実は、昼間は耳が倒れ気味
どうやって話が広がるのやら、既にトラックには大勢のギャラリーが集まっている。
「かなり集まってますね。ハヤヒデちゃんに連絡してから2時間くらいなのに。」
「やっぱり貴方が犯人だったのね、榛名。」
「犯人呼ばわりは止めてくださいよぉ。俺だってトレノちゃんに頼まれたんですから。」
「ほー、俺ねぇ。中二病の再発か?それにしてもトレノの状態は大丈夫なのか?」
「大丈夫です。封印は…解き放たれました。おっと、そろそろ始まるかな?それじゃ行ってきますね。」
「…ルールは以上だ。異存はないかな?」
「それじゃ1ついいですか?…あの第1コーナーの無残にも破壊された柵は何ですか?」
「あれは…ギムレット君だな。今日は一段と酷かったそうだ。いまはたづなさんに捕まって反省文だそうだ。」
「…了解です。」
となるとあそこで柵走りは使えない。距離は2400、走れない距離じゃないけど、このルールだと、”最下位“にならないことが重要になるからかなりタフなレースになる。
「それでは渋川君、合図を頼めるかな。」
「よく考えたら学園の子にトレーナって呼ばれてないよ俺…。まあいいや。それじゃ皆、スタートについて。」
横一列になって、スタートの合図を待つ。揃ったのを確認した渋川さんが大きく息を吸って腕を上げる。
「…カウントいくぞっ!スタート5秒前! 4…3…2…1…GO!!」
腕が振り下ろされたタイミングで揃ってスタートを切る。先頭にチケットさん、その後ろにハヤヒデさん。3バ身くらい後ろに私、タイシンさんの順番になった。
さて、上りか…。今は2速、タコメーターを11000までイメージで追加して思い切って回してみる。
「…!これは!」
ゾクッとした。上りだというのに今までにない位に加速していく。シフトしても今まであったもたつきは一切感じない。これが私の本格化…。
思った通り、上りでもついていけるいいエンジンだ。11000という高回転域に簡単に対応していくとは…。
走る様子を見ながら観客席へ戻るとシャカールちゃんとタキオンちゃんがいた。
「随分嫌そうな顔だね、シャカールちゃん。」
「コイツのダルがらみのせいだ。てか前も思ったが、ちゃんで呼ぶんじゃねぇ。」
「嫌だった?それじゃあシャカール、トレノちゃんの全力はお眼鏡にかなったかな?」
PCを眺めるシャカールに少し自慢するように言う。
「今はなんともな。まだ感覚を合わせてる途中だろうからはっきり言って勝つのは絶望的だぞ。なんで受けた?」
「俺も最初は反対したんだけどさ。でもトレノちゃんがどうしてもって言うし、何より全開で走るトレノちゃんを見たかったっていうのもあるかな。」
2人が少し驚いたように俺を見る。そして顔を合わせて少し憐れむかのような目でまた見てくる。ひでぇ。
「それにしてもよく走るものだねぇ。感覚の違いで上手く走れるようになるまで時間が掛かると思ったんだが。」
「それに関しては俺も同意見だね。私の担当ながら、凄い子だよ。」
速い。後ろから見ていればそれがよく分かる。トレノは上りが苦手だったはず。アタシもそうだけど、あの走りは苦手なのが嘘みたいだ。
チケットはペース配分を考えてないのかハヤヒデの前に出ている。そろそろ第4コーナー、最下位だけは避けないと!
「ハァッ!」
「来たなータイシン!アタシも全力だーーーッ!」
「そう来ると思ったよ!」
やっぱり読まれるか!さあトレノ、アンタはどう出る!?
前にはチケットさん、ハヤヒデさんが少しずつ離れる。後ろからタイシンさんがスパートを掛けて恐ろしい勢いで迫ってくる。鬼脚の異名を身をもって体感する。
ここでは終われない、限界まで回してやる!
9000…10000と上げていってスパートを掛ける。ハヤヒデさん達に少しづつ近づいていく。でもタイシンさんの追い上げが凄まじい。
まだ感覚が一致してないけど、やらないと抜かれる。第4コーナー抜ける前に使うか、アレ。
すごい、みんなすごいよ!ハヤヒデもタイシンもトゥインクルシリーズみたいに全力で、熱くて!アタシもどんどんと熱くなっていく!
特にトレノ!全力で走れるようになったのはついさっきだって聞いたのに懸命に走って…感動だよ!
でもこれはレース、アタシだって負けられない!
