頭文字D プリティーステージ   作:サラダ味

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第八十三話 データ収集

「久しぶりだねぇトレノ君!さぁ、実験を始めようじゃないか!」

 

「まさかトレーナー公認でデータ取り放題とはなぁ。」

 

「目が…目が怖い…。」

 

トレーニングルームに集合とLANEが来たので準備をして向かうと、タキオンさんと初めましての方がいた。

 

「タキオンさんと…その、初めまして、トレ」

 

「トレノスプリンターだろ、知ってるよ。編入前から目を付けさせて貰ってたからな。オレはエアシャカール。じゃ早速やるか。」

 

「いや、やるって何をですか?」

 

「タキオンちゃんとシャカールちゃんに手伝ってもらってトレノちゃんの出力特性を割り出そうと思ってさ。ゴメンね遅れちゃって。」

 

渋川さんが遅れてやってくる。そうか、出力特性。レブリミットを割り出すために必要なんだった。

 

「でもそれってどうやって測るんですか?そんな機械があるようには見えませんし、そもそもあるんですか?」

 

「シャーシダイナモがあればいいんだけどさ、あるわけ無いからさ、シャカールちゃんに泣きついてみたんだ。この学園で1番プログラムに詳しいからさ。」

 

「あれくらいだったら完徹にはなったが作れる。んでこのランニングマシンに機器を付ければいつでも測れる。」

 

「そしてデータの収集、および精査役として私が呼ばれた訳だねぇ。」

 

「という訳だよ。さ、始めようか。」

 

渋川さんの合図で、タキオンさんが私の脚に何かしらの機器を取り付ける。

 

「これはトレノ君の…まあ車で言うところの回転数を測る機械だよ。ランニングマシンだけでは十分なデータは得られないからね。」

 

「こっちも準備出来てる。マシンは止まってるが、走り出せばそれに応じて動き出す仕様にしてある。いつでも走ってくれ。」

 

シャカールさんの合図に頷き、一気に加速する。するとマシンのコンベアが自動で動き始めたので、そのまま走り続ける。

 

 

「5分休憩だ。あと4本は走ってもらう。」

 

「了解です。」

 

渋川がトレノに水を渡してそれを飲む。その間にもデータの解析を進める。

 

「こいつをグラフに直して…出来た。」

 

Parcaeをベースにトレノ専用に作り上げたプログラムは正常に動いている。ウマ娘のデータを車に変換するのはちと骨が折れたが、parcaeをゼロから作り上げた時と比べればなんてことは無い。

 

「どうだいシャカール君。まだ1本目だがいい結果は得られたかな?」

 

「1本目にしてはな。事前に少しは勉強してきたが、ある程度形になるとはな。この調子なら予定通りデータが集まりそうだ。」

 

「こうしてデータを収集してみると本当に不思議だねぇ。すぐに破綻してしまいそうな走り方をしているのにもかかわらず、彼女にとってはこれが最適解とはね。」

 

「しかも渋川の話だとさらに上があるんだろ?怪しい所だがな。」

 

「どう?どんな感じかな?」

 

渋川が後ろからぐいっと突っ込んでくる。

 

「グラフ自体は出たぜ。ただ1本だけの不正確なグラフだからな。予定通りあと4本走ってもらう。」

 

「オッケー。その前にそれ、ちょっと見せて貰っても良いかな?」

 

「ああ、参考にはならんぞ。」

 

「ありがとう。…うわーやっぱりかー。」

 

PCを渡してすぐに、そう言いながらため息をつく。これだけで何か分かったのか?

