双子の妹にTS転生した邪悪概念   作:アライ

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幼馴染を入れてその子を姉の好きな人にするつもりだったんですが、どうあがいても双子である事がバレてしまうので、本格的に登場するのは高校からとなりました

環境次第ではフォントが崩れるかも


幻の属性:異性の幼馴染

 服の違いで見分けを付けてもらう作戦は成功だった。

 初日で完全に似た者同士の双子ちゃんというイメージは結構強かったものの、服装の違いによる効果は着実に表れ始めた。

 

 おとなしめの服を着るのがゆー姉。

 派手な服を着るのが、邪悪なる私。

 

 まあどこからどこまでが派手というラインに入るのか基準は結構アバウトなのだが、それでも何となくで分かるという子は居るのだろう。ちゃんと名前を呼んでくれる子がお姉ちゃんに接してくれるのは、もう嬉しくて嬉しくて……。中々にセンスがいいな、褒めて進ぜよう。

 

 ……しかしまあ、まだ多くの人が私達姉妹の判別に手こずっているわけで。

 

 となれば、ここからは私の出番だろう。

 違いなんて物は外見以外にも沢山有る。それを声高に曝け出していけばいいのだ、別に難しい事では無い。

 例えば、お姉ちゃん大好き妹アピールを存分にするとか。

 毎日するとか。

 

 ──あっ、考えただけで幸せが溢れてきそう。

 なんて最高なんだ。

 もう耐えきれない。

 善は急げ。

 よし、明日から実践するとしようか。

 

 

 そんなこんなでゆー姉との小学校生活が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 正直、二度目の小学生活ではゆー姉の事ばかり考えている。

 がしかし、完全にそれだけというわけでは無い。私にだって、友達の一人や二人は居る。

 というか女子に限るものの、クラスの子全員が友達だと思っている。

 

 成り行きでだが、私達姉妹が中心になって橋渡しをしている様な感じだ。

 この年頃の子達はみな直球勝負というか、裏表が無いというか、純真無垢で素晴らしい。好きな物はハッキリと好きだというし、嫌いな物は本能の様に断固として拒否する。その分かりやすさがとても助かるのだ。

 前世ではあまり群れるのが好きなタイプでは無かったが、こういう天真爛漫な子達に囲まれていると、悪くないどころかむしろ良いとまで思えてしまう。何というか、心が浄化されているのかもしれない。

 やっぱり人間の本質は、集団を作る事なんだって。

 

「ほ~ら、取ってみろよ!」

「私の鉛筆返して~!」

 

 ……まあ、あくまで女子の中だけの話なのだが。

 

「私のお気に入りなの~!」

「ほれほれ~」

 

 ゆー姉の筆記用具を勝手に盗ってこれ見よがしに振りかざす男子。そして何とか取り返そうとあたふたしている我がお姉ちゃん。ゆー姉のほうはなんと半泣きだ。

 見紛う事はない、めっちゃいじめられている。

 

 ちょっと男子~

 

「くやしかったらうばってみろよ、チビ~」

 

 ガキが……舐めてると潰すぞ……

 

 私は今すぐにでも、姉に仇なすこの罪深き存在に裁きの鉄槌を下したくなったが、しかしすんでの所で矛を収める事に成功した。危ない危ない、精神年齢がだいぶ退化してきている。

 ……まあ、この男児の気持ちも分からんでは無いのだ。

 

 いわゆる反動形成というヤツなのだろう。

 自らの心の中に有る受容し難い感覚を反対的な傾向で表現してしまうことを言い──簡単に表せばツンデレというものになる。

 恐らく、いやきっとこの男子はゆー姉の事が好きなのだ。小学一年生と言えばまだ己の心情が整理しきれていない頃。その好きという感覚を上手く表現出来ずに意地悪をしてしまっているのかもしれない。

 この現象は至って普通の事であり小学生の、特に男子は誰しもが一度は無意識の内にやってしまうものである。好きの反対は無関心という言葉がある通り、悪気が有ってちょっかいを出しているわけでは無いのだろう。

 んん、これが青春というヤツか。とても懐かしいモノの様に感じる。

 

「ひどいよ……! それは、それは……」

 

 しかし残念な事に、そのツンデレが実を結ぶ事はほぼゼロなわけで。

 

「その鉛筆は愛梨とお揃いの物なのに……!」

「あっ、おい……」

「……う、ううっ、うわあああああああん!!」

 

