『速報!ギタリスト見つかる!』
「まじかよ」
店長から承った命を果たすため下北沢の街を闊歩しながらスーパーへと向かう俺に、にわかには信じられないロインを受け取った。
しかし本当に見つけて来るとは。このへんにはギターを背負っている人は時々たまーに見かけるが、殆どがこれから練習に向かう人やライブを行う前の人で暇なやつはほぼいない。
しかも出会い頭にいきなりライブにでてと言われ、はい出ますという人は珍しい。
もしかして誰かに話しかけてもらうためにギター背負っている変人さんなのかな?
「なーんてそんなわけないか」
そんなに変人がいっぱいいるはずがないね、俺の勘違いだよハハハ。
しかしいきなりとはいえギタリストも見つかったことだし虹夏やリョウもこれからバンドができるのか。
楽しみだなぁあの子達がどんな音楽を奏でるのか。
ふと過去に自分がバンドしてた頃を思い出す。俺がギターボーカルで仲間と共に毎日バンド練習に明け暮れたあの日々を、そして掴み取った栄光を。そう過去にふけっていたら俺の手がウズウズしていた。
(今度みんなが休みの日とか調整して声かけてみるのもいいかもしんないな。彼奴等今何してんだろうな。)
そうノスタルジックな気分になっていると追加でロインの通知が鳴る。
『ちょっと待って人選ミスったかもしれない』
「どゆこと」
数行前の言葉撤回、この世は変人で溢れかえっているのかもしれない。
「やっぱり二日酔いの体にはアクエリ○スが効きますな、体にスゥーと効いてこれは…ありがたい…」
店長から頼まれたものも買って帰路につく頃、俺はコンビニ前でアクエリアスを飲みながらタバコを一服していた。よし多少は体調回復した。
「しかしリョウの頼んだカレー割りと高かったじゃねえか。アイツわざと高いやつ選びやがったな。」
袋の中には魚介をふんだんに入れたカレーが見える。いつもだったら俺も買って食うけど今は自分の体が二日酔いのため固形物を受け入れてくれない。しかも回復したとはいえこの状況でカレーは駄目、キツイ。
そう思っているとロインの通知が鳴る、リョウからだ。
『こっちは準備万端、カレーはいつ帰ってくるの?』
こいつホンマ…
『こっちはまだ少しかかる。あと俺の名前はカレーではない。』
『そうだった。でもはやくかえってきてやくめでしょ。』
しばきますよホンマに。切れそうになるこめかみの血管を必死におさえながら返信を打つ。
『それより見つけてきたギタリストの子はどうなの?やれそうなの?』
『いまこんな状況』
それに添付してきた写真は『完熟マンゴー』とでかでかと書いた大きいダンボールの写真であった。
「?」
『なんでダンボールの写真を送ってきたの?』
『いや』『正真正銘この子がギタリスト』
「?????」
どうしようリョウがおかしくなちゃった。前から変人とは思っていたけれどここまでとは思っていなかったよ。症状が悪化しちゃってる…壊れちゃった…
そして虹夏もなんでダンボールの横に普通に立って平然としてるの??ギタリスト連れて来たんじゃなかったの?まさかギタリストと嘘ついてダンボール持ってきたの?この日を用意した星歌さん泣くよ?
『このダンボールの中にギタリストがいるの』
あっなんだ良かった。ギタリストが中に隠れているっていうサプライズね、いやほんとにびっくりした。危うく「STARRY」に黄色い救急車を呼ぶとこだった。危ない危ない。そんなとこに隠れてギタリストさんもおちゃめだねえ。サプライズ精神も兼ね備えてるのね。
『そしてライブにはこのダンボールに入ったまま出てもらう事になった』
「サプラーイズ!!??!!???」
いややっぱアブねー奴だわ。
え?どゆこと?ダンボールの中にギタリストがいてライブにでる?つまりダンボール=ギタリスト…ってコト!?ちょっとまってわからなくなってきた。
「??????????????????????」
▼俺は混乱している!
落ち着け、とりあえず今できることは一つ。
「急いで帰らなくては!!」
真相を確かめるべく早足でライブハウスへと向かって行った。
そして帰ると壇上に『完熟マンゴー』とでかでかと書かれているデカダンボールが鎮座している場面を見た。
あ、これまだ酔いが冷めてないかもしれん。