うぃー・うぃる・ろっく!   作:たっくう

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邂逅

「つまりこの子が虹夏が連れてきたギターの子ってことね」

「そうそう!偶然公園でギターを背負った子がいて声を掛けたらライブに出てくれたんだよね!」

「なるほどなるほど……ところでこの子は何時までこのダンボールの中にいるのかな?」

 

よかった新手の妖怪とかじゃなくて、危うく塩を撒くところだった。

そう言って件のダンボールの子に目を向けるとそのダンボールはビクッとしたリアクションをとった。

 

「すすす……すいません!自分なんかがイキってすいません!!来世はプランクトンからやり直しますぅ……!」

「いや何を言ってるのかなこの子は!?別に怒ってるわけじゃないよ!?」

 

ダンボールがガタガタ小刻みに震えながら急に来世のことまで語りだした。

なんでこの子はこんなにもビビりまくっているのだろうか……俺の顔ってもしかして怖いのかなあ?自分じゃ一度もそんなふうに思ったことないんだけど……

 

「なあリョウ」

「なに?」

「俺ってもしかして怖いのかな?」

「いかついピアスを着けてて、クマがついているような疲れた顔……髪型は目線が隠れるようなスパイラルパーマ……大丈夫だよツッキー、いつもの女を侍らせてそうなバンドマンみたいな顔してるよ」

「貴様が食ってるそのカレー顔にぶちまけてやろうか?」

 

それって女子目線だと印象最悪な奴じゃん!そりゃ初めて会った少女に警戒されるわけだわ!

え、俺ってもしかしていつもそんなふうに見られてたの?何気にショックなんだが

とそんな風に衝撃を受けていると虹夏からカバーが入った

 

「いやごめんねつっきーこの子すごく人見知りみたいでさ、さっきもPAさんに会った時に同じこと言ってたんだよね」

「PAさんにも?」

 

うちのPAさんを見て怖がる気持ちちょっとわかるかもしれない、俺も何も知らない状態で会ったら少し警戒するもん。ピアスいっぱいあるし、疲れたようなダウナーな感じあるし……あれ?これ俺と同じじゃん。

 

「まあこの話は置いといて、ありがとうねいきなりだけど虹夏達のバンドに出てくれて……えーとなんて呼べばいいのかな?」

「ボッチだよ」

「いやいやいや、リョウ流石にその呼び名はないでしょ」

「ボボボ、ボッチです!」

「いいのかそんな呼び方して!?」

 

なんで言われた方もそんなに嬉しそうなんだよ!?こんな呼ばれ方してたら普通惨めになっちゃうでしょ!

 

「えー……そしたらボッチちゃん……でいいのかな?今日はありがとう、よかったらこれ飲む?」

 

そういって俺はコンビニで買ってきたコーヒーを手渡そうとする。

 

「いいんですか……?」

「もちろんどうぞどうぞ」

「あ、ありがとうございます……へへ、うへへ」

「笑い方やばいな」

 

おずおずといった感じでボッチちゃんはダンボールから出てきて差し出した缶コーヒーを受け取ってくれた。変な笑い方してるけど……

 

「やっとダンボールから出てきてくれた……」

「今まで警戒していた子犬が初めて心を開いてくれた感動ストーリーの序盤みたい」

「あーなんかわかる」

 

リョウや虹夏が目の前で起こっている光景を見てそんな感想を言う。正直俺もそう思う。

やっとご対面したボッチちゃんの見た目は全身ピンク色ジャージ姿で、ピンク色の長髪、前髪は目線の位置ギリギリまであり、目は青い色をしていた。全身ピンク過ぎてカー○ィかと一瞬思ったわ。

それにしてもなんかどこかで会ったことあるような……?

 

「なあボッチちゃん」

「あ、は、はい」

「俺たちどこかで会ったことないかい?」

「ゔぇ!?」

 

ボッチちゃんは瞳孔開いた目でこっちを見てきた。あ、なんかこれナンパっぽいな

 

「ちょっとつっきー!ボッチちゃんナンパしちゃ駄目だよ!」

「ち、ちが俺そんなつもりで言ったわけじゃ……」

「可哀想にボッチ……心を開いた瞬間にナンパされるなんて……」

「五月蝿いぞ山田ァ!!」

 

これはナンパではない!繰り返すこれはナンパではではない!これだけは伝えておきたかった。

ナンパと勘違いされたのかボッチちゃんは自衛のためにまた段ボールの中に帰っていく。

くそう!振り出しに戻ってしまった!

