邪神の子 ~赤き瞳のクレイドル~   作:末末

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第93話 武人の練武場 衛兵救助に向けて

 

 

 

昼食を取ったのは、俺とグランさんだけだった。シェーミィは宣言通り眠りこけ、冒険者ギルドから戻ったレンディアは、昼食を取らずに部屋に戻って行った。

「よほど、疲れているみたいだな」

苦笑を浮かべ、グランさんはパンをシチューに浸す。所作が、丁寧何だよな。グランさん……育ちがいいんだろう。

昼食のメニューは、鶏肉、白菜に玉葱のシチューに丸パン。そして酢漬け野菜。

うん。シンプルだが、なかなかに量は多く、そして、美味い。

美味い食事は、士気を上げる。兵も冒険者もそれは同じだ。

 

昼食後の、お茶休憩。グランさんと、とりとめもない会話。その際、ルーリエちゃんがそわそわと、テーブルの周囲をうろついている……ああ、そうだ。果樹園デートの約束だな。

「ルーリエちゃん、お父さんは何て?」

「大丈夫だよ! 夕方前に帰れば、いいんだって! 蜂蜜漬けの林檎パイを、食べに行こうよ!」

おお……ぐいぐい来るな。林檎パイか……美味しそうだな。グランさんは、他人事なので、笑っている。

 

 

蜂蜜漬けの林檎パイ──いや、美味かった。蜂蜜の甘さと、林檎の酸味がバランスよく、生地の歯触りも良かった。

これ……先の転生者のレシピじゃないか?

ルーリエちゃんは終始、楽しそうで何よりだった。オウルレイク近くを散歩して、宿に戻った。果樹園に来た理由の一つは、オウルレイクの風景を、しっかりと見る事だった。魔力制御の、勉強になると感じたからだ。

 

オウルレイク廻りを充分に堪能して、帰宿。丁度、夕方前に戻る事が出来た。例によって、ルーリエちゃんがごねたが。

宿に戻ると、グランさんが、テーブルでお茶を飲んでいた。

「ああ、お帰り。さっき、レンディアとシェーミィが起きてきて、浴場に行ったよ」

テーブルに付くと、グランさんにお茶を勧められる。

 

「夕食だけど、どこにしようか」

「そうねえ……まだ、行っていない所だと……」

レンディアに尋ねる。“淡水の庭”に“湖畔の庵亭”か。“鶏源亭”の支店もあったな……。

「色々あるけど……まあ、昨日も行ったけど、朝陽食堂にしましょうよ」

レンディアの鶴の一声。まあ、いいか。何を注文するか、楽しみ何だよな……酢漬け野菜以外に、糠漬け出すしな。東国出身と言っていたが、日本か……?

 

 

「あれ? メニュー増えた?」

レンディアが、壁に貼られたメニュー表を見て言った。

うん? 鶏定食に豚定食、茸と野菜定食の三種に、豚汁定食。限定十食とある……。

「限定十食とは、人気何ですか?」

思わず、大将に聞いていた。具沢山の豚汁だけで、おかずになるからなあ……。

「試しにやってみたら、なかなかの人気でね。特に米との組み合わせが、とてもいいんだよ」

ああ、確かにな。米と豚汁に漬け物。これで完成しているからな。うむ。

「ふ~ん。じゃ、豚汁定食、米でね」

レンディアが言う。グランさん、シェーミィも同じくだ。俺は、前世の経験があるからな……。

「鶏肉で、丼物出来ますか?」

焼き鳥丼というやつだ──「出来るよ」大将が、不敵に笑う。

ふむ……大将、恐らく──転生者だ。

「果実酒炭酸割りもお願いします。鶏肉丼に、焦がし葱もお願い出来ますか?」

「あいよ。焦がし葱ね」

にやりと笑う大将。決まりだな。俺と同じく、転生者(同郷)だ……恐らく、大将も気付いたかも知れないが、気にする必要は無いだろう。今は、焼き鳥丼を楽しみにしていよう……。

 

「え~、何それ!」

豚汁定食を食している最中の、シェーミィが言う。何と言われてもなあ……甘辛のタレがかかった、焦がし葱が乗った焼き鳥丼ですが? うん、美味い。付け合わせは、大根の糠漬け。

炭火焼きであれば、完璧だっただろうが、そこまではさすがに、求められない……美味いな。

箸が進む──「大将。美味しいです」

「おう。ありがとな……丼物のメニュー、増やすかなあ」

何か、嬉しそうに言う大将。次ぎは、豚丼かな……。

 

シェーミィは、ガツガツと焼き鳥丼を貪っている。よく食うよなあ……。

俺達は酒に移っている。レンディアは、オウルリバーの炭酸割り。グランさんは黒ワイン。

早く来たので、客は今だ俺達だけ……喧騒も悪くないが、いい空間だな。

「あと一つのダンジョン、“武人の練武場”だったな。そこに行く予定は?」

グランさんが、黒ワインを傾けながらレンディアに尋ねる。

「う~ん。どうかしらね。あそこは実入りはそこそこなんだけどね」

「どういう品が出るんだ?」

武人というくらいだから、武具関連かな?

