邪神の子 ~赤き瞳のクレイドル~   作:末末

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第97話 武人の練武場 二階での選択肢

 

 

 

広場で、レンディア達と合流……他の若手の姿はない。ブリッジスさんだけが、付いて来たか……うん。これでいい。しかし、あの若手連中はちゃんと、教官殿の言い付けを守るだろうか?

 

二階──聞いた通り、同じ造りだな……さて、どう、パーティーを分けるか。

「そうねえ、ブリッジスさんとグランは右回り。私とシェーミィ、クレイドルは左回りね」

「分かった。救助対象を発見したら、どうする?」

「回収して、三階へ続く広場に運びましょう。負傷していたなら、治癒して。私もグランもそれなりに出来るから」

「そのまま、広場で待機させるんだな?」

「ええ。部屋にいる“うろつく鎧”(リビングアーマー)は部屋から出て来ないし、通路にいるうろつく鎧は、殲滅したなら三日は湧かないだろうからね」

魔物の“再湧き(リスポーン)”は、三~四日だったな。それなら、救助した衛兵を待機させても危険は無いだろう。まあ、油断は禁物だが。

「了解だ」

頷く、ブリッジスさん。待機させる若手に分ける水と携帯食は、余裕あるからな。

「じゃ、行きましょうか……広場でね」

 

俺達は慎重に、左回りに進む。最初の部屋を、レンディアが魔力探知で探る。少しして、レンディアが首を振る。反応無し、との事──念のため、シェーミィが音もなく、部屋の中を確認──何も無しの、合図。

じゃあ、次だ。あとの部屋に何も無いと、いいがな……。

 

警戒しながら、私とブリッジスさんは、右回りに魔力探知をしながら進む──うろつく鎧は、不死者と魔法生物(アンデッドとゴーレム)の中間と聞いた。魔力探知には、引っ掛かるだろう──。

 

一階でやっておけば、もう少し時間短縮できただろうか……だが一応、警戒のため、部屋も確認するつもりだ。部屋に、救助対象が逃げ込んでいる可能性もあるからな……部屋の中で骸になっている可能性も有り得るので、何にせよ部屋の中は確認しないといけないが……最初の部屋……生命、魔力の反応無し。

「反応無し、です。一応、部屋内部の確認をしましょう」

「む。任せてくれ……」

扉を慎重な手つきでゆっくりと開き、中を伺うブリッジスさん……「よし、異常無し。先に進もうか」

「ええ、行きましょう。レンディア達も、先に進んでいるでしょうね」

「よし……慎重に進もうか」

グランを先頭に、二人は進んで行く──魔力探知を張りながら……「二つ目の部屋が近いです」

グランの言葉に、ブリッジスが身構える。

 

「シェーミィ! 後方の二体に、足止めをお願い!!」

レンディアの指示。「あいあーい!!」シェーミィが、短弓に矢をつがえ──二矢をギュウッ……と強く弦を引き絞り──強撃の二連射を放つ──ビビィッン!と、矢鳴り。

強撃が、後衛のうろつく鎧の二体を撃ち、後退させた。

俺は、前衛三体の真ん中を狙う──「おおう!!」構えた盾ごと、体を両断するつもりの、バトルアクスの薙ぎ払い──ガツン、一瞬の手応え……思いきり振り抜く。呆気なく、バラバラになるうろつく鎧。

左右のうろつく鎧が、俺目掛けて剣をほぼ同時に振り下ろしてきたが、前方に身を投げ出して避ける。

ガヂィィン!! うろつく鎧のロングソードが、床を叩く音。前衛をすり抜け、後方の二体に向けて駆ける──腰を落とし、迎え撃つ体勢を取る、うろつく鎧……それは、悪手何だよなあ。

 

ガガッガッ、二体のうろつく鎧の体に、再び矢が突き立った……グラリとよろめく、うろつく鎧目掛け──バトルアクスを袈裟斬りに叩き付け、横に薙ぎ払う。

激しい金属音が、通路に鳴り響く──道を、開けろ!!

背後で金属音──レンディアが、残る二体のうろつく鎧を仕止めたのだろう。

 

通路でのうろつく鎧の出現──言うなれば、“徘徊する魔物(ワンダリングモンスター)”というやつだ。

うろつく鎧の落とした魔石を回収し、一息吐く……「あと、一部屋ね。急ぎましょうよ」

三つ目の部屋は、目と鼻の先。生命探知をしながら、先頭を進むレンディア。

「ん? シェーミィ、あの部屋の様子見て」

三つ目の部屋の手前で、レンディアが立ち止まる。シェーミィが、足音一つ立てずに扉の前に立ち、いつものやり方で、無音で扉を開ける──「ありゃ。二名、発見だねー」

壁に寄りかかっている、若手。鎧を脱ぎ、盾と剣を傍らに置いている。一人は、床に横たわっている──二人とも、眠っている様に見えるが、顔色は悪い──一人は、片腕から出血。血は止まっているが、治癒を必要としている事は、間違い無いだろう。

横たわっている若手は、ぱっと見、負傷している様には見えないが……さて、後三名か。

 

