邪神の子 ~赤き瞳のクレイドル~   作:末末

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第103話 武人の練武場 救助依頼の達成

 

 

部屋の奥に、白く柔らかい光を放つ、魔方陣が出現していた──帰還陣か。

「お嬢、あれが帰還陣というやつか?」

「ん。そうよ。ちなみに、使用するまで消えないわよ」

「……なるほどな。そういう事なら──」

「そういう事よ。上の階に待機させている若手を、連れて来るといいわよ」

相変わらずの先読み会話で、ブリッジスさんと話すレンディア。

「よし……ちょっと行って来る。外で待たせている見習いを、中に入れるぞ」

ん。と頷くレンディア。ブリッジスさんは、早速、部屋から出ていった。

 

「クレイドル、調子はどうだ?」

心配そうに、グランさんが尋ねてくる。

「ええ、怪我も無いですし、少し眠れましたから」

ふむ、と頷きながら、グランさんが革袋を差し出してきた。中身は水ではなく、黒ワインだそうだ──「頂きます」

二口、貰う。気付けに良いそうだ。ダンジョンの中での酒……悪くないな。グランさんに礼をいい、革袋を返す。

「一日事に入れ換えないと、酸味が強くなるのが、欠点だがな。革袋の防腐処置も、酒にはあまり効果が無いんだ。手入れも、少し面倒だしな」

そう言って、革袋を口に含む、グランさん。暗黒騎士といえば黒ワインか……様になっているな。

 

少しして、ブリッジスさんが外で待機していた若手三人を、連れて来た──リーダー格のエルランだっけか?

俺を見て、びくり、と肩を竦める。ちょっと前に、お前をボコボコにした罪悪感なんて、無いからな……。

「お前ら、ここで待機していろ。お嬢、こいつらを見といてくれ。じゃ、行って来る」

再び、部屋から出ていくブリッジスさん。

さて、残された三人組は針のむしろだろうな。まあ……俺達が気を使う必要ないな。

鋼の騎士と白の精鋭が落とした魔石を、レンディアが回収している。シェーミィが、必要以上に持ち込んだ干し果物をエルラン達に配っている。

ぎこちなく、礼を言って受け取っている若手連中。干し果物は、多少の腹の足しになるし、渇きも抑えられるからな。でもなあ──親切心だけではなく、在庫処分のつもりで配っているんだよな、あれ……もう少し、横になっておくか……。

 

思った通り、ブリッジスさんに連れて来られた三名は、部屋の片隅で縮こまっている。表情を見るに、自分達のやらかした事を、改めて思い返している様に見える……そうでなければ、ただの馬鹿どもだ。

クレイドルは横になっている。まだ万全ではないのだろうな……まあ、いい。ブリッジスさんが戻るまで、私達も休憩だな。

「シェーミィ、干し果物と干し肉を出して。ああ……クレイドルは眠らせて置きなさい。休憩よ、休憩」

黒ワインを一口含み、レンディアとシェーミィの元に行く。クレイドルは、今だ眠ったままだ。

 

「待たせたな」

ブリッジスさんが、二名の見習いを連れて戻って来た。大人しく待機していたようで、何よりだ……さて、そろそろ撤収だな。

「いえ、気にしないで。じゃ、撤収ね。グラン、クレイドル起こして」

「ああ」

 

地面に横たわるクレイドル──疲労しているとはいえ、よくここまでぐっすりと眠れるものだな。

「撤収だ。クレイドル、起きろ──」

う~ん、と寝返りをうつクレイドル。

寝顔を、直視してしまった……ぞくりと、鳥肌が立つ──輝く様な金髪に、白磁の肌。美しく整った目鼻立ち……何より、薄紅色の唇──美貌という例えでは足りない。妖艶? いや違う。言葉では、表現出来ない……その顔、唇に触れたくなるのを、何とか自制する──「クレイドル、撤収だ。起きろ」

少し強めに揺する。この顔を、いつまでも見る事は出来ない……「クレイドル、起きろ」

 

「ん……ああ、グランさん。どうしました」

う~ん。少しばかり、寝入っていた様だな……ふう……活力吸収の昂りも収まり、悪い気分ではない。というか、グランさんが顔を背けているのは、何ぞ?