「そうねえ……兄上と行った時は、武具ばっかりだったわよ。あと魔石は、単純な魔力属性だけだったわよ」

「レンディアはともかく、魔導卿からしたなら、武具は必要無いだろうな」

「いや、無骨な武具ばっかりで、全部ドルヴィスさんとこに持ち込んだわよ。魔石は、兄上の取り分になったわね」

ラーディスさんが言ってたな。魔力属性の魔石は、なかなか入手しにくいと。

「“武人の練武場”ねー……難易度としては、どんなものなのー?」

焼き鳥丼を完食し、口元に飯粒を付けたシェーミィがいう。ケフゥ、と小さなげっぷをした。

「そうねえ……中級って感じよ。全五階。二階までは盾兵。三階からは、両手武器に、槍兵も交じるわね。そこから下は、弓兵も加わるわよ。少しづつ人数も増えていくわね。五~十五くらいね」

「集団戦闘の経験が積めそうだな」

暗黒騎士のグランさんが、興味深そうにいう。

「うん。グレイオウルの衛兵達が、演習として、定期的に潜るわよ。たまに、帝都からも新兵が来るのよ」

レンディアが、シェーミィの口元を拭いながらいう。むー、とシェーミィが唸る。

 

ガラリ、と扉が開き、巨漢が入ってきた。ドルヴィスさんだ。

「今晩は大将。よう、お歴々」

「今晩は、ドルヴィスさん。今ちょっと、ドルヴィスさんの話をしてたわよ」

「あん? 悪口か? 大将、蜂蜜酒と鶏肉料理頼む」

「ううん。フラれてやけ酒して、泥酔した挙げ句、兄上に女性を紹介してくれと、泣きついた話を今からしようと、思っていたわよ」

大将が、ふふっ、と笑った。

「お嬢、その話は止めろ。離婚歴のある年増の女官長の事は、忘れたい」

苦々しく言う、ドルヴィスさん。蜂蜜酒を持ってきた大将が、笑いを噛み殺している。

 

「鶏とジャガイモの煮物お待ち」

「おお、煮物か。いいね……この太葱、美味そうだな」

ドルヴィスさんは、焦がし葱を見つめる。焼き鳥丼の葱だな。美味いですよそれ……。

「そういえば、“武人の練武場”で入手した武具を持ち込んだ事あったわね。あれの質ってどんなものだったっけ?」

レンディアの質問。煮物を、美味そうに口にするドルヴィスさん。太葱が、ざくりとなる。

「う~ん、確か、中級品てとこだったな。ラザロさんのとこに持ち込んでも、似たような値段になったろうな」

ぐい、と蜂蜜酒を干すドルヴィスさん。

店が、そろそろ騒がしくなってきた。うん、いい喧騒だ……あれ、いつかの水商売の女の人だ。男性と一緒だな。同伴出勤? 俺に気付いて、ウィンクをしてきた。

喧騒の中、しばらく酒食を楽しむ。ふと、ある事を思い付いた。

「大将、酢と味噌ありますよね?」

「うん? あるよ。どうした?」

「マリネの酢味噌和え、出来ますか?」

酢味噌和え。前世で、沖縄出張の時、居酒屋でマグロの酢味噌和えを何となく頼んだら。やたら、酒が進んだ経験があった──「酢味噌和えか……しばらく待ってくれないか。色々、試してみるよ」

大将が、面白そうに言った。おおう、楽しみだ。酢と味噌のバランスが、少し難しいかもしれないですよ、とアドバイスをした。

 

翌日、宿での朝食後。ゆっくりとした、お茶の時間。

「今日はどうする? まだ、休暇の続きか?」

上品な仕草で、ティーカップを摘まむグランさん。

「う~ん。そうねえ……取り合えず、冒険者ギルドに行ってからね。面白そうな依頼があれば受けて、でなければ“武人の練武場”にでも、出向こうかしらね」

武人の練武場に、興味あるんだよな。集団戦闘を、まだ学びたい……。

「取り合えず、冒険者ギルドに行ってからねー」

シェーミィが、明るく言った。

 

冒険者ギルド内には、大した依頼は無かったが──レンディアが、捨て置けない依頼が合った。

特殊依頼「衛兵救助。武人の練武場」 と。

「この依頼──」

「いいよー。受けようよ。ご領主に感謝されるかもねー」

にしし、と笑うシェーミィ。

「私は、構わない。“武人の練武場”を知りたいしな」

とグランさん。俺も両名に同意見だ……武器はバトルアクス、かな。

「準備が済み次第、出発だな。お嬢」

「ええ……行きましょうよ。シェーミィ、依頼を受けてきて。その後、準備用意」

レンディアが、不敵な笑みを浮かべた。




コンゴトモヨロシク。



Ψ(`∀´)Ψウィヒヒヒ
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