頭文字D プリティーステージ   作:サラダ味

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第九十一話 菊花賞

「さて、早速始めようか。理論って言っても人間工学とか栄養学とか、物理的なものだけじゃないんだ。まずはこれを見て。」

 

トレノちゃんに昨日見つけたミハイルの動画を見せる。走る上での精神状態や理論の実践という面でいい手本になる。はっきり言って気に食わないけど。

 

「ってな感じ。どう感じたかな?」

 

「速いのは分かるんですけど…掴み所が無いというか、何考えてるのか分からなかったです。」

 

「そこまで分かれば十分だよ。人間、心拍数も呼吸も普段通り、リラックスした状態が最大限パフォーマンスを引き出せるんだ。逆を言えば、焦ってヤケになってる子を見分けることが出来たら、大きなアドバンテージになるよ。

 

相手を効果的に焦らせて、自分は落ち着いて走る。これが出来れば一流も一流。めちゃくちゃ難しいけど。私も出来ないし、多分このミハイルも出来ない。

 

出来るのなんか師匠2人、MFGデモ走行のドライバー、あと藤原さんに…ルドルフちゃんしか浮かばないなぁ。」

 

「聞いただけでも難しそうなのに学園で会長くらいしかできないかもしれないとなると気が遠くなりそうです。」

 

「そういうのは経験が必要だからね。理論だって実際に経験して初めて理解できることもある。特に精神分析や心理学、こればっかりは場数を踏まないとどうしようもないかな。

 

地道になるから菊花賞に間に合わせることはしない。気長にやっていこうよ。…ただね。」

 

「ただ?」

 

「コイツみたいな何の感情もないサイボーグみたいなところは一切見習わなくていいから。」

 

「あ、はい。」

 

もしトレノちゃんがそんな走り方になったら私が泣く。だってあんな走り方面白くもなんともないんだもん。

 

「ただ、これだけは言っておくね。いくら冷静に、落ち着いて走れても、勝負を分けるのはいつでも闘争心だよ。」

 

 

 

 

 

「ハッハッハ…ハァッ!」

 

「その調子だよトレノちゃーん!」

 

あれから渋川さんに理論を叩きこまれて、それを踏まえたうえで走る。菊花賞まで1カ月、もっと気合入れていこう。

 

「お疲れ、10000回転縛りはどうだったかな?違和感はあまり無いと思うけど、それでも少しは走りにくかったんじゃないかな。」

 

「本当に少しですけどね。あの時と比べたら断然走りやすいですけどね。」

 

「それは良かった。それでさ、菊花賞の作戦なんだけど、どこにギア比を合わせる?」

 

「淀の坂の上りに合わせようと思います。他と大きく差が付くとなると、そこだと思うので。」

 

高低差4.3メートルを一気に駆け上がっていく。いくら本格化明日って言っても、あの坂でも勝負が出来るとは到底思えない。でもそこを無視して勝てるとも思えない。

 

京都レース場は良くも悪くも坂があそこしかない。はっきり言って私と相性が悪いんじゃないかって思ってる。それなら1番力が入る9500回転付近を坂に合わせてその差を少しでも埋めないと勝てる気がしない。

 

「上りを耐えきって、下りで勝負を掛ける訳だね。他に仕掛ける所なんか無いし、それが1番かもね。分かった、その方向でトレーニング組んでみるよ。」

 

「ありがとうございます。坂路、もう1本行ってきます!」

 

 

 

 

 

『晴天に恵まれました京都レース場。秋の涼しさが冬の寒さに変わっていくこの季節に開催されますクラシック三冠の最後の冠、菊花賞。

 

出走するウマ娘は今日の為に全力を尽くしてきたことでしょう。特に有力視されていたのがイエローロータリー、サトノダイヤモンド、ダービーでは14着でしたがキタサンブラックも力を付けています。

 

彼女たちがこのレースを動かすのではないか…私もそう思っていました、2カ月前までは。』

 

『トレノスプリンター、菊花賞出走。乙名史記者の記事を見た時は私も半信半疑でしたが、本当だった時は驚きを隠せませんでした。』

 

『日本ダービーの悲劇…。トウカイテイオーのダービー後の骨折を彷彿とさせる…いや、それ以上に故障で復帰は望めないのではないかと勝手に思っていました。

 

そこから早5カ月。故障の程度を考えると、あまりに早すぎる復帰にファンの間では論争が巻き起こりました。』

 

『ですが、BNWとの模擬レースを勝ってしまったんです。つい2か月前に。本当に驚きの連続でした。2400メートルを6本走り切って勝ったんです。復活を裏付けるには十分すぎるほどのインパクトです。』

 

『彼女の走りがまた見られる…たとえ結果が付いてきていなくても…それだけで…十分な気がしてきました。』

 

 

 

「どうかな?脚の調子だったりその他諸々。」

 

「良い感じです。…やっと正式に復帰ですね。」

 

「うん。…実の所、復帰戦は別のレースで、菊花賞に出走する考えは無かったんだ。いきなりG1っていうのは負担が大きいからね。でもBNWとの模擬レースでその不安は吹き飛んだ。

 

仕掛け所は…淀の坂って言っとこうかな。後の事はトレノちゃんに任せる。…いつもこんな感じだけど、まあいいや。思いっきり走ってきて!」

 

「はい!」

 

 

『地下バ道から続々とウマ娘が入場してきます。イエローロータリーも入場してきました。それに続いてサトノダイヤモンド、キタサンブラックも入場してきました。』

 

『顔が、気持ちが、その全てが引き締まっているように見えます。』

 

『そうですね。先程は4人が有力と言いましたが、誰が勝っても納得してしまうような仕上がりの良さです。…そして、ついに出てきました。

 

ダービーからの奇跡の復活。下りの異常な速さからトゥインクルシリーズ随一のダウンヒラーとも言われたウマ娘。ここで菊花賞を制し、完全復活の狼煙とするのか!

