頭文字D プリティーステージ   作:サラダ味

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第九十七話 天皇賞春2

ここまでは順調に来た。3,4コーナーのポイントも押さえた。直線もそろそろ終わる。ここから全開走行に入っていく。脚の手ごたえはまだある。

 

ならいける。全力で、ちぎりに行く!

 

『正面の直線を走り抜けて1コーナーに入っていきます。先頭を軽快に飛ばしていきますトレノスプリンター。このまま逃げ切るのでしょうか。』

 

 

少しペースが上がった。どれだけのスタミナがあれば、あんなことが出来るんだろう。確実にあたし達を引き離そうとしてる。引き込まれそうなくらい、このまま逃がしたくないけど、今はまだ仕掛けないで我慢するんだ。

 

第1コーナーをそろそろ抜ける。ここで仕掛けるのは早い。あたしには、あたしの仕掛け所があるんだ!

 

フッ

 

あれ…今…何が起こったの?

 

 

「私がトレノちゃんにやってもらったトレーニングは2つ。タイムを揃える事、ゴーストと走れるようになる事。この2つでした。狙いとしてはほぼ完璧に実現できました。」

 

「その狙いってのが、あのラインのかく乱って訳か。ゴーストってのは…高いレベルで自分自身と戦うためか?」

 

「はい。でも、その裏に隠した真の目的があります。それが、レコードラインアタックです。」

 

「レコードラインアタック…天皇賞春のコースレコードが出た時のラインを、そのまま走るって事か?」

 

「いや、私の考えるレコードラインっていうのは少し違うんです。師匠の受け売りですけど、ラインは”目的“ではなく、”結果“。脚を最も効率よく使って出来上がったラインが、レコードラインだと教わりました。」

 

「するとトレノは今、そのレコードラインを走ってるって事なのか?」

 

「ポイントを押さえて尚且つ、全開走行であるならそうですね。でも、私が想定してなかった副産物があったんです。見つけた時に思いましたね。これはとんでもない武器になるって。」

 

 

トレノさんがフッと前に瞬間移動したように見えた。あたしが何かミスしたわけじゃない。明らかに1バ身…一気に離れた。この感覚…皐月賞でも感じたことがある。あの時よりも、キレが増している。

 

落ち着くんだ。自分のペースを守るんだ。トレノさんのペースの乗せられて負けた経験だってあるんだ。焦らないで、じっくりと観察するんだ!

 

『1コーナーから2コーナーへ。トレノスプリンター早仕掛けで後続を引き離しに来ている。その差は約5バ身。追込脚質ではありますがどう展開されていくのでしょうか。』

 

 

「その副産物が、立ち上がり加速のキレの爆発的な成長でした。はっきり言ってそんなところが成長するとは思いませんでしたし、トレノちゃん自身、気付かずにやってることだと思います。」

 

「気付かずに…そんなことが出来るものなのか?」

 

「職人の域に到達してるからこそできる事なのかもしれません。ただ確実なのは、このテクニック自体はトレセンに入る前からあったって事です。つまり豊田さんのトレーニングで培われたって事です。

 

それが私のトレーニングで意図せずに強化された。ただいつでも出せるって訳じゃないと思うんです。そのいつっていうのは言えませんけど。」

 

「そこは俺たちが研究するから構わんけど、キタサンの様子がまたおかしくなり始めてる。トレノに付いて行っているのが悪影響って事か…。」

 

「見る人が見ればショックはデカいですよ。私の見立てでは瞬間的な加速力なら、タイシンちゃんやタマちゃんにも劣らないくらいだと思います。」

 

「あり得るのか、そんなことが?」

 

沖野さんや周りの子たちにも驚かれる。あの加速を知ってるからこそのリアクションだろうけど、はっきりと言わせてもらおうかな。

 

「はっきりと言います、あり得ません。トレノちゃんはどう転んでも、その2人の加速力に届いてませんから。それでもそう感じられるくらいの加速をしてしまう。

 

それ位キレがいいって事ですかね。」

 

 

凄く速い、トレノさんは確実に引き離しに来てる。ラインのシビアさも変わった。それに残像を残して前に出たようにも見えた。

 

キタちゃんも周りもかなり焦ってるように見える。私だって焦っている。トレノさんをあのまま行かせていてもいいのか。

 

フッ

 

まただ、2コーナーの立ち上がりで離された。これでどれだけ離れたんだろう、10バ身くらいあっても不思議じゃない。

 

それに、淀の坂でその差が詰まってもその先の下りでまた離される。そう考えるとこのレースは全体で見た時物凄いハイペースで進んでいるのかもしれない。

 

だったら私がトレノさんに勝ってる直線で勝負を仕掛ける。でも最後の直線だけだと差し切れない。だから向正面の直線でもペースを上げる。

 

それが1番確実に距離を詰められるし、何よりかく乱の影響を受けない。作戦は決まった。後は捉えるだけ!

 

『トレノスプリンター立ち上がって向正面に入ります。ここまで快調に飛ばしていきキタサンブラックとは6バ身ほどの差です。

 

流れるようにキタサンブラック、後ろの集団も立ち上がってきます。』

 

「ハアァ!!」

 

『サトノダイヤモンドが集団から抜け出してその先頭に出た。キタサンブラックもトレノスプリンターとの距離を縮めていきます。』

 

 

ダイヤちゃんもこのタイミングで仕掛けるなんて、考えることは同じって事かな。

 

でも全開じゃないはず。そのスパートが一旦終わるのがキタちゃんが坂を上り切った所、ダイヤちゃんがその手前までかもしれない。

 

逃げて確保したマージンはここで半分になると考えるとペースアップは避けられないな。脚はまだギリギリ使える。

 

勝負はこの先のコーナー。限界ギリギリの、一発勝負!

