何か変。だと思うかも知れませんが、仕様(無表情)だと思って下さい。
Ψ(`∀´)Ψ ウヒヒ
あん? 今までの対悪魔戦で、一番しんどかった事か? おう、エールお代わりだ。温いやつな。
いいんだよ。俺らの年代はエールは温いもんなんだ。夏は別だがな。ああ、悪魔戦な……ええと、二十年以上前だったな。ここ城塞都市の近くの北側、“トロルの見張り台”あるだろ? 今でこそ整備されて、観光地になってるが、二十年前は柵で囲われている程度だったんだよ。
……“
あいつらが厄介なのは、増えるのが早いんだよな。一匹が二匹、二匹が四匹ってな、倍々で増える。だから、速やかに始末する必要があるんだよ。おう、揚げジャガと炙り塩豚頼む。エールのお代わりな。
トロルの見張り台に、インプが出現したって、巡回中の衛兵から報告があったんだ。
普通なら即座に討伐依頼をギルドから出すんだが、当時のギルドマスターがよ、無駄に功名心が強くてな、インプ討伐に待ったをかけたんだよ。
「馬鹿な話よね~、本当に馬鹿よ……その時の私達もね」
ダルガンデスの注文を運んで来たミランダが、その隣によいしょと座り、店員に注文を頼む。
「オウルリバー、ロックね。あと、葱と青菜の胡麻油炒めね~」
まあなあ、俺達も馬鹿だったな。ギルドマスターに、勝手に動けば、追放処分にすると言われて腰が引けたんだよなあ。
昔の俺を殴りてぇよ、全く……魔城門の顕現の可能性は、領主や王に報告すべきなのに、それもやってなかったんだよな、あの馬鹿は。
うん? 何で当時のギルドマスターは動かなかったって? 言ったろ、功名心が強かったって。
「要はあれよ。顕現した魔城門を、自分の指揮の下、破壊したかったのよ。それで名声を得られると思ったのよね~」
馬鹿だぜ本当によ。その結果……まあ、いいやな。
そん時に、ラーディスが来たんだよ。いや? その時は、魔導卿何て通り名じゃ無かったな。まだ、魔導士じゃなかったしな。首狩りラーディスとは言われていたがな……首狩り? それは、まあ後だ。
ギルド内の雰囲気を感じとって、色々聞き回って、魔城門の顕現の可能性を知ってな、即座に王宮に出向いたんだよ。
そりゃあ、ギルドマスターは慌てたよ。勝手な事をするな、追放処分にするぞってなあ。
「今でも覚えているわ~、ラーディスの、「やってみろ、腑抜け」ってね~」
クスクス笑いながら、長煙管に煙草葉を詰めるミランダ。
そしたら、ギルドマスターがよ、下らん事言ったんだよな。
「たかが冒険者に、陛下が会う訳ないってね~。たかが、なんて、よりによってギルドマスターが言っていい事じゃないわよね~」
ふうっ、と煙管を吹かすミランダ。
それが会えたんだよな。ラーディスは、グレイオウル伯の息子で、陛下とは帝都で面識有り。って仲だからな。
「ラーディス、その頃から貴族との人脈あったからね~。オウルリバー、お代わりね。あと三色サラダに、ニンニクほうれん草炒めね~」
なんだおめえ、さっきっから野菜だけかよ。おう、オウルリバー炭酸割り頼む。あと、豚バラ玉葱炒めと、チーズ盛りな。
ああ、結局、王命ではなく国からの依頼って形で、“
「おう? 何だよ大勢集まって。何の話してんだ?」
「あら、マーカスいらっしゃい。ボトル出す?」
「ああ、頼む。ポテトサンド、平パンでな。それと、鶏生姜焼きもな」
ミランダが、店員に注文を頼む。
「“トロルの見張り台”での悪魔討伐戦? ずいぶん昔の話だな。たまには昔の話をってやつか?」
オウルリバーのグラスに、氷を手掴みでガラガラと入れるマーカス。
たまにゃ、いいだろ。若手連中にせがまれてな。それで、支援要員以外は皆出払ってな、俺達は直ぐに現場に向かったよ。ギルドマスターが、自分が行くまで勝手は許さん、とか言ってたが、知った事かって感じだったなあ。
「実戦知らん奴に、何が出来るよ? てやつだな」
マーカスがポテトサンドを豪快に噛り、オウルリバーで飲み下す。
ふん。勝手は許さんと言われてもな。現場の空気を知らん奴に、どうこう言われたくねえわな。
うん? ああ、騎士団は領内の巡回の強化。魔城門が、他の地域に顕現しないとも限らないからな。
衛兵達は、万一のため城塞都市の警護。
前線は、俺達冒険者ってとこだ。ラーディス?