「……撤収だ。五名全員の無事を確認出来たのでな」

「分かりました」

グランさん、何か顔が赤いな……何ぞ?

 

「さ、依頼完了よ。地上に戻りましょうか。ブリッジスさん、若手連中集めて」

レンディアが、ブリッジスさんに声を掛ける。

「さて……戻るか。お前ら、戻ったら覚悟しておけよ……」

ブリッジスさんが、若手連中に言う。まあなあ……とことん、絞られるだろうな。

 

 

ゴゴゴゥゥン──一階層、出入口近く。武人の練武場入ってすぐの空間の、壁が開いた。

そこから出てきたのは、五名の見習い連中に訓練教官のブリッジス──そして、レンディア嬢率いる、“碧水の翼(へきすいのつばさ)”の面々。

 

「若手救助次いでに、踏破してきたわよ……あと、踏破には若手連中は一切関わってないわよ」

武人の練武場の出入口に待機していた、衛兵達に、ひらりと手を振るレンディア。

「お嬢の言った通りだ。見習い連中は、何の役にも立っていない」

ブリッジスさんが、きっぱりと言う。

まあ、そうなんだよな。だが……それを一々言う事はないだろうに……まあ、これがブリッジスさんのやり方であり、衛兵達には衛兵なりのルールがあるのだろう。

 

「報酬は、キールから受け取ってくれ……見習い連中が一人も欠けなくて、安心した。気が楽になったよ。碧水の翼には、感謝しかない。ありがとよ」

沁々と、ブリッジスさんが言う。

「まあ、仕事よ仕事。若手連中も、いい経験したと思うわよ」

「まあな……もっとも、何日かは訓練がキツくなるだろうな」

ニヤリ、と笑うブリッジスさん。

 

早速、キールさんのところに出向く事になった。

「レンディア、報酬を受け取ったらどうする? 私としては、一泊して街に戻った方がいいと思うが?」

「ん~、そうねえ。もう夕方だし、宿舎に宿をお願いしようかしら」

黒壁回廊の時のように、宿舎を借りる事が出来るか? 黒壁回廊といえば、風呂の事を思い出した……。

 

 

「キールさん、依頼完了よ。若手連中に被害無し。全員、無事よ」

レンディアが、キールさんに伝える。ふう、とため息を吐く……「そうか。うん……お嬢、いや、碧水の翼はさすがと言っておくよ……」

「お願いがあるのだけれどね、一泊して街に戻りたいのよ。宿舎に空きがあったらなら、私達を泊めて欲しいのよ」

うん? とキールさん。何を言っているんだ? と言わんばかりの表情。

「態々、かしこまらないでもいいぞ、お嬢。四人部屋でいいか?」

「うん。お願いよ」

「直ぐに用意させる。ああ……報酬だな。ちょっと事務所まで来てくれ」

 

 

見習い連中の救助依頼の報酬──金貨二十枚。最悪、全滅していても身分証を回収すれば、報酬は変わらず──破格では? と思えるほどだ。

「ほら、金貨二十枚。お嬢、きちんと数えてくれ……全く、見習い連中の給料の、約十ヶ月分だぞ」

見習いの給与、月に金貨二枚に銀貨二枚との事だそうだ。これって中々の給与だよな?

まあ、いいか……報酬には、何の問題はない。

 

 

衛兵宿舎に移動。部屋は一階。黒壁回廊と同じか……一風呂浴びるのは、夕食後がいいかな。

「お腹空いたわね……クレイドル、浄化お願いよ。そのあと、外食にしましょうよ」

それに、決まった。ちゃんとした風呂なりシャワーは食事のあとかな。

さて、ここの食堂はどんなものだろうか。楽しみだ……荷物を置き、浄化を終えて普段着に着替えて外に繰り出す。

食堂の他に、雑貨屋兼武具店に、冒険者ギルドの出張所もあるんだよな……拠点として、領主から重要視されているという事なのだろうな。




感想あれば、是非。


Ψ(`∀´)Ψ ウィヒヒヒ 否定も多様性!!
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