邪神の子 ~赤き瞳のクレイドル~   作:末末

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第98話 武人の練武場 三階 両手武器と槍衾

 

 

 

ブリッジスが、救助した二名の若手に、水と携帯食を持たせ(シェーミィが、余分に持っていた干し果物も渡す)、広場に待機させる。

「俺達が戻るまで、ここで待機だ……いいな?」

「……分かりました」

ブリッジスさんからの圧に、大人しくなっている若手二人。散々な目にあっただろうからな……もう、無茶はしないだろう。

「大人しく休んでいろ。治癒してもらったとはいえ、まだ体力は本調子になっていないだろうからな」

はい、と答える若手二人……あと三名は、どこまでいっただろうか?

 

「よし、おさらいね。三階からは、盾兵に加え、両手武器に槍兵が出るわよ。連携も、変わってくるわよ」

「強さ自体は変わらないんだが、前後の連携が、少し厄介だ。特に前衛と後衛の入れ換えが、厄介なんだよ」

三階に降りるにあたっての、レンディアとブリッジスさんの軽い講習。

「隙は無い、と思っていいわよ。だから、多少強引に隙を作るのよ……ブリッジスさん、グラン。魔術は躊躇わずに、行使して。私もそうするから」

了解、とブリッジスさんとグランさん。

 

こちらの編制を決める。グランさんが中央、その左右にブリッジスさんと俺。中衛レンディアに後衛シェーミィ──「ねえ、前に手にいれた“影身の刃(シャドウエッジ)”を試したいんだけどー?」

黒壁回廊で入手したあれか。確か、抜いたら短時間、影の様になり気配を消せるという効果の短刀だったか──「ん。隙あれば、使って。皆、やれる事は出し惜しみなく、やりましょうよ」

 

「三階に降りる前に、水の精霊に加護を頼むわよ。ちょっと待ってて」

レンディアが刀を掲げ、俺達の前に立つ──水面に広がる波は 優美に優しく流れる 涼やかな風に流れる波は庇護をもたらす──朗々と透き通るレンディアの声が、身に響く……おお、爽やかな寝起きといった感覚だ……。

 

「回復速度上昇、状態異常耐性、物理耐性が身に付いているわよ。最も、地上よりは効果は少しばかり減少してるけどね」

体が軽い。暗黒神の加護とはまた、違う感覚だな……よし、気合い入れて行くか。

 

三階に到着。変わりばえしない風景。武骨な石造りの床、壁、天井──これが、“武人の練武場”だ……。

「左回りに行きましょうよ。グラン、魔力探知しながら先行して」

「了解」

先を行くグランさん。少し距離を取って、ブリッジスさんと後を追う。

背後からは、レンディアとシェーミィ。何の心配も、無い──うん。

グランさんが、ぴたりと止まる……「魔力探知にかかった……来るぞ」

「数は?」

ブリッジスさんが、短く言う。グランさんが頷き、答えた。早くも、うろつく鎧の姿が見えてきた……「五体だな……中央、両手剣。左右、盾兵に後衛、槍兵二体か。ブリッジスさん、魔術の準備をして下さい。クレイドル、先制を頼めるか?」

「「了解」」俺とブリッジスさんが、答える。

 

「ありゃ。早くも、索敵したみたいねー」

シェーミィが声を潜めて言う……先を行くグラン達が、動きを止めた──“うろつく鎧(リビングアーマー)”の連携を、久し振りに見てみようかしらね……レンディアが、刀を抜く──チイィィンッン──いつもの、刃鳴り。

 

 

「おおっ……らあ!!」

前衛、中央の両手武器を構えていた“うろつく鎧”(リビングアーマー)がクレイドルに、大上段から斬り落とされる──体を両断され、崩れ落ちるうろつく鎧。

左右のうろつく鎧の前面に、土属性の魔術が展開される──腰の高さほどの、杭状の馬防柵──“石杭の防柵(ストーンドパイル)”──ブリッジスの、土属性の術。

盾兵のうろつく鎧に、石杭が突き立つ。ダメージ目当ての物ではない。痛覚、肉体の無い魔法生物に対しての、妨害目的の一手。

 

