「ここまでくれば大丈夫かな。」
「っは~怖かったー。一応私抱えてるんだからもう少しスピード抑えてよ。」
「ごめんごめん私も必死だったからさ。」
デジタルさんが追ってくる様子はない。ちゃんと逃げ切れたようだ。
初見でああなられたら誰だって逃げると思う。私も逃げる。というか逃げた。
「それにしても凄かったよ。トレちゃんも他のウマ娘もあの速さで走ってるんだね。いい体験したなー。」
「そこまで良い物じゃないと思うけど。」
「いや凄いよ!ウマ娘がどんなスピードで走ってるか言葉でなく心で理解できんだもん!ありがとねートレちゃん。」
「まあ、どういたしまして?」
そう言いながら時計を確認する。11時30分、そろそろお昼にしよう。
「ねえナナ、そろそろお昼にしない?朝から走りっぱなしでお腹すいちゃったよ。」
「そうだね、トレちゃん1時からレースだもんね。そうだ!だったらさ、学園のカフェテリア行こうよ!」
「うん、いいよ。じゃあ行こうか。」
カフェテリアに到着した私たちは、メニューを見ていた。凄いな。和洋折衷なんでもござれって感じ。
なんだけど…人参ハンバーグって何だろう。玉ねぎみたいに人参も刻まれてるのかな?
「トレちゃん!人参ハンバーグお勧めだよ!一回食べてみなよ!おいしいからさ!」
「へー、じゃあその人参ハンバーグを「私も!」…二つお願いします。」
出来上がるまで周りを見渡してみると…見なきゃよかった。まず目に飛び込んできたのは異常な量を何の躊躇もなく口に入れていくウマ娘たち。
一瞬フードファイター養成学校かとも思った。あの量を注文しているってことは普段からあの量を食べてるって事?
見てるだけでお腹いっぱいになりそうだから別のところに目を…人参ハンバーグってあれじゃないよね。見たところハンバーグに人参が刺さってるだけなんだけど。
あれが人参ハンバーグとは信じない。おそらくトッピングでああなったに違いない。
「お待たせ、はい人参ハンバーグ。」
「はーっ」
言葉が詰まった。さっき見たあれが人参ハンバーグだったとは。字面としてはあってるけど理性が否定してくる。
ナナ、助けて。
「おっ来ました!おいしそうだなー!」
「そっ…そうだね…。」
そうだった、ナナもそっち側だった。すべてを諦めて空いていた席に着く。
「いただきまーす!」
「いっいただきます…。」
これどうやって食べるんだろう。とりあえずナナが食べるところを見てみよう。
「んー!おいしー!」
人参ってそう食べるものだったっけ。そんなキュウリみたいに食べるものだとは思わなかった。
…ええいままよ!郷に入っては郷に従え!いただきまーす!
「あっ意外とおいしい。」
「でしょでしょ!最初こそ見た目のインパクトが凄いけどいざ食べてみると人参も食べやすいしハンバーグも人参に合うんだよね!」
今の説明だと人参がメインな気がするけど…そこは気にせずに食べ進める。
「「ごちそうさまでした。」」
「トレちゃん。時間も時間だしそろそろグラウンド行かない?」
そういわれ時計を見る。12時30分、確かにそろそろ行かないと。
「そうだね、でもその前に着替えてきてもいい?」
「いいよ。じゃあ先にグラウンド行って待ってるから。」
「オッケー。すぐに行くから。」
「ヤバい。」
今年一番最大のピンチだ。ナナに先に行ってていいなんて言わなければよかった。
何を隠そう、絶賛迷子でございます。そもそもここの景色がどこも似たような光景なのがいけない。
さて、思った以上に時間がヤバいのでナナに助け舟を出す。
とおるるるるるるるるるん るるるん
「駄目だ、出ない。」
こうなったら…ここの制服着てるウマ娘に助けを求めよう。
「すいませーん。」
「すまねえッ!今ゴルゴル星から救援信号が来てんだ!だからまた後でな!」