 

一名は、骨折に切り傷。一名は、打撲多数──レンディアが骨折を治癒し、俺が打撲、切り傷を治癒した。

骨折治癒の鈍痛に呻く声。打撲治癒に安息を上げる声……どっちにしろ、体力回復を待たなければならない──治癒後は、休息が必要だが……今は急ぎだ。

パン、パァン──レンディアが、意識定まらぬ二人の若手の頬を張る……だろうなあ。

 

「う……あ、あ?」

目を覚ますも、ぼんやりとした顔付きの若手達。そりゃそうなるな。

「これ、飲んで」

シェーミィが、小瓶を若手達に渡す。ぎこちない手付きで、受け取る。

「疲労回復ポーション。効き目早いよー」

「あ、ありがとうございます……」

ふう、と一息吐く若手二人。さて……あと三名は、どこかな……。

 

二人の衛兵見習い……若いわね。十五、六ってとこね。シェーミィの二つ下くらい? 見習いは何歳からだっけ?

二人の見習いを観察するレンディア──ここに二人を置いて行った事は、まあいい。怪我人を連れ回すのは危険だから。

怪我人が出た時点で、引き返さなかったのも、まあ……よくないが……腹が立つのは、応急手当もせず放置した事だ。

冒険者視点で見れば、仲間を見捨てる様なものだ──「チッ」レンディアが、腹立たしく舌打ちをする。

 

(あとの三人は下に行ったのか……気になるのは、目的は本当に訓練なのか?)

どうも、何か引っ掛かるんだよな。ベテラン抜きでの訓練何て、無謀にもほどがある──だから目的は……よし、鎌をかけてみるか。

「なぁ……ベテラン抜きでの訓練というのが、信じられないんだよ。本当の目的は何だ?」

壁に寄りかかっている若手の側にしゃがみ込み、質問する。顔が強張ったな……?

「それ、は……」

「……クレイドル、あとよあと。それよりあなた達、立って。治癒したから痛むとこ無いでしょ?」

急かすレンディア。戸惑いながらも立ち上がる若手達。

「今から、三階に続く広場に向かうよー。ブリッジスさんと合流だからねー」

若手達の顔色が、悪くなった。自分達の仕出かした事は、充分分かっているらしいな……?

 

広場で、ブリッジスさん達と合流。グランさんと二人だ……向こう側には居なかったか。

ブリッジスさんが、呆れたような顔で、こちらを見ていた。若手二人は顔を伏せている──まあ、この場はブリッジスさんに任せて、一休みといくか。

「ちょっと、聞きたい事がある……来い」

若手二人に、ブリッジスさんがいう。ベテランの凄みが滲んでいる、優しい声だ……怖っ。

 

ブリッジスさんがいうには、できるなら最下層の五階まで行きたいそうだ。だろうな……若手連中の救助が目的だからな。

「三階からは、うろつく鎧の連携が変わるわよ。両手武器に槍……数も増えるわよ。基本、十体一組になると思っていいわよ」

レンディアがいう……と、なると……ここから先は別行動では危険だろうな。

「三階以降からは、パーティーは分けない方がいいかもな。探索は、二度手間になると思うが、それが安全だと思う」

グランさんがいう。“碧水の翼(へきすいのつばさ)”にブリッジスさんが合流し、五人一組で、三階以降を廻るという事だ……。

 

さて。ブリッジスさんは、どの選択肢を選ぶだろうか? パーティーを組んで、三階に降りる。二名を回収して、あとは俺達に任せるか──「お嬢、二名を広場に残す。あとの三名を回収して地上に戻ろう」

ブリッジスさんがいう。碧水の翼に加わって、最下層まで行くという事か……。

「ええ、いいわよ……ブリッジスさん。見習い連中が、ベテラン抜きでダンジョンに入った理由は?」

む……とブリッジスさんが、眉をひそめた。

「……恥を晒す様だが、連中は小遣い稼ぎのために、ダンジョンに潜ったそうだ……」

「これって……衛兵隊の決まりからしたならば、違反よね?」

レンディアがいい、ブリッジスさんが頷く。

 

基本的に、衛兵隊はダンジョンには入らない。例外は訓練と、市民が入り込んでしまった場合の救助活動のみ──どちらにしろ、どんな理由であれ、回収品は無視する。理由は一つ──士気、統率に悪影響を及ぼすからだ。小遣い稼ぎの行動なぞ、あり得ない。それは衛兵の領分ではないからだ……。

「あとの三名。救助しても、罰則はあるのよね?」

「もちろんだ。なあなあで、済ませていい問題ではない……」

レンディアの言葉に、ブリッジスさんがきっぱりと答えた。

ふん、とレンディアが鼻を鳴らす。

「じゃ、降りましょうか。三階からは、本格的な戦場よ」

レンディアが先頭をきって、階段を下って行く──さて、どんな戦場があるだろうか……どっちにしろ、戦場は地獄だぜ……。




武人の練武場。長くなるかもしれないです。

( ´-ω-)y‐┛~~
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