頭文字D プリティーステージ   作:サラダ味

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第八十一話 封印

「決勝出たかったな~!」

 

「それだったらインタビューであんなカッコつけなきゃよかったじゃないですか。」

 

昨日で予選が終わって明日決勝が始まる。昨日まで何とも思わなかったのに今日になって急に決勝に出たくなってしまった。

 

「過ぎたものを悔やんでもしょうがないよねグスン…。それじゃ今日も今日とて筋トレしていこうか。今日の経過見て明日から本格的に走ってもらおうと思うんだ。」

 

「ようやくですか、待ちくたびれましたよ。」

 

「…いや待ってないよね。朝走ってるよね?」

 

「ソンナコトナイデスヨ。」

 

そう言って目を逸らされてしまった。走るのに問題が無くてもある程度体を作りたかったんだよね。明日から思う存分走らせてあげるからさ。

 

とおるるるるるるるるる

 

「ゴメンねトレノちゃん。…はい渋川です。あーはい…はいぃ!?…あぁそうですか…わっかりましたぁ…。」

 

「何でした?」

 

「私の知り合いを名乗る不審者が校門でスタンバってるらしいんだ…。MFG関係者を名乗ってるみたいだから私が出張らないとみたい。多分きっとすぐ戻ってくるよ。」

 

「行ってらっしゃいませ~。」

 

 

さーて誰が来てるんだろ。瀬名だったら右ストレートだけど、私に会いに来るもの好きもあまりいなさそうだけどな。

 

「どうも、待ってましたよ。”真実のコースレコード“、渋川榛名さん。先輩って呼んだほうが良かったですか?」

 

「初めまして、沢渡光輝。お帰りはあちらだよ。」

 

何しに来たんだこいつ。私に用事があるんじゃなくてナンパしに来たの間違いじゃないのか?

 

「いやな顔してる所悪いですけど今日はナンパに来た訳じゃないですよ。MFGから通達があってですね。ついでに伝えに来たんです。」

 

「通達ねぇ。辞退を堂々と宣言した私に何かあるの?」

 

「4回大会まで100号車は先輩専用のゼッケンになります。金色で縁取られた神フィフティーン仕様です。」

 

「そっか…粋な事してくれるな、MFG伝言ありがとね。」

 

「これでついでは済んだ、本題に移らせてもらいます。」

 

あ、そっちがついでだったんだ。こっちが本題だと思ってたけど。にしてもA110か。結構非力な方だけどバランスでいえば上だろうな。

 

「なぜプロじゃなく、トレーナーやってるんですか?先輩だったらプロチームが見逃さないと思いますけど。」

 

「そりゃ、サーキット主軸で走ってないから。本職はもっぱら峠。MFGに出てからプロチームからオファーはあったけど全部蹴ってる。私には峠の方が合ってる。」

 

「そうですか…もったいないですけど、次の参戦まで首を長くして待ってますよ。」

 

「そうしといて。…ところでその真実のコースレコードって何?」

 

「知らないんですか?予選でぶっちぎりのコースレコード、そのままトップで予選が終わったんですよ。それで、デモレコードが幻なら、このレコードは真実だって事ですよ。ネットでも話題ですよ?」

 

「え、そうなの?」

 

確認するためにスマホを出そうとするが、どこにもない。多分トレーニングルームに置いてきたのか。後で調べればいいかと思っていると。

 

「渋川さーんスマホ忘れてますよー。」

 

ナイスなタイミングでトレノちゃんが私のスマホ片手に小走りで向かってくる。届けに来るって事は電話は入ったって事かな。

 

「ほー、あの子が先輩が教えてる子ですか。…あと1年って所かな?」

 

「トレノちゃーん、ちょっと目ぇつぶっててねぇ。」

 

「え?はい。」

 

トレノちゃんが目をつぶったのを確認して沢渡の顔のすぐ横に貫手を放つ。

 

「…おい、俺の担当に手ぇ出すんじゃねえぞ?」

 

噂には聞いてたけど17歳大好きなのは本当だったのか。たづなさんに頼んで出禁にしてもらおうかな。

 

「だ、大丈夫っすよ…。オレもう彼女いるんで。」

 

「ケッ、どうだか。」

 

 

 

 

 

「うん、体もだいぶん仕上がったかな。今日から走り込もうか。朝走り込んだ感じはどうかな?」

 

「まだ違和感は消えませんね。脚の違和感じゃないんですけど、それでも走ってて訳分かんなくなるんですよ。」

 

「う~ん…。本当になんだろうね。取り敢えず、走ってみてくれる?どんな感じなのか見てみたいからさ。用意…スタート!」

 

合図で走り出す。ストライドからピッチに変わっていく。そこからまたストライドへ…?加速が鈍くなった?そこからピッチに変わっていくけど前ほど早く変わっていかない。

 

「本当になんだろう…。」

 

トレノちゃんの走り方は独学だから、何をどう直せばいいのか全く分からない。これは…かなり厳しいかもしれない。

 

「どうでした?何か分かりました?」

 

「ごめん、全然分からないや。しいてあげるとするなら、トレノちゃんの走り方かな。でもそうなると本当に分からないよ。」

 

「そうですか…。何か分かると思ったんですけど、どうにかならないですかね。」

 

「走り込むしかないんじゃないかな。私もスランプだった時はがむしゃらに走り込んだから。でもなーうーん…。」

 

「なら、もう一本走ってきます。」

 

「はーい…あ、ちょっと!?」

 

話をよく聞かないで返事したら止める間もなく走っていってしまった。でも結果は変わらない。分からない。ただはっきり言えることは一つ。

 