そう言って去ってしまった。…やっぱり変人しかいないのかな?ゴルゴル星とか変なこと言ってたし。分かりやすいくらいのため息をついていると後ろから声をかけられた。
「なんやアンタ、そないでっかいため息ついて。困りごとか?」
希望が見えた。この学園で初めて見るまともなウマ娘がいま目の前にいる。
「そうなんです。グラウンドに行こうと思ったんですが道に迷っちゃって。」
「ほーとなるとアンタ、模擬レースに出るっちゅうわけか。」
「はい。でも時間がヤバくて。」
「せやったらうちが案内したる。それ何時からや?」
希望を掴んだ、その気分は地獄でクモの糸を掴んだカンダタのようだ。
「ありがとうございます!レースは1時からって聞いてます。」
「せやったら走らんと間に合わんな。アンタ、ちゃんとついてきいや!」
「えっはっはい~!」
今日何回走るのだろう。少なくともあと一回走ることになる訳だから…配達に影響でなければいいなぁ。
「ちゃんとついてきてるか!?アンタ!」
「はい!」
…ほお。最初は案内のつもりで走っとったけど、なかなかやるやん。ほな、ちょいとペース上げてみるか。
やっぱ離れてくな。ま、ウチの足に勝てるやつもそうおらんけどな。おっと、ここ曲がらな。
ここ曲がったら少しペース落としたるか。このまま引っ張るんもかわいそうやし…なっ!?。
「ふ…!」
離れるどころか差が縮まっとる!?ホンマに何者なんやコイツ!
上等や!こうなったらとことんまで試したる!グラウンドまでまだ距離あるしな!
「遅い。」
着替えてから来るにしても時間かかりすぎじゃない?開始まであと5分だよ?
「リギルの模擬レースに参加するものはここに集まってくれー。」
やばいやばい!点呼が始まっちゃってる!早く来てよー!…まさか迷子になっちゃったとか?
いや、それだったら連絡が来るはず。でもなんで連絡が無いんだろう。…まさか、消音モードになってないよね?
やっぱりなってた!トレちゃんから電話来てた。なんで出られなかったの私のバカ!
「トレノスプリンター、トレノスプリンター?いないのかしら?」
トレちゃんの名前が呼ばれてる。やばいお願い早く来てー!
「ハア…ハア…、ナナ待たせてごめん!」
「ト…トレちゃ~ん!」
ようやく来てくれた。でもタイムアップギリギリ!
「もう点呼始まってるから急いで!あっちだから!」
「うんわかった!あの、道案内ありがとうございました!」
そう言ってトレちゃんは会場に降りて行った。
「ゼェ…ゼェ…ゼェ…アンタ、アイツの友達なんか?」
「タ…タマモクロスさん!?はっはいそうですけど。」
まさかこんなところでタマモクロスさんに会えるとは!でもなんでこんなに疲れているのだろう。
「ほんなら質問があるんやけど、ゼェ…アイツはどこのトレセン通っとるんや!?」
タマモクロスさんが凄い圧をかけながら質問してきた。
「いえ、…トレちゃんは私の同級生でトレセンには通ってませんけど。」
「ほなどこのレース教室通っとるんや!?」
今度は肩を掴み、体を揺らしながら質問してきた。いったい何を興奮してるんだろう。
「どこにも通ってないはずですけど…トレちゃんがどうかしたんですか?」
「…そうか、すまんな乱暴して。」
私がそう答えるとタマモクロスさんは落ち着いたのか私の肩から手を放し謝ってきた。
「いえいえ、気にしないでください!それよりも、トレちゃんが何かしたんですか?」
「いや…なんもしとらんで。」
「そう…ですか…。」
そう言うとタマモクロスさんはグラウンドを見つめたまま動かなくなった。
…タマモクロスさんのあの様子、一体何があったんだろう。
第八話ご覧いただきありがとうございます。
急にサブタイトルがついて驚かれてるかもしれませんがなんか第何話だけだと寂しかったんで僕の独断と偏見で適当につけることにしました。
ちょっとはそれっぽくなったかなと思います。
また次回!