鋼の騎士殿、巨体の割りに、意外と速く動くわよね……トロルよりも厄介だわね──なぜか、クレイドルに対して敵意を持っている様に見えるわよ……おっと──油断出来ないわね。真横に鋼の騎士のハルバードが振り下ろされ、地面を叩く──“
ゴオォンッ! 強い打撃音。鋼の騎士に目をやると、クレイドルが鋼の騎士の構えるカイトシールドを叩いていた……ガギイィィンッ! 再び叩く、クレイドル。
なぜ態々、堅牢な盾を叩いているのか……鋼の騎士が、クレイドル目掛けてハルバードを、袈裟斬りに振り下ろす。
クレイドルは避けながら、またもカイトシールドを叩く──ビギィィッン! さっきとは違った衝撃音。何をしているの? クレイドル……?
ドワーフの名工、ストルムハンドさんが鍛えたバトルアクス……さすがだな。
これほど、思いきりぶっ叩いているにも関わらず、バトルアクスには何の異常も感じない──鋼の騎士殿……その大きなカイトシールド、叩き割らせてもらうからな……!
振り下ろされて来るハルバードをギリギリで避け、構えられたカイトシールドに、バトルアクスを思いきり叩き付ける──ビギィィッン! 確かな手応えが、全身に伝わる。
ふん……まだ分からないか? 鋼の騎士殿?
突き込まれるハルバードを避けながら、カイトシールドを叩く──何度繰り返しても、無駄だ……そう思っているな?
俺の攻撃を、盾で受けながらハルバードを振るっているが、二対一なのを忘れがちだな?
俺がお前を引き付けている間に、ほらレンディアが、詠唱を始めた……。
クレイドルが鋼の騎士を相手どっている間に、私はしっかりと詠唱をする……風は 入り込み その隙間を 押し広げる──
ほんの一瞬、鋼の騎士の体が揺らいだ。通った。物理耐性弱化が、通用したのだ──「クレイドル! 今、今よ!」
俺の意図に気付いてくれたレンディアが、叫ぶ。さすがリーダー。
「おおらぁ!!」──広がった、少しのひび割れ目掛け、大上段からバトルアクスを叩き付ける──。
白の精鋭達三体の、一糸乱れぬ同時攻撃──がっしりと受け止める……なるほどな、並みの“
ググッ、と三体の白の精鋭と押し比べをする──勝機だな。
相手の注意を、完全に引き付ける事が出来た。シェーミィ、ブリッジスさんの出番だ──身体強化済みのブリッジスさんが、向かって右側の、白の精鋭の首筋に剣を深く突き刺し、横に薙ぎ払う……ゴチャリ、と兜が落ちると同時に、鎧も崩れ落ちた──左側の精鋭の背後に、いつの間にかシェーミィが立ち……ザギッザシッ、と白の精鋭の首筋に、“
ガシャリ、と崩れ落ちる白の精鋭……にしし、と笑うシェーミィが、影に溶けるように姿を消す。影身の刃、恐ろしいな……残るは一体、俺が相手だ。たかが一体の圧力、どうとでもないなあっ!
「むうっ!!」とグランが押し返す。
一瞬、トゥハンドソードを持つ白の精鋭が、仰け反る──その一瞬で、充分だった。
バギイィィッン!! 強く激しい金属音が響く。
何事かと、白の精鋭達を始末したグラン達は、音の方向を見る……離れた所で、レンディアとクレイドルが鋼の騎士を相手どっていた─グラン達の目に入ったのは、鋼の騎士が手にしていた、巨大なカイトシールドの破片だった。
ハルバードの薙ぎ払いを、バトルアクスで受け流す──くそっ、バトルアクスを弾かれた!──水よ 沼地を ここに──レンディアの詠唱。
ガクン、と鋼の騎士の片足が浅く沈む。その足下に、小さな泥沼が出来ていた……それで、充分だレンディア……よし。
バトルアクスを放り、“
俺を背に乗せたな? もう、詰みだ……下がった頭部。首筋に、逆手に構えた魂食みを、突き通す──ガツン、と手応え。
魂食みを捻り、鋼の騎士の頭部を落とす──それと同時に、この身に満ちる活力……。
これか、魂食みの効果……悪魔系を始末した時に得られる活力……いや、待て……これは、度が過ぎる!
鼻歌交じりに、頑丈な金属製の、大きめの宝箱を確認中のシェーミィを横目に、グランがレンディアに尋ねる。
「クレイドルは、どうしたんだ? 負傷している様には、見えないが?」
「ああ、酷く疲れたらしいのよ。あれだけ、無茶したんだから……まあ、少し休ませてあげましょうよ」
頷くグラン。あのカイトシールドを破壊するために、どれだけバトルアクスを振り抜いただろうか……レンディアの言う通り、しばらくそっとしておくのが良いだろう。
主部屋の片隅で、顔を伏せて体育座りをしているクレイドル。疲労は無い。むしろ──
気が、体が、昂っているな……これから、悪魔系倒す度にこうなるのか……いや、確証はないが悪魔の強さに比例して、得られる活力の量が決まる気がする……邪神が言っていたな、
あれは、活力吸収の事も言っていたのではないのだろうか? 要検証って……とこだ……な。
クレイドルは、静かな眠りに沈んだ──
「おー、立派な剣だねー。これは、何だっけ? 面頬だっけ? あとはー、小袋三つだねー」
嬉々として、宝箱を漁るシェーミィ。剣をグランに渡し、面頬をレンディアに渡す。シェーミィは、小袋を地面で広げて、中身を確認する。
「うーん。一つは、宝石とかの詰め合わせにー、二つは、金貨と銀貨だねー」
「この面頬って、魔力感じるわね。ラザロさんに鑑定して貰うわよ」
眼下から口元、喉元までを覆う、牙を剥き出しにした狼を模した、黒い面頬。
「この剣、いい出来だな……」
現在使用している物よりも、少し長めで幅広。
刀身は、薄く灰色に輝いている──グランは剣を納める。
「これも、鑑定して貰うか……」
レンディア達の様子を、ブリッジスは微笑みながら見ている。
(これぞ、冒険者って雰囲気だな……)