 度し難い悪逆たる蛮行により、ゆー姉の感情は決壊した。

 とめどなく溢れてくる涙、その美しさや霊峰に湧き出る清水が如く。私のハンカチでその全てを拭ってあげたい。そしてちょっと湿ったその布の感触を、乾き切るしばしの間まで私は楽しむのだ──

 

 ……じゃなかった。

 

 私は、どうすればいいのだろう。

 

「男子サイテー」

「ゆあちゃん泣かせたー」

 

 こういう時にどう動けばいいのか、今の私にはシミュレートされていない。いや……今までも同じ様な事はいくつか有ったのだが、こんなアウェーでいじめてくる奴は居なかったのだ。周りを見てみると、ほぼ全ての女子がいじめている男子の事を睨んでいる。

 あっ、ふーん。

 

 一説によればこんな時、先生に告げ口する歌が有るらしいので、それを歌えば良いのだろうか。

 歌の内容は、確かこんな感じだった。

 

 

 

 

 

 

 あ~~~~~~~~!

 ○くんが、○○ちゃんの事泣かした~~~~~!!

 い~~けないんだーいけないんだー

 せ~~んせいにいってやろー

 

 

 

 

 

 

 こほん。

 

 

 ……なんだこのメスガキ?!

 

 ダメだ、これは駄目だ却下だ。私のイメージと違いすぎる。

 私はお姉ちゃん大好きなので、当の本人をほっぽって元凶を煽るのは解釈違いなのである。良き妹でありたいのだ。

 

 となれば、一緒に泣くべきなのだろうか……?

 姉の悲しみは、私の悲しみとも言える。実際、ゆー姉が悲しんでる姿を見ると胸が締め付けられる思いになるし。そう考えれば、自然と納得がいくというものだ。

 

 よし、決めた。

 ここは一緒になって泣こう。

 

 

 私は泣く準備をした。

 

「お、お姉ちゃんのこと、いじ……」

「先生に告げ口してきたよ」

 

 そうしようとすれば、いつの間にか職員室に先生を呼びに行っていた子がいたらしい。

 帰還の報告を私へと伝えたのだ。

 

 早いな。

 

 

 

 

 

 

 

 ゆー姉をいじめた男子は帰りに開かれた学級会によって無事吊るされる事になった。

 昔からの伝統である『ごめんね』『いいよ(憤怒)』の返しと共に事態は収束したが、当の男子は女子から総スカンを食らってしまったのだ。

 

 愛しき存在であるお姉ちゃんをいじめた事は罪深いが、少々かわいそうではある。これからはきっと、彼は色々な事で目を付けられてしまうのだろう。小学校とは言えど、それはもう社会の縮図の始まり。集団とは時に残酷にまで個を排斥してしまうのだ。

 立場上、私ではどうすることもできない。

 

 一応そういった方面の感情へ理解はあるだけに、歯痒い気持ちではある。

 彼は犠牲になったのだ……。

 

「ゆー姉、ごめんね。私、お姉ちゃんがいじめられてるのに動けなくて……」

「ありがとう。愛梨はいつも私の事大切に思ってくれてるのは分かってるから、大丈夫だよ」

「お、お姉ちゃん……!」

「私がちゃんと、嫌な物はイヤってはっきり言わなかったのもわるいし」

 

 いざこざが有ったら、どんなに一方が悪くても強制的に何故か両成敗となる。

 そうなればなんて酷い仕打ちだと大半の学童が憤るだろうが、しかしそれが小学校の定め。社会の不条理を学ぶ機会として、ずっと昔から残されている風習なのだ。

 

 ゆー姉はこの歳にしてその理不尽さを存分に体験したのだろう、ああは言っているが未だ素敵なお顔には怒気を含んだ表情が残ったままである。

 うへへ、謝罪の意も兼ねて後でたくさんよしよししてあげよう。普段してくれる分のお返しだ。

 

「それにしても、どうして男子はいじめてくるんだろ」

「……どうしてだろ、分かんないね」

「私は何も悪いことしていないのに……」

 

 それを言われて、少しだけ昔の事が私の中で想起された。

 前世では無く、ゆー姉と一緒に幼稚園に居た頃の話である。

 

 とても可愛いお姉ちゃんは幼稚園の時でもよく男子にちょっかいをかけられていた。理由は多分、同じようなものだと思っている。

 相手に構ってもらいたいからいじめている──なんて、それこそ男にでもなってみないと理解できないこと。やはりというべきか、お姉ちゃんはなぜこうも自身の行動に干渉されるのか分かっていなかった。

 となれば、どうなるかは説明するまでもない。

 

『わたしにもうかかわらないで! キライなんだから!』

 

 そして男子は無事死亡した。

 まあ、そうなるな。

 