 

トレノスプリンター、観客の声援を浴びながら、堂々と入場してきました!』

 

ワアアァァァァァァァァァァッ!!!

 

「大人気だな、トレノ。」

 

「なんだか妬いちゃいます。」

 

「でもあたし達だって負けません!いっぱいトレーニングして来たんですから!」

 

「トレーニングして来たのは私も同じ。それとも復帰後初だからって手を抜いてくれたり?」

 

「心配しなくてもそんな舐めた真似はしねえよ。全力で、お前を負かす。」

 

やっぱりねー。手加減なんかして来られても困るけどさ。ただ、ダービーの時よりとんでもなく速くなってるような気がする。

 

「ま、おしゃべりはここまでだ。続きは…レースで話そうぜ。」

 

『各ウマ娘、ゲートに入っていきます。イエローロータリーは早々にゲートに入ってスタートを待ちます。』

 

『…トレノスプリンター、なかなか入りませんね。』

 

皆を少し待たせるみたいになっちゃうけど、これはG1。極限まで集中して、尚且つリラックスして少しでも全力を出し切れるようなコンディションに近づける。

 

目を閉じて、大きく息を吐く。

 

『おや?右手を少し上げて…何かをつまんでいる?左手も何かを持っているような感じです。』

 

…よし、行こう!

 

『その右手をひねって、顔を上げます。そして迷わずゲートに入っていく。これで出走の準備が整いました。今、ファンファーレです。』

 

レース場にファンファーレが鳴り響く。これをまた聞けること、レースで競い合えること、その全てが嬉しく思える。だからこそ。

 

「「「「負けられない!」」」」

 

ガコン!

 

『今スタートしました!各バ揃ったスタートとなりました。先頭に立ったのはイエローロータリー、すぐ横にキタサンブラック。その5バ身後方、団子状態の外にサトノダイヤモンド。その3バ身後ろ、トレノスプリンターが付けています。』

 

『3000メートルではスタート直後に4.3メートルの高低差を駆けあがります。トレノスプリンターには厳しいかも知れませんね。』

 

『イエローロータリー、キタサンブラック、並んで坂に入ります。後続も並んでいきます。』

 

2速…9000…ギア比通り!上れる!

 

『サトノダイヤモンドも突っ込んでいきます。トレノスプリンター、ペースを落とさずに上れるのか…いや上っていく上っていく!ぐんぐんと加速していく!』

 

上っていける、この急坂を。厳しいことは変わらないけど、それでも前ほど引き離されない。その坂を後1回上る。それまでにスタミナを残しておく。

 

今はまだ、理論で考えることは出来ないから普段通り感覚で仕掛ける。この坂にもう一度上る時、トップスピードに乗っていないとスパートを掛けたロータリーさん達に追いつけない。

 

仕掛けるのは、向正面に入っって200メートルほどの所。徐々にペースを上げる。

 

早い段階で作戦を考え付いた。後は実行するだけだ!

 




皆さんどうもこんにちは、僕は今磔刑にされるのを待つ男です。

何でって?まあ投稿遅れの重罪のせいですね。

「執行人、火の準備を。」

「ああ。」

ねえ妹たちよ。情というものは無いのかい?このままじゃお兄ちゃん死んじゃうよ?

何回か死んでるけど今度こそ本当に死んじゃうよ?聖職者になっちゃうよ?

「私たちは一度たりとも君を兄だと思ったことは無いぞ。その性根、私たちの為にも死んで直してくれないか?」

「それじゃ姉貴、火を点けるぞ。」

「頼んだ。」

『動くなっ!!』

「ッ!?」

作者権限っていうのは便利でしてね…オリキャラであれば好き勝手出来るんですよ。

榛名さんのようにねッ!

「これは…呪言か!」

「なんとも…小賢しい真似を…!」

さて、この縄を解いてもらいましょうか。結構きつく縛ってくれたおかげでそろそろ手首が腐りそうです。では命令しましょうか…『この縄をほど』

「参ったよ…降参だよ作者君。今までの非礼を詫びるよ。…“兄さん”」

兄…さん…?

「おい姉貴!血迷ったか!?」

うぼあぐばぁ!!

「ば、爆発した!?」

「何とかなったか…あまり使いたくなかったがこの状況を脱するにはこれしかなかった。だが処刑も同時に出来たのは嬉しい誤算だ。」

「そうか、なんにせよ助かった。それで、〆の挨拶はどうするんだ?」

「そうだな…二人で言おうか。」

「「「それではまた次回!」」」

「「…は?」」
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