 

「トルクが上がり始めたタイミングでシフトしたらそりゃ外れるよ。今思っても馬鹿馬鹿しいくらい基本的な事だったよ。」

 

「これだけで分かるのかい?」

 

「まあね。とはいえ、ブレる可能性はあるから。トレノちゃーん!そろそろ2本目行くよー!」

 

「はーい!」

 

 

 

 

 

「これでまとまったとは思う。渋川、確認してくれ。」

 

シャカールちゃんからPCを受け取って出力特性を睨みつける。今までのレブリミットが8000。普通っちゃ普通か。

 

…成程ねぇ。今までのタイミングでシフトするとちょうどトルクの谷に入るのか。そりゃ苦しいはずだよ。

 

「…うん、大体わかった。」

 

「もう分かったのかい?流石は専門家って所かな?」

 

「専門家じゃないけどさ、セッティングを決めるとなるとこういう知識も必要だから。」

 

でもまず出来ないといけないことがあるかな。トレノちゃんが無意識でやっていることを、トレノちゃん自身が明確に理解する必要がある。

 

「シャカールちゃん、このマシンにタコメーター付けれたりしない?出来たらこのグラフも映せるようにしたいんだけど。」

 

「出来るけどよ、結構時間かかるぞ?お前にも手伝ってもらうからな。タキオン、続きのデータは任せる。言っとくがトレノを光らせることはするなよ。視覚的に障害になる。」

 

「分かっているよ。それはトレーナー君で実験するとするよ。さあトレノ君!実験の続きと行こうじゃないか!」

 

トレノちゃんが若干モルモットに見えて可哀そうだったけど、やる事と言っても心拍数の変動とかそこら辺だから大丈夫だと思う。

 

「それで、グラフはマシンの液晶をそのまま利用するとして、そのタコメーターってのはどうするんだ?いくら何でも無いものは付けられないぞ。」

 

「何とこちらに用意しております。」

 

「へー準備いいんだな。こんなのどうやって用意したんだ?」

 

「元々私の車に付けようとして買ったんだけど今のままでも対応できてるし後回しでもいいやって事で取っておいたんだけどこんな所で役に立つとはね。ちゃっと付けちゃお。」

 

 

 

「よし出来た。トレノちゃん、休憩しながらでいいから聞いて。今からトレノちゃんには自分の走りを細かく理解してもらうよ。」

 

「自分の走りをですか?」

 

「うん。さっきの5本で取れたデータを見てわかったけど、今まではレブリミットが8000の5速って感じなんだけど、どのタイミングでシフトアップしてるかトレノちゃん自身、気付いてないんじゃないかって思うんだ。」

 

「まあ、ですね。気にしたことは無いですね。」

 

「そこで、マシンに付けたタコメーターを見ながら走ってみて。いろんなことが見えてくると思うよ。それじゃ、ゴー!」

 

マシンに乗って走り出すとタコメーターが動き出す。意識しろって言われてもよく分からないからまずは普通に走って見る。

 

メーターが8に差し掛かるところで針が急に5を指す。それがまた8になって5の辺りに戻る。それを繰り返す。これが渋川さんの言うシフトアップなのか。

 

そのまま走っていくと、メーターが8で止まる。

 

「オッケー、ペース落として休憩にしようか。」

 

「あんなに変わってるんですね。アレを意識するとなると、変な癖が出そうです。」

 

「意識してないことを意識するとなると結構違和感あるけど、出来ないと次のステップには進めないよ。少なくとも、タコメーターを見ないでいつどのタイミングで何回転、何速なのか正確に把握できるくらいじゃないと10000回転には挑めないと思う。」

 

「やっぱり道のりは遠いですね。それ位高い壁なんですね。10000回転は。」

 

「そういう事、でも出来ないって決まったわけじゃない。だってまだ挑んですらないんだからさ。」

 

 

 

「よう栄治、やっとできたぜ。トレノちゃん専用の新しいシューズ。」

 

「鉄也か。…流石、いい出来だ。」

 

「どうだろうな、榛名ちゃん。本格化の事気が付いてるのかな。」

 

「さあな。気付いてたとしても、一筋縄じゃ行かないだろうな。こいつを渡すのは、復帰戦だろう。」

 

