僕がこの場で説明したいのは後書きの惨状についてです。
最初は何の気なしに書き進めてたんですよ。そしたらあれよあれよとバトル物に発展してしまいまして、このままのペースで行くと軽く三話ほどかかりそうです。
短編で出せばいいなんてことも考えたんですけど、後書きの流れで書いてるせいでそういう訳にも行かないかなって。
という訳で皆さん、しばらく続くと思いますが生暖かい目で見守ってください。
それでは本編どうぞ!
「随分とやつれましたね…渋川さん。」
「あれからよく覚えてないんだけどさ…たづなさんにこっぴどく怒られたって事だけは覚えてる……。あの時私どうなってた?」
「未成年飲酒を勧めてくる様子がおかしい人になってました。」
「ただのヤバい奴じゃんそれ…うえぇ、気持ち悪いよぉ。」
「完全に二日酔いじゃないですか。今日も休みなんですから部屋で休んでてください。ほら、ウコンです。」
こんなこともあろうかとコンビニで買っておいてよかった。本当だったら飲む前の方が良かったけどまあ気休めにはなると思う。
「ありがとうトレノちゃん…それじゃまた明日~。…うっぷ。」
帰る途中で倒れてなければいいけど…。
「本当に大丈夫かな渋川さん。そこら辺で…その…戻してないといいけど。」
「渋川さんも大人だよ?流石にそんなことは…無いはず。 さ、そろそろ行こうか。」
「うん、次はお正月!今度は一緒に初詣行こうね!」
パン パン
今年は無事に走れますように。
伊勢崎に帰ってきてナナと渋川さんと初詣に来ている。今年はケガもなく走り切りたいな。
有馬記念ではダイヤちゃんはキタちゃんに勝って菊花賞のリベンジを果たした。私も、菊花賞のリベンジをしないと。
「トレノちゃんが出るレースに全部勝てますように…!怪我無く走れますように…!テスト赤点になりませんように…!」
ナナ、駄々洩れだけどありがとうね。私も勝てるように頑張るからさ。
「神様ー!聞いてんだろー!頼んだぞー!」
もう何もツッコまない。去年と同じくらいの執念で諭吉を紙飛行機にしてお賽銭箱に投げ込む。私にはわかる。そのお願いは叶わないですよ。
「トレちゃん、お参りも終わったし、屋台でいっぱい食べようよ!人参焼きとか、甘酒とかさ!」
「急がなくても食べ物は逃げないよ。渋川さん、失礼しますね。」
「はーい、楽しんできてねー。」
さて、2人が戻ってくる間は結構暇になる。私も屋台巡りでもしようかな。でも折角久しぶりに遊びに行ってるんだからお邪魔するのもなぁ。
クルマに戻って峠攻めのスケジュールでも考えようかな。上毛三山は行くとして、MFGのステージは高速セクションの方が多い。
そうなると赤城や妙義のテクニカルなコースより秋名のコースの方が感覚の慣らしとしては合ってるような気がする。
…よし、筑波行こう。あそこならアクセル開けたまま抜ける高速コーナーも、それでいてフルブレーキからのコーナリングも、テクニカルな連続S字もある。複合コースというのは慣らしとしてもちょうどいい。私の第2のホームコースでもあるし。
いや…どうしようかな。筑波に籠るのもいいかもだけど、秋名にはやり残したことがある。私が成長するために、確実に通らないといけない道がある。
あの人と…藤原さんともう一度走りたい。あの人のブレーキングを後ろから見てみたい。バトルできなくても、せめてナビシートに乗せてもらえたら…。
きっと私が体験したことのない領域を体験できるはず。…明日、ダメ元でお願いしてみようかな。
とおるるるるるるるるる
「もしもしトレノちゃん、楽しんでる?」
『はい、でももうそろそろ帰ろうと思うんですけど、渋川さんってどこに居ます?』
「クルマで待ってるよ。全然待ってないからゆっくりでいいよ~。」
「ごめんください!…ちわーっす!」
「うるせえなぁ…アンタか。確か…。」
「渋川です。この前はありがとうございます。」
「店は昨日から休みだ。厚揚げもがんもどきもねえぞ。」
「そうじゃないんです。今日はお願いがあって来たんです。私と、秋名の下りでバトルしてくれませんか。」
そう言うと、藤原さんはポケットからタバコを出して火を点ける。そして煙を吐いて話し始める。