 幼稚園には比較的近くの家から通ってくる子が多い。私達の住む篠崎家の近くにも同じくらいの歳の子が居た。正直あまり覚えていないが、多分男の子だったはず。

 関わり方次第では私達姉妹の幼馴染と成り得る存在だったのだが、いつの間にか避けられるようになっていた。今となっては、存在すら不確かだ。

 まあ、ゆー姉にちょっかいを出して拒絶されてしまったのだろう。それが中々に効いてしまい、苦手意識を持ってしまった──そんな感じか。

 

 まさか異性の幼馴染が、現実でこんなにも成立しにくいとは思わなかった。

 家同士の付き合いでもあれば多少はマシになるのだろうが……。

 

 世知辛い世の中である。

 

「愛梨はどうして、私と違っていじめられてないの?」

「えっ……いや、いじめられてはいたんだけど……」

 

 ゆー姉にそう言われて、返答に窮した。

 私達はそっくりの双子の姉妹、当然私自身が標的にもなることがあるわけで。

 

 でも正直なところ、小さい子供のちょっかいなんて可愛らしいものだ。

 ばかーあほーまぬけーみたいなそんなどうでもいいことばかり。流石にこれに対して怒っていれば、通算の精神年齢によって後で泣きを見る事になる。

 ちびーみたいな身体的特徴を(あげつら)うものも有るが、これに関しては後で分からせが入るので問題ない。

 

 小学四年生から卒業するまで、女子の平均身長が男子のそれよりも上回る期間が有る。

 まあ中学に入ればまたすぐに抜かれるのだが、それまで女の子に見下ろされるというのは絶対に避けられない。

 

 今までいじめていた相手に身長を抜かされる気分はどうだ? 感想を述べよ!

 と未来に思いを馳せるだけで、私はお腹いっぱいになってしまうのだ。

 

「なんか、めんどくさくて……いつもほうっているの」

「……そっか。愛梨はおとななんだね」

 

 そうです、中身は大人の男なんです! 

 なんてとても言えない私は、良い方向に解釈してくれたお姉ちゃんに感謝しなければならないだろう。

 

「よし、私もがんばらなくっちゃ! だって、愛梨のおねえさんなんだもん!」

「ゆー姉……!」

「あねの私が弱気じゃ、大切ないもうとにしめし?がつかないもんね!」

 

 アァ……お、お姉ちゃん……!

 この不肖の妹を、大切だと言ってくれるなんて……!

 なんて……なんて、最高なんだろう……!

 

 心が、全てが浄化されていく──

 

「明日から私はかわるよ、愛梨! ……愛梨?」

「あぁ、お姉ちゃんは最高や……」

 

 ふにゃふにゃとしながら倒れ込んだ。お姉ちゃんの喋る言葉、それが透き通る様な風となって身に染み込んでいく。

 

 ああ……。

 

 β-エンドルフィン──そんな名前の脳内麻薬が、今ドバドバと私の中で放出されているに違いない。至高の陶酔感が、神経を甘く蝕んでいく。

 あまりにも身に余る幸せ、まさかこれ程までの幸福が今の世に存在したなんて。私は知らなかったよ……。

 

「ど、どうしたの愛梨っ! 起きてぇっ!?」

 

 愛しのお姉ちゃんの胸に抱かれながら、私は気を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから時間が流れる様に過ぎていった。

 

 義務教育、その九年間の内の六年が今にあたる。

 高校や大学よりも遥かに長い六年間、きっと簡単には過ぎないだろうと思っていたが、しかし時間の流れはとても早い様に感じた。楽しい時間はすぐに過ぎてしまうとよく言われているが、自分もそれに該当したのかもしれない。

 

 その間、勿論テストやら何やら色々と簡易的な試験が有ったが、流石にそこで躓く事は無かった。

 特にできる事を隠す理由も無かったので、ガッツリ点数は取りにいっている。

 

 そうそう影響はしないとは思うが、内申点を含む学業成績はできるだけ評価を上げておきたいのだ。

 こういうのは小さい頃からの習慣が物を言うと、前世でよーく学んできたのだから……。

 気付いて後悔した時にはもう遅いのだ。

 

 

 そんなこんなで出来るだけ最善を尽くしながら、学年を積み重ねる事早数年。

 

 小学五年生になったすぐ直後の頃である。

 

「ねぇ、愛梨。少し話が有るのだけれど……」

「なにお姉ちゃん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私達、別の中学校にしない……?」

 

 そんなことを、ゆー姉から言われた。

 なんでぇ……?

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