邪神の子 ~赤き瞳のクレイドル~   作:末末

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ちと、短めで。


_φ(゚Д゚ )


第101話 武人の練武場 黒の騎士と白の精鋭

 

 

 

「お嬢、治癒を頼む」

ため息混じりに、ブリッジスさんがレンディアに頭を下げる。

「頭を上げてブリッジスさん、頼まれるまでもないわよ……グラン、手伝って」

「了解……なかなかに酷いな」

広場に横たわる、三名の若手連中。頭部に血がこびりつき、荒い呼吸をしている者。

捻れた腕を押さえ、身動き一つしない者……ボロボロだな。見えないだけで、他の箇所にもダメージはあるだろう。

俺の軽治癒では、間に合わないだろうな……。

何が腹立つって、リーダー格の……ええと、何だっけか? エルランだっけか……ほぼ無傷らしく見えるのが、腹立つ。

歳は、十六、七って感じか。整った顔立ちの若手……腹立つな、うん。

 

「エルラン、後は地上に戻ってから──」

ブリッジスさんが、いうより早く、手が出ていた──ガツン。確かな手応えが拳に伝わる。

エルランの体が揺らぐ。倒れない様に襟首を掴み──殴る。殴る。叩き、殴る……。

「まあ……それくらいでいいだろ」

ブリッジスさんが、腕を押さえてきた……ふう、と息を吐く。

よくもまあ、のうのうとしていられるものだな……と思った時には──手が出ていた。

仲間を置き去りにし、挙げ句に最下層まで怪我人を引きずって来た。

これが、リーダーとしての行為か。小遣い稼ぎの果てがこれだ……何様のつもりだ、こいつは……その感情が、形となって出てしまった。

何の抵抗もせずに、俺に殴られるままになっていたのは、呆気に取られての事だっただろうな──端整な顔立ちが、腫れる。

「死人は出ていないが……くそったれめ。それでリーダーか。よくもまあ、仲間を置き去りに出来たものだな」

「クレイドル、せめて籠手を外して殴りなさいよ……」

ああ、そうか。籠手のままだった……まあ、いい。

 

さて……ここからが本番になる、のか?

「ここまで来た以上は、踏破するわよ。鋼の騎士に、取り巻きの白き精鋭を始末する……それで、いいわよね」

レンディアの声に、俺達は頷く。ブリッジスさんもだ。

「おい、ここで大人しくしてろよ。治癒して貰ったからといって、くだらない事を考えるな……いいな?」

ブリッジスさんが、若手連中に言う。青い顔で頷く、若手連中……俺が殴った若手、エルランは俯いている。

 

城の鉄城門にも似た、大きな扉を前にする俺達。グランさんが口を開く。

「レンディア、私達は水の精霊の加護を受けているが、大いなる父君の加護を受けたなら、どうなる?」

「う~ん……被る加護があれば、後から受けた方が優先されると思うわよ。じゃなければ、強い方が優先されると聞いているわよ」

ふむ、とグランさんが頷く。

「……では、大いなる父君に加護を頼もう。少しばかり、待っていてくれ」

グランさんは、剣を胸元に掲げて俺達に向き合う──大いなる父君 我と我が友に 寛大なる慈悲と加護をお与え下さい──低い声で祈祷の言葉を囁くグランさん。

シェーミィも、神妙な面持ちで顔を伏せている。気持ちは分かる……おお、力が体の隅々にじわりと染み渡る気がする……。

 

 

「さて、門を開くわよ……鋼の騎士と白の精鋭は、手強いわよ。騎士は私とクレイドル。精鋭は、グランにシェーミィ、ブリッジスさんお願いよ……いいわね?」

おう、とグランさん達が頷く。レンディアが、門にそっと触れる……音も無く、鉄城門がゆっくりと開いてゆく。

何ともいえない緊張感に、思わず笑みが浮かぶ──ふっふふっ……いかんな、何か楽しくなってきた──〈あっははは! 鋼の騎士はねえ、悪魔系に近いんだよお。始末したら、“魂食み(ソウルスレイヤー)”の糧になるだろうねえ~〉うるせっ!! 今言う事か!?

緊張感、無くすなあ……まあ、肩の力が抜けたと思えばいいか。やる事をやるだけだ。

俺とレンディアで、鋼の騎士を討つ──それだけ。たったそれだけの事だ……。

 

 

主部屋(ボス部屋)に、踏み込む──早速見えた、巨体。トロル並みの背丈の、甲冑姿の騎士が目に入った。大型のカイトシールドにハルバード……斬り、突き、引っ掛ける事の出来る武器だ。

さらに目に付いたのは、その目……モノアイ、いわば単眼。兜の隙間から覗く単眼が、じっと俺達を見つめている──ヴンッ、という感じでその単眼が青く光った──敵として認識したか……。

鋼の騎士の前には、白いうろつく鎧(リビングアーマー)が三体。二体は盾兵で中央の兵は、バスタードソードよりも長い、ツゥハンドソードを、肩構えにしている。

 

ガッシャ、と三体の白の精鋭が前に出る。

背後の鋼の騎士が、ゆっくりとハルバードを頭上に掲げ、振り下ろす──風鳴りと同時に、強い圧力が闘志となって、伝わって来た──ん?

鋼の騎士と、目が合った……この感じ、どこかで……ああ、思い出した。蠱虫の洞窟で相対した、あいつだ。赤闇の兇殻は、俺を睨み付けた直後、真っ先に向かって来た。

邪神、曰く──(悪魔は、僕たち神々を目の敵にしてるからね~。僕の息子たる君は、狙われやすくなるよ~)──との事だったな。

 

白の精鋭達が、速度を早め向かって来た。鋼の騎士は、不動。

「さて、戦闘開始よ。グラン、ブリッジスさん迎撃お願いよ。シェーミィ、牽制と隙あれば仕止めて。クレイドル、グランとブリッジスさんが迎え撃ったなら、鋼の騎士に向かうわよ」

承知、と俺達は応える。グランさんはいつもの様に、どっしりと構え、ブリッジスさんの雰囲気が変わった。身体強化を済ませたのだろう──よし、やるぞ……〈んっふふふ! 楽しくなりそうだよね~、こうも立て続けに、対悪魔戦が出来るなんてね~あっははは! “魂食み(ソウルスレイヤー)” は役に立つよ~ふふふっ!〉

パパ上!? うるさいんですが!?

 

ガシィン!! 早くも、前衛がぶつかった。

「むっ……レンディア、クレイドル! 行け!!」

グランさんの声。グランさんとブリッジスさんの横をすり抜け、俺達は鋼の騎士の元へと、駆け出す──待ってろよ、騎士殿。

鋼の騎士の、俺に対する圧がさらに強まるのを感じた。

 

フェイスガード内の、クレイドルの表情は獣めいていた……その瞳は、赤く輝いている。

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