朝食後、ギルドに移動。朝食時もそうだったが、移動中も、すれ違う衛兵達の視線をチラチラ感じる……だが、無視だ。
「見られてるねー」
「それはそうよ。昨日が昨日だもの」
シェーミィに、レンディアが答える。
「迂闊だった。考えれば、分かる事だったのだが……」
グランさん、無念そうに言うのは、止めて頂きたい。妙な罪悪感が湧きそうだ。
昨日、何があったか? 簡単に言うと、浴場で騒ぎがあった。俺は悪くないが──
昨晩の事───
管理人室兼自室で、宿舎の責任者フィリップは、日誌をつけていた。最後に、レンディア嬢が率いる“碧水の翼”が“黒壁回廊”を踏破した。と、締めた。茶を啜り、ふう、と一息。
時間は、夜の八時少し。寝るにはまだ早いな……よし、一っ風呂浴びて、一杯やりに行くかな……浴場に行く準備をしていると、「うん?」何か、騒がしい気がする。
妙に思いながら外に出ると──
「それで……ろくに頭も体も乾かしていない、半裸の衛兵さん達に、一体何が起こったのかな?」
腰に手を当て、仁王立ちになっているフィリップ。目の前には、十数名の半裸の衛兵達。
浴場は広く、優に三十名以上は入る事が出来る。女性衛兵の浴場も、同じ広さ。基本、三交代制とはなっているが、厳密な規則では無い。
個室のシャワーで、済ませる者達もいる。
衣服を小脇に抱え、下半身にタオルを巻き、もじもじとしている若手連中……何だ、この状況は?
「ロディ、答えろ。何があった?」
若手のリーダー格。ロディ。引き締まった体付きではあるが、まだ伸び代はある、二十歳前の若手の有望株だ。
「は、教官殿……」
珍しいな。いつもの快活さが無い。
「貴様らしくもない。どうした?」
少しの沈黙──意を決したのか、ロディが声を上げる。
「はい! 教官殿。浴場にレンディア嬢のお仲間二人が、入って来たのであります!」
うん? それがどうしたと、フィリップは思った。確かに、“碧水の翼”は客人だが、レンディア嬢が、特別扱いはしないでといったので、普通に接するように、周知徹底させていたはずだ……。
「それで?」
「はい、それから──」
ロディの報告を聞いて、思わずこめかみを揉んだ。要するに、暗黒騎士のグラン殿と一緒に、浴場に来たクレイドルの容貌に、恐れをなした若手連中は混乱し、ロディが逃走の指示を出したという──
「彼は、その……魔性の容姿でした。あの顔、体を直視するのは危険だと判断し、皆に撤収の指示を、出しました」
何を馬鹿な。とは言えない、か……そういえば、クレイドルだっけな。初対面時、フェイスガードを、引き下げたままだった……。
「分かった。規制を掛けよう……レンディア嬢には、俺から伝えて置く」
「お願いします!」
ロディが、頭を下げる──結果。
クレイドルは、浴場の使用禁止。個室のシャワー室のみ、深夜限定で使用可──という事になった。
「まあねぇ。仕方ないわよ」
あっははは、と明るく笑うレンディア。にっししし、と笑うシェーミィ。
「私が早く気付いていれば、な……」
グランさんが、呟く……俺は、悪くない。うん──
ギルドの喫茶室。今日は、のんびりと過ごす事となった。
「さあて、明日にはグレイオウル領に戻ろうと思うわよ。皆、どう思う?」
レンディアが、ゆったりと茶を啜る。
「そうだな……今日一日は、休暇でもいいと思うが。どうだ?」
グランさんがいう。普段着は、相変わらずの上下黒付くめ。
「いいよー、急ぐ用事もないからねー」
シェーミィが、背伸びをしながらいう。
「うん、そうねえ。のんびり過ごしましょうか……」
レンディアが言った。ふうあああ、とシェーミィが大あくびをする。
俺も……眠たくなってきた。
せっかくギルドに来たのだから、一応、依頼掲示板を見てみる。
配達に、護衛。商人ギルドの依頼も混ざっているな……。
「ここの冒険者ギルドね、商人ギルドも兼ねているのよ」
レンディアが、横に並ぶ。何でも、大体の依頼が近くの森からの採取だという。冒険者が、猪なり、兎や野鳥を狩って、店に卸す事も普通に行われているそうだ。
「討伐依頼なんて、年に二、三回あるかどうかって聞いたわよ」
……だが、“
昼食まで、まだ時間はある。ここからは自由行動となった。
グランさんは武具を扱っている店。レンディアは雑貨屋へ。俺とシェーミィは、昼寝のため宿舎へ戻る。食事は拠点内の“灰色の羽毛亭”で取る事に決まった。
時間になったら、グランさんが迎えに来てくれるとの事だ。
「あー、眠い。意外と、疲れてるねー」
ふあああ、とシェーミィの大あくび。
「確かに……ヘルマスター戦は、少しくたびれた……」
あの緊張感は、かなりのものだった──うん? そういえば、邪神が何か言ってたな? 何だっけか?
「ふあ~、また、後でね~」
ふらつきながら、部屋に入るシェーミィ。俺も、後に続く……シェーミィはもう、陽当たりのいいベッドに身を埋め、丸まって寝ていた──ほんと、猫だな。
シェーミィは、すぴすぴ、と早くも寝息を立てている。
水差しに、生活魔法で水を補充し、コップに水を注いで一息に呷る──うん、美味い。
ラーディスさんから言われていたな。美味い水を造り出したかったら、美味い水を飲め、と……グレイオウル領の水は美味いからな。その影響なんだろう。
さて。時計を見るに、二、三時間は昼寝出来るな……休める時に休む──ゴドン。重みのある、落下音。んん? 何ぞ?
棚に収めていた、スケルトンキラー(鋼造りのショートソード)が、棚から落ちていた……。
何故、落ちる? しっかり棚に収めて……これ……伸びていないか? 外見も変わっている、な……木枠の黒革造りの鞘は、黒光りの金属製に変化していた。
鞘から抜くと……うわ。二十センチ以上は長くなっている。刃先長く、幅も少し広がっていた。
ショートソードから、ロングソードに変化している……何で、こん──〈あっははは! 魔剣の成長条件満たしたんだよ~〉邪神の声が聞こえた──そういえば、ヘルマスター戦で邪神が言った言葉を思い出す──(そいつを殺せば、いい事あるよ~)と……これが、いい事か?……うわ、このタイミングで異世界知識発動──いや、これは、違う……。
呪物鑑定──スケルトンキラーから成長──“
後から、ラザロさんに聞いてみよう……呪物鑑定? 何なんだろうな……今は、昼寝だ昼寝。
“
ストームブリンガー!!
Ψ(`∀´)Ψケケケ
ギュンギュンギュン!!