ガガッ──盾兵の左目、喉に矢が突き立つ。だが、少し浅かったのか倒れない。

止めを刺すべく、クレイドルが近付こうとした瞬間、うろつく鎧の後衛から、槍が突き出されて来た。

「おっと」グランが槍をカイトシールドで弾き、矢の突き立った盾兵の兜を、斬り跳ばした。

ほぼ同時に、残った盾兵をクレイドルが袈裟斬りに斬り落とした──後衛の槍兵二体が、一気に間を詰めて来る──そのうちの一体が、ガジャリ、と崩れ落ちた。

槍兵の残骸の側で、にしし、と笑うシェーミィが一瞬見えた。“影身の刃(シャドウエッジ)”の効果か……。

残りは、槍兵一体。怯む様子は無い──ピキィンッン──金属音が響き、槍兵が頭部、腰を切り離されて、崩れ落ちた……。

いつの間にか、レンディアが槍兵の背後に移動しており、刃を振るったのだ。

 

 

「初戦で、これか……中々にしんどいな」

ブリッジスさんが、やれやれと言う。

「まだ、数が少なかったから、こんなもので済んだのよ……」

レンディアがいう。盾兵、両手武器持ちはともかく、後衛の槍兵が厄介になると言っていた事が、実感出来た……。

「影身の刃、なかなかにいい武器よー」

にしし、と嬉しそうに笑うシェーミィ。おっかない武器だな……。

「さて……部屋廻りと行こうか」

「ここから下までは、さすがに見習い連中は行けないと思うが……とにかく、調べないとなあ」

グランさんと、ブリッジスさんが言う。確かにな、見習いが乗り越えられる様な場所とは、思えない。

さて……残り三名。ここで見つかるといいが……。

 

部屋廻り。周囲半円、三部屋で探知にかからない。一応、シェーミィなりブリッジスさんが、部屋を確認するも、異常無し。

「じゃあ、反対方向ね。グラン、ブリッジスさん、さっきの様に先行お願いね」

「了解だ」

グランさんと、ブリッジスさんが頷く。編制は同じ。中央グランさん。左右、俺とブリッジスさんに、中衛レンディアに後衛、シェーミィ──まあ、この二人は臨機応変だろうな。さっきの、盾兵と槍兵の様な、“徘徊する魔物(ワンダリングモンスター)”タイプは、出現率は低いというが……どうだろうか? 油断は出来ないな……。

 

反対側を移動。グランさんの魔力探知とレンディアの生命探知には、まだ反応無し──一部屋目、何も無し。二部屋目で、生命反応無し。魔力探知に反応有りだそうだ。その数、六。つまり、六体のうろつく鎧──グランさんがレンディアを見る。

レンディアが、拳をぐっ、と突き出す──突入──の合図だ。グランさんが頷く。

「もしかしたら、若手の遺体があるかもしれないからね……」

「……そうだな」

レンディアの言葉に、頷くブリッジスさん。

レンディアが、シェーミィに扉を開かせる──相変わらずの無音。

短弓を構えながら、するりと部屋に入り込むシェーミィ。グランさんが、続いて入ったと同時に、ガシャアンッと金属音。シェーミィが、不意討ちをしたのだ──にひひ、とシェーミィの笑い声。

いやさすが……部屋に入ると、槍兵が倒れているのが見えた──盾兵四、槍兵一。

厄介な槍兵を減らしたか。グランさんが、どっしりと構えながら、前進する。俺とブリッジスさんは、そのやや左右後方を進む。

うろつく鎧の攻撃を引き付け、俺達の攻撃の機会を作る──盾役、つまり“タンク”の仕事の一つだ──前衛の盾兵二体が、グランさんに剣を叩き付けるもグランさんは、びくともしないどころか、逆に押し返す。騎士、凄いな……。

 

今が、好機──一番左側の盾兵に打ちかかる。盾を掲げ、バトルアクスを防ごうとするが──ガツン、と手応え。盾ごと腕を斬り落とし、刃の反対側のピック部分で、頭部を叩き潰す──目の端に、シェーミィが静かに進んで行くのが、一瞬見えた……狙いは、槍兵か。

とっとと終わらせて、救助活動開始しないとな。

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