邪神の子 ~赤き瞳のクレイドル~   作:末末

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第95話 武人の練武場 うろつく鎧(リビングアーマー)

 

 

 

入り口前で、改めて打ち合わせ。俺達が左回り。衛兵達が右回りで、各部屋を確認しながら移動。“うろつく鎧(リビングアーマー)”がいたら、なるべくは殲滅。

その際、宝箱が出現しても、回収は後回し──半周後の広場で合流後、下に降りる。若手連中を率いるのは、ブリッジスさんといって、訓練教官だそうだ。何度も武人の練武場に出入りしているベテラン。レンディアとラーディスさんとは、当然、顔見知りだ。

 

「では、行くか……若手連中の事は、任せておいてくれ、お嬢」

ちら、と若手連中を見て、ブリッジスさんが言う。

「ええ……じゃ、お先にどうぞ」

「……ちなみに言っておくが、あの若手連中は、潜るのも、実戦も初めてだ。不測の事態が起きる可能性が有る事を、念頭に入れて置いてくれ……」

ブリッジスさんの発言に、俺達は顔をしかめた。

武人の練武場を経験した事が無いにも関わらず、若手連中は、ギルドを侮る発言をしたのか!?

「はあ……まあ、いいわよ。ブリッジスさん、お願いね。早く、救助に向かいましょうよ」

「ああ……先に行くぞ」

若手達を連れ、ブリッジスさんが武人の練武場に入っていく。何人かが、こちらに視線を向けたが、俺達は無視した……いや、まて。武人の練武場に、出向いた事が無い?……それ以前に、実戦経験が無い?……やれやれだ──何か、腹が立ってきたな。実戦経験が無い餓鬼どもが、食ってかかって来たのか……ああ、駄目だ。堪えきらないな、これは……。

 

「ふざけるな! ダンジョンに潜った事が無いならともかく、実戦経験が無い!? こんな連中、役に立つのか!! 馬鹿の救助と、ガキのお守りをさせようというのか? こんな依頼、馬鹿げている!! 冒険者ギルドを舐めているのか!?」

この際だ、言いたい事をいってやる。後のためにもな──冒険者ギルドには、それなりに思い入れがあるんだよ。ガキのお守りは、ギルドの仕事じゃあ無いんだよなあ……。

「クレイドル。落ち着いて……私達も同じ気持ちなのよ。馬鹿の尻拭いに、口先だけの若手連中の補佐……堪えましょうよ。古参の衛兵達と、グレイオウル伯の面子が、あるのよ……だから、落ち着いてね」

諭す様な、レンディアの口振り──うん……確かにな。俺がキレても、仕方ない事か。

だが……若手連中が、逆恨みの様に俺達の邪魔をしてきたならば──見過ごさないからな。というか、レンディアも口悪いな……馬鹿の尻拭いに、口先だけの若手か……。

 

 

左回りに廻りながら、部屋を確認しつつ移動。レンディアがいうには、各階六部屋。半周なので、左右に三部屋ずつ。その中に、“うろつく鎧(リビングアーマー)” がいる確率は、三分の一だそうだ。

「宝箱が残る時間は、半日程度だったな?」

「そうだねー、生き物の死体がダンジョンに吸収されるよりは、遅かったはずだよー」

グランさんとシェーミィの会話。確か、そう習ったな。生き物の死体、というのが少し不思議な所で、アンデッドなんかは普通に徘徊しているんだよな……ダンジョンの生態というか、仕組みはまだ解明されていないとか……。

 

「宝箱の中身は、あまり期待しない方がいいわよ。武具ばかりだから」

レンディアがいう。武具か。かさ張りそうだしな……。

「じゃ、扉開けるよー」

シェーミィが、いつものように全く音も立てず、扉を開く……一つ目の部屋だ。グランさんが、部屋を覗く。

「異常無し。空き部屋だ」

「ふん。じゃ、次行きましょうよ」

 

前方にグランさんとシェーミィ。その後方、少し距離を取り、俺とレンディア。

先行している、衛兵達の捜索は順調だろうか……等と考えながら、グランさん達の後を追う。

 