 

「つっきー、ちゃんと責任取りなよ」

「ひぃん……違うのに……」

 

またあそこから引っ張り出すのはなかなか骨が折れる作業だ。

どうやってあそこから引きずり出すか考えていると今日のライブの話を虹夏達がし始める。

 

「それにしても今日はミスりまくったー!」

「MCも滑りまくってたしね」

「にひひ」

「まあ初めてのライブだしそんなもんさ。そこから改善していけばいいよ」

「おー?さすが元バンドマンは言うことが違いますなぁ」

「あんまり大人をからかうんじゃありません」

 

虹夏はいたずらっぽく笑ってこっちを見てくる。可愛い笑顔しやがって、可愛ければ何でも許されると思うなよ……チクショウ許したるわ!

 

「あ、あああ、あの……!!」

「ん?」

 

そう言ってさっきまでダンボールと一体化していたボッチちゃんが立ち上がる。そし身に纏っていたダンボールをパージしながらこっちに向かってきた。

 

「え、え何!?」

「何か怖いんだけど!?」

 

虹夏が恐怖する気持ちもよく分かる。だってこれホラー映画のワンシーンのように幽霊がゆらゆら揺れながら来るのと似てるもん。しかもなんか「つっ、つつつ!」とか言ってこっち向かってきてるし。

 

「次のライブまでにはクラスメイトに挨拶できるくらいにはなっておきます!!!」

「「何の宣言!?」」

「目覚ましい成長」

 

これは成長と言っていいのだろうか……?

いやしかしダンボールから出てきてこんなこと言えるようになったことは成長と言っていいのかも……

 

「でもそっかー……うん!じゃあ今からボッチちゃん歓迎会兼ライブの反省会だー!」

「あっ今日は人と話しすぎて疲れたので帰ります……」

「えっ」

 

そんな事ある?

 

「ごめん眠い」

「えっ」

 

リョウはそう言うと立ちながら船を漕いでいた。器用な眠り方するな倒れちゃうぞ。

 

「しし……失礼します」

 

ボッチちゃんはそう言うと一目散にスタジオから出ていってしまった。勢いよく行ったもんだからドアの近くに立ててあったモップが倒れ、倒れた音が空虚に寂しげに響く。残ったのは鼻提灯を浮かべ器用に立ちながら寝ているリョウ、唖然としている虹夏、モップを立て直す俺の3人。

 

うん……なんかこのバンドさぁ……

 

「結束力全然無い!!!」

 

虹夏が言うようにおおよそ「結束バンド」と呼ぶには程遠い結束力のなさであった。

 

 

 

 

後藤side

 

今日は本当にいろんなことが会ったなあと階段を登りながら思う。

 

(絶対にコミュ障直してギターヒーローとしての私の力を発揮するんだ……!!)

 

街灯を見ながら私は誓う。

 

(虹夏ちゃん、リョウさん……結束バンド)

 

ボッチだった私に声をかけてくれた虹夏ちゃんに連れられてきた初めてのライブハウス、人生で一番惨めだったかもしれないけどとても楽しかった初めてのライブ。今日起きた様々な事が脳裏に蘇る。

急展開だがこれから私がやりたかったバンド活動ができると思うと私の胸の中は期待でいっぱいになった。

 

ふと手に持っていた缶コーヒーが目に留まる。

 

(そういえばあの人)

 

見た目は怖いけど優しそうな感じだった人。皆から「つっきー」と呼ばれていたあの大人の人。

あの人の声や私を見る目がどことなく懐かしいと感じたのはなぜだろうか?

 

(どこかで会ったことあるっけ?)

 

うんうんと頭を捻って考えてみるも答えが見つからない。

──いや待てよ、朧気ながら微かにあの人のことを知っているような……

そう考え事をしていると前から来る人に気づかずぶつかってしまった。

 

「すすす、すいません……」

 

ぶつかってしまったことで私の頭は恥ずかしさと申し訳無さでいっぱいになり、さっきまで思い出そうとしていたことはどこかに消え去ってしまった。

 

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