野郎はギルドに戻らず、城から直接、トロルの見張り台に出向いていたんだよ──
ち、と舌打ち。遅い、遅すぎた。インプの数、数十──いや、百はいるか。
「ラーディス、魔城門は顕現するか?」
顔見知りの、壮年の騎士が尋ねてくる。古参の風格を漂わせている、歴戦の騎士だ。
「間違いないですね……それより、街道の通行止めは、済んでいるんですか?」
「ああ、それは大丈夫だ。魔城門の顕現は、要注意事項だからな」
「俺は、ここで待機します。インプを殲滅しても、もう遅い……顕現しますよ、魔城門は。数が数です、討ち漏らしは出ると思って下さい。周囲の警戒をお願いします」
「む、任せろ」
壮年の騎士は、部下を引き連れて下がって行った。
魔術師ラーディス、中級Bランク。二十歳そこそこでの異例のBランク。冒険者にして宮廷魔術師。魔術師界隈では、“異才”との評判。
容姿端麗の貴公子然とした顔立ちだが、そこには、軟弱さは一切無い。切れ長の目には、武人にも似た強い眼差し。濃い藍色のローブの下は、濃い赤色の鎧。袖からは、ナックルガード付きの、鋼造りの籠手が覗いている。
ラーディスは、小高い丘。“トロルの見張り台”を、一人見上げていた。
丘の上は最早、インプの溜まり場に成り果てている──吹き飛ばせない事はないが──やろうと思えば出来るのだが、そうした所で意味は無い。
あれだけの大量のインプが湧いている以上、ほぼ確実に、悪魔に“トロルの見張り台”の場所は捕捉されているだろうしな……。
インプは尖兵であると同時に、魔城門を顕現させる道標と土台ともなる。魔城門の顕現場所は、人里近く。もしくは、悪魔系が出現するダンジョン付近に限られる。人目につかない様な場所に出る事はない。理由は、不明。
神々の目が行き届いているから──という説もあるが、本当の所は分からない。
「む」
“トロルの見張り台”に動きが見えた。インプの群れが、静止する──そして、何かに押し潰される様に次々と、血肉を撒き散らしていく……。
「顕現、か……
ラーディスの端整な唇に、獰猛な笑みが浮かんだ──
急いで準備して、押っ取り刀で駆け付けるとよ、今まで見た事もねえ大きさの魔城門が、顕現してた。間違いなく、上級クラスも出張って来ると直感したな。ああ、そうだ、
だから、対悪魔戦では、補助魔術を行使出来る奴が必要といっても、過言じゃねえんだ。おめえら、覚えておけよ。
「後から騎士団から聞いたんだが、俺達が来るまで、押し寄せて来るインプの群れを、ラーディスが蹴散らしてたんだよ。火と氷の矢を、雨の様に降らせてたそうだ」
ぐびり、とオウルリバーを飲み干すマーカス。
でだ、俺達が到着したらよ、ラーディスがインプどもを殲滅してたんだ。ん? おう、ラーディス一人でだ。マーカスが言った様にな……そこからが本番だったんだよなあ。
「私達が到着したら、ラーディスが戦闘の指揮はダルガンさん、お願いしますって、言ったのよね~。柑橘酒ロック、あと大根の酢漬けね」
店員に注文を頼むミランダ。
野菜ばっかだな。おう、オウルリバー炭酸割りお代わりな……ラーディスに言われた以上は、やらなきゃいけねえって思ったな。
「氷の追加頼む。あとベーコンサンド。平パンで、玉葱多目でな。まあ、ダルガンは以前にも集団戦闘の指揮を執った経験あったからな」
マーカスが店員に注文を頼んだ。
まあ、そのお陰でギルドマスターに睨まれたがなあ。今さらってとこだったが、な。
「ダルガンだけじゃないわよ。マーカス、ラーディス。私達は、特に睨まれていたわね~ええと、あと何人か、ね」
ミランダは懐かしそうに言い、ふうっ、と煙管を吹かす。煙が、ユラリと登って行く。
クセ者ばっかだったからなあ……おめえら、若手を悪くいうつもりはねえが、ちぃっと丸く収まってんだよな。勘違いすんなよ? 無茶しろって言ってんじゃねえからな?
