頭文字D プリティーステージ   作:サラダ味

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第九十話 理論

「ハァ…ハァ…もう……無理…。」

 

ゴールしてそのまま仰向けになる。少ししてからどうにか体を起こして周りを見渡す。そっか…勝ったんだ…!

 

「トレノォォォォッ!!凄いよおおぉぉぉぉ!」

 

「あの…チケットさん、今はちょっとその大声はぁ!?」

 

「感動したよぉ!完全復活おめでどぉぉぉぉぉ!」

 

「く…苦しい…。放してください…。」

 

レースの後にこの人の大声は頭に響く。それと私の疲れ関係なしに抱き着いてくるので本当に苦しい。

 

「いい加減離れな。少しは考えろってのこのバカ。…やるじゃん、トレノ。正直驚いたよ、あそこから勝つなんてさ。」

 

「5本目で追い抜かれた時は本当に終わりだと思いましたよ。でも負けたくなくて、全部出し切りましたよ。」

 

「その状態で6本目のあの追い抜きか。私としては、5本目の追い抜きが全てだった。だがあそこで決めきれなかったのが、私の最大の敗因だ。完敗だよ、…トレノ君。」

 

「あはは…恐縮です。」

 

「やったね、トレノちゃん!BNWを相手にサドンデスマッチなんて言い始めた時なんてどうなるかと思ったけど、もうホンットに感動したよ!

 

レースの勘も戻ったと思うし、これで行けるね、菊花賞!」

 

「菊花賞…良かった。間に合ったんですね、私。」

 

ロータリーさんに発破を掛けられてたし、これで一安心って所かな。でも、自分でも菊花賞を走れるとは思ってなかったから、走れるかもしれないってなったらやっぱり嬉しいな。

 

「ヨシ!レースで疲れてるだろうしトレノちゃんの完全復活と祝勝会いっちゃうか!3人も来る?」

 

「折角の誘いだが、急遽やるべきことが出来てしまってな。タイシン、チケット、付き合ってくれるな?」

 

「追加でトレーニング!?うおー!燃えてきたー!」

 

「アタシは最初に脱落したからね。まだ走り足りないし…ま、付き合ってやるか。」

 

「そういう訳だ。すまないな、渋川君。」

 

「いや、それだったらしょうがないし、応援しないとだよね。3人だったら分かってるとは思うけど、これだけ。速さに限界はないよ。たとえ一時的に壁に当たったとしても、とことんまで突き詰めれば壁は壊れる。

 

まだまだ発展途上なんだ、トレノちゃんも、ハヤヒデちゃん達も…俺もね。」

 

「フッ、そうだな。ではな、トレノ君。復活おめでとう。それと…」

 

「「「次は負けない!」」」

 

3人が踵を返してトラックで再び走ろうとしている。そんな中座っている訳にもいかない。少し休んで少し楽になったので立ち上がる。

 

「渋川さん。私、今日走って見て分かったことがあります。私にはいろんなものが足りない。テクニックもそうですし、戦略だったり後色々…。ですから、これからはもっと厳しいトレーニング、お願いできませんか?」

 

「そこまで言われたら、組まないとだね。2日貰えるかな?今のトレノちゃんに合ったメニュー、組んでくるから。」

 

 

 

 

 

「これが、新しいメニューですか?」

 

トレーナー室で渋川さんから渡された紙には座学を中心としたトレーニングメニューが書かれていた。

 

「色々考えてね、トレノちゃんが今足りてない要素を補った方が先決かなって。そう考えた時に1番足りないのは、理論だと思ったんだ。

 

トレノちゃんって多分だけどどこで仕掛けるのがいいのか…とかは感覚では分かってるけど相手の癖だったりその癖がどう影響するのかはあまり分かってないんじゃないかなって。」

 

「確かに…今まで何も考えずにって訳じゃないですけど、相手が動いたら動くみたいな後手の対応ばっかりだった気がします。」

 

「後手の対応っていうのは対応力が問われるからね。トレノちゃんだったらそれでも勝てるくらいだけど、この先…シニア級の事を考えるともっとクレバーな勝ち方が求められると思う。」

 

「なかなか難しそうですね。感覚と理論ってほとんど逆の存在じゃないですか。」

 

