邪神の子 ~赤き瞳のクレイドル~   作:末末

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第90話 宿舎騒動と魔剣“魂食み(ソウルスレイヤー)

 

 

 

朝食後、ギルドに移動。朝食時もそうだったが、移動中も、すれ違う衛兵達の視線をチラチラ感じる……だが、無視だ。

「見られてるねー」

「それはそうよ。昨日が昨日だもの」

シェーミィに、レンディアが答える。

「迂闊だった。考えれば、分かる事だったのだが……」

グランさん、無念そうに言うのは、止めて頂きたい。妙な罪悪感が湧きそうだ。

昨日、何があったか? 簡単に言うと、浴場で騒ぎがあった。俺は悪くないが──

 

昨晩の事───

管理人室兼自室で、宿舎の責任者フィリップは、日誌をつけていた。最後に、レンディア嬢が率いる“碧水の翼”が“黒壁回廊”を踏破した。と、締めた。茶を啜り、ふう、と一息。

時間は、夜の八時少し。寝るにはまだ早いな……よし、一っ風呂浴びて、一杯やりに行くかな……浴場に行く準備をしていると、「うん?」何か、騒がしい気がする。

妙に思いながら外に出ると──

 

「それで……ろくに頭も体も乾かしていない、半裸の衛兵さん達に、一体何が起こったのかな?」

腰に手を当て、仁王立ちになっているフィリップ。目の前には、十数名の半裸の衛兵達。

浴場は広く、優に三十名以上は入る事が出来る。女性衛兵の浴場も、同じ広さ。基本、三交代制とはなっているが、厳密な規則では無い。

個室のシャワーで、済ませる者達もいる。

 

衣服を小脇に抱え、下半身にタオルを巻き、もじもじとしている若手連中……何だ、この状況は?

「ロディ、答えろ。何があった?」

若手のリーダー格。ロディ。引き締まった体付きではあるが、まだ伸び代はある、二十歳前の若手の有望株だ。

「は、教官殿……」

珍しいな。いつもの快活さが無い。

「貴様らしくもない。どうした?」

少しの沈黙──意を決したのか、ロディが声を上げる。

「はい! 教官殿。浴場にレンディア嬢のお仲間二人が、入って来たのであります!」

うん? それがどうしたと、フィリップは思った。確かに、“碧水の翼”は客人だが、レンディア嬢が、特別扱いはしないでといったので、普通に接するように、周知徹底させていたはずだ……。

「それで?」

「はい、それから──」

 

ロディの報告を聞いて、思わずこめかみを揉んだ。要するに、暗黒騎士のグラン殿と一緒に、浴場に来たクレイドルの容貌に、恐れをなした若手連中は混乱し、ロディが逃走の指示を出したという──

「彼は、その……魔性の容姿でした。あの顔、体を直視するのは危険だと判断し、皆に撤収の指示を、出しました」

何を馬鹿な。とは言えない、か……そういえば、クレイドルだっけな。初対面時、フェイスガードを、引き下げたままだった……。

「分かった。規制を掛けよう……レンディア嬢には、俺から伝えて置く」

「お願いします!」

ロディが、頭を下げる──結果。

 

クレイドルは、浴場の使用禁止。個室のシャワー室のみ、深夜限定で使用可──という事になった。

 

「まあねぇ。仕方ないわよ」

あっははは、と明るく笑うレンディア。にっししし、と笑うシェーミィ。

「私が早く気付いていれば、な……」

グランさんが、呟く……俺は、悪くない。うん──

 

ギルドの喫茶室。今日は、のんびりと過ごす事となった。

「さあて、明日にはグレイオウル領に戻ろうと思うわよ。皆、どう思う?」

レンディアが、ゆったりと茶を啜る。

「そうだな……今日一日は、休暇でもいいと思うが。どうだ?」

グランさんがいう。普段着は、相変わらずの上下黒付くめ。

「いいよー、急ぐ用事もないからねー」

シェーミィが、背伸びをしながらいう。

「うん、そうねえ。のんびり過ごしましょうか……」

レンディアが言った。ふうあああ、とシェーミィが大あくびをする。

俺も……眠たくなってきた。

 

せっかくギルドに来たのだから、一応、依頼掲示板を見てみる。

配達に、護衛。商人ギルドの依頼も混ざっているな……。

「ここの冒険者ギルドね、商人ギルドも兼ねているのよ」

レンディアが、横に並ぶ。何でも、大体の依頼が近くの森からの採取だという。冒険者が、猪なり、兎や野鳥を狩って、店に卸す事も普通に行われているそうだ。

「討伐依頼なんて、年に二、三回あるかどうかって聞いたわよ」

……だが、“魔城門(デモンズゲート)”が発生したなら、この長閑な場所が一転して、戦場になるのか……。

 

昼食まで、まだ時間はある。ここからは自由行動となった。

グランさんは武具を扱っている店。レンディアは雑貨屋へ。俺とシェーミィは、昼寝のため宿舎へ戻る。食事は拠点内の“灰色の羽毛亭”で取る事に決まった。

時間になったら、グランさんが迎えに来てくれるとの事だ。

「あー、眠い。意外と、疲れてるねー」

ふあああ、とシェーミィの大あくび。

「確かに……ヘルマスター戦は、少しくたびれた……」

あの緊張感は、かなりのものだった──うん? そういえば、邪神が何か言ってたな? 何だっけか?

 

 

「ふあ~、また、後でね~」

ふらつきながら、部屋に入るシェーミィ。俺も、後に続く……シェーミィはもう、陽当たりのいいベッドに身を埋め、丸まって寝ていた──ほんと、猫だな。

シェーミィは、すぴすぴ、と早くも寝息を立てている。

水差しに、生活魔法で水を補充し、コップに水を注いで一息に呷る──うん、美味い。

ラーディスさんから言われていたな。美味い水を造り出したかったら、美味い水を飲め、と……グレイオウル領の水は美味いからな。その影響なんだろう。

さて。時計を見るに、二、三時間は昼寝出来るな……休める時に休む──ゴドン。重みのある、落下音。んん? 何ぞ?

棚に収めていた、スケルトンキラー(鋼造りのショートソード)が、棚から落ちていた……。

何故、落ちる? しっかり棚に収めて……これ……伸びていないか? 外見も変わっている、な……木枠の黒革造りの鞘は、黒光りの金属製に変化していた。

鞘から抜くと……うわ。二十センチ以上は長くなっている。刃先長く、幅も少し広がっていた。

ショートソードから、ロングソードに変化している……何で、こん──〈あっははは! 魔剣の成長条件満たしたんだよ~〉邪神の声が聞こえた──そういえば、ヘルマスター戦で邪神が言った言葉を思い出す──(そいつを殺せば、いい事あるよ~)と……これが、いい事か?……うわ、このタイミングで異世界知識発動──いや、これは、違う……。

 

呪物鑑定──スケルトンキラーから成長──“魂食み(ソウルスレイヤー)”。対悪魔に対して効果大。悪魔系に属する魔物、魔獣を仕留める事で、活力を得られる。使い手(邪神の子)に対しては、悪影響無し。それ以外の使い手は、徐々に衰弱効果──呪物鑑定って何ぞ!?

 

後から、ラザロさんに聞いてみよう……呪物鑑定? 何なんだろうな……今は、昼寝だ昼寝。

魂食み(ソウルスレイヤー)”だっけか……? 今は、ただ眠い……枕に頭を埋める──んっふふふっ──邪神の笑い声が聞こえた……眠い、今は眠ろう……。




ストームブリンガー!!

Ψ(`∀´)Ψケケケ
ギュンギュンギュン!!
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