最下層五階。降りた先は、広場になっていた。その先は、レンディアの言った通り、一直線に通路が伸びていた──通路は、幅広くなっている様に見える。
グランさんが、念のためといい、闇を払う術、“闇明け”を使う。通路の端と、少し先の見通しが良くなった。
「私が生命探知をするから、グラン、魔力探知お願いよ。隊列は、前と同じよ」
中央グランさんに、左右は俺とブリッジスさん。中衛レンディアに後衛シェーミィ……ベストの配置だな。
「よし……レンディア、先行するぞ」
グランさんが剣を抜き、歩きだす。その少し後方から、俺とブリッジスさん。
道すがら、部屋を確認。二部屋は何の反応も無し。レンディアによると、次の部屋はまだ先らしい──ふと気になったので、レンディアに質問する。
「ダンジョンで安全な場所といったら、何処になる?」
うーん、とレンディアが少し考える。
「そうね。階段前広場は安全ね。あと空き部屋に、魔物を殲滅した部屋……部屋は、ここ以外のダンジョンでもそうだけどね」
「……
「そこは安全地帯よ……でも若手連中は、そこまでたどり着けるかしらねえ?」
レンディアが、皮肉な笑みを浮かべる。
「無理だな、それは。主部屋前まで行けないだろうよ」
ブリッジスさんが言う。まあ、確かにな……。
「レンディア、お出ましだ……数、十二だ」
先を行くグランさんが、カイトシールドを構える。ブリッジスさんが、剣を抜く──「よし、久し振りに身体強化を使うか……!」
ブリッジスさんの気迫が形になり、その身を覆う……俺はバトルアクスを肩に構えて、うろつく鎧を待つ……。
ガシャリ、ガチャ……擦れ合う金属音が微かに聞こえて来た──お出ましか、うろつく鎧……ふん。上等だ……人数は、倍以上の差があるが、まあ……問題無い。よし、やるか……。
「おおおぁぁあぁぁっっ!!」
盾兵だろうが、槍兵だろうが関係無い──前衛のうろつく鎧達に、身を投げ出す様に斬り込む。
まずは、中央のバスタードソード持ちのうろつく鎧を仕止める──受ける構えを見せたが、関係ない──武器ごと、薙ぎ払ってやる……確かな手応え。バスタードソードを砕き、そのままうろつく鎧を両断する──左右にいる四体の盾兵が斬りかかって来るが、俺と入れ替わる形でグランさんが真正面に立ち、四体の攻撃を防いだ……。
いや凄いなグランさん。前面百八十度、半円をカバー出来ているんじゃないか……?
ブリッジスが、向かって右側の盾兵の兜の隙間を貫き、横に払う──ギイィッンと金属音。盾兵の首を跳ね飛ばす。
前衛、盾兵と両手武器のうろつく鎧。中衛は槍兵だ……後衛の距離は、近い。
前衛五体に、中衛四体。後衛三体──計十二隊。ベテラン衛兵の目には、敵戦力が即座に見て取れていた……。
敵の内訳──前衛は、盾兵四体に両手武器持ち一体。中衛槍兵四体に、後衛弓兵三体──身体強化は、約一分持つ。それまでに、決着は付くだろう。この面子、お嬢率いる“碧水の翼”の実力は、伊達じゃない。
そして、新しく加入したクレイドルという男。なかなかに、無茶な戦い方をする様に見えるが……危なげない感じだ。
“冷静に無茶をする”、とでも言ったらいいか?
早くも、前衛を殲滅。残りは槍兵四体に弓兵三体──後方、一体の弓兵の喉元に、二本の矢が突き立ち、弓兵が崩れ落ちる。
槍兵が、一瞬下がる──「槍衾、来るぞ!」
ブリッジスさんの声が響く。ほぼ同時に、槍兵が槍を揃えて突き進んで来た──グランさんが腰を落とし、カイトシールドを構える。
(父君よ、我が盟友達を護らせたまえ)
グランさんの、暗黒神への祈りが微かに聞こえた──ガッギイィィン! ギギィィイッ!
凄まじい金属音が、通路に響く……マジか。一人で、四体の槍兵の突撃を止めた──カイトシールドを横に構え、横幅を広げて強引に受け止めた……盾役凄いな。これが、騎士の本領か……。
槍衾を食い止められた槍兵に、バトルアクスを掬い上げる様に、斬り上げる──槍を弾き、兜を跳ね飛ばす。
後方、残った一体の弓兵が崩れ落ちた。シェーミィが、“
残りは、槍兵三体──背後から、一瞬の突風。レンディアか……。
ふわり、とレンディアが音も無く、槍兵の背後 に立つ──ヒュッ、ピイィィンッ──槍兵二体がバラリと崩れ落ちた。
今、決着を着けようか──最後の一体を、頭上から斬り下げる……確かな手応え……よし。
うろつく鎧、十二体はガラクタとなって通路に散らばっている。回収対象は、うろつく鎧が身に付けていた武具ではあるが、それらは回収しない。理由は、かさ張るばかりで対した価値は無いからだ。回収するのは、魔石のみ──
「さ、次の部屋に行くわよ。グラン、先行お願いよ」
「承知。クレイドル、ブリッジスさん、行こう」
いつもの陣構えで、通路を進む。今だ反応無しみたいだな……「ブリッジスさん、少し聞きたいんですが?」
「うん? 構わないぞ」
「なぜ、若手連中は下に下に向かったんですかね?」
単純な疑問だ。撤収するなら、さっさと上に戻るだろうに……。
「ああ、多分、
ふん、と吐き捨てるようにいった。
なるほどな。確か初級訓練中に、ダンジョン攻略の心構えの一つに、『一番マズイのが、パニックを起こし、方向が分からなくなる事』 だと教えられたな。若手連中もそうなってしまったんだろうな……そんなんで、よく潜ろうと思ったな。
残りの四部屋。異常無しだった。一応、中を確認するもただの空き部屋……となれば……。
「ふん。はっきりしたわね。残りの三人は、
「……生きてりゃいいがな」
レンディアの発言に、ため息混じりにブリッジスさんが言う。
「もう少し進めば、主部屋前広場よ」
ここからは、レンディアが先導する事になった。
ここからでも、主部屋の巨大な扉が見えた……いや、扉というより門だな。見るからに頑丈な鉄城門。人の手で開けるのかと思うほどだ……。
「相変わらず、威圧感ある扉ね……ん、生命探知に反応ありよ。三人ね」
ふん、とレンディア。全く、とブリッジスさんが呟く。
やれやれ、やっとか。さぞ、ブリッジスさんに絞られるだろうな……。