「む……シェーミィ、聞こえたか?」

「うん……お出ましね。レンディア達に伝えてくる」

シェーミィは、すっと静かに下がり、音も無く退いて行く……ガチ、ガチャリ、と鎧の擦れる音だ。聞き慣れた音といってもいい……。

グランは、ブロードソードを引き抜き、腰を沈める。カイトシールドをしっかりと構えた。

うろつく鎧(リビングアーマー)”か……話には聞いていたが、実戦は初めてだな。

グランの顔に、笑みが浮かんでいた。

 

 

シェーミィが告げる。うろつく鎧の出現。数、数体との事──「ん。クレイドル、グランの隣に付いて。私は中衛、シェーミィは後方支援ね」

「はいはーい」

シェーミィは、短弓に弓をつがえながら後方に廻る。俺は、直ぐにグランさんの元に。

「なるべく、鎧の隙間を狙うといいわよ」

レンディアに助言を受け、頷く。今の武器は、バトルアクスがメイン──叩き斬ってやるさ……。

 

 

うろつく鎧、数五体。レンディアの言っていた通り、盾兵だ。三体が前衛。そのやや後方に、二体が備えている。

慎重に、ジリジリと距離を詰めて来ている。私が、一人ではない事が分かっているのか、どうなのか──「グランさん、うろつく鎧の数、五体ですか」

私の隣に、頼れる仲間が来た。レンディアは中衛で、シェーミィは後方支援だな。いつも通りの布陣だ……うん。どうとでもなる。

「ああ、五体だ……油断するなよ、クレイドル」

「もちろんです……おおあぁっ!!」

バトルアクスを肩担ぎにしたクレイドルが、うろつく鎧に斬り込んで行く。

さあて、うろつく鎧の手並みを拝見といくか……。

 

 

ゴゴオォォン……地響きが、聞こえた。反対側の通路からだ。“碧水の翼”パーティーの進行先だ……「ブリッジス隊長、今のは……?」

若手の一人が聞いてくる。

「お前らが舐めていた、冒険者連中の戦闘音だろう……ほら、進め」

ブリッジスは、少しばかりうんざりしていた。若手連中の気持ちも分かる。身内の不始末は、自分達で解決したい。部外者に頼るのは、納得がいかない──だが、だがである。

今現在、ここの拠点にはベテランが少ない。まだ訓練中の、若手だけ……それが理由で、冒険者ギルドに救助依頼を頼んだのだ。

その結果。冒険者ギルドとの、いざこざが出来てしまった。若手の馬鹿な不始末のせいで、お嬢率いる、“碧水の翼”から、敵対認定を受けてしまった……依頼状を破り捨てる? ギルドに対してへの、宣戦布告に等しいぞ……くそったれめ。

 

「ブリッジス隊長。扉ですが──」

「開けて、中を確認しろ。うろつく鎧がいたら、殲滅だ」

「いや、しかし……」

しかし、何だ? 冒険者、お嬢達に絡んだ新兵見習いが怯んだ様にいう……「開けて、確かめろ……とっとと、やれ!」

まごまごとしている見習い。全く──腑抜けが。

見習いを押し退け、扉を開く……「異常、無し!!」

部屋は、空。ビクビクしやがって……気配も感じ取れないんだよな。こいつら。

それでよく、冒険者連中を軽く見られるものだな……「先に進むぞ!!」

腑抜け。という言葉を胸にしまい、ブリッジスは、若手連中を見る。ぎこちなく、ダンジョンを進む若手達を見ながら、ブリッジスはため息を吐いた……。

 

 

「三部屋目、異常無しだな。レンディア、先に進もうか」

「そうね。さっさと、広場に行きましょうよ」

結局、部屋にはうろつく鎧は出現しなかった。当然、宝箱も無し。

通路で出現したうろつく鎧から回収した、魔力属性の魔石が、今の所の実入りだな。

衛兵達も、そろそろ、一階層を半周終えただろうな。

「さっさと進もうよー。喉乾いたよー」

シェーミィが、広場での休憩を訴えてきた。まあ、確かにな……。

「じゃ、行きましょうか」

レンディアが、明るく言った。うん、先は短くないからな。さて……救助対象の連中は、どこにいるか、な……。




感想あれば、是非。


Ψ(`∀´)Ψウィ~ヒヒヒ。
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