以前よりスピードの伸び、パワーが落ちてしまっている。違和感を抱えてるんだから当然だけど、これが続くようならかなりまずい。

 

「どうすればいいんだ?」

 

 

 

「今日からトレーニング再開したんだろ?どうなんだ、調子は。」

 

「ダメですね。前よりパワー出てる感じしないんですよ。脚がもたつくみたいな。」

 

「まあ1カ月のブランクだからな。そんなすぐに元通りです、なんて言われてもそっちの方が困るぜ。」

 

「ここまでショックだとは思わなかったですよ。なんでかお腹が空きますし…。」

 

ここ最近食事量、特に夕食が多くなってる気がする。最初はおにぎり1つ増えただけだったけど今は3つに増えている。

 

「…まさかお前、本格化来たとかそういう訳じゃねえよな。」

 

「いやぁ、流石に無いと思いますよ。成長してる感じ全然ないですし。ロータリーさんはどうなんですか?」

 

「ぼちぼちって所だ。菊花賞に向けてトレーニングの日々だ。」

 

「菊花賞…間に合いますかね。」

 

ぽつりとつぶやいた。今は7月上旬、菊花賞まで3カ月ほど。体はもう十分回復してるけど、どうしようもない違和感を取り除かないとレースなんか無理だ。

 

「俺としては、間に合ってくれないと困る。キタサトには悪いが、俺の標的はお前だ。俺の中じゃダービーは無効だからな。今度こそ決着をつける。」

 

「なるはやで頑張ってみますよ。渋川さんもお手上げなのでいつになるか分かりませんけどね。」

 

 

 

 

 

あれから1週間。トレノちゃんの違和感は消えることは無く、原因すら分からないまま走り込んでもらってるけどそろそろ打開策が欲しくなる。

 

とは言え原因が分からなければどうしようもない。…1回沖野さんに脚を見てもらおうかな?いや、体に違和感は無いんだ。これでどうにかなるとは…。

 

いや、もうなりふり構っていられない。可能性があるならどんなことでも!

 

とおるるるるるるるるる

 

『おう渋川。どうしたんだ?』

 

「どうもです。急なんですけど、今からトレノちゃんの脚を見てもらえたらなって。」

 

『脚を?でも違和感は心理面から来るものかもって言ってなかったか?』

 

「そうなんですけど、もしかしたらってのもあるので。打開策の1つもないのでどんな可能性にもしがみつきたいんです。」

 

『なるほどな。待っててくれ、すぐに行く。』

 

電話を切って少し待っていると沖野さんが来る。そのタイミングでトレノちゃんに声を掛ける。

 

「トレノちゃーん!休憩だよー!」

 

「はーい!あ、沖野さん。どうもです。」

 

「ようトレノ、調子はどうだ?」

 

「良いとは言えませんね。ただただ違和感と格闘ですよ。」

 

「それじゃトレノちゃん、ちょっと座ってくれる?沖野さんに脚触ってもらうから。」

 

「はい?」

 

明らかに困惑してるトレノちゃんをいつも持参してるかごを逆さにして座らせる。…まあ困惑する気持ちも分かる。

 

「いや、脚触るって何ですか?公認セクハラですか?」

 

「そうじゃないよ!沖野さんは脚を触るだけでどんな仕上がりなのかすぐに分かっちゃうんだ。キタちゃんの屈腱炎も沖野さんのお陰で見つかったんだよ。」

 

「へー…。じゃ、じゃあお願いします。」

 

「それじゃ、少しの間我慢しててくれよ。何故かよく蹴られるんだよ。」

 

それは仕方ないよねとトレノちゃんも思っているだろうね。沖野さんが脚を触り始めて数秒後、顔色が変わる。

 

「…?何だこれ…。」

 

それからちょっとの間黙って脚をこねくり回し、手を放してため息をつく。

 

「脚に異常は多分ない。それどころか仕上がってる状態だ。」

 

「そうですか…。仕上がってるとは…これでもっと分かんなくなりますね。」

 

「あと1つ、重要な事だ。多分本格化を迎えてる。」

 

「「はい?」」

 

沖野さん、なんて言った?本格化?このタイミングで?…いや、確かにこのタイミングで迎えていたなら、気付くのも無理だ。

 

「渋川さん…これって…。」

 

「うん、最悪のタイミングだよ。このまま本調子が出せないままだとかなりの出遅れになるよ。その差を埋めるのにどれだけかかるのか…。」

 

「いや、トレノの現状は、言い換えれば封印された状態っていえる。その封印が解けて、トレノの意識が変わればすぐに追い付くんじゃないかって俺は考える。俺が見た所、体は仕上がってるからな。」

 

「成程…何を取っても、まずその封印を解き放つ方法を探らないとダメですね。」

 

「ああ、俺の方でも解決の糸口になりそうな情報を漁ってみる。何かできることがあれば言ってくれ。」

 

 




最近お金が無くて新しいゲームカセットが碌に買えない男、僕です。

「それで、アタシがここにいるって訳?」

ですです。タイシンさんお勧めのスマホゲーがあればぜひ紹介して欲しいなと思いまして。

「無い。」

ひどい!そんなにばっさり切り捨てなくても!

「アンタ基本うざいんだよ。てかキモイ。聞いた話じゃハヤヒデの兄になりたいとか言ってたらしいじゃん。んでそれをリア友に話してドン引きされたとか聞いたけど?」

全て実話ですね。それとタイシンさんの罵倒からしか得られない栄養素があるのですね。もっと罵ってもらっても?

「また次回。もうここに居たくない。」

あー!そんな殺生なー!
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