ブリッジスが、救助した二名の若手に、水と携帯食を持たせ(シェーミィが、余分に持っていた干し果物も渡す)、広場に待機させる。
「俺達が戻るまで、ここで待機だ……いいな?」
「……分かりました」
ブリッジスさんからの圧に、大人しくなっている若手二人。散々な目にあっただろうからな……もう、無茶はしないだろう。
「大人しく休んでいろ。治癒してもらったとはいえ、まだ体力は本調子になっていないだろうからな」
はい、と答える若手二人……あと三名は、どこまでいっただろうか?
「よし、おさらいね。三階からは、盾兵に加え、両手武器に槍兵が出るわよ。連携も、変わってくるわよ」
「強さ自体は変わらないんだが、前後の連携が、少し厄介だ。特に前衛と後衛の入れ換えが、厄介なんだよ」
三階に降りるにあたっての、レンディアとブリッジスさんの軽い講習。
「隙は無い、と思っていいわよ。だから、多少強引に隙を作るのよ……ブリッジスさん、グラン。魔術は躊躇わずに、行使して。私もそうするから」
了解、とブリッジスさんとグランさん。
こちらの編制を決める。グランさんが中央、その左右にブリッジスさんと俺。中衛レンディアに後衛シェーミィ──「ねえ、前に手にいれた“
黒壁回廊で入手したあれか。確か、抜いたら短時間、影の様になり気配を消せるという効果の短刀だったか──「ん。隙あれば、使って。皆、やれる事は出し惜しみなく、やりましょうよ」
「三階に降りる前に、水の精霊に加護を頼むわよ。ちょっと待ってて」
レンディアが刀を掲げ、俺達の前に立つ──水面に広がる波は 優美に優しく流れる 涼やかな風に流れる波は庇護をもたらす──朗々と透き通るレンディアの声が、身に響く……おお、爽やかな寝起きといった感覚だ……。
「回復速度上昇、状態異常耐性、物理耐性が身に付いているわよ。最も、地上よりは効果は少しばかり減少してるけどね」
体が軽い。暗黒神の加護とはまた、違う感覚だな……よし、気合い入れて行くか。
三階に到着。変わりばえしない風景。武骨な石造りの床、壁、天井──これが、“武人の練武場”だ……。
「左回りに行きましょうよ。グラン、魔力探知しながら先行して」
「了解」
先を行くグランさん。少し距離を取って、ブリッジスさんと後を追う。
背後からは、レンディアとシェーミィ。何の心配も、無い──うん。
グランさんが、ぴたりと止まる……「魔力探知にかかった……来るぞ」
「数は?」
ブリッジスさんが、短く言う。グランさんが頷き、答えた。早くも、うろつく鎧の姿が見えてきた……「五体だな……中央、両手剣。左右、盾兵に後衛、槍兵二体か。ブリッジスさん、魔術の準備をして下さい。クレイドル、先制を頼めるか?」
「「了解」」俺とブリッジスさんが、答える。
「ありゃ。早くも、索敵したみたいねー」
シェーミィが声を潜めて言う……先を行くグラン達が、動きを止めた──“
「おおっ……らあ!!」
前衛、中央の両手武器を構えていた
左右のうろつく鎧の前面に、土属性の魔術が展開される──腰の高さほどの、杭状の馬防柵──“
盾兵のうろつく鎧に、石杭が突き立つ。ダメージ目当ての物ではない。痛覚、肉体の無い魔法生物に対しての、妨害目的の一手。
ガガッ──盾兵の左目、喉に矢が突き立つ。だが、少し浅かったのか倒れない。
止めを刺すべく、クレイドルが近付こうとした瞬間、うろつく鎧の後衛から、槍が突き出されて来た。
「おっと」グランが槍をカイトシールドで弾き、矢の突き立った盾兵の兜を、斬り跳ばした。
ほぼ同時に、残った盾兵をクレイドルが袈裟斬りに斬り落とした──後衛の槍兵二体が、一気に間を詰めて来る──そのうちの一体が、ガジャリ、と崩れ落ちた。
槍兵の残骸の側で、にしし、と笑うシェーミィが一瞬見えた。“
残りは、槍兵一体。怯む様子は無い──ピキィンッン──金属音が響き、槍兵が頭部、腰を切り離されて、崩れ落ちた……。
いつの間にか、レンディアが槍兵の背後に移動しており、刃を振るったのだ。
「初戦で、これか……中々にしんどいな」
ブリッジスさんが、やれやれと言う。
「まだ、数が少なかったから、こんなもので済んだのよ……」
レンディアがいう。盾兵、両手武器持ちはともかく、後衛の槍兵が厄介になると言っていた事が、実感出来た……。
「影身の刃、なかなかにいい武器よー」
にしし、と嬉しそうに笑うシェーミィ。おっかない武器だな……。
「さて……部屋廻りと行こうか」
「ここから下までは、さすがに見習い連中は行けないと思うが……とにかく、調べないとなあ」
グランさんと、ブリッジスさんが言う。確かにな、見習いが乗り越えられる様な場所とは、思えない。
さて……残り三名。ここで見つかるといいが……。
部屋廻り。周囲半円、三部屋で探知にかからない。一応、シェーミィなりブリッジスさんが、部屋を確認するも、異常無し。
「じゃあ、反対方向ね。グラン、ブリッジスさん、さっきの様に先行お願いね」
「了解だ」
グランさんと、ブリッジスさんが頷く。編制は同じ。中央グランさん。左右、俺とブリッジスさんに、中衛レンディアに後衛、シェーミィ──まあ、この二人は臨機応変だろうな。さっきの、盾兵と槍兵の様な、“
反対側を移動。グランさんの魔力探知とレンディアの生命探知には、まだ反応無し──一部屋目、何も無し。二部屋目で、生命反応無し。魔力探知に反応有りだそうだ。その数、六。つまり、六体のうろつく鎧──グランさんがレンディアを見る。
レンディアが、拳をぐっ、と突き出す──突入──の合図だ。グランさんが頷く。
「もしかしたら、若手の遺体があるかもしれないからね……」
「……そうだな」
レンディアの言葉に、頷くブリッジスさん。
レンディアが、シェーミィに扉を開かせる──相変わらずの無音。
短弓を構えながら、するりと部屋に入り込むシェーミィ。グランさんが、続いて入ったと同時に、ガシャアンッと金属音。シェーミィが、不意討ちをしたのだ──にひひ、とシェーミィの笑い声。
いやさすが……部屋に入ると、槍兵が倒れているのが見えた──盾兵四、槍兵一。
厄介な槍兵を減らしたか。グランさんが、どっしりと構えながら、前進する。俺とブリッジスさんは、そのやや左右後方を進む。
うろつく鎧の攻撃を引き付け、俺達の攻撃の機会を作る──盾役、つまり“タンク”の仕事の一つだ──前衛の盾兵二体が、グランさんに剣を叩き付けるもグランさんは、びくともしないどころか、逆に押し返す。騎士、凄いな……。
今が、好機──一番左側の盾兵に打ちかかる。盾を掲げ、バトルアクスを防ごうとするが──ガツン、と手応え。盾ごと腕を斬り落とし、刃の反対側のピック部分で、頭部を叩き潰す──目の端に、シェーミィが静かに進んで行くのが、一瞬見えた……狙いは、槍兵か。
とっとと終わらせて、救助活動開始しないとな。