邪神の子 ~赤き瞳のクレイドル~   作:末末

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第102話 武人の練武場 黒の騎士と白の精鋭 始末

 

 

 

 鋼の騎士殿、巨体の割りに、意外と速く動くわよね……トロルよりも厄介だわね──なぜか、クレイドルに対して敵意を持っている様に見えるわよ……おっと──油断出来ないわね。真横に鋼の騎士のハルバードが振り下ろされ、地面を叩く──“風舞い(ウィンド・ステップ)”で敏捷性を高めていなかったら、不味かったかも。

 

 ゴオォンッ! 強い打撃音。鋼の騎士に目をやると、クレイドルが鋼の騎士の構えるカイトシールドを叩いていた……ガギイィィンッ! 再び叩く、クレイドル。

なぜ態々、堅牢な盾を叩いているのか……鋼の騎士が、クレイドル目掛けてハルバードを、袈裟斬りに振り下ろす。

クレイドルは避けながら、またもカイトシールドを叩く──ビギィィッン! さっきとは違った衝撃音。何をしているの? クレイドル……?

 

 ドワーフの名工、ストルムハンドさんが鍛えたバトルアクス……さすがだな。

これほど、思いきりぶっ叩いているにも関わらず、バトルアクスには何の異常も感じない──鋼の騎士殿……その大きなカイトシールド、叩き割らせてもらうからな……!

 

 振り下ろされて来るハルバードをギリギリで避け、構えられたカイトシールドに、バトルアクスを思いきり叩き付ける──ビギィィッン! 確かな手応えが、全身に伝わる。

ふん……まだ分からないか? 鋼の騎士殿?

突き込まれるハルバードを避けながら、カイトシールドを叩く──何度繰り返しても、無駄だ……そう思っているな?

 俺の攻撃を、盾で受けながらハルバードを振るっているが、二対一なのを忘れがちだな?

俺がお前を引き付けている間に、ほらレンディアが、詠唱を始めた……。

 

 クレイドルが鋼の騎士を相手どっている間に、私はしっかりと詠唱をする……風は 入り込み その隙間を 押し広げる──鎧殻(がいかく)を 緩め軟化させよ──“物理耐性弱化(ウィークアーマー)

 

 ほんの一瞬、鋼の騎士の体が揺らいだ。通った。物理耐性弱化が、通用したのだ──「クレイドル! 今、今よ!」

俺の意図に気付いてくれたレンディアが、叫ぶ。さすがリーダー。

「おおらぁ!!」──広がった、少しのひび割れ目掛け、大上段からバトルアクスを叩き付ける──。

 

 白の精鋭達三体の、一糸乱れぬ同時攻撃──がっしりと受け止める……なるほどな、並みの“うろつく鎧(リビングアーマー)”とは一味違う……だが、並より鈍くないだけだ……ふん、と押し返す。

 ググッ、と三体の白の精鋭と押し比べをする──勝機だな。

 相手の注意を、完全に引き付ける事が出来た。シェーミィ、ブリッジスさんの出番だ──身体強化済みのブリッジスさんが、向かって右側の、白の精鋭の首筋に剣を深く突き刺し、横に薙ぎ払う……ゴチャリ、と兜が落ちると同時に、鎧も崩れ落ちた──左側の精鋭の背後に、いつの間にかシェーミィが立ち……ザギッザシッ、と白の精鋭の首筋に、“影身の刃(シャドウエッジ)”を突き刺していた。

ガシャリ、と崩れ落ちる白の精鋭……にしし、と笑うシェーミィが、影に溶けるように姿を消す。影身の刃、恐ろしいな……残るは一体、俺が相手だ。たかが一体の圧力、どうとでもないなあっ!

「むうっ!!」とグランが押し返す。

一瞬、トゥハンドソードを持つ白の精鋭が、仰け反る──その一瞬で、充分だった。盾撃(シールドバッシュ)でさらに押し込み、剣を振るう──トゥハンドソードごと、兜を斬り飛ばした。

 

 バギイィィッン!! 強く激しい金属音が響く。

何事かと、白の精鋭達を始末したグラン達は、音の方向を見る……離れた所で、レンディアとクレイドルが鋼の騎士を相手どっていた─グラン達の目に入ったのは、鋼の騎士が手にしていた、巨大なカイトシールドの破片だった。

 

 ハルバードの薙ぎ払いを、バトルアクスで受け流す──くそっ、バトルアクスを弾かれた!──水よ 沼地を ここに──レンディアの詠唱。

 ガクン、と鋼の騎士の片足が浅く沈む。その足下に、小さな泥沼が出来ていた……それで、充分だレンディア……よし。

 バトルアクスを放り、“魂食み(ソウルスレイヤー)”を抜き、片膝を付く鋼の騎士の背後に回り込み、その背に駆け上がる。

 

 俺を背に乗せたな? もう、詰みだ……下がった頭部。首筋に、逆手に構えた魂食みを、突き通す──ガツン、と手応え。

 魂食みを捻り、鋼の騎士の頭部を落とす──それと同時に、この身に満ちる活力……。

これか、魂食みの効果……悪魔系を始末した時に得られる活力……いや、待て……これは、度が過ぎる!

 

 

 主部屋(ボス部屋)に出現する宝箱に、罠は無い──とはいえ、一応の確認をするのはセオリーとなっている。何があるのか分からないのが、ダンジョンだからだ。例外はあり得る──

 

 鼻歌交じりに、頑丈な金属製の、大きめの宝箱を確認中のシェーミィを横目に、グランがレンディアに尋ねる。

「クレイドルは、どうしたんだ? 負傷している様には、見えないが?」

「ああ、酷く疲れたらしいのよ。あれだけ、無茶したんだから……まあ、少し休ませてあげましょうよ」

頷くグラン。あのカイトシールドを破壊するために、どれだけバトルアクスを振り抜いただろうか……レンディアの言う通り、しばらくそっとしておくのが良いだろう。

 

 主部屋の片隅で、顔を伏せて体育座りをしているクレイドル。疲労は無い。むしろ──

 

 気が、体が、昂っているな……これから、悪魔系倒す度にこうなるのか……いや、確証はないが悪魔の強さに比例して、得られる活力の量が決まる気がする……邪神が言っていたな、小魔(デーモンインプ)のような雑魚を殺しても、魔剣はなかなか成長しない、云々。

 あれは、活力吸収の事も言っていたのではないのだろうか? 要検証って……とこだ……な。

 

 クレイドルは、静かな眠りに沈んだ──

 

 

「おー、立派な剣だねー。これは、何だっけ? 面頬だっけ? あとはー、小袋三つだねー」

嬉々として、宝箱を漁るシェーミィ。剣をグランに渡し、面頬をレンディアに渡す。シェーミィは、小袋を地面で広げて、中身を確認する。

「うーん。一つは、宝石とかの詰め合わせにー、二つは、金貨と銀貨だねー」

「この面頬って、魔力感じるわね。ラザロさんに鑑定して貰うわよ」

眼下から口元、喉元までを覆う、牙を剥き出しにした狼を模した、黒い面頬。

「この剣、いい出来だな……」

現在使用している物よりも、少し長めで幅広。

刀身は、薄く灰色に輝いている──グランは剣を納める。

「これも、鑑定して貰うか……」

 

 レンディア達の様子を、ブリッジスは微笑みながら見ている。

(これぞ、冒険者って雰囲気だな……)

 

 

 

 

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