まあ、それでもギルドがまとまってたのは、副ギルドマスターがしっかりしてたから何だよな。
うん? ああ、対悪魔戦な。インプは殲滅したならば、魔城門を破壊……って事にはならなかった。出来なかった、と言った方がいいか。
ピットギオン。奈落の尖兵の名で知られる、中位の悪魔。その姿は、腕の生えた、二足歩行の蝙蝠──顔は鰐に似ており、頭部には、捻れた角が二本。朱色の細身の体に、蛇の様な尻尾。濁った、感情の読めない目をしている──
大量のインプの死骸を、何ら気にする事なく、 ラーディスを見つめている──カアァァァア!
コールクライ。悪魔が同族を呼び出す、独特な叫び声。予備動作があるので、止める事は出来る。
が、ラーディスは敢えて止めない。
叫び続けるピットギオンの背後に、灰色の空間が広がり──新たなピットギオンが、四体出現した……「五体、か……」ラーディスは呟く。
同族を呼び出したピットギオンと、目が合う。
『五対一だ』とでも思っているのだろうか──「少ないな」
ラーディスの言葉を挑発と取ったか、ギィィアッ! ピットギオン達が、喚き声を上げる──
ラーディスが獰猛な笑みを浮かべ、ギリリ、と拳に力を込める。
袖から覗く、鋼造りの籠手に、炎と氷が宿った──
俺達が駆け付けた頃にはよ……何て言ったらいいんだ? まあ、あれだ大量のインプの死骸に、ピットギオンの死骸。それらを前に、何事もなかったかの様に佇むラーディスだ。
待たせたか? と言ったら、野郎。「今来たとこです」何て抜かしたんだよな。笑わせるぜ、全くよ。んで、「戦闘の指揮はダルガンさん、お願いします」と来た。まあ、やるわな。やるしかねえってのが本音だったがな。
「中級Aクラスの義務って事だからな」
マーカスが、ベーコンサンドを噛る。玉葱が、ざくりと鳴った。
野郎、わざとピットギオンを増やして、始末してたんだよ。何故か? ふん……あいつ、おかしいんだよ。
「ラーディスいわく、魔界から悪魔連中を早く引きずり出せば、それだけ魔城門を破壊しやすく出来る、との事だったな」
マーカスが、オウルリバーのロックを呷る。
要するに、上級悪魔を引きずり出せば、魔城門を徹底的に潰せるって算段だったんだよ。そのために、わざとピットギオンを“増殖”させて、魔城門の力を削いだんだよ。
「イカれているのよ。ラーディス……魔道卿はね。昔も今も」
んふふ、とミランダが笑い、煙管を大きく吹かす。
ふん。まあ、そっからは乱戦だったな。
それで、対悪魔戦は終了。素材の回収に結構な手間はかかったがな。それは後方支援の連中の仕事だった……幸い、死人は無かった。負傷者は出たがな。
まあ、これが俺達の、しんどかった経験談だ。もう一度言うが、対悪魔戦には補助魔術を忘れるなって事。神聖術、暗黒術を行使出来る面子がいれば、なお良しだ……今日のとこは、俺とマーカスの奢りだ。好きなだけ、飲んで食うといい。
「んふふ。少し、割引きしてあげるわ~。みんな、好きなだけ飲んで食べて~」
「しょうがねえなあ。オウルリバー、ボトル取るか」
マーカスが、ボトルを注文する──若手達が、わぁっと騒ぐのを、ダルガンデスは、優しく見る。この中から何人の若手が、大成する事になるだろうか。夢諦め、故郷に戻る事になるだろうか。でなければ……考えても、仕方ない事ではあるが。
俺も歳を取ったのかな……ふん。
オウルリバー炭酸割りを、口に含む。グラスは、まだ冷たかった。
UAアクセス、10000越え。地味な作品にも関わらず、御愛好ありがとうございます。
これからも、ジリジリと更新して行きます。評価、感想あれば遠慮なく──Ψ(`∀´)Ψヒヒヒ。