「もっとだぁぁぁぁぁぁぁ!全、力、ダァーーーーーシュ!」
まだ伸びるのか…。先を考えて、少しは温存したかったがその考えだとタイシンにもトレノ君にも抜かれかねない。
「さぁ、行こうか!」
第4コーナーもそろそろ抜ける。末脚で追い付く計算は出来ている。最下位は確実に回避させてもらう。
ガリッ
…フッ、そう簡単にはいかせてくれないか。
「チケットもハヤヒデもリードを広げとる。でもトレノも後ろのタイシンも負けてへんな。どう転ぶんや、このレース。」
「急成長したトレノでもあの3人を相手にあの位置は厳しいと思う。だがなぜだろう、チケット以外の3人は余力を残しているような気がする。」
「どういう事やろな。このままいくとなると追い上げとるが、勝つのはチケットや。タイシンであと6バ身、どうなるんや?」
チケットまであと2バ身、バカみたいなペースで走るなっての…!ゴールはあと少し、十分射程に入ってる!
「「「「ハアアァァァァァッ!!」」」」
絞り出すようにスパートを掛ける。ハヤヒデがチケットを追い抜くその後をトレノが続こうとする。アタシもそれに続きたい…でも。
…届かないっ!
ゴール板を通って順位が確定し、周りから歓声が上がる。3着か、感覚があってない中でここまでやれるとは…。
「クッソ!あと少し…届かなかった!それじゃアンタら、頑張りなよ。」
そう言ってタイシンちゃんが観客席に戻ってくる。さて、俺もそろそろ行くか。
「トレノは3着か。中々いい方じゃねーのか?…おい、どこ行くんだよ。」
「やる事あるからさ。また戻ってくるよ。」
手を振ってそのままトレノちゃん達の所へ歩いていく。
「それじゃ3人とも、位置について。今度は逆走だ。悪いけどもう少し待っては無しだから。」
3人とも疲れた顔をしてるけど、このルールになったからには心を鬼にしないといけない。これは”サドンデスマッチ“だから。位置に付いたのを見て、すぐにカウントを始める。
「2本目行くぞー!」
その一言でその場がざわつく。そんなものは気にしないでカウントを始める。
「カウント5秒前、4…3…2…1…GO!!」
1本目のスタートよりは勢いが無いように見える。あれほど消耗した後だからそりゃそうだ。
「お前、2本目ってマジか!?ただでさえレースは消耗が激しいんだ。それを立て続けはどうなるか分からないぞ!?」
「分かってますよ、沖野さん。ですけど、このルールはサドンデスマッチです。決着が出るまで、”何本”でも走らないといけません。少なくともあと1本は確実です。
あと1人脱落したらそこからはまさに時間無制限のデスマッチになります。」
「無謀だぜ…マジに故障するかもしれないぞ。それにトレノは走れるようになって間もないんだ。また走れなくなるかもしれないぞ。」
「まあ…でしょうね。」
「だったら!」
「ですけど止めることはできません。今の俺にはターフも公道も同じです。それなら誰が誰と、どんなバトルをしても、俺にはとやかく言うスジはありません。」
2本目…疲労は計算より少し多い位か。1本目とは逆回りのせいか、全く違うコースを走っているような気分だ。
前を走るチケットは全力で飛ばしているように見える。全く、よく持つものだ。
となると、警戒しないといけないのはトレノ君か。彼女のスタミナは未知数だ。疲れた所を見たのは弥生と皐月で逃げた時くらいだ。
様子見をしたいが、そんなことをしているほど楽なレースではないだろう。なら、チケットを躱す!
「2本目とは予想できひんで。3人が余力を残しとったわけはこういう事かいな。」
「この局面だとチケットは相当不利だろう。スパートで2人より消耗してるだろうから後半持つだろうか。」
「トレノもハヤヒデもそれを分かってるみたいやな。ペースを抑えて温存しとる。このレース…おもろくなってきたでぇ。」
祝!お気に入り500人突破~!どんどんパフパフ~
皆さん本当にありがとうございます!ここまでいくとは思っても無かった僕ですけどね。
という訳で最近設定マシマシ気味の榛名さんに来ていただいてます。どうぞ~。
「いやホントにびっくりだよ?当初俺っ子キャラにする予定も無かったって聞くし噂だと六眼持ちになる、とか元喫煙者とか。いや、付け足しすぎじゃない?」
僕も適当に付け足してったらこれ五条悟っぽくなってね?って思いまして。呪術の見過ぎですね、はい。
「今のうちに言っとくけど眼帯とかサングラスなんかしないからね。これ以上いかつくなりたくないし。」
ですよね。流石にこれ以上ぺたぺたしてったら僕が訳分からなくなりますし。
「そうしてよ。それじゃ読者の皆、またじか」
あぁ少々お待ちください。思いついたネタがあるんです。
「何さ?」
ホルホールとルドルフさんの掛け合わせはどうかなと思いまして。考えがまとまったら短編でも書いてみようかな~。
「そう言って前のお兄ちゃんの件は一切として進んでないじゃん。やるやる詐欺にならない。」
なりますね多分。それじゃ、また次回!