成績自体は平均より少し上くらいだけど勉強が得意っていう意識にはどうしてもなれない。

 

「その通り、私も理論を勉強してた頃は頭痛くなった。それでも身に付けた今だから分かるけど、理論っていうのは重要なものだよ。それじゃ早速…。」

 

 

 

東条トレーナーに呼び出されて、2日前のトレノの模擬レースの一部始終を知らされる。あの時は合宿に行ってて何も知らなかったから復活の件も寝耳に水だった。

 

アイツ…せめて連絡くらい入れろってんだ。

 

「以上が模擬レースの顛末だ。ロータリー、どう思う?」

 

「恐ろしいモンスターになって甦ったもんだ…これまでがいかに楽だったか痛感してますよ。」

 

「6本…距離にして約14000メートル。その全てで全開走行に近い走りをしている。スタミナで言えばあの黒い刺客、ライスシャワーを超えるかもしれないわ。

 

それに榛名は菊花賞を取りに行く気よ。当然、貴方とぶつかることになるわ。」

 

「それにキタサンもダイヤも出るんです。勝つ自信はあるけど、より一層厳しいレースになるでしょうね。」

 

 

「そうだ。トレノがあれだけのスタミナがあるって事が分かった今、菊花賞でのスタミナ切れはまず見込めない。スタミナ勝負は圧倒的に不利だ。」

 

「それに上りも克服してるようにも見えました。クラシック3冠の最後のレース、絶対勝ちたいのに…勝てるんですかね。」

 

「いや、俺としてはキタサンの勝算は十分にあると思ってる。トレノがいくら本格化したって、いまだに改善できていない、特性ともいえる弱点がある。」

 

 

それはスピード。模擬レースでトレノさんの成長をこの目で見て身体能力なら負けてないと思った。

 

それに上りを克服したと言ってもキタちゃんやロータリーさんに比べると見劣りするのも変わらない。つまり、基本的な事な攻略法は変わっていないと考えていいと思う。

 

菊花賞まで約2カ月。出来る事なら、何でもやる。サトノ家の悲願の為に!

 

 

 

「それじゃ、また明日ねー…ふぁ~。」

 

「何で教えてる側が眠くなってるんですか…。」

 

「だって私授業中よく居眠りするタイプだったし。教える側だったらましかなって思ったんだけど、性に合わないのかなぁ。」

 

「大丈夫かなこの先…。まあいいや、お疲れでーす。」

 

トレノちゃんが部屋を出て少ししてからPCを開く。さて、明日の準備でもするかな。学校の先生方の苦労を体験しながらやることを考えてる。

 

どうするかな。理論を詰めても、トレノちゃんの戦闘力は模擬レースで丸裸になってる。条件で言えばはっきりと、何も変わっていない不利な状況だ。

 

…ああダメだ、頭痛くなってきた。考えすぎも良くない。休憩がてら別の事を考えよう。そう言えば相葉君はどうなったかな?真鶴は苦手って言ってたけどどんな感じだったのかな。

 

「……うわぁ。苦手を公言してるだけはあるなぁ。」

 

12位…いやホントに何があった?ホントに苦手だったんだ。…で、上位にいるミハイル・ベッケンバウアーってのは誰だ?アーカイブでどんな走りをしてるのか見てみるか。

 

…………

 

速い。抑えるポイントをしっかりと抑えてるし、何より破綻しない走り方をしてる。まるでサイボーグだ。本人としては全開には程遠い走りなんだろうけど、それで上位に入るんだから神フィフティーンのトップともいえるかな。

 

沢渡君だったら渡り合えると思うけどそれでも1歩足りないか?

 

ただ、はっきりと言える。

 

「つまらん。」

 

闘争心のかけらもない。世界基準の一流はどんな状況でも慌てず、穏やかで平常を保つらしいけど私の走り方とは真逆。理論で埋め尽くされた人造の天才だ。

 

でもちょうどよかった。城島さんとは違う、こういうお手本を探してたから。

 

 




時間がねぇ!納期が迫ってるってのによぉ!

あっどうも。本編も後書きもどう進めたらいいのか恐ろしく迷ってる男です。

理由としてはですね、最後は決まってるんですけどその途中が全く決まってないんですよね。

笑っちゃうよね。

後書きに関してはお察しください。

また次回!
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