「そいつは無理な注文だ。そういうのはオレじゃなくてもっと若い奴に言う事だ。そもそもオレももう現役じゃねえ。」
「現役じゃなくても、そのテクニックは衰えていないはずです!実際1年前、藤原さんに完膚なきまでにぶっちぎられたんです!お願いです、1本だけでいいんです!」
「しつこいなぁアンタも。とにかく、バトルは受けられないな。」
「じゃあせめてナビシートに乗せてください!どうしてもレベルアップしたいんです!」
私が知ってる中で誰よりも…多分師匠よりも速い藤原さんのテクニックをその目で、体で感じられたら私に何が足りないのか分かる気がする。
タバコを吸って吐いて。それを2回繰り返したところで藤原さんが話し始める。
「アンタの情熱は伝わった。」
「なら…!」
「だがその前に1つ聞きたいことがある。…アンタは”どっち“なんだ?」
「”どっち“って…どういうことですか?」
突然投げられた質問。その意味が分からない。
「分かんねぇって顔してるから言うけどさ、”走り屋“なのか”トレーナー“なのか、アンタはどっちの人間なんだ?」
「…! そ、それは……両方です。私はトレーナーですし、走り屋です。これからもそのつもりです。」
「確かに二足の草鞋で上手いことやってる奴はいる。だがそういう奴は大抵はっきりと迷いなく二刀流だと言うんだ。けどアンタは言い淀んだ。少なくとも、その腹が決まるまではバトルもナビシートにも乗せてやれんな。」
言葉が出ない。正論だと思った。どっちと聞かれた時には”走り屋“と答えようとした。でもその次には”トレーナー”と答えようとした。
それこそが私だから、そう答えた。でも何か、逃げたような気がした。ほんの少しの心の引っ掛かり、それを藤原さんは見逃さなかった。
「…すいません、熱くなっちゃって。答えが出たらまた来ます。」
「そうかい…悪かったな、力になれなくて。」
「いえ、藤原さんの言う通りですし。答えが出たらナビシート、乗せて下さいね。」
そう言って後にする。私が一体何者なのか。トレーナーなのか、走り屋なのか。”俺“なのか、”私“なのか。その答えを出すのは今は難しいかな。
「ハ…ハ…。」
天皇賞春まであと1カ月、タイムはある程度ではあるけど揃えられるようになってきた。ゴーストとレースしたりも出来るようになった。
「来月は天皇賞春ですわね。調整の方はいかがですか?」
そして今日はスピカとの合同トレーニング。普段は渋川さんとマンツーマンのトレーニングだからたまにある合同トレーニングは刺激的に感じる。
「まぁ、ぼちぼちですかね。最近はタイムを出す走りっていうのをしてないので。」
「タイムを出さない?それではどうやって仕上がりを確認するのですか?」
「私にはよく分からないんですけど、渋川さんには分かるみたいで曰く、かなりの仕上がりだそうです。」
「そうですか…ですが、天皇賞春にはキタさんやサトノさんも出ます。レースとなれば否が応にもタイムを出す走りをしないといけません。普段がその走りでは、レース本番で競り負けてしまいそうなのですが…。」
「そこは問題ないよ、マックイーンちゃん。トレノちゃんにやってもらってるのは確かにタイムを揃える走り方だけど、真価は別にあるんだ。ただまぁ、今見せるわけにはいかないからさ。レースの時のお楽しみって事で。」
確かに、今それを実践するとキタちゃんに作戦がバレちゃうかもしれない。さっきはジョギングでの慣らしだったからよかったけど、そのまま走ろうとしてたから危なかった。
「でもまぁ、2本だけなら見せても問題無いかな。沖野さん、マックイーンちゃん借りてもいいですか?」
「ああ、あまり変な事はするなよ。」
「大丈夫ですよ。それじゃ、トレノちゃん先行で2本連続で行こうか。それじゃ、スタート!」
渋川さんの合図で走り始める。トレノさんのタイムを揃える走り…どれほどのものか見せて貰いましょうか。
タイムを揃えるからには、ラインやラップタイムも揃ってくるはず。本番は2本目という事ですわね。まずは1コーナー、軽くクリアしていきましたわね。
ですが…タイムを揃える走りにしては少しおざなりなような気がします。この走りで本当にタイムが揃いますの?