 

 

『キタサンブラック、トレノスプリンターに詰め寄ります。その後ろサトノダイヤモンドが集団から1バ身抜け出ています。それぞれの差は3バ身ほどです。

 

もうすぐ淀の坂に入ります。ここから仕掛け所が迫ってきます。各ウマ娘どう仕掛けるのでしょうか。』

 

この坂を上り切るまでスパートを掛け続ける。その先の下りは少し温存して最後の直線でもう一度スパートを掛ける。かなりギリギリになるかもしれないけどあたしが1着になる!

 

上り始めて、その差がどんどん縮まっていく。今で2バ身、上り切るまでに追い抜けるかもしれない。

 

ダイヤちゃんは…仕掛けてきてない。1度休んで、下りに入ってから仕掛けるって事かな。そうなると、あたしはかなり追い詰められてる。

 

前と後ろを気にしないといけないから神経をすり減らすことになる。消耗は最小限にしないと直線で全力を出せないかもしれない。

 

それなら、今一番警戒しないといけないターゲットをトレノさんに絞る。これならトレノさんに消耗しなくていいし、圧も掛けられる。

 

自分は温存して、相手に消耗させる。今までやったこと無いけど、やるんだ!

 

 

キタちゃんが徐々に離れていく。…5バ身くらいかな。でも、私が意識するのはトレノさん1人。キタちゃんも警戒しないといけないけど、それでもトレノさんを制することが、このレースを制するのではないかと思う。

 

『キタサンブラックが坂でトレノスプリンターに追いついた。しかし坂はそろそろ終わる。このまま並んでコーナーに入りそうです。』

 

だからここでキタちゃんが離れても気にしない。気にするのはトレノさんとの距離。坂に入ったおかげで少しずつ縮まって来てる。今はこのまま我慢しないと。

 

『坂に入って各バの差が縮まってきました。キタサンブラック、トレノスプリンター並んで3コーナーに入ります。サトノダイヤモンドも突っ込んでいきます。』

 

トレノさんが一気に離れる。でもここで仕掛けるのは私も同じ。4コーナーまでに捕まえて見せる!

 

「ハァ!」

 

『トレノスプリンターが仕掛けたのと同時にサトノダイヤモンド動いた!しかしキタサンブラック動かない!サトノダイヤモンド仕掛けているがダウンヒラーは捉えられない!

 

下りの速さはやはり怪物!キタサンブラックは3番手!サトノダイヤモンドがトレノスプリンターを追う!4コーナーに入ります、トレノ逃げ切れるか、ダイヤ、キタサン追い付くか!?』

 

 




「普通使いこなすかよ…宿ったばかりの能力をよぉ。」

「ブライアンのお陰だ。投げてくれた作者君のDISCから記憶を読んで使い方を覚えた。

後はこの能力、メタリカをお前に叩き込むだけだ。」

奴の背後に回り込みながらその体内にカミソリを作り出す。奴はたまらずそのカミソリを吐き出す。

「オグウエエェェェェェ!!この能力、やはり凶悪すぎる…。理性って言ってる割に凶暴すぎるんじゃあないか?

押さえこんでいる分、反動が恐ろしいものだ。お前はその反動を食らっているんだ。そのまま始末されたまえ。」

「く、何とかしなければ!」

奴はカミソリを何枚か持って掌に乗せる。奴は何をする気だ?…そう言う事か。メタリカの磁力を探知するために…。

あのカミソリを分解できればいいが、それが出来るほどの熟練度は無い。使い方自体は分かっているのだがな。

「来た、磁力が!その方向か!食らえ!」

「外れだ。」

「何ィッ!?既にダミーを配置していたのか…。見えないというのは厄介だな。だが
、そのための探知なんだ。すぐに見つけて…

こ、この反応は!バラバラだ!少なくとも、4か所にダミーがあるッ!」

「やはり、道具を与えるわけには行かないな。次の一撃で決める。」

確実にに決めるには、頭を切り落とすのが最適だろうか。首にカミソリを作って切り落とすか。私の今の精度では、細かく場所は指定できない。

ならば大雑把でも確実に殺せる、頭部を狙うのが確実だな。カミソリを作って、脳に損傷を負わせる。

殺り方は決まった。実行するべく、奴の頭に意識を集中する。すると奴が苦しみ始める。これで決まりだ。

「さあ、お前はもうどうしようもない!探知のしようもない!止めだ、メタリカ!」

ザシュ

途端、何かに体を切られた。くそ、片目をやられた。他に何か所も。新手のスタンド使い?いや、仲間を呼んでいるそぶりは無かった。ならば…。

ふと、脚の周りにカミソリが落ちているのを見つける。まさか…

「賭けだったがね…タイミングが合うかは賭けだった。もし間違えればこのままお前に始末されていたよ。」

「空中に投げていたのか…私が作ったカミソリを。私が攻撃するタイミング、一番磁力が強くなるタイミングに合わせて。

お前ではなく、カミソリ自身が攻撃するために…。」

「これで状況は振り出し。どちらが先に倒れるか、勝負と行こうか。」
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