広場で、レンディア達と合流……他の若手の姿はない。ブリッジスさんだけが、付いて来たか……うん。これでいい。しかし、あの若手連中はちゃんと、教官殿の言い付けを守るだろうか?
二階──聞いた通り、同じ造りだな……さて、どう、パーティーを分けるか。
「そうねえ、ブリッジスさんとグランは右回り。私とシェーミィ、クレイドルは左回りね」
「分かった。救助対象を発見したら、どうする?」
「回収して、三階へ続く広場に運びましょう。負傷していたなら、治癒して。私もグランもそれなりに出来るから」
「そのまま、広場で待機させるんだな?」
「ええ。部屋にいる
魔物の“
「了解だ」
頷く、ブリッジスさん。待機させる若手に分ける水と携帯食は、余裕あるからな。
「じゃ、行きましょうか……広場でね」
俺達は慎重に、左回りに進む。最初の部屋を、レンディアが魔力探知で探る。少しして、レンディアが首を振る。反応無し、との事──念のため、シェーミィが音もなく、部屋の中を確認──何も無しの、合図。
じゃあ、次だ。あとの部屋に何も無いと、いいがな……。
警戒しながら、私とブリッジスさんは、右回りに魔力探知をしながら進む──うろつく鎧は、
一階でやっておけば、もう少し時間短縮できただろうか……だが一応、警戒のため、部屋も確認するつもりだ。部屋に、救助対象が逃げ込んでいる可能性もあるからな……部屋の中で骸になっている可能性も有り得るので、何にせよ部屋の中は確認しないといけないが……最初の部屋……生命、魔力の反応無し。
「反応無し、です。一応、部屋内部の確認をしましょう」
「む。任せてくれ……」
扉を慎重な手つきでゆっくりと開き、中を伺うブリッジスさん……「よし、異常無し。先に進もうか」
「ええ、行きましょう。レンディア達も、先に進んでいるでしょうね」
「よし……慎重に進もうか」
グランを先頭に、二人は進んで行く──魔力探知を張りながら……「二つ目の部屋が近いです」
グランの言葉に、ブリッジスが身構える。
「シェーミィ! 後方の二体に、足止めをお願い!!」
レンディアの指示。「あいあーい!!」シェーミィが、短弓に矢をつがえ──二矢をギュウッ……と強く弦を引き絞り──強撃の二連射を放つ──ビビィッン!と、矢鳴り。
強撃が、後衛のうろつく鎧の二体を撃ち、後退させた。
俺は、前衛三体の真ん中を狙う──「おおう!!」構えた盾ごと、体を両断するつもりの、バトルアクスの薙ぎ払い──ガツン、一瞬の手応え……思いきり振り抜く。呆気なく、バラバラになるうろつく鎧。
左右のうろつく鎧が、俺目掛けて剣をほぼ同時に振り下ろしてきたが、前方に身を投げ出して避ける。
ガヂィィン!! うろつく鎧のロングソードが、床を叩く音。前衛をすり抜け、後方の二体に向けて駆ける──腰を落とし、迎え撃つ体勢を取る、うろつく鎧……それは、悪手何だよなあ。
ガガッガッ、二体のうろつく鎧の体に、再び矢が突き立った……グラリとよろめく、うろつく鎧目掛け──バトルアクスを袈裟斬りに叩き付け、横に薙ぎ払う。
激しい金属音が、通路に鳴り響く──道を、開けろ!!
背後で金属音──レンディアが、残る二体のうろつく鎧を仕止めたのだろう。
通路でのうろつく鎧の出現──言うなれば、“
うろつく鎧の落とした魔石を回収し、一息吐く……「あと、一部屋ね。急ぎましょうよ」
三つ目の部屋は、目と鼻の先。生命探知をしながら、先頭を進むレンディア。
「ん? シェーミィ、あの部屋の様子見て」
三つ目の部屋の手前で、レンディアが立ち止まる。シェーミィが、足音一つ立てずに扉の前に立ち、いつものやり方で、無音で扉を開ける──「ありゃ。二名、発見だねー」
壁に寄りかかっている、若手。鎧を脱ぎ、盾と剣を傍らに置いている。一人は、床に横たわっている──二人とも、眠っている様に見えるが、顔色は悪い──一人は、片腕から出血。血は止まっているが、治癒を必要としている事は、間違い無いだろう。
横たわっている若手は、ぱっと見、負傷している様には見えないが……さて、後三名か。
一名は、骨折に切り傷。一名は、打撲多数──レンディアが骨折を治癒し、俺が打撲、切り傷を治癒した。
骨折治癒の鈍痛に呻く声。打撲治癒に安息を上げる声……どっちにしろ、体力回復を待たなければならない──治癒後は、休息が必要だが……今は急ぎだ。
パン、パァン──レンディアが、意識定まらぬ二人の若手の頬を張る……だろうなあ。
「う……あ、あ?」
目を覚ますも、ぼんやりとした顔付きの若手達。そりゃそうなるな。
「これ、飲んで」
シェーミィが、小瓶を若手達に渡す。ぎこちない手付きで、受け取る。
「疲労回復ポーション。効き目早いよー」
「あ、ありがとうございます……」
ふう、と一息吐く若手二人。さて……あと三名は、どこかな……。
二人の衛兵見習い……若いわね。十五、六ってとこね。シェーミィの二つ下くらい? 見習いは何歳からだっけ?