次のコーナーも最適なラインとは言い難いラインでクリアしていき、少しの休憩を挟んで2本目に入りましたが、これまでのトレノさんの走りを知っているだけに、適当に走っているような感じが抜けません。
さて、1コーナーに入りますが…どういうことですの?先程とはラインが…。それに侵入スピードもさっきより遅いような…。
これでは到底タイムは揃いませんわ。渋川さんはかなりの仕上がりと言ってたそうですが、これではレースなんか勝てませんわ。
「渋川さん、どういうことですの?タイムを揃えるどころか、あれほどムラのある走りでは天皇賞春は勝てませんわよ。」
「そうやって見えたなら成果は十分って所かな。春天、トレノちゃんが取るから。」
何を言ってますの?現実が見えていないとしか思えませんわ。あの走りでは到底天皇賞春なんて
「はいこれ、トレノちゃんのタイム。これで文句は言わせないよ。」
渋川さんからバインダーを受け取って記録されたタイムを見る。そこには衝撃としか言えないものがあった。
「嘘ですわよね…何故ここまで揃っているんですか…!?」
「ブ、ブライアァァーーーン!!」
急いでブライアンの元に駆け寄る。しかし、ブライアンはすんでの所で意識を取り戻し頭に刺さっていたDISCを抜き取ってみせた。
「大丈夫かブライアン!」
「問題ない。それよりもこのDISC、想像よりもヤバい代物だ。DISCを入れられた瞬間に『眠らなければ』という命令のようなものが頭を埋め尽くしたんだ。
このDISCは他人をDISCにするだけが使い道じゃあないらしい。」
「まさか自力でDISCを抜くとはな。そのまま眠ってくれていた方が楽だったんだが、手荒な真似をしないといけなくなるじゃあないか。」
「姉貴。こっちは2人、相手は1人。このままでは埒が明かない。挟み撃ちで一気に畳みかけるか?」
「それでもいいかも知れないが、相手は未知の能力を使ってくる。用心に越したことは無いだろう。」
「相変わらず頭でっかちだな…だったら私は攻めさせてもらう!」
「あ、待てブライアン!奴の能力を甘く見るな!」
ブライアンは恐らくウマ娘の力で強引に奴を倒そうとしている。だが奴は何もない所からDISCを取り出した。その正体を見破らなければ、奴に近づくのは危険すぎる!
「ふむ…近づいてくるのか。確かにブライアンのパンチをまともに食らったなら致命傷にもなるだろう。ならばこちらも相応の対応を取らざるを得ないっ!」
「少し眠ってもらうぞ…ハアァ!」
ブライアンが奴に向かって拳を放つ。しかしその拳はまるでいなされたように外れてしまう。
「眠ってもらうのはお前の方だよ、ブライアン!」
「ガハァっ!?」
「…お前自身は何もしていないのに、ブライアンの攻撃はいなされ、カウンターを食らっている。何か守護霊のようなものがついているのか?」
「ご明察。だが、分かったところでどうすることも出来ないだろう。さぁ、おとなしく妹になってくれないか?」
「…フッ、それならもう少し私たちについて理解を深めるべきだな。あれしきの事でブライアンを倒したつもりになっているようでは私たちの兄は名乗れんよ。」
「は?手刀を入れて完全に気絶させたんだ、そう簡単に起きてくるわけがアァ!?」
「少し油断が過ぎるんじゃあないか?かなりのダメージだったがあの程度では倒れんぞ。」
「まさか…ガフッここまで頑丈だとは…。」