで内緒にしておこうかと思ったんですけど。」

 

スマホが手からスルリと落ちる。同時に涙が溢れて止まらない。背中を押されたようにトレノちゃんに走っていく。

 

「よがっだ……よがったよぉぉぉぉ…!!」

 

「渋川さんのお陰ですよ。渋川さんが走る理由を教えてくれたから…私に走りたいと思わせてくれたから、動かなかった脚が急に動くようになったんです。本当に…グスッ…感謝しかないですよ。」

 

トレノちゃんが歩いている。それだけで、私は十分だった。走れるようになるまでどれ位掛かるか分からないけどそんなのどうってことない。

 

「うぅ…本当に…良かったよ。今から帰る、トレセンに。」

 

「はい、会って驚かせたいです。どんな反応するんですかね。」

 

そう言って少しいたずらな笑いを浮かべる。良かった、沈んでた心も良くなってる。MFGに出て本当に良かった。

 

「そうだねぇ、どんな反応するかなぁ。…ちょっと面白そうだね。」

 

「じゃあ行きましょうか…あの更にうるさくなってやけに悪目立ちする車で。」

 

「ふぐぅ。心にラリアットがぁ。」

 

 

 

ピコン ピコン とおるるるるるるるるる ピコン

 

 

 

「どう、1カ月ぶりのトレセンは。」

 

「何もできなかったですからね、凄い懐かしい感じがします。ここに編入した時と同じような気分ですよ。早く復帰したいです。」

 

「焦らなくても大丈夫だよ。ゆっくりとやっていこう。」

 

そう言われても、渋川さんの走り見てたら走りたくなっちゃってたまらない。急に歩けるようになったんだから走れるようにもなるはずだから。

 

「お疲れ、凄い奴だったんだなお前。見てるこっちがヒヤヒヤするくらいだったけどな。」

 

渋川さんが先に車を降りると、沖野さんの声が聞こえる。その隣に東条さんがいる。

 

「いやぁ、頭の中が真っ白になるくらい楽しくて、ついムキになっちゃって…他の子はどうしたんですか?」

 

「貴方がゴールした瞬間にトレーニングに行ったわ。皆走りたくてうずうずしてたのよ。通りがかりの子だってトレーニングに行くくらいにはね。」

 

「そ、そんなに影響あったんですかぁえへへ照れちゃうなぁ~私ってそんなに凄かったのかなぁ~色んな子にアドバイスに行こうかなぁいでぇっ!!」

 

「東条さん、私もそうでしたけどあまり渋川さんを調子に乗せないで下さい。良い事は多分1つもないので。」

 

褒められて上機嫌に体をうねうねさせてる渋川さんを裏拳で黙らせる。基本良い人だけど調子に乗せると暴走するから。少しやりすぎたかな?

 

「そんなに強く叩かなくても良いじゃん…。流石に泣くよ?」

 

「全校生徒に不審者と思われる前に止めたんだから感謝してください。」

 

「お…おい。歩けるのか?いつから?」

 

「本当にトレノなのよね…?」

 

2人とも驚いてる。目の前の私を信じられないような目で見る。良いリアクションをありがとうございます。

 

「渋川さんの走りを見てたら、走りたいって強く思ったんです。そしたら急に、動くようになって歩けるようにもなったんです。」

 

「そうか…!いや良かった。本当に良かったぜ。渋川も良かったな…!」

 

「本当に良かったですよ。トレノちゃんが歩いてる所を見た時は涙が止まらなくて…!」

 

「復帰まで大変でしょうけど、頑張りなさいね。」

 

3人が目に涙を浮かべる。私の復帰を心待ちにしてくれる人がいるんだ。大変だろうけど、頑張らないと!

 

「ゴールドシップ!いい加減にしてください!何故貴方は私の尻尾にリボンをつけたがるのですか!?」

 

「付けたいって言ってなかったか?アタシ特性スイーツ柄のフリル付きリボン。」

 

意味不明な事を言うゴルシさんに追いかけられてるマックイーンさんが走ってくる。災難だよなぁアレに狙われてるんだから。

 

「言ってませんわよ!追いかけてこないで下さいま……し…。」

 

「おぉどうしたマックイーン、遂にこれを付けて魔法少女になる覚悟が決まった…か…。」

 

「久しぶりです、マックイーンさん。U…ゴルシさんも。」

 

「…ゴールドシップ。」

 

「おう。」

 

それだけの問答でマックイーンさんが松葉杖、ゴルシさんが私をおんぶする。そのままトラックの方に走り出していく。

 

「戻って来たんなら連絡くれよな!正門で盛大に出迎えてやるのに!」

 

「お祝いをしないといけませんわね。準備もしたいので、明日でもよろしいですか?」

 

「そんな…私なんかにそんなにしなくても…。」

 

照れ隠しでゴルシさんの背中に顔を隠す。暖かいなぁ皆。待っててくださいね、必ず復帰しますから!

 

 




やったー!ようやく重い空気が無くなったー!これでやっと割と適当に書けるー!

と言う事で後書きも適当に書きます。

……やっぱり書くことが無い!という訳で裏話をば。

このお話、残り1000文字を1時間半で急ピッチで仕上げました。投稿頻度を一定にしてしまったが故の縛りですかね。破っても特に何も起こりませんが。

また次回!
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