二人の見習いを観察するレンディア──ここに二人を置いて行った事は、まあいい。怪我人を連れ回すのは危険だから。
怪我人が出た時点で、引き返さなかったのも、まあ……よくないが……腹が立つのは、応急手当もせず放置した事だ。
冒険者視点で見れば、仲間を見捨てる様なものだ──「チッ」レンディアが、腹立たしく舌打ちをする。
(あとの三人は下に行ったのか……気になるのは、目的は本当に訓練なのか?)
どうも、何か引っ掛かるんだよな。ベテラン抜きでの訓練何て、無謀にもほどがある──だから目的は……よし、鎌をかけてみるか。
「なぁ……ベテラン抜きでの訓練というのが、信じられないんだよ。本当の目的は何だ?」
壁に寄りかかっている若手の側にしゃがみ込み、質問する。顔が強張ったな……?
「それ、は……」
「……クレイドル、あとよあと。それよりあなた達、立って。治癒したから痛むとこ無いでしょ?」
急かすレンディア。戸惑いながらも立ち上がる若手達。
「今から、三階に続く広場に向かうよー。ブリッジスさんと合流だからねー」
若手達の顔色が、悪くなった。自分達の仕出かした事は、充分分かっているらしいな……?
広場で、ブリッジスさん達と合流。グランさんと二人だ……向こう側には居なかったか。
ブリッジスさんが、呆れたような顔で、こちらを見ていた。若手二人は顔を伏せている──まあ、この場はブリッジスさんに任せて、一休みといくか。
「ちょっと、聞きたい事がある……来い」
若手二人に、ブリッジスさんがいう。ベテランの凄みが滲んでいる、優しい声だ……怖っ。
ブリッジスさんがいうには、できるなら最下層の五階まで行きたいそうだ。だろうな……若手連中の救助が目的だからな。
「三階からは、うろつく鎧の連携が変わるわよ。両手武器に槍……数も増えるわよ。基本、十体一組になると思っていいわよ」
レンディアがいう……と、なると……ここから先は別行動では危険だろうな。
「三階以降からは、パーティーは分けない方がいいかもな。探索は、二度手間になると思うが、それが安全だと思う」
グランさんがいう。“
さて。ブリッジスさんは、どの選択肢を選ぶだろうか? パーティーを組んで、三階に降りる。二名を回収して、あとは俺達に任せるか──「お嬢、二名を広場に残す。あとの三名を回収して地上に戻ろう」
ブリッジスさんがいう。碧水の翼に加わって、最下層まで行くという事か……。
「ええ、いいわよ……ブリッジスさん。見習い連中が、ベテラン抜きでダンジョンに入った理由は?」
む……とブリッジスさんが、眉をひそめた。
「……恥を晒す様だが、連中は小遣い稼ぎのために、ダンジョンに潜ったそうだ……」
「これって……衛兵隊の決まりからしたならば、違反よね?」
レンディアがいい、ブリッジスさんが頷く。
基本的に、衛兵隊はダンジョンには入らない。例外は訓練と、市民が入り込んでしまった場合の救助活動のみ──どちらにしろ、どんな理由であれ、回収品は無視する。理由は一つ──士気、統率に悪影響を及ぼすからだ。小遣い稼ぎの行動なぞ、あり得ない。それは衛兵の領分ではないからだ……。
「あとの三名。救助しても、罰則はあるのよね?」
「もちろんだ。なあなあで、済ませていい問題ではない……」
レンディアの言葉に、ブリッジスさんがきっぱりと答えた。
ふん、とレンディアが鼻を鳴らす。
「じゃ、降りましょうか。三階からは、本格的な戦場よ」
レンディアが先頭をきって、階段を下って行く──さて、どんな戦場があるだろうか……どっちにしろ、戦場は地獄だぜ……。
武人の練武場。長くなるかもしれないです。
( ´-ω-)y‐┛~~