邪神の子 ~赤き瞳のクレイドル~   作:末末

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第10話 メルデオ商会 まずは体力造り優先

 

「いや大丈夫です。場所分かりましたから大丈夫です。一人で大丈夫です。うん、大丈夫ですから」

女性衛兵に道を聞いたは良かったが、腕を掴まれ「城塞都市は初めてといったな? なら責任をもって案内しないといけない。それが衛兵の務めだ。さあ来なさい」

グイグイと迫り来る衛兵を何とか振り切り、メルデオ商会のある大通りにたどり着いた。というかあの衛兵さんも狼系の獣人だったな……何、俺。獣人ホイホイなの?

 

広い。まさしく商店街通りって感じだ。いいね。いい。広いが、人通りが多いので狭く感じるほどだ。買い物に行き交う人達の活気が、心地いい。ええと……あれか、大きな黒い看板に、銀文字でメルデオ商会と彫られている。

看板は顔というなら、なかなかいい顔だ。建物の大きさは奥行きを考えると、結構な大きさだ。

多分、二階もあるな。元建設会社勤めの目は節穴じゃない。詳しいんだ俺は。

「あれ?クレイドル君じゃないか」

振り返ると、メルデオさんだ。最初に出会った時より、よそ行きの上質感のある服を着ている。

「お久しぶりですって、いうほどじゃないですね。そういえばこの店の看板、いいですね」

「おおっ! 分かるかい。実はこの店を開く際にね、特にお金を掛けたんだよ。ずっと付き合っていく顔だからね。あの看板、ドワーフに特注で作ってもらったんだ。あと魔導士に頼んで、耐火性と頑丈性を上昇させて貰ったんだよ。いや~高くついたなあ~」

お、おおう……メルデオさんの予想外の看板愛に狼狽えてしまう(うろた)

「あの、旦那様。立ち話もなんですから」

背後に佇んでいた店員さんが、メルデオさんを促す。はっと我にかえったメルデオさんが、咳払い一つし、俺を奥に案内する。

 

 

「なるほど、冒険者ギルドの初級訓練を受ける事にしたんだね。ダルガンさんも最近は新人が来なくて、困ってたそうだから嬉しいんじゃないかな」

質素な白のティーカップを啜りながら、メルデオさんがいう。

「ダルガンさんがいうには、ベテラン連中が訓練教官を受け持ってくれると、いってました」

茶をゆっくり啜る。微かな酸味と甘い香りが、気持ちを穏やかにさせる。

「ほう。あそこのギルドは腕利きのベテラン揃いだからね。いい経験になるよ、きっと。そういえば、この店には何の用があるの?」

「ああ、その、冒険者用の雑貨を見に来たというより、衣服を買おうと思いまして」

「そういう事かい。肌着も服も用意されているけど、服は自前で用意しておきたいという事だね……よし、いいのを見繕ってあげるよ」

「いいんですか? 店長自ら?」

何故かノリノリのメルデオさんが、様々な服をおすすめしてくるのだが、途中から店員さん達が参加してきた。皆、女性。キャッキャと着せ替え人形の様に俺を扱ってきた……その過程は思い出したく無い。

 

結局、濃い朱色の上下服。七分袖に長ズボン。

黒の上下服。これは長袖。二つとも飾り気の無いシンプルな服。合計、銀貨三枚。結構おまけしてくれた。

「もちろん、初級冒険者用の道具も揃っているけど初級訓練を終えた時、卒業の特典に初級道具も進呈して貰えるよ。あと、ちょっとした装備もね。訓練を終えたなら、この店に来るといい。お祝いをさせてもらうよ」

「どういう訓練を受けるか、今もって決めていませんが、またお目にかかりましょう……お茶、ご馳走さまでした」

頭を下げ、荷物を抱えて店から出る。

 

「おう。丁度いい所に戻ってきたな」

受付で書類仕事をしていたダルガンさんが顔を上げる。というか、入り口正面カウンターにどっしり構えているダルガンさんを見たら、依頼客なり冒険者志望の人は、回り右するんじゃなかろうか……。

「おめえ今、なかなかに失礼な事考えてねえか?」

「いえ……ギルドの顔は頼もしいものだなと」

「ふん。まあいい。ついてきな……おい、ここ頼むぜ」

近くにいた職員さんにカウンターを任せ、立ち上がるダルガンさん。この人も獣人だが、男性だ。スーツ姿の、すらりとした体格の明るい毛並みの猫?族だ。

にこりと微笑み、軽く頭を下げてきた。明るい青の瞳をしている。イケメンならぬイケ猫って感じだ。

 

ダルガンさんの後を追い、訓練場にきた。荷物を宿舎に放り込んで、長テーブルにダルガンさんと向かい合って座る。

「一応、訓練内容何だがな、この稼業は体が基本だ。まずは体力造りを最優先にする。知識面の座学はその後って事にしときたいが……何か、希望はあるか?」

そうだな……知識については、異世界知識があるのだが、これに頼りきりってのは少し恐いな。自分が興味なかったら、発動しない感じなんだよな。ここは……。

「体力造りを優先します。戦闘訓練も受けられるなら、そっちも御願いしたいのですが」

「ふ~ん。まあまあ、覚悟は決まってんな。いいぜ。小難しい事は、仲間に任せりゃいいって奴等はいくらでもいるからよ」

ガハハと楽しそうに笑うダルガンさん。会話の選択肢、間違ってないよな……?

昼食はまだだったので、ダルガンさんと一緒にとる事になった。

 

メニューは、卵を落とした米粥。米がある事もそうだが、生卵が食べられる事に少し感動した。

おかずは、甘めのタレで炒められた鶏肉と野菜の炒めもの。

付け合わせには、酢漬け野菜。この酢漬け野菜は当たり前に付くらしい。家庭料理の定番だそうだ。

「おかわり、どうぞ」

何故か同席しているリネエラさん。空の器を俺の手から取り、今だ湯気を立てている鍋から粥を掬いとる。何も言っていないのに、卵を粥に落としながら塩をパラパラと振り、丁寧に粥を混ぜてくれた。

「俺も頼む」

「ご自分でどうぞ」

「……分かりすぎやしねぇか。おめえ」

なんやかやあり昼食を終えた。食事担当の職員さんは、喫茶室の亭主と同じらしい。その職員さんが食器を片付けていった。スキンヘッドの、ダルガンさんに負けず劣らずの体格をした人だ。

食事の礼をいうとニヤリと笑い、暇があったら喫茶室に来な。美味い茶を入れてやるよ、と言われた。

これからの訓練予定を改めて話し合おうとしたが、リネエラさんが居座ろうとする。それをダルガンさんが、仕事に戻れと追い払った。

チッ!! とリネエラさんが舌打ちをする。いやダメでしょ。

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