「そんな土壇場で渡して大丈夫なのか?新しいシューズだから戸惑わねえかな?」

 

「あいつは頭で考えるより先に体が動くタイプだ。下手に説明したりするより、ぶっつけ本番の方が合ってる。この先の事を考えると、知識も必要になるから今のままじゃだめだがな。」

 

「ニュートレノ誕生か…いつになるんだろうな。」

 

 

 

「早いね…もう回転数を把握するとは…。それに何速かも把握してる。…すげぇ。」

 

心からそう思う。たった数本走っただけでメーターから目を離す回数は増えていったので試しに隠してみて、適当なタイミングで何回転くらいか聞いてみると。

 

「6500…7000くらい…4速です!」

 

と、答える。シャカールちゃんのPCで確認すると本当にその通りだった。

 

「こればかりは天性の才能と言うしかないねぇ。適応能力が尋常でなく高いという事かな?」

 

「お前の課題、そうそうにクリアされちまったな。クク…どうするんだ?10000回転の壁は高いんだろ?」

 

「そのはずなんだけどなぁ。おかしいなぁ。」

 

これなら8月辺りには復帰が叶ってしまうかも知れない。でも一つ、懸念点がある。それはトレノちゃんの耐久度。

 

本格化が発覚する前に筋トレして体は作ってあるから大丈夫だと思うけど、レース用のエンジンは耐久度外視でパワーを絞り出してるのがほとんど。これは他のウマ娘も例外じゃない。

 

ガラスの脚って言われてる通り、ウマ娘の脚は故障しやすい。アルダンちゃんとかローレルちゃんとか。トレノちゃんも多分その類になってる可能性も捨てきれない。

 

考える限り、故障するとしたら物凄いオーバーレブさせてそのままブロー。つまり、レブリミットが分からない限り、回せる範囲は今まで通り8000回転になる。

 

少しずつ上げていって探るのも良いけどまだいけると思ってオーバーレブは避けたい。となると、これに似た出力特性のエンジンを探してみるか。

 

「シャカールちゃん。そのデータ貰っていい?」

 

「あいよ。元から渡す予定だったからな。コピーしたら返せよ。」

 

「ありがとね。今日はこれまでかな。皆、お疲れ様。」

 

USBを受け取ってこの場をお開きにする。さて、頼るとなると池谷さんに中里さんだよね。今週末、群馬に帰るかな。 

 




僕は今、窮地に陥っています。

「突然生徒会室に押し入って来たかと思えば、貴様の窮地など大したことは無いだろう。」

いいえ、死活問題です。ブライアンが僕の妹なのは周知の事実として。

「おい、私はそんな事知らんぞ。」

そしてルドルフ姉さんですよね。

「ちょっと待ってくれ。君の姉になったつもりはないが?」

ただ問題は、エアグルーヴさんが生徒会の中で一人だけあぶれてしまう!

「何なんだこいつは。鬼滅の見過ぎか?」

「いや、彼が最近ハマっているのは呪術廻戦と聞く。となると脹相と累が混ざりすぎた結果…と考えるのが妥当だろうか。」

「会長、とりあえずこいつはつまみ出します。」

ああ待ってください!せめて一緒に考えてください!エアグルーヴさんは僕の何なのですか!?

「いい加減にしろたわけ!そもそもブライアンが妹とはなんだ!会長が姉とはなんだ!妄想も迷惑を掛けない範囲でやれ!」

…お母さん?

「は?」

そうか、この感じ、お母ちゃんだ!そうだ、何で忘れてたんだ!エアグルーブさん、いやグルーヴかーちゃ

刺し穿つ死棘の槍(ゲイボルク)!」

まだ…持ってたのですか……ガク。

「すみません会長。生徒会室を血で汚してしまって。こいつを始末してから後も残らないように掃除いたしますのでご容赦を。」

「そ、そうか…大変だな。」

「また次回、…言っておくが、私はあいつの妹など認めないぞ。」
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